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二次創作
東方願い井戸 〜 少女と少年の繋いだ未来

#1

第一話:檻の隙間の紫(むらさき)

「……また、あの博麗の巫女が勝ったんだってさ」
人間の里の賑やかな通りは、お祭り騒ぎのような活気に包まれていた。つい最近起きた『東方錦上京(とうほうきんじょうきょう)』の異変が、無事に博麗の巫女によって解決されたのだ。里の大人たちは口々に「これでまた安心して暮らせる」「やっぱり巫女様は私たちのヒーローだ」と、嬉しそうに噂を交わしている。
しかし、そんな人混みの中を、黒葛野 翔我(つづらの しょうが)はうんざりしたように肩をすくめて歩いていた。
「何が安心だよ。結局、俺たちは守られるだけの子供だって言いたいんだろ」
一匹狼気取りの、思春期真っ盛りの少年。それが翔我だった。子供扱いされるのが、何よりも、死ぬほど嫌いだった。彼は里の大人たちの浮かれた声を背に、逃げるように自宅へと帰っていった。
机の上には、外の世界から流れ着いたという風変わりな遺物、紫色の筐体の「ゲームキューブ」が置かれている。コントローラーの線はちぎれ、中身も壊れているのかピクリとも動かない。だけど翔我は、毎日この機械を眺めては、どうやったら直せるのか、そしてこれを動かしていた「外の世界」とはどんな場所なのか、そればかりを考えていた。
「しょうが、ご飯できたよ!」
背後から不意に脇腹をくすぐられ、翔我は「うわっ!?」と声を上げて跳び上がった。
「雛鶴姉(ひなづるねえ)! 驚かせるなっていつも言ってるだろ! 俺はもう子供じゃない!」
「ふふ、ごめんね。でもそうやって怒る顔も、まだまだ可愛い弟に見えちゃうな」
振り返ると、隣の家に住む従姉の茶屋道 雛鶴姫(ちゃやみち ひなづるひめ)が、悪戯っぽく微笑みながら立っていた。裏表がなく、里の誰からも頼りにされるお姉さん。だけど、翔我を呼ぶときだけはいつもこうして背後からくすぐってくる。
「ほら、黒葛野家も茶屋道家も、今日はみんなで一緒にご飯でしょ? 早く来ないと、冷めちゃうよ」
雛鶴姫は優しく笑ったが、その視線がふと、翔我の机の上のゲームキューブに留まった。その瞳には、翔我と同じ――この高い壁に囲まれた里の生活に対する、言葉にできない窮屈さと、まだ見ぬ世界への淡い憧れが映っているように見えた。
翌日、里の広場の隅に、翔我の呼びかけで仲間たちが集まっていた。
親友の押領司 皇子(おうりょうじ おうじ)、長老の孫娘である苅萱 茉莉花(かるかや まつりか)、そして鯨呑亭の常連客である大人の下水流 楓鈴(しもづる ふうりん)と、一番最年長の草牟田 呼子(そうむた よびこ)。
「みんな、集まってくれてありがとな。……俺たちで、新しい異変を起こさないか?」
翔我の突飛な提案に、茉莉花が溜息をつきながら、抱えていた『文々丸新聞』の束を広げた。
「新しい異変を起こして外の世界へ行く……。気持ちはわかるけれど、現実を見なさいよ、翔我。私たちは能力もない、ただの普通の人間の子供よ? 異変を起こそうとしたって、ちょっとした騒動になって、また慧音先生や博麗の巫女に子供の悪戯だって片付けられて終わりだわ」
「茉莉花の言う通りだぜ」
里一番の力持ちである皇子が、腕を組んで静かに頷いた。
「俺だって結界の中で一生を終えるのは嫌だし、自立を証明したい。だけど、何の力もない俺たちが騒いだところで、ただの無茶で終わっちまう」
楓鈴もレンコンの素揚げをサクサクと食べながら、「さすがに大妖怪や巫女を相手にするには、僕たちじゃ弾幕一つ撃てないからねぇ」と、のんびりとした口調で言った。
やはり、能力のない自分たちでは何もできないのか。
重苦しい沈黙が流れ、翔我が悔しそうに拳を握りしめた、その時だった。
「――ねえ、それなら、私の家に伝わる『井戸』を使ってみない?」
ド派手な衣装を身にまとった呼子が、きらびやかな笑顔でみんなの顔を覗き込んだ。
「井戸?」
翔我が聞き返す。
「ええ。ごく一部の人、それこそ私の家系くらいしか本当の理由を知らない古い石造りの井戸があるの。一度だけ、代償を払えば何でも願いを叶えて、特別な力を授けてくれるっていう伝承があるのよ。……ただの子供の騒動で終わらせたくないなら、その井戸で『本物の力』を手に入れてみる?」
呼子のその言葉が、燻っていた少年少女たちの心に、一筋の強烈な光を灯した。
守られるだけの存在から抜け出し、自分たちの未来を掴み取るための、本当の異変。その計画が、静かに動き始めようとしていた。

作者メッセージ

オリキャラ紹介
黒葛野 翔我(つづらの しょうが)
年齢:16歳
二つ名:反逆のゼロ領域(はんぎゃくのぜろりょういき)
能力:弾幕を無効化にする程度の能力
人物: 今回の異変を起こした張本人。思春期真っ盛りで一匹狼を気取っているが、根はしっかり者で常識人。子供扱いされることが大嫌い。いつも博麗の巫女の活躍を耳にしており、最近は机の上にある壊れたゲームキューブをどうにか直せないか思案している。従姉の雛鶴姫のことは「雛鶴姉(ひなづるねえ)」と呼ぶ。

茶屋道 雛鶴姫(ちゃやみち ひなづるひめ)
年齢:17歳
二つ名:無限再生の境界線(むげんさいせいのきょうかいせん)
能力: ありとあらゆる怪我を治せる程度の能力
人物: 黒葛野家の隣に住んでおり、普段は家族ぐるみで食卓を囲んでいる。裏表のない親切な性格で、里の誰もから頼りにされる素敵なお姉さん。しかし、ご飯の時間になると翔我の背後からくすぐって呼ぶという、お茶目で悪戯好きな一面も。元々は異変を起こそうとする子供たちを止めようとして、巻き込まれる形で能力を得てしまった。

苅萱 茉莉花(かるかや まつりか)
年齢:16歳
二つ名:天理を書き換える賢者(てんりをかきかえるけんじゃ)
能力:ありとあらゆる弾幕を強化させる程度の能力
人物: 非常に物知りで、仲間を決して見捨てない優しさの持ち主。ただしプライドが高く、バカにされるとすぐに拗ねてそっぽを向いてしまう。本居小鈴に匹敵する圧倒的な解析能力を誇る。里中に落ちている『文々丸新聞』を集めるのが趣味で、その記事を活かして里の住人たちに妖怪の生態を教えている。

押領司 皇子(おうりょうじ おうじ)
年齢:16歳
二つ名:不羈奔放の蒼天脚(ふきほんぽうのそうてんきゃく)
能力:味方を空中飛行で浮かせる程度の能力
人物: 里一番の力持ち。頼まれ事は快く引き受けるが、危険なことには安易に手を貸さない堅実派。広い心で周囲を明るくするしっかり者で、翔我の良き相談相手。幼い頃から結界の内に閉じこもる生活に疑問を抱いており、「自分一人の力でも自立できること」を証明するために今回の計画に加わった。

下水流 楓鈴(しもづる ふうりん)
年齢:21歳
二つ名:清楚なる混沌のトリックスター(せいそなるこんとんのとりっくすたー)
能力:ありとあらゆる場所を錯乱させる程度の能力
人物: メンバーの中で唯一の大人である若い男性。常にポーカーフェイスで何を考えているか読めず、人を煙に巻くのが得意な「清楚なトリックスター」。子供の頃から里の外への憧れが強く、翔我たちの計画を聞きつけて自ら協力を懇願した。大好物の「レンコンの素揚げ」をいつも鯨呑亭から持ち帰っている。本人は無自覚だが、西行寺幽々子に次ぐ大食漢。

草牟田 呼子(そうむたよびこ)
年齢:18歳
二つ名:時を穿つ華飾の番人(ときをうがつかしょくのばんにん)
能力: 一定期間封印させる程度の能力
人物: 少年少女たちの中では最年長。老若男女を魅了する華やかなルックスと、常に明るい笑顔が特徴。いつもド派手な服を着ており、家族を放ったらかしにする自由人。代々井戸を守る役目の詳しい理由は知らないが、翔我たちに「願いを叶える井戸」の存在を教え、異変のきっかけを作った。実は霧雨魔理沙の父親(霧雨のおじさん)のまたいとこ(再従姉妹)にあたるが、魔理沙自身はその事実を全く知らない。

2024/12/25 22:10

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