【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
「ん゛ー…よく寝た…」
ってここどこっすか。見慣れない天井…って、ハーミットだった。
うへぇ部屋きったねぇ…昨日の俺、マジで一切荷解きしてねぇっすね。何してたんだ。
…あ、そうか……女子階の話し声が筒抜けとかいう深く考えない方が良さそうな状況だったから、現実逃避してさっさと寝たんだった………。
うん、思い出したくなかった。どうすりゃいいんだアレ。つーかなんなんすか。
「ま、とりあえず飯にすっか…」
そうだ、ブランにもエサやらねぇと。
白フクロウのブラン。コイツが俺の使い魔っす。
手紙なんかも届けてくれるしすごいんすよ、コイツ。
ホウホウと嬉しそうに鳴くブランをひと撫でし、鳥籠から出してやる。今日も実にかわいい。
使い魔ってのは本来喋るもんなんだが…
うん、一向に喋らないのが逆にいいんだ。なんか、落ち着くんすよね。こっちの言うこともちゃんと聞き分けてくれるし、問題もない。
「さてと、あとは俺の飯っすね…」
食堂に食いに行ってもいいんだが…昼以外は多少金がかかるらしい。素直に自炊しておくのが吉だろう。
それに、親から生活費を貰ってはいるが正直あまり頼りたくない。極めて個人的な理由かつ、勝手に俺が蟠りを感じているだけではあるんすけど。
「うーん…金策も考えるべきっすねぇ、こりゃ…」
そうは言っても幸い、家事スキルはそれなりにある。料理ぐらいなら、平気なハズだ。掃除と洗濯は…ちょっと怪しいが。
とは言っても出発前にポーションがぶ飲みしながらもどうにか固有魔法で必要な物を確認しておいたからな。
正直、大正解だった。
ま、一か月分の米と米のお供、パンと缶詰にレモンの砂糖漬け、と視えたときはさすがに効果を疑ったが、ちゃんと持ってきて良かったっす。レモンは謎だが。
「結構道具揃ってんな…お、炊飯器もあるっすね…オーブンとレンジが別々で置いてあるだと!?やべぇな…」
備え付けのカレンダーを見るに、今日の内にどこの授業を取るか大体決めて、明日から本格的に授業がスタートするらしい。んで、一か月後のテストで晴れて1人部屋卒業、っと。
つまりそれまではあまり荷解きしすぎない方が良いわけだ。もう一度トランクに詰め直すとか、正直考えたくもないっす。
さて、じゃあ米だけでもさっさと炊いて…と思ったが、なんだこれ。炊飯器がコード繋がってねぇ。最新式はワイヤレスなのか?…電源ボタンらしき所を押してもつかない。
「米は諦める、か…」
或いは、お隣さんに聞きに行くか…っすね。
無理無理無理、絶対無理っす…と普段なら思う所だろう。しかし、俺はもうすっかり白米の口になっていた。テーブルの上に出した梅干しに、チラリと目をやる。…うん、梅干し乗せて食うっす絶対。
そうだ、恐れるな俺。隣は(当たり前だが)俺と同じく一年生。
ちょっと質問するぐらいなら俺にだってできるハズだ。
なんとか話しかける。よし。人、人、人、人人人人人人人人…
部屋を軽く片付け、誰かを通せる状態にして、と。
行ける、いや、行く!
部屋を出て深呼吸。
隣のドアの前でまた深呼吸。
コツコツと軽くノックする。ガチャリ、とドアが開いて、家主がひょこりと顔だけを出した。小柄な上、長い黒髪を二つに束ねているので、一見すると女子と見違えそうだ。
「…おや?客人か。」
「あ、えっと、隣に住んでます、星見っす。星見留歌、です。」
「そうか、では星見くんは一体なんの用なんだ?」
「実は、えっと、炊飯器の使い方が…」
ああ、あれは魔導式だからな、と、いとも容易く答えた彼は、少し待っていろと言って自分の部屋に引っ込んだ。
しばらくののち出てきたが、なぜか杖を持っている。
そして、ついてこい、とだけ言って俺の部屋に入ると、その杖で軽く炊飯器を叩いた。
ブウン、と軽い駆動音がしてスイッチがつく。
「おぉ…あの、すげぇっすね。ありがとうございます。」
「礼には及ばない。知っていれば誰にでもできる事だ。最近出回り始めたから、少し調べたことがあっただけだよ。」
なかなか博識な人のようだ。
というか正直、ここで初めてまともな人に会ったかもしれない。これでもし隣までヤバい人なら、本気で俺は脱走を考えていたと思うっす。いやマジで。
「いや、えっと、その、本当に助かったっす…じゃねぇ、助かりました。えっと…?」
「ふふふ…。わたしの名前はノア。ノア・マインドだ。君とは仲良くできると信じているよ。よろしく。」
「あ、どうもっす。えっと、もしよければっすけど、ぜひよろしくお願いします。」
あ、そうだ、お礼と言ってはアレっすけど、その、良かったらレモンとかっていります?
そう言って俺が差し出した砂糖漬けの小瓶を、パチクリと眺めるノアさん。
「あ、嫌い、とかだったら全然、良いんすけど…」
「いや、そうではない。むしろ逆だ。酸っぱい物には目がないんだわたしは。」
むしろよくわたしの好物を当てたな、と思っただけだ、と笑うノアさん。
喜んでもらえて良かったっす。俺が普段食うモンじゃないし、持っていけと出た理由が完全に謎だったが、こういうわけだったんすね。
なんて考えていたら、それを見抜いたかのようにさらりと言ってのけられた。
「もしかして、固有魔法が未来視系なのか?だとしたら、なかなか面白い使い方をするじゃないか。」
ニヤリと笑うその顔が、なぜだか妙にハマっていて、こちらまで嬉しくなる。
なにせこちとら「未来が見えるなんてずるい!気持ち悪い!」ってな反応ばかり返されてきた身だ。
あれ結構心にくるんすよ。マジで。
「あ、はい。そうっすね。えっと、どうもっす。あー…酸っぱい物好きなら…その、梅干しとかの方が…良かったっすか?」
「梅干しまであるのか!じゃあお言葉に甘えて少し頂くとしよう。」
そう言って、どこかワザとらしく(多分途中から机の上の梅干しに気づいていたんだろう)うん、ご飯が炊けるのが楽しみになってきたな!とからからと笑うノアさん。良い隣人ができたものだ。
「いやしかし、隣がノアさんで助かったっす。」
「ん?何の話だ?」
「え、お隣の部屋、アンタじゃないんすか!?」
いや違うが、と平然と返され、こちらが唖然とする。いや待ってくれどう言う事っすか。理解が追いつかない。
「わたしは家から通っている。さっきあそこにいたのは…まぁ、色々あるんだわたしにも。とはいえ、まさか勘違いされているとは思わなかったが。」
色々ってなんすか。そもそもなんでこの時間帯に寮生以外の人がいるんすか。ツッコミたい事が多すぎる。
「まぁ、細かいことはいいだろう?わたしがあそこにいたおかげで、君は白米を食べる事ができるし、わたしは美味しい梅干しにありつけるんだ。」
WIN-WINで誰一人として損をしていないのなら問題はないだろう?と、にこやかに笑う彼に、どこか底知れない物を感じたのはここだけの秘密っす。
[水平線]
「うん、この梅干しはなかなかいいな。どこの物なんだ?」
「あー、それは実家から持ってきたモンで…知り合いが作ってるっす。よけりゃ一瓶持ってくっすか。」
助かるよ、なんて言いながら梅干しをもぐもぐと頬張り目を細めるノアさんに、さっきの底知れなさは見えない。本当にどこにでもいそうな人だ。
さっきのは勘違い…っすね。多分。
結構な量の梅干しをぺろりと平らげると(なぜか白米はあまり食べていなかったが)、ノアさんは軽く手を振って去っていった。
だが、その数秒後。
派手な爆発音が聞こえて、俺は思わず目を見張る。
まさか、ノアさん巻き込まれてたりしないっすよね…?炊飯器の使い方教えてもらったし、何かあったら寝覚めが悪い。そう思い、慌てて部屋を飛び出す。
爆発音は…こっちだ、多分階段の方っすね!
「ちょ、アンタ大丈夫っすか!?」
「ん?いや、何の話だ?」
「え、いや、爆発音が…」
「それはわたしの魔法だが?」
幽霊がそこにいたもんだから、ついうっかり打ってしまっただけだ、なんて平然と語る姿に、幽霊に対する恐怖は微塵も見えない。
そうは言っても、怖くなきゃ魔法なんて打たないか。
「えっと…まぁアイツら見た目血まみれだし普通に怖いし何なら悪い夢とか見そうだし……うん、まぁそんなもんっすか。あー…とにかく、無事なら良かったっす。」
「君はさっきから頓珍漢な事ばかり言っているな…一体どうしたんだ?…いや、爆破の理由が恐怖だと思ったのか?単なる学術的興味なんだが…」
え?ガクジュツテキキョウミ??
一瞬遅れて、ああ学術的興味か、と理解する。
脳内変換が遅れるぐらいには衝撃的な一言だった。
「ほら、君も見てみろ。あいつらに実体は無い、だから壁なんかもすり抜ける。だと言うのにどうも魔法は効くらしいんだ。ただ今は集まっていっているな…散らばっただけなのかはたまた…」
混乱している俺に語りかけたかと思えば、あっという間に自分の世界に沈んでいくノアさん。
ガリガリと噛んでいる爪から、血が垂れているのを見て思う。
「…やっぱり…」
「どうしたんだ?何か新たな発見でも?」
「やっぱり変人しかいないじゃないっすかココ!!!というかなんでアンタあんなグロいの相手に平然と分析してるんすか!!!!…って、あー…いやその…すんません…」
「いや別に、変人と言われる程度、全く問題はないが…」
あれは大してグロくないだろう、いやでも、うちのヒノ兄さんなら諸手を上げて全力で歓迎するかもしれないな…なんて飄々と言っているノアさん。
全然普通の人じゃなかったっすね。
あとアレを喜ぶってどんな人っすか恐怖しかない。
「そう言えば君の固有魔法についても詳しく聞いていなかったな、わたしとした事がとんだ失態だ…。よし、折角だ、今から詳しく教えてくれ!」
俺はむしろ、今すぐ家に帰りたいっす!!!!
ってここどこっすか。見慣れない天井…って、ハーミットだった。
うへぇ部屋きったねぇ…昨日の俺、マジで一切荷解きしてねぇっすね。何してたんだ。
…あ、そうか……女子階の話し声が筒抜けとかいう深く考えない方が良さそうな状況だったから、現実逃避してさっさと寝たんだった………。
うん、思い出したくなかった。どうすりゃいいんだアレ。つーかなんなんすか。
「ま、とりあえず飯にすっか…」
そうだ、ブランにもエサやらねぇと。
白フクロウのブラン。コイツが俺の使い魔っす。
手紙なんかも届けてくれるしすごいんすよ、コイツ。
ホウホウと嬉しそうに鳴くブランをひと撫でし、鳥籠から出してやる。今日も実にかわいい。
使い魔ってのは本来喋るもんなんだが…
うん、一向に喋らないのが逆にいいんだ。なんか、落ち着くんすよね。こっちの言うこともちゃんと聞き分けてくれるし、問題もない。
「さてと、あとは俺の飯っすね…」
食堂に食いに行ってもいいんだが…昼以外は多少金がかかるらしい。素直に自炊しておくのが吉だろう。
それに、親から生活費を貰ってはいるが正直あまり頼りたくない。極めて個人的な理由かつ、勝手に俺が蟠りを感じているだけではあるんすけど。
「うーん…金策も考えるべきっすねぇ、こりゃ…」
そうは言っても幸い、家事スキルはそれなりにある。料理ぐらいなら、平気なハズだ。掃除と洗濯は…ちょっと怪しいが。
とは言っても出発前にポーションがぶ飲みしながらもどうにか固有魔法で必要な物を確認しておいたからな。
正直、大正解だった。
ま、一か月分の米と米のお供、パンと缶詰にレモンの砂糖漬け、と視えたときはさすがに効果を疑ったが、ちゃんと持ってきて良かったっす。レモンは謎だが。
「結構道具揃ってんな…お、炊飯器もあるっすね…オーブンとレンジが別々で置いてあるだと!?やべぇな…」
備え付けのカレンダーを見るに、今日の内にどこの授業を取るか大体決めて、明日から本格的に授業がスタートするらしい。んで、一か月後のテストで晴れて1人部屋卒業、っと。
つまりそれまではあまり荷解きしすぎない方が良いわけだ。もう一度トランクに詰め直すとか、正直考えたくもないっす。
さて、じゃあ米だけでもさっさと炊いて…と思ったが、なんだこれ。炊飯器がコード繋がってねぇ。最新式はワイヤレスなのか?…電源ボタンらしき所を押してもつかない。
「米は諦める、か…」
或いは、お隣さんに聞きに行くか…っすね。
無理無理無理、絶対無理っす…と普段なら思う所だろう。しかし、俺はもうすっかり白米の口になっていた。テーブルの上に出した梅干しに、チラリと目をやる。…うん、梅干し乗せて食うっす絶対。
そうだ、恐れるな俺。隣は(当たり前だが)俺と同じく一年生。
ちょっと質問するぐらいなら俺にだってできるハズだ。
なんとか話しかける。よし。人、人、人、人人人人人人人人…
部屋を軽く片付け、誰かを通せる状態にして、と。
行ける、いや、行く!
部屋を出て深呼吸。
隣のドアの前でまた深呼吸。
コツコツと軽くノックする。ガチャリ、とドアが開いて、家主がひょこりと顔だけを出した。小柄な上、長い黒髪を二つに束ねているので、一見すると女子と見違えそうだ。
「…おや?客人か。」
「あ、えっと、隣に住んでます、星見っす。星見留歌、です。」
「そうか、では星見くんは一体なんの用なんだ?」
「実は、えっと、炊飯器の使い方が…」
ああ、あれは魔導式だからな、と、いとも容易く答えた彼は、少し待っていろと言って自分の部屋に引っ込んだ。
しばらくののち出てきたが、なぜか杖を持っている。
そして、ついてこい、とだけ言って俺の部屋に入ると、その杖で軽く炊飯器を叩いた。
ブウン、と軽い駆動音がしてスイッチがつく。
「おぉ…あの、すげぇっすね。ありがとうございます。」
「礼には及ばない。知っていれば誰にでもできる事だ。最近出回り始めたから、少し調べたことがあっただけだよ。」
なかなか博識な人のようだ。
というか正直、ここで初めてまともな人に会ったかもしれない。これでもし隣までヤバい人なら、本気で俺は脱走を考えていたと思うっす。いやマジで。
「いや、えっと、その、本当に助かったっす…じゃねぇ、助かりました。えっと…?」
「ふふふ…。わたしの名前はノア。ノア・マインドだ。君とは仲良くできると信じているよ。よろしく。」
「あ、どうもっす。えっと、もしよければっすけど、ぜひよろしくお願いします。」
あ、そうだ、お礼と言ってはアレっすけど、その、良かったらレモンとかっていります?
そう言って俺が差し出した砂糖漬けの小瓶を、パチクリと眺めるノアさん。
「あ、嫌い、とかだったら全然、良いんすけど…」
「いや、そうではない。むしろ逆だ。酸っぱい物には目がないんだわたしは。」
むしろよくわたしの好物を当てたな、と思っただけだ、と笑うノアさん。
喜んでもらえて良かったっす。俺が普段食うモンじゃないし、持っていけと出た理由が完全に謎だったが、こういうわけだったんすね。
なんて考えていたら、それを見抜いたかのようにさらりと言ってのけられた。
「もしかして、固有魔法が未来視系なのか?だとしたら、なかなか面白い使い方をするじゃないか。」
ニヤリと笑うその顔が、なぜだか妙にハマっていて、こちらまで嬉しくなる。
なにせこちとら「未来が見えるなんてずるい!気持ち悪い!」ってな反応ばかり返されてきた身だ。
あれ結構心にくるんすよ。マジで。
「あ、はい。そうっすね。えっと、どうもっす。あー…酸っぱい物好きなら…その、梅干しとかの方が…良かったっすか?」
「梅干しまであるのか!じゃあお言葉に甘えて少し頂くとしよう。」
そう言って、どこかワザとらしく(多分途中から机の上の梅干しに気づいていたんだろう)うん、ご飯が炊けるのが楽しみになってきたな!とからからと笑うノアさん。良い隣人ができたものだ。
「いやしかし、隣がノアさんで助かったっす。」
「ん?何の話だ?」
「え、お隣の部屋、アンタじゃないんすか!?」
いや違うが、と平然と返され、こちらが唖然とする。いや待ってくれどう言う事っすか。理解が追いつかない。
「わたしは家から通っている。さっきあそこにいたのは…まぁ、色々あるんだわたしにも。とはいえ、まさか勘違いされているとは思わなかったが。」
色々ってなんすか。そもそもなんでこの時間帯に寮生以外の人がいるんすか。ツッコミたい事が多すぎる。
「まぁ、細かいことはいいだろう?わたしがあそこにいたおかげで、君は白米を食べる事ができるし、わたしは美味しい梅干しにありつけるんだ。」
WIN-WINで誰一人として損をしていないのなら問題はないだろう?と、にこやかに笑う彼に、どこか底知れない物を感じたのはここだけの秘密っす。
[水平線]
「うん、この梅干しはなかなかいいな。どこの物なんだ?」
「あー、それは実家から持ってきたモンで…知り合いが作ってるっす。よけりゃ一瓶持ってくっすか。」
助かるよ、なんて言いながら梅干しをもぐもぐと頬張り目を細めるノアさんに、さっきの底知れなさは見えない。本当にどこにでもいそうな人だ。
さっきのは勘違い…っすね。多分。
結構な量の梅干しをぺろりと平らげると(なぜか白米はあまり食べていなかったが)、ノアさんは軽く手を振って去っていった。
だが、その数秒後。
派手な爆発音が聞こえて、俺は思わず目を見張る。
まさか、ノアさん巻き込まれてたりしないっすよね…?炊飯器の使い方教えてもらったし、何かあったら寝覚めが悪い。そう思い、慌てて部屋を飛び出す。
爆発音は…こっちだ、多分階段の方っすね!
「ちょ、アンタ大丈夫っすか!?」
「ん?いや、何の話だ?」
「え、いや、爆発音が…」
「それはわたしの魔法だが?」
幽霊がそこにいたもんだから、ついうっかり打ってしまっただけだ、なんて平然と語る姿に、幽霊に対する恐怖は微塵も見えない。
そうは言っても、怖くなきゃ魔法なんて打たないか。
「えっと…まぁアイツら見た目血まみれだし普通に怖いし何なら悪い夢とか見そうだし……うん、まぁそんなもんっすか。あー…とにかく、無事なら良かったっす。」
「君はさっきから頓珍漢な事ばかり言っているな…一体どうしたんだ?…いや、爆破の理由が恐怖だと思ったのか?単なる学術的興味なんだが…」
え?ガクジュツテキキョウミ??
一瞬遅れて、ああ学術的興味か、と理解する。
脳内変換が遅れるぐらいには衝撃的な一言だった。
「ほら、君も見てみろ。あいつらに実体は無い、だから壁なんかもすり抜ける。だと言うのにどうも魔法は効くらしいんだ。ただ今は集まっていっているな…散らばっただけなのかはたまた…」
混乱している俺に語りかけたかと思えば、あっという間に自分の世界に沈んでいくノアさん。
ガリガリと噛んでいる爪から、血が垂れているのを見て思う。
「…やっぱり…」
「どうしたんだ?何か新たな発見でも?」
「やっぱり変人しかいないじゃないっすかココ!!!というかなんでアンタあんなグロいの相手に平然と分析してるんすか!!!!…って、あー…いやその…すんません…」
「いや別に、変人と言われる程度、全く問題はないが…」
あれは大してグロくないだろう、いやでも、うちのヒノ兄さんなら諸手を上げて全力で歓迎するかもしれないな…なんて飄々と言っているノアさん。
全然普通の人じゃなかったっすね。
あとアレを喜ぶってどんな人っすか恐怖しかない。
「そう言えば君の固有魔法についても詳しく聞いていなかったな、わたしとした事がとんだ失態だ…。よし、折角だ、今から詳しく教えてくれ!」
俺はむしろ、今すぐ家に帰りたいっす!!!!