二次創作
蝶は蜜に、依存する。
#1
何で、入国したんだよ。
[エミさんゾムが倒れたんすよッ!!]
何で、入国させたんだよ。
「ボス、行って下さい。俺があんたの分終わらせます。」
何で、呼んだんだよ……っ
「ッナタリーさん状態は!」
「え、え、エミさぁぁぁんッ、」
泣きじゃくりながら、胸元に飛び込んでくるナタリーさん。正直これには慣れたからいいのだが、それよりも、白いベッドに横たわる彼が、視界を捕まえる。
唐突に電話が掛かって来て、“ゾムさんが倒れた„なんて聞いたから業々くられ先生の研究所まで来た。
「ッ……何が、あったんですか」
今直ぐにでも問詰めてやりたいのだが、恐らく、ナタリーさんは悪くないのだろう。悪いのは、くられ先生。あの人が呼んだのだろう。折角捨て(帰し)たのに。
「わ、わかんないッ、急に、頭押さえて倒れて、意識、無く、て……ッ」
パニック状態に陥っている彼女の背中を、優しく、一定のリズムで叩きつつ、改めて横たわる彼を観察する。
目元を隠していた長い黒髪は、汗をかいていたのか、タオルが乗せられていて、それで分けられている。閉じた瞼の下には薄い隈。血色の悪い頬と唇。だが、一定の呼吸をしていて、脈も正常。
「……大丈夫、疲れて眠っているだけです。」
「ぁ、よ、良かった……ッくられ先生シバいてくるっす!!エミさんはゾムを看てて下さい!!」
漫画とかアニメでよくあるハリセンを片手に部屋を出ていく彼女を見送り、少し、ベッドに近寄ってみる。傍らに着いたその瞬間、うっすら、瞼が開いた。そして、あの、聞き心地の良い、私にしか聞かせてくれなかった大人しい声で、呟いた。
「……だ、れ……?」
まだ、忘れられてる。
「……只の、くられ先生達の知り合いです。貴方の看護を、任されました。」
なるべく、初対面を装って話す。が、その努力も水泡。
「……ちが、う、しってる、でも、だれ……わ、かんない……」
少し苦しそうに顔を歪ませ、思い出そうとしている。思い出さない方がいいのにな。
「無理して思い出さなくて、いいんですよ。忘れたままで、結構です。」
「いや、だ……!」
ふわふわした声が、はっきりと意思を感じる声に変わる。起き上がって、手首を掴まれる。
「なあ、教えて、くれよ、誰なんだ、嫌なんだ、思い出したいッ、俺の、大切な、大切な人、なんだろ……?」
「……」
大切、ねぇ……
「いいえ、違います。」
冷酷だ、なんて言われるだろうが、関係無い。もう、関わって、危険に晒したくないから。
「違う訳無い、わかってる、心にポッカリ穴が空いてんだよ、喪失感がするんだ、苦しい……ッ」
訴える彼の目が、震えている。泣き顔なんて、みたくない。だから、少しだけ、思い出す手助けをしてしまった。
「……もう一度だけ、“ 教授 „ って、呼んで下さいませんか……?」
嗚呼、私は、前々からあの顔に弱かったのだった。あの顔をされると、何でも許してしまうのだった。
「……きょ、うじゅ……」
「ッ……ありがとう、ございます。」
あれから何年だ。3年?3年振りに、呼んで貰えた。感動に浸っている私を他所に、彼は、口の中でモゴモゴと、同じ単語を復唱している。そして、目を輝かせる。
「きょうじゅ、教授!エーミール!!」
「……はぁ?」
きらきらと子どもさながらの笑みを浮かべて、頻りに腕を引っ張ってくる。
「思い出したぞエーミール、何で忘れたままでいいとか言ってんだお前ぇ!!」
「……ゾム、さん?」
「んだよ、おはようのキスぐらいしろや!」
がくがく腕を揺らしながら、期待している目を向けられた。亡くなっていたものが、帰って来た感覚。
私の、ゾムさん<恋人>が、帰って来た。
「ッ……ゾムさん……ッ!」
抱き締めると、深く、深く口付けをされる。何処かに行かないように、もう、亡くさないように。彼の存在を、噛み締めながら、それに応える。頭を撫でてくる感触も、3年振り。ショッピがしてくれたのとは、違う温もりを感じる。やはり、私はゾムさんじゃないと、満たされないようだ。
「……ねぇ、ゾムさん。」
「ん~?」
「まだ、好き、で、居てくれてますか……?」
「……当たり前じゃん。何、俺のこと嫌いなった?」
「そッ、そんな訳!」
「だよな~、教授、俺のこと大好きな甘えんぼさんだもんな~」
「なっ……!/////」
自分から吹っ掛けた話題にカウンターを受けて、顔が赤くなってしまう。それを、けらけらと面白そうに笑いながら、緑色の恋人は、もう一度深く口付けを交わした。
~後日談~
「教授?」
「もう教授じゃないんで、普通に名前で呼んで下さいよ」
「んじゃエミさん。」
「はい。」
「見た目、めっちゃ変わったよな。」
「あー……前の方が好きでしたか?ならすいません。」
「んーん、どんなエミさんでも俺は好き。今のエミさんも格好ええで(にこ、)」
「ッ……/////」
「っはw顔真っ赤じゃねぇの!照れた?」
「ッ止めて下さいよ!揶揄わないで下さいぃ……/////」
(暫くのいちゃいちゃタイム)
(その部屋の前で)
「何、ボスといちゃついてんだよ……何で帰って来た」
「あとちょっとで、俺のだったのによ……ッ」
___End…?
[エミさんゾムが倒れたんすよッ!!]
何で、入国させたんだよ。
「ボス、行って下さい。俺があんたの分終わらせます。」
何で、呼んだんだよ……っ
「ッナタリーさん状態は!」
「え、え、エミさぁぁぁんッ、」
泣きじゃくりながら、胸元に飛び込んでくるナタリーさん。正直これには慣れたからいいのだが、それよりも、白いベッドに横たわる彼が、視界を捕まえる。
唐突に電話が掛かって来て、“ゾムさんが倒れた„なんて聞いたから業々くられ先生の研究所まで来た。
「ッ……何が、あったんですか」
今直ぐにでも問詰めてやりたいのだが、恐らく、ナタリーさんは悪くないのだろう。悪いのは、くられ先生。あの人が呼んだのだろう。折角捨て(帰し)たのに。
「わ、わかんないッ、急に、頭押さえて倒れて、意識、無く、て……ッ」
パニック状態に陥っている彼女の背中を、優しく、一定のリズムで叩きつつ、改めて横たわる彼を観察する。
目元を隠していた長い黒髪は、汗をかいていたのか、タオルが乗せられていて、それで分けられている。閉じた瞼の下には薄い隈。血色の悪い頬と唇。だが、一定の呼吸をしていて、脈も正常。
「……大丈夫、疲れて眠っているだけです。」
「ぁ、よ、良かった……ッくられ先生シバいてくるっす!!エミさんはゾムを看てて下さい!!」
漫画とかアニメでよくあるハリセンを片手に部屋を出ていく彼女を見送り、少し、ベッドに近寄ってみる。傍らに着いたその瞬間、うっすら、瞼が開いた。そして、あの、聞き心地の良い、私にしか聞かせてくれなかった大人しい声で、呟いた。
「……だ、れ……?」
まだ、忘れられてる。
「……只の、くられ先生達の知り合いです。貴方の看護を、任されました。」
なるべく、初対面を装って話す。が、その努力も水泡。
「……ちが、う、しってる、でも、だれ……わ、かんない……」
少し苦しそうに顔を歪ませ、思い出そうとしている。思い出さない方がいいのにな。
「無理して思い出さなくて、いいんですよ。忘れたままで、結構です。」
「いや、だ……!」
ふわふわした声が、はっきりと意思を感じる声に変わる。起き上がって、手首を掴まれる。
「なあ、教えて、くれよ、誰なんだ、嫌なんだ、思い出したいッ、俺の、大切な、大切な人、なんだろ……?」
「……」
大切、ねぇ……
「いいえ、違います。」
冷酷だ、なんて言われるだろうが、関係無い。もう、関わって、危険に晒したくないから。
「違う訳無い、わかってる、心にポッカリ穴が空いてんだよ、喪失感がするんだ、苦しい……ッ」
訴える彼の目が、震えている。泣き顔なんて、みたくない。だから、少しだけ、思い出す手助けをしてしまった。
「……もう一度だけ、“ 教授 „ って、呼んで下さいませんか……?」
嗚呼、私は、前々からあの顔に弱かったのだった。あの顔をされると、何でも許してしまうのだった。
「……きょ、うじゅ……」
「ッ……ありがとう、ございます。」
あれから何年だ。3年?3年振りに、呼んで貰えた。感動に浸っている私を他所に、彼は、口の中でモゴモゴと、同じ単語を復唱している。そして、目を輝かせる。
「きょうじゅ、教授!エーミール!!」
「……はぁ?」
きらきらと子どもさながらの笑みを浮かべて、頻りに腕を引っ張ってくる。
「思い出したぞエーミール、何で忘れたままでいいとか言ってんだお前ぇ!!」
「……ゾム、さん?」
「んだよ、おはようのキスぐらいしろや!」
がくがく腕を揺らしながら、期待している目を向けられた。亡くなっていたものが、帰って来た感覚。
私の、ゾムさん<恋人>が、帰って来た。
「ッ……ゾムさん……ッ!」
抱き締めると、深く、深く口付けをされる。何処かに行かないように、もう、亡くさないように。彼の存在を、噛み締めながら、それに応える。頭を撫でてくる感触も、3年振り。ショッピがしてくれたのとは、違う温もりを感じる。やはり、私はゾムさんじゃないと、満たされないようだ。
「……ねぇ、ゾムさん。」
「ん~?」
「まだ、好き、で、居てくれてますか……?」
「……当たり前じゃん。何、俺のこと嫌いなった?」
「そッ、そんな訳!」
「だよな~、教授、俺のこと大好きな甘えんぼさんだもんな~」
「なっ……!/////」
自分から吹っ掛けた話題にカウンターを受けて、顔が赤くなってしまう。それを、けらけらと面白そうに笑いながら、緑色の恋人は、もう一度深く口付けを交わした。
~後日談~
「教授?」
「もう教授じゃないんで、普通に名前で呼んで下さいよ」
「んじゃエミさん。」
「はい。」
「見た目、めっちゃ変わったよな。」
「あー……前の方が好きでしたか?ならすいません。」
「んーん、どんなエミさんでも俺は好き。今のエミさんも格好ええで(にこ、)」
「ッ……/////」
「っはw顔真っ赤じゃねぇの!照れた?」
「ッ止めて下さいよ!揶揄わないで下さいぃ……/////」
(暫くのいちゃいちゃタイム)
(その部屋の前で)
「何、ボスといちゃついてんだよ……何で帰って来た」
「あとちょっとで、俺のだったのによ……ッ」
___End…?
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