【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
「いやぁ美味かった…でも軽く食べ過ぎたかもっすね…」
いや、でもちょっとばかりっすよ。マジで。
でも、見慣れた魔法界の料理から、天界の妙にキラキラした料理に、魔界のちょっとゲテモノっぽい料理まで、ありとあらゆる皿が一堂に会していたのだ。
食った事ないモンばかり並んでいて、料理は割と好きな方だと自負している身としては食ってみなくては失礼というものだろう、と何やら訳の分からぬ理屈をつけてあれこれとつまんでしまった。
いやでも、最後にステーキ食ったのが良くなかったっすね、完全に。
ガラにもなく羽目を外してしまったが…この後は職員室行って話を聞くだけだし、問題ないハズっす。
そろそろ席もまばらになってきたし、来た時に言われた時間も近いので、職員室に向かう事にする。
ホールから出てあちこちに曲がって行くと、どうやら何人かは同じ方向に歩いていっているっぽいっす。
多分、俺と同じく最初の説明を聞きに行くんだろう。
ああ、だから時間が指定されてたんすね。まぁ、まとめて説明した方が楽に決まってる。
[水平線]
幸いにして、特に誰かに話しかけられる事もなく、職員室に到着した。
おまけに、その内一人が代表してノックしてくれたため、俺は人の字を書かずに済んだっす。正直かなり助かった。
招き入れてくれたのはさっきの副校長先生だ。
職員室の中は、貴重な素材の山また山。その上、大鍋に箒、果てはよく分からない本まである。
表紙を見て俺が分かった事はただ一つ。俺には何もわからないって事っすね。
その副校長先生は、簡単な自己紹介から始まり、この学校について詳しく説明してくれた。
結構長かったけど分かりやすくて、さすが頭いい人はちげぇな、なんて思ったっす。
なんせ、メモを取ったは良いものの、俺の字が汚いせいでメモの解読の方が大変だったっすから。
それでも一応抜粋すると、こんな感じになる。
[水平線]
①この学校は単位制である
→これは読んで字の如く。好きな授業を選んで受けて、単位が取れなかったら留年…だが、上の学年の授業を受けて単位を取得すれば、飛び級も可能。
②ひたすら授業数が多い
→好きな授業を選ぶというシステム上、とんでもなく授業数が多いらしい。希望者が多ければ新たに教師を招いて新規開講もするが、逆に希望者が少なければ閉講もあり得るらしい。
③部屋ごとの対抗
→一カ月後にテストを行い、寮を分ける。その後、まずはテストの合計点が同じになるように三人組の部屋を作る。
そこからは部屋ごとに対抗しつつ、全体で上位の成績だった部屋から夏と冬の休み後に、いい部屋を割り当てていくんだとか。
④寮ごとの対抗
→寮は全部で四つあり、スポーツ大会や魔道戦闘大会など、いろいろなイベントで寮同士の対抗戦を行う。
年間で最も優秀だった寮には、ほしい施設や授業を学校側に要求する権利が与えられるらしい。
[水平線]
うん、実力主義すぎる。魔界かここは。しかも、各々で頑張らないと同室にも迷惑がかかるシステムらしい。
まぁつまり、俺はこれから必死で授業に食らいついていかないといけないわけだ。生まれも育ちも一般人の俺が、天才たちに混じって。
話を聞き終わり、俺は早くも大量に食べた事を後悔したっす。いや、言葉を選ばずに言えば、吐き気がしてきたって事なんすけど。
「うっへぇ、早速心配になってきたよ…」
そんな声が聞こえてふと横を見ると、長い白髪をポニーテールでまとめた超弩級の…なんだろう、形容詞がかわいい以外に思いつかないっす。
エルフの血が混じっているのか、髪の間から覗く少し尖った耳が目立つ。
え、声っすか。無理無理無理、絶対無理っす。かけられるわけないっしょ。陰キャ舐めんな。
相手をじっと見るわけにもいかず、俺は咄嗟に素材の山に目を逸らした。
しかし。
目を逸らした先に、今一番見つけたくないものを見つけてしまった。
黒光りする体が目立つ、Gのつく例のアレ、っす。俺が唯一嫌いな虫。
ま、まぁ、もう話は終わっているし、近くの先生にでも声をかけてなんとかしてもらおう、そう思ったっす。
だが、甘かった。
俺がそっと立ち上がったのに反応したのか、ソイツは動いた。しかもなぜか、こちらに向かって飛んでくる。
「っいや無理無理無理!!!!Gだけはマジで無理っす!!!!!」
どうやら、反射的に風魔法を発動させてしまったらしく、敵は素材の山ごと吹き飛んだ。そのまま壁にぶち当たって跳ね返り、どこかへ飛んでいく。
そこからはもう阿鼻叫喚の地獄絵図、まさしくパンデモニウムなエンドレスバトル。
正直俺自身も、自分が何言ってるか分かってねぇっす。
部屋中に響き渡る悲鳴のうち一つは俺の声である事に気づくのでさえも時間がかかるレベルの大混乱。
それも当然か。まさしく世紀末っすね。
あ、副校長先生、落ち着きなさいって言いながらバンバンレーザー連射してるっす。全く落ち着いてねぇっすね…
でもそれより、さっきのエルフ女子のパニックっぷりがかなりヤバい。というよりまずいっす。
「いやぁぁぁぁあ!!!!虫は、虫だけはいやぁぁぁぁ!!!!!!」
なんて言いながら、壁や天井にバンバン穴を開けているが、一発一発がかなり強い。間違いなく上級魔法級っすね、これ。
正直、俺が食らったら間違いなく瀕死…というか即死だろう。
…今1人巻き込まれて倒れたっすけど、大丈夫なんすかね…?
あ、起きた。よく平然としてられるっすね。
しっかし、ハーミットの壁とか天井ぶち抜ける威力を混乱しながらかつ無詠唱で連射可能とかめちゃくちゃ強くないっすか、なんてどこか冷静な部分で考えつつも必死で逃げることに注力する。
最終的にこの大混乱を収めた功労者は、灰色の髪をポニーテールにまとめた天使の少年。敵はレーザーに焼き尽くされ、直後闇魔法で融解された。
つまり、この大混乱の中ピンポイントでヤツを射抜いたって事っすか。やべぇっすね。
というか天使って本来は闇魔法苦手なハズなんすけど。なんなんすかあの威力。
なんて俺が混乱する最中、彼はいまだパニックの名残をかき消すような落ち着き払った声でこう言った。
「だいぶ汚れちゃったな〜、片付けるか〜。」
後に、俺の同室となるヤツっす。
意外な出会い所の騒ぎじゃないっすね、全く以って。
[水平線]
少年の有無を言わせぬ雰囲気に呑まれた事や、ここにいるほぼ全員が受験入学者で、かなり魔法も魔術も使える事もあり、あれほど荒れ果てていた職員室も十分足らずで元に戻った。
俺っすか。俺は何にもできてねぇっす。マジで足手纏いでしかなかった…
片付けも終わりいざ退室となった時に、さっきの少年が先生に謝っている。
「お騒がせしちゃったな〜、先生、すいません〜。」
こんな事をいっている彼に対して思った事は、おそらくこの場の全員が一致しただろう。
一番混乱から遠い所にいたぞこの人、と。
[水平線]
さっきの一件で妙な連帯感が発生したのか、ただ仮寮の部屋分けを見にいくだけにも関わらず、向こうではだいぶ会話が弾んでいるらしい。
いや、厳密に言うと、俺だって一応、最初の内は話しかけられてはいたっす。
ただ俺が、「え、あ、はい。」とか、「あー…」とか、「そっすね。」とかしか返せなかっただけだ。
…はは、実に暗いっすね我ながら。
しかし、そんな俺にも話しかけてくれる人が現れた。素直に嬉しい。
あまりの美人すぎて、まともに顔が見られないのが唯一にして最大の問題だが。そう、さっきのエルフ女子である。
「ねぇ君、虫苦手なの?私と同じぐらいパニックしてたよね?」
「あー…いや、Gだけっす…」
「そうなんだ、私は虫全般ダメなんだよねー…もう、絶対無理!」
そう話す彼女は、ころころと鈴のように笑っているが、話しているこちらは申し訳ないが大変辛い。
明らかにオーラがキラキラしている。
正直、これ以上話していると一日のキラキラオーラ許容量を上限突破しそうでやばいっす。
本人、マジで本気でいい人だから余計に…
「あーそうだ、君、名前は?ちなみに私はノエル・アダム!よろしくねっ!」
「え、あー…星見留歌っす。っと…よろしく…お願いします。」
…なんで俺、え、とか、あー…とかしか言えないんすかね。いや、マジで。
あーでも、仮寮の部屋が書いてあるのはどうやらすぐ目の前っぽいっすね。
寮が同じになる確率は16分の1だし、この先話す事もないんだろうな…
それを思うと、ちょっと寂しい気もするっす。
[水平線]
いやむしろなんで同じなんすか。嬉しいと言えば嬉しいっすけど。
そう思いつつ、結局最後までなぜかノエルさんと話している。
「へぇ、お姉さんいるんだ!見てみたいな…」
「え、マジっすか。アイツを…わざわざ?暴君っすよ…?」
「いやいや仲良いだけで幸せだってば!」
今日の俺、なんかラッキーにも程がねぇっすか。なんでっすか。近い内に死ぬんすか俺。
なんて思いつつ、別れ道に差し掛かる。ああそうそう、ここで曲がって階段登って一番端が俺の部屋らしいっす。
「あー、えっと、それじゃ。」
「うん、じゃあね!」
しかし、階段を登り切って、部屋まで歩いていこうとしたその時。
何やら女子の声が聞こえている事に気づいてしまった。しかも、さっきのノエルさんの。
「あ、そこの素敵なお姉さーん!お茶でもどうですか!?お菓子もあるんですよー!!あ、三年なんですか!?どおりでー!!大人の魅力ー!!!」
音の方向は…多分、右。ってか、左側には俺の部屋しかない。
しかも、先輩らしき人をナンパしてるっすね。え、なんで?なんでなんすか?
「え、なんすかこれ穴でも空いてるんすか!?」
さらに、どうやらこちらの声は向こうに届いていないらしい。結構な大声だと思うが、一切反応がない。過去の好奇心旺盛な先輩が開けたかなんかしたんだろうか。
見つかったら絶対ヤバい事になる気しかしないんすけど。
…うん、眠れるドラゴンを起こすべからずってのはまさしく格言だと思うっす。実際、変に睨まれたくないし。
そう思った俺は、ひとまず何も考えずに寝る事にした。一切荷解きしてないから部屋めちゃくちゃっすけど、気にしない事にするっす。
いや、でもちょっとばかりっすよ。マジで。
でも、見慣れた魔法界の料理から、天界の妙にキラキラした料理に、魔界のちょっとゲテモノっぽい料理まで、ありとあらゆる皿が一堂に会していたのだ。
食った事ないモンばかり並んでいて、料理は割と好きな方だと自負している身としては食ってみなくては失礼というものだろう、と何やら訳の分からぬ理屈をつけてあれこれとつまんでしまった。
いやでも、最後にステーキ食ったのが良くなかったっすね、完全に。
ガラにもなく羽目を外してしまったが…この後は職員室行って話を聞くだけだし、問題ないハズっす。
そろそろ席もまばらになってきたし、来た時に言われた時間も近いので、職員室に向かう事にする。
ホールから出てあちこちに曲がって行くと、どうやら何人かは同じ方向に歩いていっているっぽいっす。
多分、俺と同じく最初の説明を聞きに行くんだろう。
ああ、だから時間が指定されてたんすね。まぁ、まとめて説明した方が楽に決まってる。
[水平線]
幸いにして、特に誰かに話しかけられる事もなく、職員室に到着した。
おまけに、その内一人が代表してノックしてくれたため、俺は人の字を書かずに済んだっす。正直かなり助かった。
招き入れてくれたのはさっきの副校長先生だ。
職員室の中は、貴重な素材の山また山。その上、大鍋に箒、果てはよく分からない本まである。
表紙を見て俺が分かった事はただ一つ。俺には何もわからないって事っすね。
その副校長先生は、簡単な自己紹介から始まり、この学校について詳しく説明してくれた。
結構長かったけど分かりやすくて、さすが頭いい人はちげぇな、なんて思ったっす。
なんせ、メモを取ったは良いものの、俺の字が汚いせいでメモの解読の方が大変だったっすから。
それでも一応抜粋すると、こんな感じになる。
[水平線]
①この学校は単位制である
→これは読んで字の如く。好きな授業を選んで受けて、単位が取れなかったら留年…だが、上の学年の授業を受けて単位を取得すれば、飛び級も可能。
②ひたすら授業数が多い
→好きな授業を選ぶというシステム上、とんでもなく授業数が多いらしい。希望者が多ければ新たに教師を招いて新規開講もするが、逆に希望者が少なければ閉講もあり得るらしい。
③部屋ごとの対抗
→一カ月後にテストを行い、寮を分ける。その後、まずはテストの合計点が同じになるように三人組の部屋を作る。
そこからは部屋ごとに対抗しつつ、全体で上位の成績だった部屋から夏と冬の休み後に、いい部屋を割り当てていくんだとか。
④寮ごとの対抗
→寮は全部で四つあり、スポーツ大会や魔道戦闘大会など、いろいろなイベントで寮同士の対抗戦を行う。
年間で最も優秀だった寮には、ほしい施設や授業を学校側に要求する権利が与えられるらしい。
[水平線]
うん、実力主義すぎる。魔界かここは。しかも、各々で頑張らないと同室にも迷惑がかかるシステムらしい。
まぁつまり、俺はこれから必死で授業に食らいついていかないといけないわけだ。生まれも育ちも一般人の俺が、天才たちに混じって。
話を聞き終わり、俺は早くも大量に食べた事を後悔したっす。いや、言葉を選ばずに言えば、吐き気がしてきたって事なんすけど。
「うっへぇ、早速心配になってきたよ…」
そんな声が聞こえてふと横を見ると、長い白髪をポニーテールでまとめた超弩級の…なんだろう、形容詞がかわいい以外に思いつかないっす。
エルフの血が混じっているのか、髪の間から覗く少し尖った耳が目立つ。
え、声っすか。無理無理無理、絶対無理っす。かけられるわけないっしょ。陰キャ舐めんな。
相手をじっと見るわけにもいかず、俺は咄嗟に素材の山に目を逸らした。
しかし。
目を逸らした先に、今一番見つけたくないものを見つけてしまった。
黒光りする体が目立つ、Gのつく例のアレ、っす。俺が唯一嫌いな虫。
ま、まぁ、もう話は終わっているし、近くの先生にでも声をかけてなんとかしてもらおう、そう思ったっす。
だが、甘かった。
俺がそっと立ち上がったのに反応したのか、ソイツは動いた。しかもなぜか、こちらに向かって飛んでくる。
「っいや無理無理無理!!!!Gだけはマジで無理っす!!!!!」
どうやら、反射的に風魔法を発動させてしまったらしく、敵は素材の山ごと吹き飛んだ。そのまま壁にぶち当たって跳ね返り、どこかへ飛んでいく。
そこからはもう阿鼻叫喚の地獄絵図、まさしくパンデモニウムなエンドレスバトル。
正直俺自身も、自分が何言ってるか分かってねぇっす。
部屋中に響き渡る悲鳴のうち一つは俺の声である事に気づくのでさえも時間がかかるレベルの大混乱。
それも当然か。まさしく世紀末っすね。
あ、副校長先生、落ち着きなさいって言いながらバンバンレーザー連射してるっす。全く落ち着いてねぇっすね…
でもそれより、さっきのエルフ女子のパニックっぷりがかなりヤバい。というよりまずいっす。
「いやぁぁぁぁあ!!!!虫は、虫だけはいやぁぁぁぁ!!!!!!」
なんて言いながら、壁や天井にバンバン穴を開けているが、一発一発がかなり強い。間違いなく上級魔法級っすね、これ。
正直、俺が食らったら間違いなく瀕死…というか即死だろう。
…今1人巻き込まれて倒れたっすけど、大丈夫なんすかね…?
あ、起きた。よく平然としてられるっすね。
しっかし、ハーミットの壁とか天井ぶち抜ける威力を混乱しながらかつ無詠唱で連射可能とかめちゃくちゃ強くないっすか、なんてどこか冷静な部分で考えつつも必死で逃げることに注力する。
最終的にこの大混乱を収めた功労者は、灰色の髪をポニーテールにまとめた天使の少年。敵はレーザーに焼き尽くされ、直後闇魔法で融解された。
つまり、この大混乱の中ピンポイントでヤツを射抜いたって事っすか。やべぇっすね。
というか天使って本来は闇魔法苦手なハズなんすけど。なんなんすかあの威力。
なんて俺が混乱する最中、彼はいまだパニックの名残をかき消すような落ち着き払った声でこう言った。
「だいぶ汚れちゃったな〜、片付けるか〜。」
後に、俺の同室となるヤツっす。
意外な出会い所の騒ぎじゃないっすね、全く以って。
[水平線]
少年の有無を言わせぬ雰囲気に呑まれた事や、ここにいるほぼ全員が受験入学者で、かなり魔法も魔術も使える事もあり、あれほど荒れ果てていた職員室も十分足らずで元に戻った。
俺っすか。俺は何にもできてねぇっす。マジで足手纏いでしかなかった…
片付けも終わりいざ退室となった時に、さっきの少年が先生に謝っている。
「お騒がせしちゃったな〜、先生、すいません〜。」
こんな事をいっている彼に対して思った事は、おそらくこの場の全員が一致しただろう。
一番混乱から遠い所にいたぞこの人、と。
[水平線]
さっきの一件で妙な連帯感が発生したのか、ただ仮寮の部屋分けを見にいくだけにも関わらず、向こうではだいぶ会話が弾んでいるらしい。
いや、厳密に言うと、俺だって一応、最初の内は話しかけられてはいたっす。
ただ俺が、「え、あ、はい。」とか、「あー…」とか、「そっすね。」とかしか返せなかっただけだ。
…はは、実に暗いっすね我ながら。
しかし、そんな俺にも話しかけてくれる人が現れた。素直に嬉しい。
あまりの美人すぎて、まともに顔が見られないのが唯一にして最大の問題だが。そう、さっきのエルフ女子である。
「ねぇ君、虫苦手なの?私と同じぐらいパニックしてたよね?」
「あー…いや、Gだけっす…」
「そうなんだ、私は虫全般ダメなんだよねー…もう、絶対無理!」
そう話す彼女は、ころころと鈴のように笑っているが、話しているこちらは申し訳ないが大変辛い。
明らかにオーラがキラキラしている。
正直、これ以上話していると一日のキラキラオーラ許容量を上限突破しそうでやばいっす。
本人、マジで本気でいい人だから余計に…
「あーそうだ、君、名前は?ちなみに私はノエル・アダム!よろしくねっ!」
「え、あー…星見留歌っす。っと…よろしく…お願いします。」
…なんで俺、え、とか、あー…とかしか言えないんすかね。いや、マジで。
あーでも、仮寮の部屋が書いてあるのはどうやらすぐ目の前っぽいっすね。
寮が同じになる確率は16分の1だし、この先話す事もないんだろうな…
それを思うと、ちょっと寂しい気もするっす。
[水平線]
いやむしろなんで同じなんすか。嬉しいと言えば嬉しいっすけど。
そう思いつつ、結局最後までなぜかノエルさんと話している。
「へぇ、お姉さんいるんだ!見てみたいな…」
「え、マジっすか。アイツを…わざわざ?暴君っすよ…?」
「いやいや仲良いだけで幸せだってば!」
今日の俺、なんかラッキーにも程がねぇっすか。なんでっすか。近い内に死ぬんすか俺。
なんて思いつつ、別れ道に差し掛かる。ああそうそう、ここで曲がって階段登って一番端が俺の部屋らしいっす。
「あー、えっと、それじゃ。」
「うん、じゃあね!」
しかし、階段を登り切って、部屋まで歩いていこうとしたその時。
何やら女子の声が聞こえている事に気づいてしまった。しかも、さっきのノエルさんの。
「あ、そこの素敵なお姉さーん!お茶でもどうですか!?お菓子もあるんですよー!!あ、三年なんですか!?どおりでー!!大人の魅力ー!!!」
音の方向は…多分、右。ってか、左側には俺の部屋しかない。
しかも、先輩らしき人をナンパしてるっすね。え、なんで?なんでなんすか?
「え、なんすかこれ穴でも空いてるんすか!?」
さらに、どうやらこちらの声は向こうに届いていないらしい。結構な大声だと思うが、一切反応がない。過去の好奇心旺盛な先輩が開けたかなんかしたんだろうか。
見つかったら絶対ヤバい事になる気しかしないんすけど。
…うん、眠れるドラゴンを起こすべからずってのはまさしく格言だと思うっす。実際、変に睨まれたくないし。
そう思った俺は、ひとまず何も考えずに寝る事にした。一切荷解きしてないから部屋めちゃくちゃっすけど、気にしない事にするっす。