【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
しばらくして、俺が紅茶を持って部屋に戻ると、イズモンド先輩がアモさんを掴んで止めた事で、ひとまずカオスからガイアぐらいにはなっていた。
しかも、戻って来たこちらを振り向いて、イズモンド先輩がそれぞれ二人を紹介してくれた。優しすぎる。
「あー、すまんな留歌君。そんなワケで、コイツらが我の同室や。そんでこっちの青い方はナキ・テンペスト。我の家族でもある。」
「えっと、ナキ・テンペストです…よろしゅう…」
「テンペスト先輩は、すごい優しい、です…!」
「かいりんもボクも結構お世話になってるし!」
よく似ていると思ったら家族だったんすね。実に納得っす。性格はパッと見た感じ真逆…なんだろうが、なんだかんだすごくいいコンビみたいだ。
そんな事を考えつつ、紅茶を人数分のカップに注いでいく。
「お、おおきに!そんで、こっちのオラオラしとってタンパクな反応しか返さへんのがゼダー・リタルダンドやな。連れとるのがコイツの使い魔のクレイジーや。」
「あちち、あ、でもボクこの紅茶結構好きかも!そうそう、ゼダー先輩かなり強いしカッコいい人なんだよ!」
いや、なんでそんな呑気に言ってられるんすか。
紅茶喜んでいただけてるのは嬉しいっすけど。
イズモンド先輩といいアモさんといい…マジでコミュ力たっけぇっすね…
「おいお前ら、勝手に人の名前を言うな。というか、馴れ合うつもりはないと何度言えば分かるんだ。あとその紅茶もいらん!おい、手に押し付けてくるな!」
「せやかてゼダー、そんな威嚇ばっかしとると…ただでさえ教師に嫌われとるのが悪化するで?」
そして、そんなものどうでもいい、と吐き捨てるリタルダンド先輩。相変わらずとても怖い。
思わずひぇ、と声が出た。入学式の時のトラウマが早くも蘇るっす。
あの時の凍りつきそうな目…二度と思い出したくなかったのに……本格的に胃がキリキリして来たっす………
「はぁ…なんで俺がこんなヤツらと…ああそうだ、そこのお前にも言っておく。このマイペース共みたいに馴れ馴れしく接してみろ。刻むからな。」
相変わらずイズモンド先輩が渡そうとしている紅茶をぐいぐいと手で押しやりながら、ゼダー先輩はそう言った。
ちょうど、刻む、のところを聞きそびれた俺は、もしや何か入っているんじゃないかと警戒されてるんすかね。まぁしょうがないっすね…なんてぼんやりと考えていた。
「聞こえなかったのか?刻む、と言ったんだ。」
「ご主人を無視するですか…?今すぐ微塵切りですよ?」
「え、あ、いや、その、聞こえて、ます…馴れ馴れしくしないっす絶対…」
刻む!?え!?俺刻まれるんすか!?
怖いしか感想がない。もう嫌っす。誰か助けて。
現実逃避も兼ねて紅茶を口に運ぶ。熱い。咽せた。余計に混乱した。
「あ、えっと…大丈夫?」
「うぇ!?あ、はい大丈夫っす心配には及ばなねぇっす…ちょっと熱かっただけなんで…」
そっか、なら良かった、と言ってくれたのは、青い先輩改めテンペスト先輩。
「その、僕、水魔法なら得意やから…紅茶の温度、下げられるで…?」
「あ、えっと、ありがとうございます…」
ひょい、と杖すら使わずに水魔法を行使するその姿は、どこかの隠者みたいだ。
まるで滝壺の近くの様な…落ち着く雰囲気の人っすね。マイナスイオンでも出てるんだろうか。って失礼かコレ。
「あとな、えっと、あの二人、いつもあんな感じなんや…喧嘩やないから、その…気にせんでも、ええ…ね、海琳さん」
「そう、です。実は、意外と仲いい、ので…あと、在最も。いつもあんな感じ、です…」
そうなのか…やっぱ、何年も一緒にいると慣れてくるモンなんすね……慣れってすげぇ…
「せや、君、教科決めんとあかんのやっけ…」
そうテンペスト先輩が言った途端、手をはたりと叩く俺とイズモンド先輩の動きが完全に一致したっす。
「…やっばそういやそうやったな…我が呼んだのに完全に忘れてもうてたわ…」
…そう言えば、正直色々ありすぎて、途中すっかり頭から抜けてたっすね……
「確か、得意なんは占いと魔法史やったか?さっき言うてたしな!」
「あ、はい、そうっす。固有魔法が占いで…未来がちょっと分かる程度のモンだし、扱いきれてないっすけど…あ、才能とかは無いんで頑張ればできる様なヤツがあれば……」
ほんならまず占いと魔法史は決定やな、あと固有魔法あるんなら魔法学も取っとこか、コツコツやれるんなら魔術学も行けるやろ…なんて言いながら、イズモンド先輩は次々と授業表に丸をつけていく。
「そうやね、えっと…10科目前後取る人が、一番多いで…。留歌さんなら、座学系と実践系半々ぐらいが、ええんやないかな…」
と、テンペスト先輩が教えてくれた。お二人とも、すごく的確っすね…ありがてぇっす…
「ボクはやっぱり実践系がオススメだね!」
「あ、僕も、一応…取る人も、多い、ですし…」
特に魔法学以外だと、防衛術は絶対取っといた方がいいよっ!なんて、相変わらずテンション高めにバンバン机を叩くアモさん。それを、壊した端から海琳さんが直していく。
「あ、僕は一応、座学系メインで取っとるんやけど…多分君なら…召喚学とかは、オススメやね…」
「おお、ナキ、ええこと言うやん!確かに、留歌君やったらええかもなぁ。向き不向きもあるけど…お、使い魔おるん?なら向いとるわ!」
遠慮がちにテンペスト先輩が言うのを聞いて、イズモンド先輩がそこにも丸をつけていく。早い。
「ほれゼダー、お前も言うてみ!」
「は?なんで俺がわざわざ言わなきゃいけないんだ。意味がわからん。」
そう言いながらも一応教えてくれたのは意外にも薬草学と魔法薬学だ。
てっきり魔法戦闘特別講座とかかと思ってたっす…と、つい独り言を溢してしまったら、目を吊り上げられた。
「お前…明らかに才能が無い奴に戦わせるほど俺が馬鹿だと言いたいのか?」
「とか何とか言って、危ないからやろー?ボクの時も言ってたじゃん!ボク破壊魔法得意なのにさー!」
「なるほど、ヒヨッコの内から危険な事すんなって話やな!それは我も賛成やで!」
一瞬かなりビビったが、アモさんとイズモンド先輩が言うにはそういうことらしい。
…実は意外と怖いだけの人じゃなかったんすね。失礼な事したっす。
「ゼダーさんは、なんやかんやで、優しいですから…」
「断じて違う!余計な事を言うな!」
「お?うちのナキいじめたら許さへんで?」
「黙れ、このブラコン!」
なんとなく分かってきた気がする。同室ってこんな感じなんすね。遠慮はないが礼儀はある、理想的な関係なんだろう。
そう思っていると、海琳さんが遠慮がちに口を開いた。
「あ、えっと…僕も、言った方が、良いです、よね…?オススメは、ルーン文字とか…です…あ、いえ、やれって言ってる訳じゃ、ないんですけど…」
それを、座学系と実践系、どっちの要素も含んどるし、僕も、その、結構オススメやね…なんてフォローしながら、テンペスト先輩が書き込んでいる所に、イズモンド先輩が口にする。
「あとはそうやな!箒なんか乗れるとカッコええで!」
「でき、ますかね…俺に…」
「多分、大丈夫ですよ…星見先輩、体幹、良さそう、ですし…」
[水平線]
そうこうしている内に、授業表はなんとか全て埋めることができた。
「終わった…っすね…」
「そうだね!ボク結構良いこと言ったんじゃない!?褒めて褒めてっ!」
「うん、在最、えっと、すごいよ…」
結構時間かかったっすけど、おかげで何とかやっていけそうな気がしてきた。
「ご主人が手伝ったんです、当たり前です!!」
「はぁ…いいか、これっきりだ。次はない。」
これきりだとしても、本当に助かったっす。誰か一人でもいなければ、ここまではできなかっただろう。
もう一度、授業表を見返して頷く。
「本当にありがとうございます。皆さんのおかげっす。コレ、先生に出しにいってきますね!」
おう、いってらー、というイズモンド先輩の声に背中を押され、頑張れと言ってくれた後輩二人に嬉しさを覚えながら、俺は談話室を後にした。数刻前の逃げるような足取りとは違い、今回は珍しく自信に満ちて。
しかも、戻って来たこちらを振り向いて、イズモンド先輩がそれぞれ二人を紹介してくれた。優しすぎる。
「あー、すまんな留歌君。そんなワケで、コイツらが我の同室や。そんでこっちの青い方はナキ・テンペスト。我の家族でもある。」
「えっと、ナキ・テンペストです…よろしゅう…」
「テンペスト先輩は、すごい優しい、です…!」
「かいりんもボクも結構お世話になってるし!」
よく似ていると思ったら家族だったんすね。実に納得っす。性格はパッと見た感じ真逆…なんだろうが、なんだかんだすごくいいコンビみたいだ。
そんな事を考えつつ、紅茶を人数分のカップに注いでいく。
「お、おおきに!そんで、こっちのオラオラしとってタンパクな反応しか返さへんのがゼダー・リタルダンドやな。連れとるのがコイツの使い魔のクレイジーや。」
「あちち、あ、でもボクこの紅茶結構好きかも!そうそう、ゼダー先輩かなり強いしカッコいい人なんだよ!」
いや、なんでそんな呑気に言ってられるんすか。
紅茶喜んでいただけてるのは嬉しいっすけど。
イズモンド先輩といいアモさんといい…マジでコミュ力たっけぇっすね…
「おいお前ら、勝手に人の名前を言うな。というか、馴れ合うつもりはないと何度言えば分かるんだ。あとその紅茶もいらん!おい、手に押し付けてくるな!」
「せやかてゼダー、そんな威嚇ばっかしとると…ただでさえ教師に嫌われとるのが悪化するで?」
そして、そんなものどうでもいい、と吐き捨てるリタルダンド先輩。相変わらずとても怖い。
思わずひぇ、と声が出た。入学式の時のトラウマが早くも蘇るっす。
あの時の凍りつきそうな目…二度と思い出したくなかったのに……本格的に胃がキリキリして来たっす………
「はぁ…なんで俺がこんなヤツらと…ああそうだ、そこのお前にも言っておく。このマイペース共みたいに馴れ馴れしく接してみろ。刻むからな。」
相変わらずイズモンド先輩が渡そうとしている紅茶をぐいぐいと手で押しやりながら、ゼダー先輩はそう言った。
ちょうど、刻む、のところを聞きそびれた俺は、もしや何か入っているんじゃないかと警戒されてるんすかね。まぁしょうがないっすね…なんてぼんやりと考えていた。
「聞こえなかったのか?刻む、と言ったんだ。」
「ご主人を無視するですか…?今すぐ微塵切りですよ?」
「え、あ、いや、その、聞こえて、ます…馴れ馴れしくしないっす絶対…」
刻む!?え!?俺刻まれるんすか!?
怖いしか感想がない。もう嫌っす。誰か助けて。
現実逃避も兼ねて紅茶を口に運ぶ。熱い。咽せた。余計に混乱した。
「あ、えっと…大丈夫?」
「うぇ!?あ、はい大丈夫っす心配には及ばなねぇっす…ちょっと熱かっただけなんで…」
そっか、なら良かった、と言ってくれたのは、青い先輩改めテンペスト先輩。
「その、僕、水魔法なら得意やから…紅茶の温度、下げられるで…?」
「あ、えっと、ありがとうございます…」
ひょい、と杖すら使わずに水魔法を行使するその姿は、どこかの隠者みたいだ。
まるで滝壺の近くの様な…落ち着く雰囲気の人っすね。マイナスイオンでも出てるんだろうか。って失礼かコレ。
「あとな、えっと、あの二人、いつもあんな感じなんや…喧嘩やないから、その…気にせんでも、ええ…ね、海琳さん」
「そう、です。実は、意外と仲いい、ので…あと、在最も。いつもあんな感じ、です…」
そうなのか…やっぱ、何年も一緒にいると慣れてくるモンなんすね……慣れってすげぇ…
「せや、君、教科決めんとあかんのやっけ…」
そうテンペスト先輩が言った途端、手をはたりと叩く俺とイズモンド先輩の動きが完全に一致したっす。
「…やっばそういやそうやったな…我が呼んだのに完全に忘れてもうてたわ…」
…そう言えば、正直色々ありすぎて、途中すっかり頭から抜けてたっすね……
「確か、得意なんは占いと魔法史やったか?さっき言うてたしな!」
「あ、はい、そうっす。固有魔法が占いで…未来がちょっと分かる程度のモンだし、扱いきれてないっすけど…あ、才能とかは無いんで頑張ればできる様なヤツがあれば……」
ほんならまず占いと魔法史は決定やな、あと固有魔法あるんなら魔法学も取っとこか、コツコツやれるんなら魔術学も行けるやろ…なんて言いながら、イズモンド先輩は次々と授業表に丸をつけていく。
「そうやね、えっと…10科目前後取る人が、一番多いで…。留歌さんなら、座学系と実践系半々ぐらいが、ええんやないかな…」
と、テンペスト先輩が教えてくれた。お二人とも、すごく的確っすね…ありがてぇっす…
「ボクはやっぱり実践系がオススメだね!」
「あ、僕も、一応…取る人も、多い、ですし…」
特に魔法学以外だと、防衛術は絶対取っといた方がいいよっ!なんて、相変わらずテンション高めにバンバン机を叩くアモさん。それを、壊した端から海琳さんが直していく。
「あ、僕は一応、座学系メインで取っとるんやけど…多分君なら…召喚学とかは、オススメやね…」
「おお、ナキ、ええこと言うやん!確かに、留歌君やったらええかもなぁ。向き不向きもあるけど…お、使い魔おるん?なら向いとるわ!」
遠慮がちにテンペスト先輩が言うのを聞いて、イズモンド先輩がそこにも丸をつけていく。早い。
「ほれゼダー、お前も言うてみ!」
「は?なんで俺がわざわざ言わなきゃいけないんだ。意味がわからん。」
そう言いながらも一応教えてくれたのは意外にも薬草学と魔法薬学だ。
てっきり魔法戦闘特別講座とかかと思ってたっす…と、つい独り言を溢してしまったら、目を吊り上げられた。
「お前…明らかに才能が無い奴に戦わせるほど俺が馬鹿だと言いたいのか?」
「とか何とか言って、危ないからやろー?ボクの時も言ってたじゃん!ボク破壊魔法得意なのにさー!」
「なるほど、ヒヨッコの内から危険な事すんなって話やな!それは我も賛成やで!」
一瞬かなりビビったが、アモさんとイズモンド先輩が言うにはそういうことらしい。
…実は意外と怖いだけの人じゃなかったんすね。失礼な事したっす。
「ゼダーさんは、なんやかんやで、優しいですから…」
「断じて違う!余計な事を言うな!」
「お?うちのナキいじめたら許さへんで?」
「黙れ、このブラコン!」
なんとなく分かってきた気がする。同室ってこんな感じなんすね。遠慮はないが礼儀はある、理想的な関係なんだろう。
そう思っていると、海琳さんが遠慮がちに口を開いた。
「あ、えっと…僕も、言った方が、良いです、よね…?オススメは、ルーン文字とか…です…あ、いえ、やれって言ってる訳じゃ、ないんですけど…」
それを、座学系と実践系、どっちの要素も含んどるし、僕も、その、結構オススメやね…なんてフォローしながら、テンペスト先輩が書き込んでいる所に、イズモンド先輩が口にする。
「あとはそうやな!箒なんか乗れるとカッコええで!」
「でき、ますかね…俺に…」
「多分、大丈夫ですよ…星見先輩、体幹、良さそう、ですし…」
[水平線]
そうこうしている内に、授業表はなんとか全て埋めることができた。
「終わった…っすね…」
「そうだね!ボク結構良いこと言ったんじゃない!?褒めて褒めてっ!」
「うん、在最、えっと、すごいよ…」
結構時間かかったっすけど、おかげで何とかやっていけそうな気がしてきた。
「ご主人が手伝ったんです、当たり前です!!」
「はぁ…いいか、これっきりだ。次はない。」
これきりだとしても、本当に助かったっす。誰か一人でもいなければ、ここまではできなかっただろう。
もう一度、授業表を見返して頷く。
「本当にありがとうございます。皆さんのおかげっす。コレ、先生に出しにいってきますね!」
おう、いってらー、というイズモンド先輩の声に背中を押され、頑張れと言ってくれた後輩二人に嬉しさを覚えながら、俺は談話室を後にした。数刻前の逃げるような足取りとは違い、今回は珍しく自信に満ちて。