【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
もうもうとした土煙の向こうに、悠然と立つ二人分の人影。
「ま、それはそうだよな〜…」
当然だと納得するかのような灰さんの声が上空から聞こえる。
それもそのハズだ。
互いに手の内を見せ合ってその威力を目の当たりにした以上、ここからは多分、不用意には動けねぇっす。
警戒すんのも無理はねぇっつーか…まさしく、膠着状態ってヤツっすね。
とはいえそれもそう長くは続かず、そこで灰さんが魔術の詠唱を始めた。一言だけの簡易版じゃないって事は、灰さんはココで決める気らしいっす。
それに気づいたルース先輩が、さっと刀を抜いて切り掛かってくる。
「いやいや、アレ対応しきれねぇっすよ俺!!」
「灰は今、動けないし…ぼくがなんとかするしかない?でも今ちょっと手、離せないんだけど…」
マズい、絶対絶命っすかねコレ…
って、え?
ルース先輩の足が止まって飛び退った。
…そのまま数歩、後ろに引いたっすね。ひとまず一息はつけるっすけど…
「誰だ?私の足を…掴もうとした、のか?」
いやいやいや、どういう状況っすか!?
とはいえ、考えられるのは第三者の攻撃ぐらいっすか…
いやこの状況で更に!?手一杯っすよ無理っすよ!?
「ほう、カンはええみたいやな。」
「君は…!全く、厄介な相手に目をつけられたね。」
そこに現れたのは、先程の灰さんが出走した障害物競争で見事に一位を取っていた、三年の炉山満夜先輩。
しかも、炉山先輩の周りを覆うように操られた植物が生えてきてるっすね…
これ、もしかしなくとも完全にヤバい状況なんじゃ…
「首席が出張ってくれば警戒するのも無理はないですね…こちらへの意識が、少々お留守みたいですけど。」
もし死んでも、知りませんよ?
朱肉さんがそう言うが早いか、あっという間すらなくこちらを襲う、大規模な範囲攻撃。
って、こっちも植物系っすか!?!?
「絞め殺せ、【[漢字]木々の目覚め[/漢字][ふりがな]グリムゾーン・グリードバイド[/ふりがな]】。すいませんが、手段は選んでられないので。」
猛然と襲いかかる枝、枝、枝。あっという間に俺達を取り囲んで首を絞めようとしてくる。
払っても払ってもキリがねぇっすね、どうなってんすか一体…
『おっと。ここに来て生階朱肉選手、大規模な攻撃だね。』
『攻撃の起点、緋勇灰選手を分断しようとしてんだろうな!!いや、よく考えるモンだなァ!』
…コレ、かなりマズいっすね!?
ここまで大規模だと柚月さんの方にも影響が出るっすよ、絶対に…
ひとまず氷で防いで…いや、初級魔法程度じゃ防げそうもねぇっす。
どうすればいい、考えろ考えろ考えろ…いやそもそも、俺程度でなんとかできるんすかねコレ!?
「もう大丈夫。準備、整ったよ!」
頼もしい声が後ろから響く。
俺たちのチームの秘密兵器、柚月さんの声っすね。と、なると一旦後ろに引いて…
「最大音量、【竜巻】!」
「っぐぁ!」
ようやく完成したギターアンプから飛び出した音波は、見る間に木々を根こそぎに壊していくっす。
炉山先輩もモロに食らったらしく、吹っ飛んだ先で動きを止めてるっす。
やった、っすかね!!
「っく…厄介ですね!木だと壊される、【青薔薇】で…」
「いいや、さっきの音波で私の剣も壊れそうだし一旦体制を立て直そう。」
ここでの勝ちにこだわる必要も別段ないし、満夜の標的は彼らのようだから、とルース先輩は続けて言っている。納得したかのように頷いた朱肉さんも、柚月さんの音波を木々で塞ぎながら数秒とせずターゲットをヨソに移したっす。
…待てよ?
何かがおかしい、何かが。さっきの、ルース先輩のセリフ…
そうだ、炉山先輩は今、あっちで気絶してたハズっす。
けど、今俺たちを狙ってる、みたいな事を……
「【死操人間】…甘いな。油断は禁物やで。」
「っ、留歌!大丈夫か〜!」
一瞬、そう思って考え込んじまった。
その隙に未来視が切れて、かなり反応が遅れたっす。
灰さんの慌てたような声が上から聞こえる。そんで、首元には木の感触。瞬きする間も、抵抗する間もなく、完全に縛り上げられちまったっすね。
「…なん、で…」
「ほなまぁ教えたる。詳しくは説明せぇへんけど、あっちで気絶しとると君が勘違いしたんは、僕の固有魔法で作った幻覚や。」
そんなんアリっすか!?
けど今のコレは確実にマズイ状況、それだけは分かる。あまりにも灰さんが立てた作戦が上手く行きすぎたから、ちっとばかし油断しちまったっすね…
後ろから詠唱が聞こえる、でも振り向けねぇ。
なんなら、完全に身動きが取れねぇっす。
「あんましこういう事したくないんやけど…君には悪いが、ここで退場してもらうで。」
そう言った炉山先輩は、俺を縛りつけている木を操って、そのまま場外まで投げ出した。
高ぇし怖ぇしスピードやべぇっす、しかもまだ木がくっついてるから動けねぇ!このまま行くと確実に場外っすね…
けど俺は炎魔法は対して使えねぇ…この状況じゃ、この木に対して有効打は打てねぇっす。かなり、いや、もうどうしようもないぐらいマズいっす。
「…すんません、コレ多分逃げんの無理っす!やっぱ、足引っ張っちまったっすね……」
そうルームメイト二人に声を掛けつつも、目の前まで迫り来る地面との衝撃に向け、せめてもの抵抗として身を固くした。
その、次の瞬間。
「いいや〜。甘いのは、そっちだったみたいだな〜?【傀儡】!」
そう唱える灰さんの声に応えるように、ふわりと体が浮いた。いや、どうなってんすか一体全体!?!?
しかし、俺の体はそのまま、俺の意思も、もちろん枝を操る炉山先輩の意思も無視して、場内に引き戻されてくっす。体を誰かに操作されてるみたいな…ふわふわしたっつーか、むしろ若干気持ち悪い感覚っすね、なんすかコレ!?
「君、今何しよったんや?僕の魔法あっさり無視して動かすなんて、普通ありえへんで。」
「さぁな〜?俺にも切り札ぐらいある、ってだけの事だろ〜?」
そんな二人の探り合いを尻目に、俺はそのまま場内に戻されていくっす。
そんでどうも、戻る時の軌道は灰さんの真横を掠めるようになってるっぽいっすね。通った途端、手早く枝を燃やされた。そのまま地面に降ろされると、あのよく分からない感覚が無くなる。いやマジでなんだったんすかアレ!?
まだなんや色々と隠しとりそうやな……と、ポツリと呟いた炉山先輩。
その直後、ふわりと飛行魔法を発動させ、灰さんの目の前まで上がっていく。
「手の内全部、僕が暴いたるわ。」
「じゃあ俺は、さっきのお礼参りと行かせてもらうぞ〜?」
互いに一瞥した後始まったのは、超高度な魔法や魔術の撃ち合い。
お互いに相殺しあってはいるが、当たればそれこそ体ごと消し飛びそうなシロモノっす。
最も、魔力が高けりゃその分神秘のこもった攻撃に対する抵抗力も上がるらしいんで、あの二人なら問題はないのかもしんねぇっすけど。
いやでも、俺なんかだと余波だけで吹っ飛びそうっすね、マジで…
ただ見たところ、二人は完全に互角って感じっす。
炉山先輩が操る植物は、灰さんに触れる前にドンドンと燃やされていく。だがその一方で、灰さんが放つ闇を固めたようなレーザーも植物に阻まれて、完全な有効打には至らねぇ。
「ここまでやれるヤツ、久々に会ったわ!嬉しいなぁ!」
「そうだな〜!このまま場外にでも吹っ飛んでくれれば、もっと嬉しいぞ〜!」
すげぇ、強ぇ……
って、そうだ、柚月さんの加勢行かねぇと!
いや、俺が行ったってどうにかなるとも正直思えねぇっすけど…
なんなら足手纏いな気しかしねぇっすけど……
いやいやいや、頑張れっす俺、そこはなんかちゃんと見ながら動けば……
そう思って周りを見渡すと、当たれば…いや、掠めただけでも明らかに死にそうな上級の魔道の撃ち合い。
…いや、やっぱ無理っす!!
「留歌〜?百面相してないで、柚月の方行ってくれ〜!」
「は、ハイ!了解っす!!」
どうにかこうにか覚悟を決めて、広い場内を走りながら柚月さんを探す。確か、最後に見た段階ではノエルさんも一緒にいたような…
そう考えつつ辺りを見渡す。途中何人かに襲われたが、ソレもどうにかギリギリで躱わしつつ、相手同士で当たるように未来を見て逃げる方向を決めていく。
正直俺自身に攻撃力は皆無なんで、身の程弁えて攻撃などせず、フレンドリーファイヤの誘発を狙うしかない。
よし、この調子なら、俺なんかでも走って探すぐらいはできそうっすね…
「あ、いた!留歌ー!こっちだよ!」
「あの先輩、すっごく強いんだよね!一緒に戦お!」
良かった、合流できたっす。けどどうも、この二人も交戦中らしいっすね。
柚月さんに教えられて向こうを見てみると、黒髪に赤色のメッシュが入った天然パーマの先輩が、星の形の使い魔に乗っかってちょうどこちらに戻って来る所っす。
今にも吸い込まれそうな、宇宙のような目をめんどくさそうに閉じながら。
「おい何すんだよ、いてぇだろ…」
「嘘でしょ…結構飛ばしたと思ったのに……」
驚いたような柚月さんの顔もそこそこに、軽く頭を掻きつつ先輩は目の前を通り過ぎていくっす。
「ちょっと、逃げる気!?ここまでやっといて!?」
その直後、驚いたような不満気なような、なんとも形容し難い声を上げたノエルさんが使い魔の星の、とんがった先端の部分をむんずと掴んだ。
そんで…そのまま逃げられないように、思い切り地面に叩きつけたっす。意外と武闘派だった。怖い。
まぁ最も、叩きつけられた当人は相変わらず平然としてるっすけど。
なんならぼんやり空中を眺めてるっすけど。
「あーあ、めんどくせ。見逃してやるから、さっさと帰ればいいだろ?」
そうぶっきらぼうに言い放った先輩に少しばかり挑発されたのか、ノエルさんは不満げな表情だ。
「それ、なんかムカつくんですけど!?」
え、あ、ちょ、ノエル…さん?
「もう怒った、格下だと思ってナメてるなら後悔させてあげる!誰だか知らないけど!」
「そうだね、ぼくも…頑張るよ。誰だか、知らないけど!」
柚月さんまで!?
いやまぁ、この二人ならなんとかなると思うっすけど…俺は?絶対死ぬっすよコレ。
けど、見捨てて俺だけ逃げて良いかっつーとそんなハズもねぇんすよね……
「ほら、留歌も。魔力が足りないなら、ポーション飲んで!」
「そうだよ留歌!私達舐められてるんだよ、悔しくないの?」
そう駆り立てる二人の声に後を押され、その先輩との戦闘に突入する事になってしまった。
…とりあえず、全力でサポートに回らせてもらうっす。攻撃力なんて無いし。
「ま、それはそうだよな〜…」
当然だと納得するかのような灰さんの声が上空から聞こえる。
それもそのハズだ。
互いに手の内を見せ合ってその威力を目の当たりにした以上、ここからは多分、不用意には動けねぇっす。
警戒すんのも無理はねぇっつーか…まさしく、膠着状態ってヤツっすね。
とはいえそれもそう長くは続かず、そこで灰さんが魔術の詠唱を始めた。一言だけの簡易版じゃないって事は、灰さんはココで決める気らしいっす。
それに気づいたルース先輩が、さっと刀を抜いて切り掛かってくる。
「いやいや、アレ対応しきれねぇっすよ俺!!」
「灰は今、動けないし…ぼくがなんとかするしかない?でも今ちょっと手、離せないんだけど…」
マズい、絶対絶命っすかねコレ…
って、え?
ルース先輩の足が止まって飛び退った。
…そのまま数歩、後ろに引いたっすね。ひとまず一息はつけるっすけど…
「誰だ?私の足を…掴もうとした、のか?」
いやいやいや、どういう状況っすか!?
とはいえ、考えられるのは第三者の攻撃ぐらいっすか…
いやこの状況で更に!?手一杯っすよ無理っすよ!?
「ほう、カンはええみたいやな。」
「君は…!全く、厄介な相手に目をつけられたね。」
そこに現れたのは、先程の灰さんが出走した障害物競争で見事に一位を取っていた、三年の炉山満夜先輩。
しかも、炉山先輩の周りを覆うように操られた植物が生えてきてるっすね…
これ、もしかしなくとも完全にヤバい状況なんじゃ…
「首席が出張ってくれば警戒するのも無理はないですね…こちらへの意識が、少々お留守みたいですけど。」
もし死んでも、知りませんよ?
朱肉さんがそう言うが早いか、あっという間すらなくこちらを襲う、大規模な範囲攻撃。
って、こっちも植物系っすか!?!?
「絞め殺せ、【[漢字]木々の目覚め[/漢字][ふりがな]グリムゾーン・グリードバイド[/ふりがな]】。すいませんが、手段は選んでられないので。」
猛然と襲いかかる枝、枝、枝。あっという間に俺達を取り囲んで首を絞めようとしてくる。
払っても払ってもキリがねぇっすね、どうなってんすか一体…
『おっと。ここに来て生階朱肉選手、大規模な攻撃だね。』
『攻撃の起点、緋勇灰選手を分断しようとしてんだろうな!!いや、よく考えるモンだなァ!』
…コレ、かなりマズいっすね!?
ここまで大規模だと柚月さんの方にも影響が出るっすよ、絶対に…
ひとまず氷で防いで…いや、初級魔法程度じゃ防げそうもねぇっす。
どうすればいい、考えろ考えろ考えろ…いやそもそも、俺程度でなんとかできるんすかねコレ!?
「もう大丈夫。準備、整ったよ!」
頼もしい声が後ろから響く。
俺たちのチームの秘密兵器、柚月さんの声っすね。と、なると一旦後ろに引いて…
「最大音量、【竜巻】!」
「っぐぁ!」
ようやく完成したギターアンプから飛び出した音波は、見る間に木々を根こそぎに壊していくっす。
炉山先輩もモロに食らったらしく、吹っ飛んだ先で動きを止めてるっす。
やった、っすかね!!
「っく…厄介ですね!木だと壊される、【青薔薇】で…」
「いいや、さっきの音波で私の剣も壊れそうだし一旦体制を立て直そう。」
ここでの勝ちにこだわる必要も別段ないし、満夜の標的は彼らのようだから、とルース先輩は続けて言っている。納得したかのように頷いた朱肉さんも、柚月さんの音波を木々で塞ぎながら数秒とせずターゲットをヨソに移したっす。
…待てよ?
何かがおかしい、何かが。さっきの、ルース先輩のセリフ…
そうだ、炉山先輩は今、あっちで気絶してたハズっす。
けど、今俺たちを狙ってる、みたいな事を……
「【死操人間】…甘いな。油断は禁物やで。」
「っ、留歌!大丈夫か〜!」
一瞬、そう思って考え込んじまった。
その隙に未来視が切れて、かなり反応が遅れたっす。
灰さんの慌てたような声が上から聞こえる。そんで、首元には木の感触。瞬きする間も、抵抗する間もなく、完全に縛り上げられちまったっすね。
「…なん、で…」
「ほなまぁ教えたる。詳しくは説明せぇへんけど、あっちで気絶しとると君が勘違いしたんは、僕の固有魔法で作った幻覚や。」
そんなんアリっすか!?
けど今のコレは確実にマズイ状況、それだけは分かる。あまりにも灰さんが立てた作戦が上手く行きすぎたから、ちっとばかし油断しちまったっすね…
後ろから詠唱が聞こえる、でも振り向けねぇ。
なんなら、完全に身動きが取れねぇっす。
「あんましこういう事したくないんやけど…君には悪いが、ここで退場してもらうで。」
そう言った炉山先輩は、俺を縛りつけている木を操って、そのまま場外まで投げ出した。
高ぇし怖ぇしスピードやべぇっす、しかもまだ木がくっついてるから動けねぇ!このまま行くと確実に場外っすね…
けど俺は炎魔法は対して使えねぇ…この状況じゃ、この木に対して有効打は打てねぇっす。かなり、いや、もうどうしようもないぐらいマズいっす。
「…すんません、コレ多分逃げんの無理っす!やっぱ、足引っ張っちまったっすね……」
そうルームメイト二人に声を掛けつつも、目の前まで迫り来る地面との衝撃に向け、せめてもの抵抗として身を固くした。
その、次の瞬間。
「いいや〜。甘いのは、そっちだったみたいだな〜?【傀儡】!」
そう唱える灰さんの声に応えるように、ふわりと体が浮いた。いや、どうなってんすか一体全体!?!?
しかし、俺の体はそのまま、俺の意思も、もちろん枝を操る炉山先輩の意思も無視して、場内に引き戻されてくっす。体を誰かに操作されてるみたいな…ふわふわしたっつーか、むしろ若干気持ち悪い感覚っすね、なんすかコレ!?
「君、今何しよったんや?僕の魔法あっさり無視して動かすなんて、普通ありえへんで。」
「さぁな〜?俺にも切り札ぐらいある、ってだけの事だろ〜?」
そんな二人の探り合いを尻目に、俺はそのまま場内に戻されていくっす。
そんでどうも、戻る時の軌道は灰さんの真横を掠めるようになってるっぽいっすね。通った途端、手早く枝を燃やされた。そのまま地面に降ろされると、あのよく分からない感覚が無くなる。いやマジでなんだったんすかアレ!?
まだなんや色々と隠しとりそうやな……と、ポツリと呟いた炉山先輩。
その直後、ふわりと飛行魔法を発動させ、灰さんの目の前まで上がっていく。
「手の内全部、僕が暴いたるわ。」
「じゃあ俺は、さっきのお礼参りと行かせてもらうぞ〜?」
互いに一瞥した後始まったのは、超高度な魔法や魔術の撃ち合い。
お互いに相殺しあってはいるが、当たればそれこそ体ごと消し飛びそうなシロモノっす。
最も、魔力が高けりゃその分神秘のこもった攻撃に対する抵抗力も上がるらしいんで、あの二人なら問題はないのかもしんねぇっすけど。
いやでも、俺なんかだと余波だけで吹っ飛びそうっすね、マジで…
ただ見たところ、二人は完全に互角って感じっす。
炉山先輩が操る植物は、灰さんに触れる前にドンドンと燃やされていく。だがその一方で、灰さんが放つ闇を固めたようなレーザーも植物に阻まれて、完全な有効打には至らねぇ。
「ここまでやれるヤツ、久々に会ったわ!嬉しいなぁ!」
「そうだな〜!このまま場外にでも吹っ飛んでくれれば、もっと嬉しいぞ〜!」
すげぇ、強ぇ……
って、そうだ、柚月さんの加勢行かねぇと!
いや、俺が行ったってどうにかなるとも正直思えねぇっすけど…
なんなら足手纏いな気しかしねぇっすけど……
いやいやいや、頑張れっす俺、そこはなんかちゃんと見ながら動けば……
そう思って周りを見渡すと、当たれば…いや、掠めただけでも明らかに死にそうな上級の魔道の撃ち合い。
…いや、やっぱ無理っす!!
「留歌〜?百面相してないで、柚月の方行ってくれ〜!」
「は、ハイ!了解っす!!」
どうにかこうにか覚悟を決めて、広い場内を走りながら柚月さんを探す。確か、最後に見た段階ではノエルさんも一緒にいたような…
そう考えつつ辺りを見渡す。途中何人かに襲われたが、ソレもどうにかギリギリで躱わしつつ、相手同士で当たるように未来を見て逃げる方向を決めていく。
正直俺自身に攻撃力は皆無なんで、身の程弁えて攻撃などせず、フレンドリーファイヤの誘発を狙うしかない。
よし、この調子なら、俺なんかでも走って探すぐらいはできそうっすね…
「あ、いた!留歌ー!こっちだよ!」
「あの先輩、すっごく強いんだよね!一緒に戦お!」
良かった、合流できたっす。けどどうも、この二人も交戦中らしいっすね。
柚月さんに教えられて向こうを見てみると、黒髪に赤色のメッシュが入った天然パーマの先輩が、星の形の使い魔に乗っかってちょうどこちらに戻って来る所っす。
今にも吸い込まれそうな、宇宙のような目をめんどくさそうに閉じながら。
「おい何すんだよ、いてぇだろ…」
「嘘でしょ…結構飛ばしたと思ったのに……」
驚いたような柚月さんの顔もそこそこに、軽く頭を掻きつつ先輩は目の前を通り過ぎていくっす。
「ちょっと、逃げる気!?ここまでやっといて!?」
その直後、驚いたような不満気なような、なんとも形容し難い声を上げたノエルさんが使い魔の星の、とんがった先端の部分をむんずと掴んだ。
そんで…そのまま逃げられないように、思い切り地面に叩きつけたっす。意外と武闘派だった。怖い。
まぁ最も、叩きつけられた当人は相変わらず平然としてるっすけど。
なんならぼんやり空中を眺めてるっすけど。
「あーあ、めんどくせ。見逃してやるから、さっさと帰ればいいだろ?」
そうぶっきらぼうに言い放った先輩に少しばかり挑発されたのか、ノエルさんは不満げな表情だ。
「それ、なんかムカつくんですけど!?」
え、あ、ちょ、ノエル…さん?
「もう怒った、格下だと思ってナメてるなら後悔させてあげる!誰だか知らないけど!」
「そうだね、ぼくも…頑張るよ。誰だか、知らないけど!」
柚月さんまで!?
いやまぁ、この二人ならなんとかなると思うっすけど…俺は?絶対死ぬっすよコレ。
けど、見捨てて俺だけ逃げて良いかっつーとそんなハズもねぇんすよね……
「ほら、留歌も。魔力が足りないなら、ポーション飲んで!」
「そうだよ留歌!私達舐められてるんだよ、悔しくないの?」
そう駆り立てる二人の声に後を押され、その先輩との戦闘に突入する事になってしまった。
…とりあえず、全力でサポートに回らせてもらうっす。攻撃力なんて無いし。