【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
よし、そろそろ二時間経つな。まさかこの短時間で、ここまで部屋綺麗になるとは思わなかったっすけど。
いやマジで、なんで備え付けのクローゼットまでピッカピカになってるんすか。
「っし、つぎ、生地敷いて…って、やっべぇ!」
「どうしたんだ〜?」
肝心な事を忘れてたっす。ここ、デコ型とかいくらなんでもないっすよね…やべぇ、マジでどうすっかな…
「ここ、4号のデコ型はさすがに…」
「あるよ。」
いやあるんかい。逆になんであるんすかハーミット。備品多すぎねぇか。いくらなんでも準備万端どころの騒ぎじゃねぇっすね。
「ぼくが家から持ってきたんだ…役に立って良かったよ。」
まさかの家から持ち込みだったっす。音崎さん、すげぇ菓子作り慣れてると思ったらそういう事か。
これ、早まったっすかね。この人かなりできる人なのでは?
「これに生地を敷くのか〜。」
「あ、ぼく、タルトストーン持ってるよ。使う…よね?」
それはむしろなんで持ってるんすか。いや、すげぇありがたいっすけど。生地浮いたらアレだし。
「でもこれ、生地敷いたあとでもう一度冷蔵庫入れないといけないんじゃない?」
「いや、今回は氷魔法を使うっす。一気にこう、がっと冷えるんで。」
そもそもこういう時のために覚えさせられたんすよね…と、いうワケで。
「“グラキエス”、っと。」
「見事に凍ったな〜。」
っし、ちゃんと成功。良かったっす、コレで失敗したら目も当てらんねぇ。
今音崎さんがオーブンを予熱しといてくれてるんで、終わる頃に解除すればちょうどいいぐらいのハズっすね。
…っと、予熱終わったか。
「っし、そろそろっすね。“解除”。」
「なるほど…これ便利だね。いい感じに生地も落ち着いてるし…うん、すぐに焼けるよ!」
土台焼くのは結構時間かかるんで、今のうちにこの辺りの使ったモン洗っておくか。じゃねぇと正直、緋勇さんが怖ぇ…
そう思いつつ、オーブンに入っていく生地を見送って、次の作業に取り掛かるっす。
焼けるまでの間に、タルト生地に流し込む中身の部分を作らなくてはいけない。
「あー…緋勇さん、コーヒーの粉、もらっていいっすかね。あと…コレ、作んのやるっすか?これなら混ぜるだけなんすけど…」
「じゃあ、やってみるか〜。」
今回作るのはガトーショコラだ。
レシピにもよるが、実はかなり簡単な菓子なんすよね。
今回はただのチョコではなく、コーヒーの粉を加えてあるが、基本的にはチョコと砂糖と卵とバターを混ぜるだけ。
最近作ってなかったっすけど…材料もまだ覚えてるし、問題なしっと。
チョコ入りの塊をぐるぐるとかき混ぜながら、緋勇さんは目を見張っている。
「へ〜、ガトーショコラ、意外と簡単なんだな〜。」
「あー、そっすね。なんか洒落た名前ついてっけど、正直チョコ入りの卵焼きみてぇなモンっす。」
「卵焼きって…でも、言い得て妙かもね。確かにそうだ。」
[水平線]
「良かった、ちゃんと焼けたね」
「結構、面白いもんなんだな〜。」
できたタルト生地に、ガトーショコラの種を流し込む。半分くらいまで入れたところで、さっき作ったジャムを中に投入する。
「ここでジャム入れるのか〜。」
「そっすね。んで、上から残りの生地入れたら、残しといたさくらんぼ飾りつけるっす。」
そう言った途端、音崎さんがノリノリで言い出した。
「じゃあ、いっぱい乗せちゃおうかな…」
「おいおい、ちょっと待てよ〜。」
それに緋勇さんも反応して、わいわいガヤガヤと言いあう二人。
それを横目で見つつ、オーブンを予熱しておく。っし、こんなもんかな。
でも、二人ともなんだかんだで表情が柔らかくなってる。いやぁ、良かったっす。
その後、なんとかうまい具合の量に落ち着いたらしく、緋勇さんが予熱の終わったオーブンにタルトを入れた。
あとは焼けるのを待つだけっすね。
[水平線]
チョコの焼ける美味そうな匂いと、緋勇さんが淹れているコーヒーの香ばしい匂いがしてくる。
コレ、結構いい感じにできたんじゃないっすか?かなり食欲をそそられる。
「焼けたね、天板の上に出しておくよ!」
「あ、どもっす。あー…甘いの苦手らしいっすけど…緋勇さん、これなら食えるんじゃねぇっすか。どっすか。」
ちらりと相手を横目で見る。顎に手を当てて考えているが、コーヒーとか入れて苦めに作ったコレならどうだろうか。
「結構甘そうだけどな〜、まぁせっかくだし、ありがたく食べてみるぞ〜。」
そんな事を言っている間に、音崎さんがさっさとオーブンからタルトを出している。
やべぇ、任せっきりにしちまってたっす。
「よい…しょ、と。ねぇ、まだ熱いけど今のうちに食べちゃわない?」
「そっすね。丁度緋勇さんがコーヒー淹れてくれたし、いい塩梅じゃないっすか。」
あー…やっべぇ、コレ…自分で作っといて言うのもアレっすけど、すげぇ美味そうな色と匂いしてるっすね…って、俺さっきから同じことしか言ってねぇな。
サクサクとタルトを切り分けると、中からとろりと紅色が見える。やっぱさくらんぼジャム入れて正解だった。
音崎さんが目を見張っている。淹れ終わったコーヒーを全員の前において、切り分けたケーキは皿の上。
フォークを準備したなら、ティータイム…いや、コーヒーブレイクの始まりっすね。
さて、それでは。いざ実食!
「「「いただきます」」」
コレなら、緋勇さんにも気に入ってもらえるだろうか。って、
「うぁっち!?」
「焼きたてだからね…」
「ちゃんとフーフーしてから食べないとだろ〜?って、確かに熱いな〜…」
あー、でもコーヒーうっま…やっべぇ…うっめぇ…ああ、音崎さんコーヒー飲んでるし、緋勇さんもタルト食ってくれてるっすね。
「ん〜、これなら以外と食べられそうだ〜。」
「ぼくも、このコーヒーならイケるかも…!」
良かったー……うん、タルトもうめぇ、生地とかちゃんとサクサクっす。
「なら良かったっす。あーそうそう、緋勇さん、このコーヒー、すげぇ美味いっす。音崎さんも、タルト生地どうもっす。」
どうだろうか。食いもんの問題は食いもんで解決しよう大作戦、成功してると良いんすけど。
「あー…それで、っすね。苦手なモンもあるし好きなモンもあるって事でどうっすか…差し出がましい真似してすまねぇっす。」
そう言うと、二人はお互いに顔を見合わせた。
そのままけらけらと笑いだす二人に、思わず目を丸くする。
「まぁ、自分から食べる気はあんまりしないけどな〜。たまになら良いんじゃないか〜?」
「ぼくも…貰うんだったら飲む…かな。結構さくらんぼと合うって事も分かったし。」
なんて、実に楽しそうに言うもんだから、緊張してたのもウソみたいだ。
うん、ほんと、いい同室に恵まれたっす。
「俺、あんま頭良くねぇんで、迷惑ばっかかけちまうと思うっすけど…」
軽く頭を下げる。
「改めて、これからよろしく…っす。音崎さん、緋勇さん。」
「もちろんだよ!あと名前、柚月でいいからね?」
「俺からもよろしくな〜。そうだ、俺も灰でいいぞ〜。」
いきなり名前呼びはちょっと、ハードル高いっすよ!?
まぁ、つってもこれから三年間はずっと一緒に過ごす事になるのか。じゃあそんなもんか。
そうは言ってもなんかこう、妙な気分っすね。
「っす…頑張るっす。」
「留歌ってばなんか緊張してる?このこのー!」
「まぁ、そんなもんなんじゃないか〜?留歌は緊張しすぎな気もするけどな〜。」
お、おう。
ナチュラルに名前呼びされてる…
まぁ皆んなで仲良くっつーのも、この年じゃアレっすけど……
ああでも、距離縮まったみたいで嬉しいモンっすね………
そもそも、名前で呼ばれるような友人なんて長らくいなかったしな…………
そんな風に幸せを噛み締めた午後4時。
間食には少し遅い時間だが…
うん、このコーヒーとタルトなら、夕飯が入らなくなるだけの価値はある気がするっす。というか、間違いなくあるだろう。
誰かと一緒に飯食うってのは、それだけで美味いもんっすよね。なんて、俺のガラじゃねぇっすけど。
いやマジで、なんで備え付けのクローゼットまでピッカピカになってるんすか。
「っし、つぎ、生地敷いて…って、やっべぇ!」
「どうしたんだ〜?」
肝心な事を忘れてたっす。ここ、デコ型とかいくらなんでもないっすよね…やべぇ、マジでどうすっかな…
「ここ、4号のデコ型はさすがに…」
「あるよ。」
いやあるんかい。逆になんであるんすかハーミット。備品多すぎねぇか。いくらなんでも準備万端どころの騒ぎじゃねぇっすね。
「ぼくが家から持ってきたんだ…役に立って良かったよ。」
まさかの家から持ち込みだったっす。音崎さん、すげぇ菓子作り慣れてると思ったらそういう事か。
これ、早まったっすかね。この人かなりできる人なのでは?
「これに生地を敷くのか〜。」
「あ、ぼく、タルトストーン持ってるよ。使う…よね?」
それはむしろなんで持ってるんすか。いや、すげぇありがたいっすけど。生地浮いたらアレだし。
「でもこれ、生地敷いたあとでもう一度冷蔵庫入れないといけないんじゃない?」
「いや、今回は氷魔法を使うっす。一気にこう、がっと冷えるんで。」
そもそもこういう時のために覚えさせられたんすよね…と、いうワケで。
「“グラキエス”、っと。」
「見事に凍ったな〜。」
っし、ちゃんと成功。良かったっす、コレで失敗したら目も当てらんねぇ。
今音崎さんがオーブンを予熱しといてくれてるんで、終わる頃に解除すればちょうどいいぐらいのハズっすね。
…っと、予熱終わったか。
「っし、そろそろっすね。“解除”。」
「なるほど…これ便利だね。いい感じに生地も落ち着いてるし…うん、すぐに焼けるよ!」
土台焼くのは結構時間かかるんで、今のうちにこの辺りの使ったモン洗っておくか。じゃねぇと正直、緋勇さんが怖ぇ…
そう思いつつ、オーブンに入っていく生地を見送って、次の作業に取り掛かるっす。
焼けるまでの間に、タルト生地に流し込む中身の部分を作らなくてはいけない。
「あー…緋勇さん、コーヒーの粉、もらっていいっすかね。あと…コレ、作んのやるっすか?これなら混ぜるだけなんすけど…」
「じゃあ、やってみるか〜。」
今回作るのはガトーショコラだ。
レシピにもよるが、実はかなり簡単な菓子なんすよね。
今回はただのチョコではなく、コーヒーの粉を加えてあるが、基本的にはチョコと砂糖と卵とバターを混ぜるだけ。
最近作ってなかったっすけど…材料もまだ覚えてるし、問題なしっと。
チョコ入りの塊をぐるぐるとかき混ぜながら、緋勇さんは目を見張っている。
「へ〜、ガトーショコラ、意外と簡単なんだな〜。」
「あー、そっすね。なんか洒落た名前ついてっけど、正直チョコ入りの卵焼きみてぇなモンっす。」
「卵焼きって…でも、言い得て妙かもね。確かにそうだ。」
[水平線]
「良かった、ちゃんと焼けたね」
「結構、面白いもんなんだな〜。」
できたタルト生地に、ガトーショコラの種を流し込む。半分くらいまで入れたところで、さっき作ったジャムを中に投入する。
「ここでジャム入れるのか〜。」
「そっすね。んで、上から残りの生地入れたら、残しといたさくらんぼ飾りつけるっす。」
そう言った途端、音崎さんがノリノリで言い出した。
「じゃあ、いっぱい乗せちゃおうかな…」
「おいおい、ちょっと待てよ〜。」
それに緋勇さんも反応して、わいわいガヤガヤと言いあう二人。
それを横目で見つつ、オーブンを予熱しておく。っし、こんなもんかな。
でも、二人ともなんだかんだで表情が柔らかくなってる。いやぁ、良かったっす。
その後、なんとかうまい具合の量に落ち着いたらしく、緋勇さんが予熱の終わったオーブンにタルトを入れた。
あとは焼けるのを待つだけっすね。
[水平線]
チョコの焼ける美味そうな匂いと、緋勇さんが淹れているコーヒーの香ばしい匂いがしてくる。
コレ、結構いい感じにできたんじゃないっすか?かなり食欲をそそられる。
「焼けたね、天板の上に出しておくよ!」
「あ、どもっす。あー…甘いの苦手らしいっすけど…緋勇さん、これなら食えるんじゃねぇっすか。どっすか。」
ちらりと相手を横目で見る。顎に手を当てて考えているが、コーヒーとか入れて苦めに作ったコレならどうだろうか。
「結構甘そうだけどな〜、まぁせっかくだし、ありがたく食べてみるぞ〜。」
そんな事を言っている間に、音崎さんがさっさとオーブンからタルトを出している。
やべぇ、任せっきりにしちまってたっす。
「よい…しょ、と。ねぇ、まだ熱いけど今のうちに食べちゃわない?」
「そっすね。丁度緋勇さんがコーヒー淹れてくれたし、いい塩梅じゃないっすか。」
あー…やっべぇ、コレ…自分で作っといて言うのもアレっすけど、すげぇ美味そうな色と匂いしてるっすね…って、俺さっきから同じことしか言ってねぇな。
サクサクとタルトを切り分けると、中からとろりと紅色が見える。やっぱさくらんぼジャム入れて正解だった。
音崎さんが目を見張っている。淹れ終わったコーヒーを全員の前において、切り分けたケーキは皿の上。
フォークを準備したなら、ティータイム…いや、コーヒーブレイクの始まりっすね。
さて、それでは。いざ実食!
「「「いただきます」」」
コレなら、緋勇さんにも気に入ってもらえるだろうか。って、
「うぁっち!?」
「焼きたてだからね…」
「ちゃんとフーフーしてから食べないとだろ〜?って、確かに熱いな〜…」
あー、でもコーヒーうっま…やっべぇ…うっめぇ…ああ、音崎さんコーヒー飲んでるし、緋勇さんもタルト食ってくれてるっすね。
「ん〜、これなら以外と食べられそうだ〜。」
「ぼくも、このコーヒーならイケるかも…!」
良かったー……うん、タルトもうめぇ、生地とかちゃんとサクサクっす。
「なら良かったっす。あーそうそう、緋勇さん、このコーヒー、すげぇ美味いっす。音崎さんも、タルト生地どうもっす。」
どうだろうか。食いもんの問題は食いもんで解決しよう大作戦、成功してると良いんすけど。
「あー…それで、っすね。苦手なモンもあるし好きなモンもあるって事でどうっすか…差し出がましい真似してすまねぇっす。」
そう言うと、二人はお互いに顔を見合わせた。
そのままけらけらと笑いだす二人に、思わず目を丸くする。
「まぁ、自分から食べる気はあんまりしないけどな〜。たまになら良いんじゃないか〜?」
「ぼくも…貰うんだったら飲む…かな。結構さくらんぼと合うって事も分かったし。」
なんて、実に楽しそうに言うもんだから、緊張してたのもウソみたいだ。
うん、ほんと、いい同室に恵まれたっす。
「俺、あんま頭良くねぇんで、迷惑ばっかかけちまうと思うっすけど…」
軽く頭を下げる。
「改めて、これからよろしく…っす。音崎さん、緋勇さん。」
「もちろんだよ!あと名前、柚月でいいからね?」
「俺からもよろしくな〜。そうだ、俺も灰でいいぞ〜。」
いきなり名前呼びはちょっと、ハードル高いっすよ!?
まぁ、つってもこれから三年間はずっと一緒に過ごす事になるのか。じゃあそんなもんか。
そうは言ってもなんかこう、妙な気分っすね。
「っす…頑張るっす。」
「留歌ってばなんか緊張してる?このこのー!」
「まぁ、そんなもんなんじゃないか〜?留歌は緊張しすぎな気もするけどな〜。」
お、おう。
ナチュラルに名前呼びされてる…
まぁ皆んなで仲良くっつーのも、この年じゃアレっすけど……
ああでも、距離縮まったみたいで嬉しいモンっすね………
そもそも、名前で呼ばれるような友人なんて長らくいなかったしな…………
そんな風に幸せを噛み締めた午後4時。
間食には少し遅い時間だが…
うん、このコーヒーとタルトなら、夕飯が入らなくなるだけの価値はある気がするっす。というか、間違いなくあるだろう。
誰かと一緒に飯食うってのは、それだけで美味いもんっすよね。なんて、俺のガラじゃねぇっすけど。