【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
テストが終わって約三日。ああそうそう、テストの時は特になんもなかったっす。まぁそんなモンっすよ。
まぁそれは置いといて、今日はついに、部屋割り発表の日だ。今日授業がないのは、部屋同士の親交を深めろとかそういうアレなんだろう。
「勉強した所はちゃんと出たし…赤点にはなってなかったし…いやそれでもかなり低かったっすけど…」
合計点が同じくらいになるように部屋を分けるらしいし、かなり頭いい人と一緒になるんだろうな…
いやぁ、やっぱ緊張するっすね…今日から本格的にハーミットでの生活が始まるって感じがする。
大量の荷物を抱え、ブランが落ちないように気をつけながら、階下に貼ってあった部屋割表に従って、俺の新たな住処へ向かう。
ようやく辿り着いてガチャリとドアを開けると、そこにはすでに先客がいた。
一人目は灰色の髪の天使の少年。使い魔らしい黒い狐と共に、先ほどまで部屋の清掃をしていたらしく、手にはモップを持っている。
職員室の騒動の時も思ったが、どうやらかなり綺麗好きっぽいっすね。
そしてもう一人は初めて会ったヤツだ。大きめの犬を使い魔として連れている。男にしてはちょっと長めの黒髪で、おっとりとした雰囲気。美味そうにさくらんぼ食ってるっす。
掃除と食事の手を止めて、二人は顔を見合わせた。
「ねぇ灰、もしかしてラスト一人って?」
「あ〜、多分そうだな〜。」
どうも、二人ともコミュ力高い方っぽいっすね。俺の陽キャセンサーが思いっきり反応してる。
もっとも、ヤバいタイプっていうよりかはイズモンド先輩みたいな感じっすけど。
「えっとね、ぼくの名前は音崎柚月。仲良くしてくれるととっても嬉しいな。」
「俺は緋勇灰だ〜、よろしく〜。」
そんな事を考えていると、二人がそれぞれ名前を教えてくれた。
天使の方が緋勇さん、おっとりしてそうな方が音崎さん、と。心のメモに書いておく。
「あー、どもっす。俺は、星見留歌っていいます。…っと、これから…よろしくっす。」
「了解だ〜。あ、荷物は一旦、そこに置いといてくれ〜。」
こんなんで、いいんだろうか、自己紹介。
思わず七五調になってしまうぐらいにはあっさりしてるっすね。でもとりあえずなんか歓迎していただけてるっぽくて良かったっす。
「あ、君もさくらんぼ食べる?」
「星見〜、コーヒーも飲むか〜?」
しかも、二人ともすげぇいい人そうっす。これは、かなりいい同室に恵まれたかもしれない。さっき書いた心のメモに、厳重に赤線を引いておく。
「あ、えっと、どもっす。頂くっす。…ってうわ、うっま!!」
「だろ〜?俺が淹れたんだ〜。」
「でしょでしょ、美味しいんだよ、このさくらんぼ!」
マジで美味い。コーヒーとか普段あんま飲まねぇっすけど、これは一口で美味いと分かる。そしてこのさくらんぼもやべぇ。甘いだけじゃなく、しっかりフルーティーで…
なんて考えていると、
「ねぇ、灰。」
「そうだな〜、ここは聞いてみるしか〜、」
「だよね…うん。」
二人がなにやら意味深な会話をしている事に気がつき、思わず首を傾げていると、唐突に二人は口を開いた。
「君って、美味しいモノ好きな人?」
「あー、まぁそうっすね。一応この一か月、朝と晩はほぼ自分で作ってたっす。」
「じゃあ、遠慮なく聞けるな〜?」
お互いに顔を見合わせて頷いた後、二人はぐいとこちらに迫ってこう言った。
「やっぱり、さくらんぼの方が美味しいよね?」「やっぱ、コーヒーの方が美味いだろ〜?」
いやいやいや、一体全体なんの事っすか。というかそもそも、それって比較できるモンなんすか。フルーツと飲み物なんすけど。
そう思いつつ、食っているさくらんぼを飲み込んで口を開く。
「えっと…話がよく見えないんすけど…というか俺に意見を求められても…いや確かに料理は割と好きっすけど…」
俺、ド平民かつ割と馬鹿舌なんすけど。高いモンより安いモンの方が舌に合うタイプの。
そう弁解するが、二人は事の次第を説明し始めた。
それはありがたい。だが、同時に説明するのはやめてほしいっす。
正直、互いの声がこんがらがって何を言っているかよく分からない。
「待て、頼むから待ってくれっす。俺は人間界のショートなんとかさんじゃないんすよ!」
「…何それ?」
「多分、聖徳太子じゃないか〜?」
そう言われつつも、交互に話してくれた二人の説明を聞く所によると、どうやらお互いに好きな味の傾向が真逆だったらしい。
「柚月は〜、コーヒーを飲まず嫌いするんだ〜…」
「灰ってば甘いのは嫌いだ〜、って言うんだよ!」
だから、どっちの方が美味しいか判定してくれ、というのが真相だったらしい。コーヒーを飲みながら考える。だが生憎と、俺には大して好き嫌いがない。
「えっと…好きなモンは好きじゃダメなんすか…?」
よって、俺は無難な答えを返すしかない。
いや、この答えじゃダメな気がするっすけど。
「ダメだな〜…」「ダメなの!」
やっぱりダメだった。いやまぁ、そんな気はしてたっすけど。
しっかしこれ、どうすりゃいいんだ。というか、個人の趣味嗜好なんてどうこうできるモンじゃねぇっすよそもそも。
「だから、答えてよ。それとも、ぼくの質問には答えたくないの…?」
「いやちげぇっす!それは全然、全くもって思ってねぇっすけど!!」
びっっくりした…急に雰囲気変わるっすね音崎さん…
いやでもマジでどうしよう…俺にできる事なんてあんのかコレに関して…
って、あー…そうか。
うん、食いもんの問題は食いもんで解決すりゃいいんだ。当たり前っすね。レシピも…確か覚えてる。
「えっとその、お二人とも菓子とかって…好きっすか?」
うん、材料も…ちゃんとあるっすね。
多分これなら作れるな。
「大好き!…だけど、苦かったり辛かったりしないよね?」
「甘すぎなければ好きだぞ〜、コーヒーにも合うしな〜。」
よし、それなら。
「コーヒーとさくらんぼちょい頂いてもいいっすかね。せっかくなんで、三人で菓子作らねぇっすきゃ…」
いってぇ!!
…噛んだ。うん。我ながらものの見事に噛んだっすね。死にたい。
「大丈夫か〜?」
「痛そうだけど…」
ああいや、心配には及ばねぇっす…なんてしどろもどろになりながら言うと、二人はけらけらと笑っている。
「まぁ、大丈夫なら…あ、さくらんぼ、使っていいよ。それで、なに作るの?」
「俺もちょっと気になるぞ〜、コーヒー使うってどういう事だ〜?」
まぁそれはそうだろう。とはいえ、コレに関しては俺はかなり自信あるっす。
「あー…タルトっすよ。コーヒーの粉を使うっす。あと…浅煎りの豆?とやらのコーヒーが合うらしいんすけど…あるっすか?」
「あるな〜、淹れておくぞ〜。」
「じゃ、ぼくは土台作っておくね。上は任せるよ!」
誰かと一緒に菓子を作るなんて何年ぶりだろうか。
俺にそんな陽キャみたいなマネできるんだろうか。
そう思うのは一旦やめにして、目の前の材料と格闘する事にする。
「まずはバターを常温に、と。封切ってあるのは有塩だけど…まぁいっか、新しく開けるのも勿体無いし。」
おお、音崎さんすげぇ手慣れてるっすね…
これはむしろ、俺の方が足手纏いかもっす。
とはいえ、こちとらぼっち時間の大半を菓子作り(という名の姉への上納品)とゲームで過ごした男。期待に応えて見せるっすよ!
よし、まずはジャムからだ。さくらんぼを煮て、砂糖をたくさん…つっても、今回は少し砂糖を少なめにしておく。さらにレモン汁を少し加えて、と。
「こんなに入れても、ジャムって結構酸っぱくなるんだよな〜。」
「これだとあんまり日持ちしないけど…いいの?」
そんな会話を繰り広げつつも、音崎さんの手は止まらない。むしろ俺の方が止まっている。やべぇ。
「生地はもう冷蔵庫に入れて、休ませてあるからね。二時間ぐらい待てば良かったはずだよ。」
「そんな事するのか〜。じゃあ、今のうちに荷物の片付けだな〜。」
あ、綺麗好きモードって感じがするっすね。あの時の有無を言わせない、ズンとした雰囲気だ。
俺、正直掃除苦手なんすよね…って、もうほぼ綺麗になってる!?
緋勇さんだけじゃなく、音崎さんまで掃除上手い人だったとは…いやぁ、家庭的というか、なんというか…すげぇ。
まぁそれは置いといて、今日はついに、部屋割り発表の日だ。今日授業がないのは、部屋同士の親交を深めろとかそういうアレなんだろう。
「勉強した所はちゃんと出たし…赤点にはなってなかったし…いやそれでもかなり低かったっすけど…」
合計点が同じくらいになるように部屋を分けるらしいし、かなり頭いい人と一緒になるんだろうな…
いやぁ、やっぱ緊張するっすね…今日から本格的にハーミットでの生活が始まるって感じがする。
大量の荷物を抱え、ブランが落ちないように気をつけながら、階下に貼ってあった部屋割表に従って、俺の新たな住処へ向かう。
ようやく辿り着いてガチャリとドアを開けると、そこにはすでに先客がいた。
一人目は灰色の髪の天使の少年。使い魔らしい黒い狐と共に、先ほどまで部屋の清掃をしていたらしく、手にはモップを持っている。
職員室の騒動の時も思ったが、どうやらかなり綺麗好きっぽいっすね。
そしてもう一人は初めて会ったヤツだ。大きめの犬を使い魔として連れている。男にしてはちょっと長めの黒髪で、おっとりとした雰囲気。美味そうにさくらんぼ食ってるっす。
掃除と食事の手を止めて、二人は顔を見合わせた。
「ねぇ灰、もしかしてラスト一人って?」
「あ〜、多分そうだな〜。」
どうも、二人ともコミュ力高い方っぽいっすね。俺の陽キャセンサーが思いっきり反応してる。
もっとも、ヤバいタイプっていうよりかはイズモンド先輩みたいな感じっすけど。
「えっとね、ぼくの名前は音崎柚月。仲良くしてくれるととっても嬉しいな。」
「俺は緋勇灰だ〜、よろしく〜。」
そんな事を考えていると、二人がそれぞれ名前を教えてくれた。
天使の方が緋勇さん、おっとりしてそうな方が音崎さん、と。心のメモに書いておく。
「あー、どもっす。俺は、星見留歌っていいます。…っと、これから…よろしくっす。」
「了解だ〜。あ、荷物は一旦、そこに置いといてくれ〜。」
こんなんで、いいんだろうか、自己紹介。
思わず七五調になってしまうぐらいにはあっさりしてるっすね。でもとりあえずなんか歓迎していただけてるっぽくて良かったっす。
「あ、君もさくらんぼ食べる?」
「星見〜、コーヒーも飲むか〜?」
しかも、二人ともすげぇいい人そうっす。これは、かなりいい同室に恵まれたかもしれない。さっき書いた心のメモに、厳重に赤線を引いておく。
「あ、えっと、どもっす。頂くっす。…ってうわ、うっま!!」
「だろ〜?俺が淹れたんだ〜。」
「でしょでしょ、美味しいんだよ、このさくらんぼ!」
マジで美味い。コーヒーとか普段あんま飲まねぇっすけど、これは一口で美味いと分かる。そしてこのさくらんぼもやべぇ。甘いだけじゃなく、しっかりフルーティーで…
なんて考えていると、
「ねぇ、灰。」
「そうだな〜、ここは聞いてみるしか〜、」
「だよね…うん。」
二人がなにやら意味深な会話をしている事に気がつき、思わず首を傾げていると、唐突に二人は口を開いた。
「君って、美味しいモノ好きな人?」
「あー、まぁそうっすね。一応この一か月、朝と晩はほぼ自分で作ってたっす。」
「じゃあ、遠慮なく聞けるな〜?」
お互いに顔を見合わせて頷いた後、二人はぐいとこちらに迫ってこう言った。
「やっぱり、さくらんぼの方が美味しいよね?」「やっぱ、コーヒーの方が美味いだろ〜?」
いやいやいや、一体全体なんの事っすか。というかそもそも、それって比較できるモンなんすか。フルーツと飲み物なんすけど。
そう思いつつ、食っているさくらんぼを飲み込んで口を開く。
「えっと…話がよく見えないんすけど…というか俺に意見を求められても…いや確かに料理は割と好きっすけど…」
俺、ド平民かつ割と馬鹿舌なんすけど。高いモンより安いモンの方が舌に合うタイプの。
そう弁解するが、二人は事の次第を説明し始めた。
それはありがたい。だが、同時に説明するのはやめてほしいっす。
正直、互いの声がこんがらがって何を言っているかよく分からない。
「待て、頼むから待ってくれっす。俺は人間界のショートなんとかさんじゃないんすよ!」
「…何それ?」
「多分、聖徳太子じゃないか〜?」
そう言われつつも、交互に話してくれた二人の説明を聞く所によると、どうやらお互いに好きな味の傾向が真逆だったらしい。
「柚月は〜、コーヒーを飲まず嫌いするんだ〜…」
「灰ってば甘いのは嫌いだ〜、って言うんだよ!」
だから、どっちの方が美味しいか判定してくれ、というのが真相だったらしい。コーヒーを飲みながら考える。だが生憎と、俺には大して好き嫌いがない。
「えっと…好きなモンは好きじゃダメなんすか…?」
よって、俺は無難な答えを返すしかない。
いや、この答えじゃダメな気がするっすけど。
「ダメだな〜…」「ダメなの!」
やっぱりダメだった。いやまぁ、そんな気はしてたっすけど。
しっかしこれ、どうすりゃいいんだ。というか、個人の趣味嗜好なんてどうこうできるモンじゃねぇっすよそもそも。
「だから、答えてよ。それとも、ぼくの質問には答えたくないの…?」
「いやちげぇっす!それは全然、全くもって思ってねぇっすけど!!」
びっっくりした…急に雰囲気変わるっすね音崎さん…
いやでもマジでどうしよう…俺にできる事なんてあんのかコレに関して…
って、あー…そうか。
うん、食いもんの問題は食いもんで解決すりゃいいんだ。当たり前っすね。レシピも…確か覚えてる。
「えっとその、お二人とも菓子とかって…好きっすか?」
うん、材料も…ちゃんとあるっすね。
多分これなら作れるな。
「大好き!…だけど、苦かったり辛かったりしないよね?」
「甘すぎなければ好きだぞ〜、コーヒーにも合うしな〜。」
よし、それなら。
「コーヒーとさくらんぼちょい頂いてもいいっすかね。せっかくなんで、三人で菓子作らねぇっすきゃ…」
いってぇ!!
…噛んだ。うん。我ながらものの見事に噛んだっすね。死にたい。
「大丈夫か〜?」
「痛そうだけど…」
ああいや、心配には及ばねぇっす…なんてしどろもどろになりながら言うと、二人はけらけらと笑っている。
「まぁ、大丈夫なら…あ、さくらんぼ、使っていいよ。それで、なに作るの?」
「俺もちょっと気になるぞ〜、コーヒー使うってどういう事だ〜?」
まぁそれはそうだろう。とはいえ、コレに関しては俺はかなり自信あるっす。
「あー…タルトっすよ。コーヒーの粉を使うっす。あと…浅煎りの豆?とやらのコーヒーが合うらしいんすけど…あるっすか?」
「あるな〜、淹れておくぞ〜。」
「じゃ、ぼくは土台作っておくね。上は任せるよ!」
誰かと一緒に菓子を作るなんて何年ぶりだろうか。
俺にそんな陽キャみたいなマネできるんだろうか。
そう思うのは一旦やめにして、目の前の材料と格闘する事にする。
「まずはバターを常温に、と。封切ってあるのは有塩だけど…まぁいっか、新しく開けるのも勿体無いし。」
おお、音崎さんすげぇ手慣れてるっすね…
これはむしろ、俺の方が足手纏いかもっす。
とはいえ、こちとらぼっち時間の大半を菓子作り(という名の姉への上納品)とゲームで過ごした男。期待に応えて見せるっすよ!
よし、まずはジャムからだ。さくらんぼを煮て、砂糖をたくさん…つっても、今回は少し砂糖を少なめにしておく。さらにレモン汁を少し加えて、と。
「こんなに入れても、ジャムって結構酸っぱくなるんだよな〜。」
「これだとあんまり日持ちしないけど…いいの?」
そんな会話を繰り広げつつも、音崎さんの手は止まらない。むしろ俺の方が止まっている。やべぇ。
「生地はもう冷蔵庫に入れて、休ませてあるからね。二時間ぐらい待てば良かったはずだよ。」
「そんな事するのか〜。じゃあ、今のうちに荷物の片付けだな〜。」
あ、綺麗好きモードって感じがするっすね。あの時の有無を言わせない、ズンとした雰囲気だ。
俺、正直掃除苦手なんすよね…って、もうほぼ綺麗になってる!?
緋勇さんだけじゃなく、音崎さんまで掃除上手い人だったとは…いやぁ、家庭的というか、なんというか…すげぇ。