文字サイズ変更

わたしなんて猫である

#4

2.ヒッコシ

冬の冷たさを抱えた春一番が、窓ガラスを小刻みに揺らした。

___私は今日も日向ぼっこに勤しんでいる。
小娘はいつもよりも外出することが増えた。小娘がいない家は静寂に包まれていて、私の鼻から出たり入ったりする空気の音すらも聞こえてくる。
こんな風に憩う時間も良いものだ。

…しかし、それは刹那にすぎない。
ドアの軋む音と共に小娘が帰ってきた。

「ただいま…」

いつになく鬱屈とした様子で部屋に入る姿が確認できる。
どうしたというのだろう。

今までも落ち込む様子を見ることはあったが、どれも私には関係のないことだった。
故に、今日も時が経てばいつも通りになるだろう。そう思っていた。

__小娘が帰宅してからいかばかり経ったかわからない。
天井のしみを見つめながら仰向けに寝ていると、母親が家に帰ってきた。

「ただいまー!いきなりですが重大発表がありまーす!」

鼓膜にべたりと張り付くような声で叫ぶ。思わず立ち上がってしまった。

「ヒッコシが決まりましたー!」

…ヒッコシ?生まれて初めて聞く言葉だった。助けを求めるように小娘を見ると、口をあんぐり開けたあと、やっぱり…と呟いていた。

「タマ、ヒッコシだって、ヒッコシ。違うお家に行くんだよ。」

領会した。ヒッコシとは引っ越し、つまり現在住んでいる場所などを別の場所へ移動することを指す。

「まあタマにはわかんないか。」

嘲るな。私は猫であるが人間の言語を理解している。
母親曰く、父親の仕事の事情で引っ越すのだと言う。それも理解した。

父親という者は仕事ばかりで滅多に私の前に姿を現さない。所謂社畜である。小娘には「お父さんがいないとタマはご飯食べていけないからね〜ありがとうだよ〜?」と言われたことがあるが、私の食事を毎日用意しているのは小娘だ。父親に憂慮することはないだろう。

作者メッセージ

前回からかなり間が空いてしまいましたが第二話です😖
続きもありますのでまたよろしくお願いします!

2025/04/07 16:27

寝庭ヤマネ。 ID:≫ 1iwy2uDiUZVWs
続きを執筆
小説を編集

パスワードをおぼえている場合はご自分で小説を削除してください。(削除方法
自分で削除するのは面倒くさい、忍びない、自分の責任にしたくない、などの理由で削除を依頼するのは絶対におやめください。

→本当に小説のパスワードを忘れてしまった
▼小説の削除を依頼する

小説削除依頼フォーム

お名前 ※必須
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
削除の理由 ※必須

なぜこの小説の削除を依頼したいですか

ご自分で投稿した小説ですか? ※必須

この小説は、あなたが投稿した小説で間違いありませんか?

削除後に復旧はできません※必須

削除したあとに復旧はできません。クレームも受け付けません。

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL
/ 4

コメント
[3]

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL