【参加型】ハーミット魔道学園は今日も事件だらけのようです。
六月に入り、学校全体の雰囲気もかなり落ち着いてきた。
今日は談話室でゆっくり漫画でも、と思い、同室二人と階下に降りていった時の事だ。
「「「魔道祭のお知らせ…?」」」
談話室の掲示板にある張り紙を見て絶句する。横の二人…柚月さんと灰さん…も、心なしかきょとんとしているようだ。
「なんなんだ、これ〜?」
「ぼくにも分からないな…あ、でも下に、説明書いてあるよ。」
コレ、アレっすか。魔法とか魔術バンバン撃ち合って戦う、みたいなアレっすか。
いや無理無理無理、絶対無理っすよ!?死ぬ未来しか見えねぇ。わざわざ固有魔法で未来視しなくても分かるっす。俺なんかじゃ絶対死んじまう。
「…なるほどな〜。って、留歌?聞いてるのか〜?」
「っ!!なんすか!?」
目の前で手を振られてようやく気づく。
やべぇ、何にも聞いてなかった…見事にやっちまったっすね…
「ほら見て、同じ部屋とかで三人一組を作って、中等部と合同で魔道戦するんだって。」
「でも、詳しいルールは書いてないな〜。」
…本当っすね。しかし、対策とかもできないとなると…やっぱ死ぬんじゃねぇっすかね、俺。
「去年もやってたんすかね、コレ…」
「そうなのかもね。ぼくらは全員高等部からだけど…」
そう言いながら、柚月さんは首を傾げている。その言葉を引き継ぐような形で灰さんが口を開いた。
「その前から入ってればお決まりの行事、って事なのか〜?」
確かに、そういう事なら納得だ。結局俺たちは一切準備ができないのは変わってねぇっすけど。
「あ、じゃあぼく…教えてくれそうな人に、心当たりあるよ。一学年上だけど、結構仲良いんだ。」
「そうなんすか?助かるっす。」
顔、広そうなタイプっすもんね。この人の知り合いならきっとさぞかしいい人なんだろう。
[水平線]
「やぁ、私の名前はヒノ・マインドだよ。」
「ひぃぃぃ出たぁ!?って、あーいや、違、いやその、すんませんすんませんすんません!!!!」
どうしたの、という顔の柚月さんに、全く訳が分からないと言いたげな灰さん。
いやだって、この見た目の上に名字どころか名前も一致って、ノアさんの兄の幽霊とか喜びそうっていうあの人(作者注:三話参照)っすよね!?!?
「いやあのえっとその違くてっすね!?あー、でも、いや…ヒノ、先、輩…まさか、弟さん…いないっすよね…?」
「おや、私の弟を知っているのか。ノアかい?それともカノの方かい?」
あああ一致したぁ!?!?間違いねぇ、この人だ!?!?!?
「うーらーめーしーやー…」
「うわぁ!?…ってなんだ、幽霊か〜。最近じゃあもうだいぶ見慣れてきたな〜。」
あー…そういや談話室にも幽霊出るんだった。もう収拾つく気がしねぇっす。
「ああ、今日も綺麗だね…フフフ、いい絵が描けそうだ!この美しさを、是非とも捉えておかなくては!!」
その小柄な体格のどこから出したのか、突然スケッチブックを持ち出してサラサラと絵を描き始めるヒノさん。
うわぁしかも上手いしグロいっすね。ダメだ、一周回って冷静になってきた。
「あ、留歌も落ち着いてきたな〜。ヒノさん…でいいのか?良かったら、魔道祭について教えてくれ〜。」
「ああ、構わないとも。芸術活動に勤しんでいる私の邪魔をしても良いと思っているなら、だけど。」
無表情で顔すら上げずにピシャリと言い返す姿を見て思う。さすがノアさんの兄だ、と。
飄々としていて物腰柔らかなのに、本質的に他人なんてどうでもいい感じ、とでも言えばいいんだろうか。
うん、すっげぇ怖いっす。
[水平線]
「…よし、出来た!!素晴らしいじゃないか。自画自賛になってしまうが…うん、実に芸術的だ。特にこのライン、今にも落ちそうな首…ああ、興奮して来た…」
「あの…ヒノ?灰たち、大分引いてるんだけど…」
「はぁ…これはこういうモノなのだが…」
数分後、ようやく絵を描き終えたらしくヒノ先輩は顔を上げた。
友人だという柚月さんの指摘にも、ああすまないね、なんて相も変わらずの無表情で返している。
「仕方ない。それでは、この私が魔道祭について教えてあげよう。柚月サンの頼みだからね、特別だよ?」
そう言って詳しいルールを説明し始めるヒノ先輩。意外にも、ちゃんとマトモな説明だ。
「まずはルールだ。君達は…私と同じく黒猫寮だったね。他にも鴉寮、梟寮、蝙蝠寮があるのは知っているだろう?これらは黒魔法で使う生贄から名付けられているんだが…まぁそこは割愛しようか。」
所々に妙な言葉が混ざっている気もするが、まぁもう諦めたっす。しっかしこの人も博識っすね…
「寮対抗、と書いてあるとおり、この魔道祭で勝利する事が、自寮の最終的な勝利に繋がるんだ。」
「そういえば、入学の時に説明されたね。テストの点とかで年度末に寮の順位を決める、みたいな…」
ちなみに、私たちのように寮に住んでいない生徒であっても寮分けはされているよ、なんて言うヒノ先輩。いや、初めて知ったっす。
「同学年で三人一組を作って参加するんだけど…まぁ、ここは君たちには関係がない事だね。」
「寮生は同室で組むから、って事か〜。」
その通りだよ、と灰さんの言葉を肯定するかのように頷くと、そのまま立板に水のごとくサラサラと説明していく。
「箒レースに魔道玉入れ、寮全体での使い魔伝言ゲーム…その他にも色々な種目があるんだけど…やっぱり花形は魔道戦だよ。」
ほらやっぱりあるんすねバンバン撃ち合うようなやつ…終わったっす……
そんな俺の心を知ってか知らずか、さらに爆弾とも言うべき情報が降って来た。
「魔術に魔法、魔道具に魔法薬、なんでもアリの大乱闘の予選を勝ち抜いた上位チームによる三本勝負の本戦は、毎年実に見物だ。」
数人は死人が出るんだけど心配はいらないよ、なんて言うが、ここに来てようやく動いた表情が笑顔となると実に不気味だ。
と言うか待ってくれ、それ、非常に聞き捨てならねぇんすけど。
「え、ちょま、死人!?死人出るんすか!?」
「ああ、出るとも!最も、保険医の先生が非常に優秀だから、簡単に生き返らせてしまうんだ…勿体無いよね。」
「いや、もったいなくはないだろ〜…」
怖い。やっぱ死ぬっすよ絶対。
いやそんな、3分もせずちょちょいのちょいだよ、とか言われたって恐怖しかないんすけど。
つーか、なんでそんな短時間でサクッと生き返ってんすか。クッキング番組じゃないんすよ。
「まぁ、とにかくそういう事だから、もう少ししたら生徒同士で得意な物を作って売買する姿がよく見られるね。」
他寮の生徒から何か買う時は騙されないように注意しておくんだよ、なんて親切にも教えてくれているのに申し訳ないが、もうワケが分からない。
「なるほどな〜。ポーションでも作っておくか〜…」
「いろいろありがとね。やっぱり、ヒノに聞いて良かったよ。」
それは何よりだ、と言いつつも相変わらず無表情なヒノ先輩は、ついでにコレを買っていかないか、と何やら魔法薬を勧めてくる。超強力なポーションらしいが、申し訳ないけど丁重にお断りさせて頂いたっす。何入ってるか分かんねぇんで怖いんすよ正直。
その途端、バタンとすごい音でドアが開いて大柄な先輩が入って来た。
長い黒髪なので、パッと見だと身長との違和感がすごい。
「あああヒノ様ァ!!こんな所にッ!!!ってあン?なんだキサマらはよォ?まさか、ヒノ様に何か危害加えちゃいねーだろーなァ?」
なぜか手に謎の凶器を持って、しかもブンブン振り回しながら言うので危ない事この上ない。
「いや、なんで魔法使いがマチェーテなんて持ってるんだよ〜…」
灰さんはもう半分ぐらい諦めて遠い目してるし。柚月さんは来ちゃったって感じの顔してるし。つーかアレ、マチェーテって言うんすか。なんなんすかもう。
「そんな事どうだっていいだろォ?まずは、ボク様の質問に答えるのが先だと思うがなァ??」
怖い、とても怖い。
でもとりあえず、室内で凶器を振り回さないでほしいっす。マチェーテだかなんだか知らねぇっすけど。
「クイ。ちょっと落ち着いておくれよ。見ての通り、私に怪我はないだろう?」
そんな風にヒノ先輩が言った次の瞬間。
「ハッッ!!申し訳ありませんヒノ様ァァァ!!!!」
ぎゃぁぁぁあ首にさっきの凶器当ててるんすけど!?!?待ってくれ、ここ血まみれにする気っすか、というかさっきからなんなんすか怖いっすよ!!!!
「柚月〜、あの人、知り合いなのか〜?」
「うん、そうだよ。すごくいい人なんだけど…ちょっと、ヒノ達が絡むと我を忘れちゃうっていうか…」
あーなるほど。それで首落とそうとしてたんすね。
…いや無いだろ。冷静になれ俺。
なんなんだろう、常識の外に住んでるんだろうかこの方々は。
「キサマァ。なんて名前だァ言ってみろォ…言っておくが、この方々を敬わないような事が万に一つでもあれば…ボク様がすぐに蹴り殺してやるからなァ?」
「え、あー、はい…えっと…星見、留歌っす…」
幸いにもさっきの一言で興味が失せたらしく、隣に目を向けている…
いや、全然幸いじゃなかったっす。隣、灰さんだ。まさかこの人全員にコレやる気なんだろうか。そのまさかだった。
そもそもなんで俺こんな所にいるんだろう。魑魅魍魎が跋扈してるんすけど。
でもとりあえず、ヒノ先輩の謎の魔法薬は買っておく事にした。なんせ、
「ヒノ様の好意を受け取らないとは何事だァキサマァァァ!!!!」
とでも言いたげな大柄な先輩…クイ先輩、と言うらしい…が、今、すぐそこですげぇ顔で睨んできてるんで。
今日は談話室でゆっくり漫画でも、と思い、同室二人と階下に降りていった時の事だ。
「「「魔道祭のお知らせ…?」」」
談話室の掲示板にある張り紙を見て絶句する。横の二人…柚月さんと灰さん…も、心なしかきょとんとしているようだ。
「なんなんだ、これ〜?」
「ぼくにも分からないな…あ、でも下に、説明書いてあるよ。」
コレ、アレっすか。魔法とか魔術バンバン撃ち合って戦う、みたいなアレっすか。
いや無理無理無理、絶対無理っすよ!?死ぬ未来しか見えねぇ。わざわざ固有魔法で未来視しなくても分かるっす。俺なんかじゃ絶対死んじまう。
「…なるほどな〜。って、留歌?聞いてるのか〜?」
「っ!!なんすか!?」
目の前で手を振られてようやく気づく。
やべぇ、何にも聞いてなかった…見事にやっちまったっすね…
「ほら見て、同じ部屋とかで三人一組を作って、中等部と合同で魔道戦するんだって。」
「でも、詳しいルールは書いてないな〜。」
…本当っすね。しかし、対策とかもできないとなると…やっぱ死ぬんじゃねぇっすかね、俺。
「去年もやってたんすかね、コレ…」
「そうなのかもね。ぼくらは全員高等部からだけど…」
そう言いながら、柚月さんは首を傾げている。その言葉を引き継ぐような形で灰さんが口を開いた。
「その前から入ってればお決まりの行事、って事なのか〜?」
確かに、そういう事なら納得だ。結局俺たちは一切準備ができないのは変わってねぇっすけど。
「あ、じゃあぼく…教えてくれそうな人に、心当たりあるよ。一学年上だけど、結構仲良いんだ。」
「そうなんすか?助かるっす。」
顔、広そうなタイプっすもんね。この人の知り合いならきっとさぞかしいい人なんだろう。
[水平線]
「やぁ、私の名前はヒノ・マインドだよ。」
「ひぃぃぃ出たぁ!?って、あーいや、違、いやその、すんませんすんませんすんません!!!!」
どうしたの、という顔の柚月さんに、全く訳が分からないと言いたげな灰さん。
いやだって、この見た目の上に名字どころか名前も一致って、ノアさんの兄の幽霊とか喜びそうっていうあの人(作者注:三話参照)っすよね!?!?
「いやあのえっとその違くてっすね!?あー、でも、いや…ヒノ、先、輩…まさか、弟さん…いないっすよね…?」
「おや、私の弟を知っているのか。ノアかい?それともカノの方かい?」
あああ一致したぁ!?!?間違いねぇ、この人だ!?!?!?
「うーらーめーしーやー…」
「うわぁ!?…ってなんだ、幽霊か〜。最近じゃあもうだいぶ見慣れてきたな〜。」
あー…そういや談話室にも幽霊出るんだった。もう収拾つく気がしねぇっす。
「ああ、今日も綺麗だね…フフフ、いい絵が描けそうだ!この美しさを、是非とも捉えておかなくては!!」
その小柄な体格のどこから出したのか、突然スケッチブックを持ち出してサラサラと絵を描き始めるヒノさん。
うわぁしかも上手いしグロいっすね。ダメだ、一周回って冷静になってきた。
「あ、留歌も落ち着いてきたな〜。ヒノさん…でいいのか?良かったら、魔道祭について教えてくれ〜。」
「ああ、構わないとも。芸術活動に勤しんでいる私の邪魔をしても良いと思っているなら、だけど。」
無表情で顔すら上げずにピシャリと言い返す姿を見て思う。さすがノアさんの兄だ、と。
飄々としていて物腰柔らかなのに、本質的に他人なんてどうでもいい感じ、とでも言えばいいんだろうか。
うん、すっげぇ怖いっす。
[水平線]
「…よし、出来た!!素晴らしいじゃないか。自画自賛になってしまうが…うん、実に芸術的だ。特にこのライン、今にも落ちそうな首…ああ、興奮して来た…」
「あの…ヒノ?灰たち、大分引いてるんだけど…」
「はぁ…これはこういうモノなのだが…」
数分後、ようやく絵を描き終えたらしくヒノ先輩は顔を上げた。
友人だという柚月さんの指摘にも、ああすまないね、なんて相も変わらずの無表情で返している。
「仕方ない。それでは、この私が魔道祭について教えてあげよう。柚月サンの頼みだからね、特別だよ?」
そう言って詳しいルールを説明し始めるヒノ先輩。意外にも、ちゃんとマトモな説明だ。
「まずはルールだ。君達は…私と同じく黒猫寮だったね。他にも鴉寮、梟寮、蝙蝠寮があるのは知っているだろう?これらは黒魔法で使う生贄から名付けられているんだが…まぁそこは割愛しようか。」
所々に妙な言葉が混ざっている気もするが、まぁもう諦めたっす。しっかしこの人も博識っすね…
「寮対抗、と書いてあるとおり、この魔道祭で勝利する事が、自寮の最終的な勝利に繋がるんだ。」
「そういえば、入学の時に説明されたね。テストの点とかで年度末に寮の順位を決める、みたいな…」
ちなみに、私たちのように寮に住んでいない生徒であっても寮分けはされているよ、なんて言うヒノ先輩。いや、初めて知ったっす。
「同学年で三人一組を作って参加するんだけど…まぁ、ここは君たちには関係がない事だね。」
「寮生は同室で組むから、って事か〜。」
その通りだよ、と灰さんの言葉を肯定するかのように頷くと、そのまま立板に水のごとくサラサラと説明していく。
「箒レースに魔道玉入れ、寮全体での使い魔伝言ゲーム…その他にも色々な種目があるんだけど…やっぱり花形は魔道戦だよ。」
ほらやっぱりあるんすねバンバン撃ち合うようなやつ…終わったっす……
そんな俺の心を知ってか知らずか、さらに爆弾とも言うべき情報が降って来た。
「魔術に魔法、魔道具に魔法薬、なんでもアリの大乱闘の予選を勝ち抜いた上位チームによる三本勝負の本戦は、毎年実に見物だ。」
数人は死人が出るんだけど心配はいらないよ、なんて言うが、ここに来てようやく動いた表情が笑顔となると実に不気味だ。
と言うか待ってくれ、それ、非常に聞き捨てならねぇんすけど。
「え、ちょま、死人!?死人出るんすか!?」
「ああ、出るとも!最も、保険医の先生が非常に優秀だから、簡単に生き返らせてしまうんだ…勿体無いよね。」
「いや、もったいなくはないだろ〜…」
怖い。やっぱ死ぬっすよ絶対。
いやそんな、3分もせずちょちょいのちょいだよ、とか言われたって恐怖しかないんすけど。
つーか、なんでそんな短時間でサクッと生き返ってんすか。クッキング番組じゃないんすよ。
「まぁ、とにかくそういう事だから、もう少ししたら生徒同士で得意な物を作って売買する姿がよく見られるね。」
他寮の生徒から何か買う時は騙されないように注意しておくんだよ、なんて親切にも教えてくれているのに申し訳ないが、もうワケが分からない。
「なるほどな〜。ポーションでも作っておくか〜…」
「いろいろありがとね。やっぱり、ヒノに聞いて良かったよ。」
それは何よりだ、と言いつつも相変わらず無表情なヒノ先輩は、ついでにコレを買っていかないか、と何やら魔法薬を勧めてくる。超強力なポーションらしいが、申し訳ないけど丁重にお断りさせて頂いたっす。何入ってるか分かんねぇんで怖いんすよ正直。
その途端、バタンとすごい音でドアが開いて大柄な先輩が入って来た。
長い黒髪なので、パッと見だと身長との違和感がすごい。
「あああヒノ様ァ!!こんな所にッ!!!ってあン?なんだキサマらはよォ?まさか、ヒノ様に何か危害加えちゃいねーだろーなァ?」
なぜか手に謎の凶器を持って、しかもブンブン振り回しながら言うので危ない事この上ない。
「いや、なんで魔法使いがマチェーテなんて持ってるんだよ〜…」
灰さんはもう半分ぐらい諦めて遠い目してるし。柚月さんは来ちゃったって感じの顔してるし。つーかアレ、マチェーテって言うんすか。なんなんすかもう。
「そんな事どうだっていいだろォ?まずは、ボク様の質問に答えるのが先だと思うがなァ??」
怖い、とても怖い。
でもとりあえず、室内で凶器を振り回さないでほしいっす。マチェーテだかなんだか知らねぇっすけど。
「クイ。ちょっと落ち着いておくれよ。見ての通り、私に怪我はないだろう?」
そんな風にヒノ先輩が言った次の瞬間。
「ハッッ!!申し訳ありませんヒノ様ァァァ!!!!」
ぎゃぁぁぁあ首にさっきの凶器当ててるんすけど!?!?待ってくれ、ここ血まみれにする気っすか、というかさっきからなんなんすか怖いっすよ!!!!
「柚月〜、あの人、知り合いなのか〜?」
「うん、そうだよ。すごくいい人なんだけど…ちょっと、ヒノ達が絡むと我を忘れちゃうっていうか…」
あーなるほど。それで首落とそうとしてたんすね。
…いや無いだろ。冷静になれ俺。
なんなんだろう、常識の外に住んでるんだろうかこの方々は。
「キサマァ。なんて名前だァ言ってみろォ…言っておくが、この方々を敬わないような事が万に一つでもあれば…ボク様がすぐに蹴り殺してやるからなァ?」
「え、あー、はい…えっと…星見、留歌っす…」
幸いにもさっきの一言で興味が失せたらしく、隣に目を向けている…
いや、全然幸いじゃなかったっす。隣、灰さんだ。まさかこの人全員にコレやる気なんだろうか。そのまさかだった。
そもそもなんで俺こんな所にいるんだろう。魑魅魍魎が跋扈してるんすけど。
でもとりあえず、ヒノ先輩の謎の魔法薬は買っておく事にした。なんせ、
「ヒノ様の好意を受け取らないとは何事だァキサマァァァ!!!!」
とでも言いたげな大柄な先輩…クイ先輩、と言うらしい…が、今、すぐそこですげぇ顔で睨んできてるんで。