二次創作
東方願い井戸 〜 少女と少年の繋いだ未来
「――では、なぜ僕たち人間全員は幻想郷に存在するんですか?」
圧倒的な大妖怪の威圧感に全員が息を呑む中、一歩前へ出たのは大人である楓鈴だった。いつもの掴みどころのない笑みは消え、その瞳には冷徹なまでの真剣さが宿っている。彼は繋いだ呼子の手をさらに強く握り締め、紫をまっすぐに見据えた。
「外の世界でも、僕たち人間は当たり前のように存在しているんじゃないですか? 妖怪と違って、人間は忘れ去られた存在なんかじゃない。それなのに、なぜ僕たちはこの狭い結界の中に囲われ、守られ、ただ怯えて生きていかなきゃならないんですか!」
楓鈴の言葉は、静まり返った最深部に重く響き渡った。紫は扇を少しだけ下げ、値踏みするような鋭い視線を彼に向ける。
「……後言いたいことは、僕たちの覚悟は生ぬるい覚悟ではありません!!!」
楓鈴の叫びに呼応するように、震えていた翔我の足が、力強く地面を踏みしめた。雛鶴姫の手から伝わる温もりが、恐怖を撥ね退ける勇気へと変わっていく。
「そうだ……! 俺たちはただの迷子じゃない!」
翔我が紫を睨みつけ、声を張り上げた。
「博麗の巫女が妖怪を倒して、里の大人たちがそれを喜ぶ。そんな当たり前の繰り返しに、俺たちはうんざりしてるんだ! 守られるだけの子供扱いはもう嫌だ。自分の足で、自分の目で、外の世界がどうなっているのかを確かめる。そのために俺たちはここに来たんだ!」
「私も、翔我と一緒に行くわ」
雛鶴姫が翔我の隣に並び、優しく、しかし確固たる意志を込めて語りかける。
「最初はみんなを止めるつもりだった。でも、手を繋いでみんなの想いを感じたとき、分かったの。これはただの我儘じゃない。私たちは、この手で自分たちの未来を掴みたいだけ。どんな怪我を負ったって、私が全員を何度でも治してみせる。だから、絶対に諦めない!」
「長老の孫娘として、私は里の誰よりも本を読み、知識を蓄えてきたわ!」
茉莉花が皇子の手を握ったまま、胸を張って凛と言い放った。
「本居小鈴にだって負けないくらい、外の世界の道具や歴史を解析してきた。だからこそ、ここでただ妖怪の生態を里の人に教えているだけの自分で終わりたくないの。私の解析能力とこの強化された弾幕は、未来を切り拓くためにある!」
「俺は里一番の力持ちだ。だけど、ただの力自慢で終わりたくねえ」
皇子が茉莉花の手を引き、一歩前に出る。
「結界の中に閉じこもって、それが安全だからって満足して生きるなんて自立じゃない。危険があるなら俺がみんなを背負って飛ぶ。自分の力で、この仲間たちと一緒にどこまでも自由に行けるってことを、俺たちを創ったあんたたち大妖怪に証明してやるんだ!」
「そうよ、紫様、藍さん」
最年長の呼子が、ド派手な袖をはためかせながら、最後に美しい笑顔を向けた。
「代々井戸を守る番人として、私はこの子たちに『願い』の引き金を引かせた。その責任は私が持つわ。私たちの能力は、一人じゃ暴走してしまう不自由な代償かもしれない。でもね、手を繋ぎ合えば、大妖怪のあんたたちにだって届く本物の光になるのよ!」
6人の言葉が重なり合い、最深部の空間に莫大な魔力の波動となって満ちていく。
誰一人として、手を離そうとはしない。その固く結ばれた絆と、檻を破ろうとする剥き出しの意志は、幻想郷を創り上げた境界の妖怪を前にしても、決して折れることのない本物の輝きを放っていた。
「……いいでしょう」
紫はゆっくりと扇を閉じ、それを怜悧な瞳の前に掲げた。
その瞬間、それまで彼女から放たれていた圧倒的な圧迫感が、嘘のようにピタリと消え失せる。だが、それは恐怖の終わりを意味してはいなかった。周囲の空間の「色」が、まるで水面に落とした一滴の墨のように、濃密な紫へと染まっていく。
「そこまでの覚悟を語られて、幻想郷の守護者が背を向けるわけにはいかないわね。あなたたちが繋いだその手の温もりが、私の『境界』を揺るがす本物の奇跡なのかどうか、試してあげるわ」
紫の背後で、無数の「隙間」が生き物のようにいっせいに開く。その奥からは、数え切れないほどの妖しい瞳が翔我たちをじっと見つめ、同時に、見たこともない密度の弾幕が展開され始めた。
「藍、あなたも手加減は不要よ」
「御意に、紫様」
藍が九つの尾を扇状に広げると、神速の計算に裏打ちされた美しい数理の弾幕が、空間を埋め尽くすように展開されていく。いつでも里へ送り返せるという言葉が嘘ではないと証明するかのような、完璧な包囲網だった。
「来るぞ……みんな、絶対に手を離すな!」
翔我が叫ぶ。手のひらから伝わる雛鶴姫の体温を生命線に、彼の『弾幕を無効化にする程度の能力』の領域を極限まで広げた。
「弾幕の軌道を書き換えるわ! 皇子、上へ!」
茉莉花が藍の放つ神速の弾幕の隙間を瞬時に解析し、皇子とともに空中へと飛び上がる。
幻想郷の創造主たる大妖怪と、結界の檻を破ろうとする人間の少年少女たち。
最深部の空間が、互いの譲れない意志と莫大な魔力の衝突によって激しく震え始めた。
圧倒的な大妖怪の威圧感に全員が息を呑む中、一歩前へ出たのは大人である楓鈴だった。いつもの掴みどころのない笑みは消え、その瞳には冷徹なまでの真剣さが宿っている。彼は繋いだ呼子の手をさらに強く握り締め、紫をまっすぐに見据えた。
「外の世界でも、僕たち人間は当たり前のように存在しているんじゃないですか? 妖怪と違って、人間は忘れ去られた存在なんかじゃない。それなのに、なぜ僕たちはこの狭い結界の中に囲われ、守られ、ただ怯えて生きていかなきゃならないんですか!」
楓鈴の言葉は、静まり返った最深部に重く響き渡った。紫は扇を少しだけ下げ、値踏みするような鋭い視線を彼に向ける。
「……後言いたいことは、僕たちの覚悟は生ぬるい覚悟ではありません!!!」
楓鈴の叫びに呼応するように、震えていた翔我の足が、力強く地面を踏みしめた。雛鶴姫の手から伝わる温もりが、恐怖を撥ね退ける勇気へと変わっていく。
「そうだ……! 俺たちはただの迷子じゃない!」
翔我が紫を睨みつけ、声を張り上げた。
「博麗の巫女が妖怪を倒して、里の大人たちがそれを喜ぶ。そんな当たり前の繰り返しに、俺たちはうんざりしてるんだ! 守られるだけの子供扱いはもう嫌だ。自分の足で、自分の目で、外の世界がどうなっているのかを確かめる。そのために俺たちはここに来たんだ!」
「私も、翔我と一緒に行くわ」
雛鶴姫が翔我の隣に並び、優しく、しかし確固たる意志を込めて語りかける。
「最初はみんなを止めるつもりだった。でも、手を繋いでみんなの想いを感じたとき、分かったの。これはただの我儘じゃない。私たちは、この手で自分たちの未来を掴みたいだけ。どんな怪我を負ったって、私が全員を何度でも治してみせる。だから、絶対に諦めない!」
「長老の孫娘として、私は里の誰よりも本を読み、知識を蓄えてきたわ!」
茉莉花が皇子の手を握ったまま、胸を張って凛と言い放った。
「本居小鈴にだって負けないくらい、外の世界の道具や歴史を解析してきた。だからこそ、ここでただ妖怪の生態を里の人に教えているだけの自分で終わりたくないの。私の解析能力とこの強化された弾幕は、未来を切り拓くためにある!」
「俺は里一番の力持ちだ。だけど、ただの力自慢で終わりたくねえ」
皇子が茉莉花の手を引き、一歩前に出る。
「結界の中に閉じこもって、それが安全だからって満足して生きるなんて自立じゃない。危険があるなら俺がみんなを背負って飛ぶ。自分の力で、この仲間たちと一緒にどこまでも自由に行けるってことを、俺たちを創ったあんたたち大妖怪に証明してやるんだ!」
「そうよ、紫様、藍さん」
最年長の呼子が、ド派手な袖をはためかせながら、最後に美しい笑顔を向けた。
「代々井戸を守る番人として、私はこの子たちに『願い』の引き金を引かせた。その責任は私が持つわ。私たちの能力は、一人じゃ暴走してしまう不自由な代償かもしれない。でもね、手を繋ぎ合えば、大妖怪のあんたたちにだって届く本物の光になるのよ!」
6人の言葉が重なり合い、最深部の空間に莫大な魔力の波動となって満ちていく。
誰一人として、手を離そうとはしない。その固く結ばれた絆と、檻を破ろうとする剥き出しの意志は、幻想郷を創り上げた境界の妖怪を前にしても、決して折れることのない本物の輝きを放っていた。
「……いいでしょう」
紫はゆっくりと扇を閉じ、それを怜悧な瞳の前に掲げた。
その瞬間、それまで彼女から放たれていた圧倒的な圧迫感が、嘘のようにピタリと消え失せる。だが、それは恐怖の終わりを意味してはいなかった。周囲の空間の「色」が、まるで水面に落とした一滴の墨のように、濃密な紫へと染まっていく。
「そこまでの覚悟を語られて、幻想郷の守護者が背を向けるわけにはいかないわね。あなたたちが繋いだその手の温もりが、私の『境界』を揺るがす本物の奇跡なのかどうか、試してあげるわ」
紫の背後で、無数の「隙間」が生き物のようにいっせいに開く。その奥からは、数え切れないほどの妖しい瞳が翔我たちをじっと見つめ、同時に、見たこともない密度の弾幕が展開され始めた。
「藍、あなたも手加減は不要よ」
「御意に、紫様」
藍が九つの尾を扇状に広げると、神速の計算に裏打ちされた美しい数理の弾幕が、空間を埋め尽くすように展開されていく。いつでも里へ送り返せるという言葉が嘘ではないと証明するかのような、完璧な包囲網だった。
「来るぞ……みんな、絶対に手を離すな!」
翔我が叫ぶ。手のひらから伝わる雛鶴姫の体温を生命線に、彼の『弾幕を無効化にする程度の能力』の領域を極限まで広げた。
「弾幕の軌道を書き換えるわ! 皇子、上へ!」
茉莉花が藍の放つ神速の弾幕の隙間を瞬時に解析し、皇子とともに空中へと飛び上がる。
幻想郷の創造主たる大妖怪と、結界の檻を破ろうとする人間の少年少女たち。
最深部の空間が、互いの譲れない意志と莫大な魔力の衝突によって激しく震え始めた。