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わたしなんて猫である

#3

1.香水(後半)

『なんか騒がしいんですけどー!』
どたどたとわざとらしい足音を立ててやってきたのは我が家の同居人“[漢字]鈴[/漢字][ふりがな]すず[/ふりがな]”だった。

騒がしいのはどちらか。

彼女は中学1年生で、良くも悪くも天真爛漫である。そのくせ何か憂き目があるとわたしの繕い立ての毛を情動の涙で濡らして行くのだ。身勝手にも程がある。

故にわたしは彼女を「[漢字]小娘[/漢字][ふりがな]こむすめ[/ふりがな]」と呼んでいる。

しかし、小娘はわたしの朝晩のご飯を用意してくれている。わたしは食欲の傀儡なのだ。ぞんざいな態度を取ることは存続の危機に繋りかねない。

鈴には猫を被り続けるのが無難であろう。猫だけに。

…そんなくだらないことを思い巡らす間に小娘が部屋に入ってきた。

『なにこれ…』

戸惑いで固まった黒い瞳に青が混ざり、その色は藍錆色に見えた。

『タマ、香水瓶割ったでしょ!』

なるほど、床にこぼれた青い液体は香水であることが確認できた。
少し気になったので床に軽い足音を落とすようにして降り、液体に近づいた。確かに嗅いだのことのない匂いがする。

『危ないから近づいちゃダメだってば!』

お腹あたりをぐいと持ち上げられて、そのまま部屋の外に出されてしまった。
逆立った状態の柔らかい毛には手の跡が残ったままである。それも一回身震いすればすぐに元通りになるが。


__少し西に傾いた陽の光は未だ窓を突き刺している。

わたしはリビングで床の隙間を見つめながら腹を天井に向けて寝ていた。股の間に見える尻尾は、自分の意思に関係なく、ゆっくりと振り子のように揺れている。

『猫ってなんかやらかしちゃってもすぐ叱らないと意味ないんだって〜』
「じゃあ今叱っても意味ないねえ」
『猫だから仕方ないかねぇ……まあタマが怪我してなくてよかったわ。』

小娘は母親と何やら会話を交えていた。
わたしは彼女らが何を話しているか理解している。しかしながら知らないふりをした方が賢明であることは猫でも分かる。

『タマ〜?もう瓶割っちゃだめだよ?』

にゃあお。

…こう返事していれば、人間は皆見えもしないわたしの謝意を受容し、そして放免してくれるのだ。

作者メッセージ

見てくれてありがとうございます!

これにて「1.香水」は終了ですが、「わたしなんて猫である」はまだまだ続くので、何卒よろしくお願いします!

2024/12/23 19:34

寝庭ヤマネ。 ID:≫ipavMNl3BqOaw
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