【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
さて、ノアさんの爆発騒ぎに巻き込まれて数刻後。
俺は今、非常に困っているっす。
なぜかというと、もうじき先生に呼び出されて授業の確定届を出さないといけないからだ。
でも正直、なんの授業を取ればいいか分からないんすよね…
「談話室にでも行って先輩に話を聞くしかない、んだろうな…」
分かってはいる、分かってはいるんだが…
初対面の目上の人と話すの、俺一番苦手なんすよ… いや、とは言ってもまぁ、知り合いもいないし行くしかないか…
我ながらここ二日で大分諦めが良くなった、そう思いつつ階下に降りて、辺りを見回す。あれ、意外と人いないっすね。
そう言えば、ちゃんと来るのは初めてかもしれない。
暖かい空気の元を探せば、やたらと大きな暖炉に火がパチパチ、と楽しそうに踊っている。おまけに、ご自由にどうぞと書かれた菓子や、謎のビーズクッション、机にハンモック…ちょっとしたマガジンラックまである。
混沌とした空間だが、誰もがリラックスできそうっす。
相変わらずあちこちちょっとボロボロなのは…この二日間で正直かなり慣れたっすね。慣れってこわい。
暖炉から多少離れた場所にある、備え付けらしき適当な椅子(暖炉前が先輩とかの定位置だったりすると怖いので)に座り、ご自由にどうぞと書いてあるクッキーに手を伸ばす。
美味い、けど…なんかちょっと妙なえぐみがあるっすね。そういうモンなんだろうか。
「およ?おーい、そこの!」
そんな事を考えていると、どうやら新しく誰か来たようだ。周辺を見渡すが、声の主らしき人以外には誰もいないっすね。となると俺か。う、胃が痛くなってきた。
「…えっと、俺…っすか?」
とは言え無視するなんて選択肢を取れるハズもなく、聞き返す。
「そう、キミやキミ。見慣れん顔やし、一年やろ?」
「え、あ、はい。そうっすけど…えっと…?」
声が詰まって、何やら疑問系のようになったのを、誰なのか聞かれたと解釈したらしく、目の前の先輩らしき人は続けて言った。
「やっぱなー!この時期は誰にも授業の相談できんー!ってヤツがよう出るんや。我はそんな悩める子羊達にアドバイスして回っとる優しい先達っちゅうわけやな!」
完全に…見抜かれてるっすね……
黒い髪に赤いメッシュが入った、全体的に赤っぽい格好の先輩は、体格に似合わない軽々した動作で目の前の席に座った。
「えっと、その通りです…あの、俺、友人とか、まだその、あんまいなくて…」
「そらそんなん当たり前やがな。我かて入学してすぐはおらんかったわ。」
そう平然と言ってのけて、人好きのする笑みを浮かべる先輩。
なんか、この人こそはマトモだ。絶対。
これまでここで会ってきた人が、全員個性が強いどころの騒ぎじゃなかった(アダムさんは別だが)ので、そういう人を見分ける能力が大分身についた気がするっす。
で、そんな俺のカンが全力で言ってる。この人は絶対いい人だ。
「さあて、得意な事言うてみ?我がちゃちゃっといい感じのオススメしたるわ!」
「あ、ありがとうございます!」
「んじゃ、そうと決まれば自己紹介やな!我はアル・イズモンド、よろしゅうな!」
その勢いについ釣られ、自然と普段より少し大きな声で名乗れた。なんか、ちょっと自然に話せてた頃の事を思い出したっす。
「ほうほう、留歌君言うんか…」
そう言ってイズモンド先輩が頷いていると、また新たな陳客が訪れる。しかもこの間会ったばかりの。
「ふんふんふふーん、お菓子〜食〜べよ…って、あー!留歌先輩だー!ヤッホー!」
「ちょっと、在最、走ったら危ないよ…」
アモ・ユタリって名乗ってたっけ。でもこのまま走って行くと机にぶつかりそうなんすけど。
あ、机に手ぇついて飛び越した…けど、失敗してこけた。ついでに机も壊れている。痛そうだけど大丈夫なんだろうか。
「ああ、もう、在最ってばまた壊して…怪我はない?」
「ごめーん!かいりん直すのお願い!」
「うん、もちろん。」
後ろから追いかけているのは…同室の人なんだろうな。すごく仲も良さそうだ。振り回されて大変そうに見えるけど、その実しっかり信頼感に裏打ちされているんだろう。
しかも補修魔法、すっげぇ早いし正確っすね。手慣れてるんだろうな…
「何しとるの?って、アル先輩もいる!!仲良かったんだ!?てかあれ?今日はナキ先輩もゼダー先輩もいないの?」
「おう、アモか!今日も今日とて元気やなー!アイツらはもうすぐ来よるで?多分!!」
「多分かーい!」
いかにも知り合いらしいそんな会話をしているうちに、もう一人の補修魔法の少年が追いついて、そのまま会話に加わる。
「あ、えっと、お久しぶりです、イズモンド先輩…」
「アルでええで?海琳は相変わらずかったいのぉ!」
「かいりんはそこがかいりんなんだよー!」
あ、なんかすげぇ仲良さそうっすね…そういえば同じような方言で話してるし、入学前からの知り合いとかなのかもしれない。会話に入れる気がしない。なんて、半ば現実逃避気味に考えていると、
「あ、えっと、先輩…?」
そう言って、補修魔法の少年が声をかけてくれた。とてもありがたい。
「あー…先輩、とか、慣れねぇんで、留歌でいいっすよ。ああ、名前呼びづらかったら、苗字の星見とかでもいいんで…」
「えっと、ありがとうございます…僕は、真華竟、海琳…です…」
お互いになんだかつっかえつっかえだが、なんとか自己紹介に成功。俺、大分成長したかもしれねぇっす。
「そういえばアル先輩、なんか話してたんじゃないの?」
「おお、そやった、本題忘れとった!すまんのぉ」
あーいや、全然大丈夫っす。その、相談乗って頂けるだけでありがたいんで、なんて言いつつ授業表を広げると、途端にイズモンド先輩は真面目な顔になった。あちこちで同じような事をしている、というのは伊達じゃなかったらしい。
「ふむふむ…得意な科目ってなんや?」
「ここの授業レベル高すぎて正直あまり…あえて言うなら占いと魔法史っすかね…」
「え、占いできるの!?すごーい!じゃあじゃあ、ボクの事占ってみて!?」
いや、そんな大したモンじゃないんすよキラキラした目で見ないでくれ…そして俺ではなく机を見てほしい切実に…
しかし幸いな事に、海琳さんが止めてくれた。
「在最、困らせちゃだめだよ…ほら、力入れすぎて机歪んでる…直しとくから。」
「あ…やっちゃった、ごめん…」
あー…やべぇ、気まずい…なんで俺こんなんなんだろう…自己嫌悪しかない…
と、暗い方向に意識が向き始める。だが、
「まぁまぁ、アモも悪気あったワケやないしな。留歌君かて怒っとるのともちゃうやろ?」
せやったらこの話おしまい、どっちも気にする必要ないんとちゃうか?と、イズモンド先輩が空気を持って行った…と言うか、明るい風を全力で送り込んだ。
この人本当すげぇっすね。
「よし、ほな今度こそ本題や!」
そう先輩が言った途端、またしてもガチャリ、と談話室のドアが開く音。
「今度はなんや!?」
ドアの向こうにいたのは、目の前の先輩とよく似た青っぽい格好の人と…
入学式の日の怖い人っすねぇ!?なんでっすか!?
「あ、アル…ここにいたんだ。」
「はぁ…お前な、なんで俺を連れてくる必要があったんだ?」
「ご主人連れ出すとかいい度胸してるですね?半ドラゴン水の人!」
すまんすまん、とそう言ってけたけたと笑うイズモンド先輩。よく笑ってられるっすね。
いや、半ドラゴン水の人ってなんすか。あの青い先輩のことっすか。なんかあわあわしてますけど。
それと同時に、ゼダー先輩だー!と言って駆けていくアモさん。こっちはこっちですげぇ。
この人達、まさかこの怖い先輩とも仲がいいんだろうか。いよいよもってコミュ力バグってるっすね。
「うるさい近寄るな。」
パシリと影のお化けに弾き返され、ぎゃふ、と言いながら飛ばされるアモさん。あ、壁めり込んだ。でもピンシャンしてるっすね。
それを見てやっぱりあたふたしている青い先輩と海琳さん。
…うん、実に、というか、まさしくというか…カオスとしか言いようがないっすね。どうしたら収まるんだろう、この状況。
…うん、一旦出よう。談話室。ちょっと無理っす。
「あー、えっと…俺、とりあえず紅茶淹れてくるっす…」
そう青い先輩に伝え、俺は逃げるように談話室を後にした。幸いカップは全員分あったハズだ、なんて、現実逃避ぎみに考えながら。
俺は今、非常に困っているっす。
なぜかというと、もうじき先生に呼び出されて授業の確定届を出さないといけないからだ。
でも正直、なんの授業を取ればいいか分からないんすよね…
「談話室にでも行って先輩に話を聞くしかない、んだろうな…」
分かってはいる、分かってはいるんだが…
初対面の目上の人と話すの、俺一番苦手なんすよ… いや、とは言ってもまぁ、知り合いもいないし行くしかないか…
我ながらここ二日で大分諦めが良くなった、そう思いつつ階下に降りて、辺りを見回す。あれ、意外と人いないっすね。
そう言えば、ちゃんと来るのは初めてかもしれない。
暖かい空気の元を探せば、やたらと大きな暖炉に火がパチパチ、と楽しそうに踊っている。おまけに、ご自由にどうぞと書かれた菓子や、謎のビーズクッション、机にハンモック…ちょっとしたマガジンラックまである。
混沌とした空間だが、誰もがリラックスできそうっす。
相変わらずあちこちちょっとボロボロなのは…この二日間で正直かなり慣れたっすね。慣れってこわい。
暖炉から多少離れた場所にある、備え付けらしき適当な椅子(暖炉前が先輩とかの定位置だったりすると怖いので)に座り、ご自由にどうぞと書いてあるクッキーに手を伸ばす。
美味い、けど…なんかちょっと妙なえぐみがあるっすね。そういうモンなんだろうか。
「およ?おーい、そこの!」
そんな事を考えていると、どうやら新しく誰か来たようだ。周辺を見渡すが、声の主らしき人以外には誰もいないっすね。となると俺か。う、胃が痛くなってきた。
「…えっと、俺…っすか?」
とは言え無視するなんて選択肢を取れるハズもなく、聞き返す。
「そう、キミやキミ。見慣れん顔やし、一年やろ?」
「え、あ、はい。そうっすけど…えっと…?」
声が詰まって、何やら疑問系のようになったのを、誰なのか聞かれたと解釈したらしく、目の前の先輩らしき人は続けて言った。
「やっぱなー!この時期は誰にも授業の相談できんー!ってヤツがよう出るんや。我はそんな悩める子羊達にアドバイスして回っとる優しい先達っちゅうわけやな!」
完全に…見抜かれてるっすね……
黒い髪に赤いメッシュが入った、全体的に赤っぽい格好の先輩は、体格に似合わない軽々した動作で目の前の席に座った。
「えっと、その通りです…あの、俺、友人とか、まだその、あんまいなくて…」
「そらそんなん当たり前やがな。我かて入学してすぐはおらんかったわ。」
そう平然と言ってのけて、人好きのする笑みを浮かべる先輩。
なんか、この人こそはマトモだ。絶対。
これまでここで会ってきた人が、全員個性が強いどころの騒ぎじゃなかった(アダムさんは別だが)ので、そういう人を見分ける能力が大分身についた気がするっす。
で、そんな俺のカンが全力で言ってる。この人は絶対いい人だ。
「さあて、得意な事言うてみ?我がちゃちゃっといい感じのオススメしたるわ!」
「あ、ありがとうございます!」
「んじゃ、そうと決まれば自己紹介やな!我はアル・イズモンド、よろしゅうな!」
その勢いについ釣られ、自然と普段より少し大きな声で名乗れた。なんか、ちょっと自然に話せてた頃の事を思い出したっす。
「ほうほう、留歌君言うんか…」
そう言ってイズモンド先輩が頷いていると、また新たな陳客が訪れる。しかもこの間会ったばかりの。
「ふんふんふふーん、お菓子〜食〜べよ…って、あー!留歌先輩だー!ヤッホー!」
「ちょっと、在最、走ったら危ないよ…」
アモ・ユタリって名乗ってたっけ。でもこのまま走って行くと机にぶつかりそうなんすけど。
あ、机に手ぇついて飛び越した…けど、失敗してこけた。ついでに机も壊れている。痛そうだけど大丈夫なんだろうか。
「ああ、もう、在最ってばまた壊して…怪我はない?」
「ごめーん!かいりん直すのお願い!」
「うん、もちろん。」
後ろから追いかけているのは…同室の人なんだろうな。すごく仲も良さそうだ。振り回されて大変そうに見えるけど、その実しっかり信頼感に裏打ちされているんだろう。
しかも補修魔法、すっげぇ早いし正確っすね。手慣れてるんだろうな…
「何しとるの?って、アル先輩もいる!!仲良かったんだ!?てかあれ?今日はナキ先輩もゼダー先輩もいないの?」
「おう、アモか!今日も今日とて元気やなー!アイツらはもうすぐ来よるで?多分!!」
「多分かーい!」
いかにも知り合いらしいそんな会話をしているうちに、もう一人の補修魔法の少年が追いついて、そのまま会話に加わる。
「あ、えっと、お久しぶりです、イズモンド先輩…」
「アルでええで?海琳は相変わらずかったいのぉ!」
「かいりんはそこがかいりんなんだよー!」
あ、なんかすげぇ仲良さそうっすね…そういえば同じような方言で話してるし、入学前からの知り合いとかなのかもしれない。会話に入れる気がしない。なんて、半ば現実逃避気味に考えていると、
「あ、えっと、先輩…?」
そう言って、補修魔法の少年が声をかけてくれた。とてもありがたい。
「あー…先輩、とか、慣れねぇんで、留歌でいいっすよ。ああ、名前呼びづらかったら、苗字の星見とかでもいいんで…」
「えっと、ありがとうございます…僕は、真華竟、海琳…です…」
お互いになんだかつっかえつっかえだが、なんとか自己紹介に成功。俺、大分成長したかもしれねぇっす。
「そういえばアル先輩、なんか話してたんじゃないの?」
「おお、そやった、本題忘れとった!すまんのぉ」
あーいや、全然大丈夫っす。その、相談乗って頂けるだけでありがたいんで、なんて言いつつ授業表を広げると、途端にイズモンド先輩は真面目な顔になった。あちこちで同じような事をしている、というのは伊達じゃなかったらしい。
「ふむふむ…得意な科目ってなんや?」
「ここの授業レベル高すぎて正直あまり…あえて言うなら占いと魔法史っすかね…」
「え、占いできるの!?すごーい!じゃあじゃあ、ボクの事占ってみて!?」
いや、そんな大したモンじゃないんすよキラキラした目で見ないでくれ…そして俺ではなく机を見てほしい切実に…
しかし幸いな事に、海琳さんが止めてくれた。
「在最、困らせちゃだめだよ…ほら、力入れすぎて机歪んでる…直しとくから。」
「あ…やっちゃった、ごめん…」
あー…やべぇ、気まずい…なんで俺こんなんなんだろう…自己嫌悪しかない…
と、暗い方向に意識が向き始める。だが、
「まぁまぁ、アモも悪気あったワケやないしな。留歌君かて怒っとるのともちゃうやろ?」
せやったらこの話おしまい、どっちも気にする必要ないんとちゃうか?と、イズモンド先輩が空気を持って行った…と言うか、明るい風を全力で送り込んだ。
この人本当すげぇっすね。
「よし、ほな今度こそ本題や!」
そう先輩が言った途端、またしてもガチャリ、と談話室のドアが開く音。
「今度はなんや!?」
ドアの向こうにいたのは、目の前の先輩とよく似た青っぽい格好の人と…
入学式の日の怖い人っすねぇ!?なんでっすか!?
「あ、アル…ここにいたんだ。」
「はぁ…お前な、なんで俺を連れてくる必要があったんだ?」
「ご主人連れ出すとかいい度胸してるですね?半ドラゴン水の人!」
すまんすまん、とそう言ってけたけたと笑うイズモンド先輩。よく笑ってられるっすね。
いや、半ドラゴン水の人ってなんすか。あの青い先輩のことっすか。なんかあわあわしてますけど。
それと同時に、ゼダー先輩だー!と言って駆けていくアモさん。こっちはこっちですげぇ。
この人達、まさかこの怖い先輩とも仲がいいんだろうか。いよいよもってコミュ力バグってるっすね。
「うるさい近寄るな。」
パシリと影のお化けに弾き返され、ぎゃふ、と言いながら飛ばされるアモさん。あ、壁めり込んだ。でもピンシャンしてるっすね。
それを見てやっぱりあたふたしている青い先輩と海琳さん。
…うん、実に、というか、まさしくというか…カオスとしか言いようがないっすね。どうしたら収まるんだろう、この状況。
…うん、一旦出よう。談話室。ちょっと無理っす。
「あー、えっと…俺、とりあえず紅茶淹れてくるっす…」
そう青い先輩に伝え、俺は逃げるように談話室を後にした。幸いカップは全員分あったハズだ、なんて、現実逃避ぎみに考えながら。