二次創作
東方願い井戸 〜 少女と少年の繋いだ未来
「……外の世界へ行く、か」
妹紅がふっと自嘲気味に笑い、かつての記憶を呼び起こすように目を細めた。
その言葉を聞いた瞬間、翔我と楓鈴の脳裏には、今でも決して忘れることのできない「あの日の大失敗」が鮮明に蘇っていた。
あれは十年前。黒葛野 翔我(つづらの しょうが)がまだ6歳の幼い子供で、下水流 楓鈴(しもづる ふうりん)が11歳の少年だった頃のことだ。
二人は里の片隅で、偶然にも『幻想郷の全体地図』を見つけてしまった。結界に囲まれた世界の広さに胸を躍らせた二人は、幼さゆえの無鉄砲さで、絶対に近づいてはならない「妖怪の山」へと無断で侵入してしまったのだ。
しかし、山の自然は厳しく、すぐに二人は道を見失ってしまった。鬱蒼とした木々に囲まれ、不気味な獣の鳴き声が響く中、幼い二人は恐怖に耐えきれず、その場に座り込んで大泣きしてしまった。
「うわあああん! 帰りたいよぉ!」
「ごめん、翔我……僕が地図なんて見つけるから……っ」
激しく泣きわめいていた二人を最初に見つけたのは、山の哨戒天狗である犬走 椛(いぬばしり もみじ)だった。
「大変! 人間の子供がこんなところに……! 大丈夫ですか!?」
椛は慌てて二人に駆け寄り、涙を拭ってやりながら優しく声をかけた。しかし、ここは妖怪の山。天狗である自分が里に送り届けるのは立場上難しかったため、椛は近所に位置する命蓮寺へと二人を背負って急いだ。
そうして命蓮寺へと連れていかれ、引き合わされたのが、大魔法使いでもある聖 白蓮(ひじり びゃくれん)だった。
「――もう大丈夫ですよ、よく頑張りましたね。椛さんも、連れてきてくれてありがとう」
白蓮は二人を優しく諭すように、その小さな頭をそっと撫でてくれた。そして、冷え切った身体に温かいお茶を淹れて、優しくもてなしてくれたのだ。
しかし、本当の恐怖は人間に里に戻った後に待っていた。
無事に里に送り届けられた瞬間、待っていたのは寺子屋の上白沢慧音からの、涙ながらの烈火の如き大説教だった。さらに、いつもは一緒に遊んでくれるはずの妹紅が、これまで見たこともないような形相で立ちはだかったのだ。
「そんな、危険な行為は絶対に二度とするんじゃねえぞ!!!」
妹紅が激昂して拳を叩きつけると、目の前の頑丈な木製の机が、凄まじい衝撃の音と共に真っ二つに叩き割れた。6歳だった翔我の心臓が飛び跳ねるほどの恐怖。その衝撃は、今でも脳裏に焼き付いて離れない。
さらに追い打ちをかけるように、半泣きでお迎えにやってきた従姉の茶屋道 雛鶴姫(ちゃやみち ひなづるひめ)からも、「翔我、本当に何やってるの!!!」と激しく叱責された。その日は家に帰っても親から猛烈に怒られ、本気で家から叩き出されそうになるほどの説教を受けた。年上だった楓鈴も、家でしこたま親にこっぴどく怒られたのは言うまでもない。
「あの時は、本当に死ぬかと思ったよな……」
楓鈴が額の汗を拭うように苦笑いする。
「ああ……。怒られるのが怖くて、しばらく先生たちの顔が見られなかったくらいだ」
翔我も苦い表情で拳を握りしめる。
彼らにとって、慧音と妹紅はただの「強い大人」ではない。自分たちが愚かな過ちを犯した時、本気で、命懸けで自分たちの身を案じて怒ってくれた、血の通った大切な恩人たちなのだ。
慧音はゆっくりと歴史の書を開き、妹紅は全身からパチパチと静かな火花を散らせながら、目の前の成長した子供たちを力強い眼差しで見据えた。
「翔我、楓鈴。そしてみんな。……あの日から、あなたたちのその無茶で無鉄砲な好奇心が、少しも変わっていないというのなら」
慧音の威圧感が、竹林の空気をピりりと震わせた。
「そんなに外の世界に出たいというのなら、私たちの屍を越えて行きなさい! あなたたちの『本気の覚悟』、私たちが相手になって確かめてあげるわ!!!」
妹紅の背後に、巨大な不死鳥の翼を模した紅蓮の炎が燃え上がる。
本気で子供たちの未来を案じるからこそ、手加減なしの「本物」として立ちふさがる二人。かつての思い出を胸に抱きながら、翔我たちはついに、恩師たちとの全面対決へ向けてスペルカードを構えた。
妹紅がふっと自嘲気味に笑い、かつての記憶を呼び起こすように目を細めた。
その言葉を聞いた瞬間、翔我と楓鈴の脳裏には、今でも決して忘れることのできない「あの日の大失敗」が鮮明に蘇っていた。
あれは十年前。黒葛野 翔我(つづらの しょうが)がまだ6歳の幼い子供で、下水流 楓鈴(しもづる ふうりん)が11歳の少年だった頃のことだ。
二人は里の片隅で、偶然にも『幻想郷の全体地図』を見つけてしまった。結界に囲まれた世界の広さに胸を躍らせた二人は、幼さゆえの無鉄砲さで、絶対に近づいてはならない「妖怪の山」へと無断で侵入してしまったのだ。
しかし、山の自然は厳しく、すぐに二人は道を見失ってしまった。鬱蒼とした木々に囲まれ、不気味な獣の鳴き声が響く中、幼い二人は恐怖に耐えきれず、その場に座り込んで大泣きしてしまった。
「うわあああん! 帰りたいよぉ!」
「ごめん、翔我……僕が地図なんて見つけるから……っ」
激しく泣きわめいていた二人を最初に見つけたのは、山の哨戒天狗である犬走 椛(いぬばしり もみじ)だった。
「大変! 人間の子供がこんなところに……! 大丈夫ですか!?」
椛は慌てて二人に駆け寄り、涙を拭ってやりながら優しく声をかけた。しかし、ここは妖怪の山。天狗である自分が里に送り届けるのは立場上難しかったため、椛は近所に位置する命蓮寺へと二人を背負って急いだ。
そうして命蓮寺へと連れていかれ、引き合わされたのが、大魔法使いでもある聖 白蓮(ひじり びゃくれん)だった。
「――もう大丈夫ですよ、よく頑張りましたね。椛さんも、連れてきてくれてありがとう」
白蓮は二人を優しく諭すように、その小さな頭をそっと撫でてくれた。そして、冷え切った身体に温かいお茶を淹れて、優しくもてなしてくれたのだ。
しかし、本当の恐怖は人間に里に戻った後に待っていた。
無事に里に送り届けられた瞬間、待っていたのは寺子屋の上白沢慧音からの、涙ながらの烈火の如き大説教だった。さらに、いつもは一緒に遊んでくれるはずの妹紅が、これまで見たこともないような形相で立ちはだかったのだ。
「そんな、危険な行為は絶対に二度とするんじゃねえぞ!!!」
妹紅が激昂して拳を叩きつけると、目の前の頑丈な木製の机が、凄まじい衝撃の音と共に真っ二つに叩き割れた。6歳だった翔我の心臓が飛び跳ねるほどの恐怖。その衝撃は、今でも脳裏に焼き付いて離れない。
さらに追い打ちをかけるように、半泣きでお迎えにやってきた従姉の茶屋道 雛鶴姫(ちゃやみち ひなづるひめ)からも、「翔我、本当に何やってるの!!!」と激しく叱責された。その日は家に帰っても親から猛烈に怒られ、本気で家から叩き出されそうになるほどの説教を受けた。年上だった楓鈴も、家でしこたま親にこっぴどく怒られたのは言うまでもない。
「あの時は、本当に死ぬかと思ったよな……」
楓鈴が額の汗を拭うように苦笑いする。
「ああ……。怒られるのが怖くて、しばらく先生たちの顔が見られなかったくらいだ」
翔我も苦い表情で拳を握りしめる。
彼らにとって、慧音と妹紅はただの「強い大人」ではない。自分たちが愚かな過ちを犯した時、本気で、命懸けで自分たちの身を案じて怒ってくれた、血の通った大切な恩人たちなのだ。
慧音はゆっくりと歴史の書を開き、妹紅は全身からパチパチと静かな火花を散らせながら、目の前の成長した子供たちを力強い眼差しで見据えた。
「翔我、楓鈴。そしてみんな。……あの日から、あなたたちのその無茶で無鉄砲な好奇心が、少しも変わっていないというのなら」
慧音の威圧感が、竹林の空気をピりりと震わせた。
「そんなに外の世界に出たいというのなら、私たちの屍を越えて行きなさい! あなたたちの『本気の覚悟』、私たちが相手になって確かめてあげるわ!!!」
妹紅の背後に、巨大な不死鳥の翼を模した紅蓮の炎が燃え上がる。
本気で子供たちの未来を案じるからこそ、手加減なしの「本物」として立ちふさがる二人。かつての思い出を胸に抱きながら、翔我たちはついに、恩師たちとの全面対決へ向けてスペルカードを構えた。