二次創作
荳ュ邇句玄
#1
Prologue
[太字]乱数side[/太字]
無花果
『____分かっているな?』
乱数
「あぁ、分かったから、切るぞ、」
突然の電話に驚きつつ話に応じてみれば、
飴を渡す代わりに決勝に出たチームの
数名をマインドハックする手筈を
整えておけ、との事だった。
何故か聞いても一切答えてもらえずに
念押しだけを何度も何度も繰り返された。
標的も選び計画を整え終えては有るが…、
何故俺の近しい人ばかりが
狙われるのだろう。
乱数
「っ…、クソっ!」
通話を切ったスマホをひゅ、
と音が鳴って飛んでいく。
床に当たって出た音に
苛々が霧散して行く。
この素性が周りのものに
バレてしまったら大変だ。
誰も居ない様で盗聴もあり得るか、
誰も居ないはずの部屋で
外行きの顔を繕う。
乱数
「ぁ、どうしよ〜!
スマホ壊しちゃったぁ、
すぐ直るかなぁ…、」
静かな部屋に明るくて冷たい声が
虚しく響いている。
それを感じたまま
俺は嘆息し、部屋の片付けを始める。
[水平線]
[太字]零side[/太字]
零
「んで、総理さんはどー考えて
有力チームのメンバーを
中王区に引き入れてんだかねぇ?」
乙統女
「…説明する必要が?
貴方は飴村乱数の新品を
輸送するだけで良いのです。」
黒に似た茶のサングラスの奥で
乙統女の目が細まるのが見える。
何か画策中な様だが…、
零
「はっ!計画を知るのも駄目ってか、
情報統制しすぎじゃぁねぇの、」
乙統女
「幹部のポストに居る者、
勘解由小路無花果には
言ってありますから」
茶化して言った言葉に反論された
その言葉に引っかかる。
もう1人の幹部である
標的の妹の名が無かったのだ。
零
「んっで碧棺の名前がねぇんだ?」
乙統女
「碧棺、合歓には
言った後の影響が気になるので。」
零
「そいつにも結果以外見せられないたぁ
皮肉なもんだなぁ?
言の葉党自体が薄氷の上を
歩いてるっつーとこか?」
乙統女
「貴方には関係ないでしょう、
次の議題です。」
零「へぇへぇわぁってるよ、」
弄って嗤ってやると
むきになった様な言い方で注意される。
さぁて、どうすれば面白くなるか、
大人の悪巧みの会談は
仮面の下に悪意を隠して更けて行く。
[水平線]
[太字]三郎side[/太字]
一郎
「じゃあ行って来るわ!」
二郎
「行ってらっしゃい兄貴!」
三郎
「行ってらっしゃいませ!一兄!」
ぱたん、と扉が閉まった瞬間
笑顔をやめて考え始める。
一兄からは飴村のご指名の依頼、と
聞いたけど…、絶対に厄介だろう。
夜までには帰るらしいけど…、
心配でしか無い。
流石に追いかけられるわけでも無いしな…
もし呼ばれた時に動ける様に
宿題を終わらせておこう、
とか思って部屋に戻っていた。
_______これが絶望的な再会までの
カウントダウンだったとは知らずに。
[水平線]
[太字]銃兎side[/太字]
左馬刻
「おーおー何サマだァ?
テメェゴラ、
組の御法度犯しといて
舐め腐ってんじゃァねェぞ、」
銃兎
「左馬刻、もう辞めなさい、
それは豚箱に入れる
エサみたいな者ですし、」
左馬刻
「…おー、」
スチール製であろう箱の詰まれた倉庫に
追い詰めた左馬刻が自分の“元舎弟”の
胸ぐらを掴んで殴っていた。
後でどうにかするには死んでいては
困る訳で、止めてやると、
箱の山にそのまま投げ捨てて睨んでいる。
投げ捨てた直後に左馬刻の携帯に
何か着信が来た様だ。
銃兎
「左馬刻、これの処理は
しておきますから
電話に出てきたらどうです?」
左馬刻
「おぅ、頼んだ、すぐ戻るわ、」
歩きながらひら、と手を振り
電話の内容からか表情が変わる
左馬刻を眺めながら拘束を終わらせる。
左馬刻
「すまねェがそのまま頼んで良いか?
乱数に呼び出されちまって…
合歓の関係する話らしい。」
銃兎
「えぇ、しかし大変ですねぇ
妹の話になったら
なりふり構えぬなんて、」
すまなそうな顔をして
話す左馬刻をくす、と笑いながら
揶揄い反応を見る。
左馬刻
「ハッ、言ってろ、」
キレるのを予想していたが、
珍しく上機嫌に手を振って歩いていく。
少し肩透かしを喰らい、
驚きながら左馬刻を見送った。
_________そして、[漢字]彼奴[/漢字][ふりがな]左馬刻[/ふりがな]は消えた。
[水平線]
[太字]一二三side[/太字]
一二三
「っはよー!独歩ちーん!」
起きていないであろう同居人を起こしに
ばんっ、と扉を開け入ってみると、
独歩
「あぁ、おはよう、」
一二三
「おー珍しいなー早く起きてんの、」
なぜか起きて全ての準備を終えていた。
…、何か降るんだろうか、
それとも何かあったのか、
独歩
「今日は早く仕事終わらせて
行かないといけない所が有ってな…
うぅ、分不相応さが怖い…、」
独歩は珍しいか、と苦笑してそれから
胃が痛い、とでも言う様に
お腹を抑えて不安そうな顔をする。
一二三
「誰か知んねーけど
独歩ちんなら大丈夫っしょ!
がんば!」
独歩
「能天気な…、
あっもう時間だから行くな!
いってきます!」
一二三
「おー!いってら〜!」
ばしばしと叩いて
元気出させようとすると、
独歩は呆れた声を出して
時計を見てから焦った様に
家から駆け出して行った。
これからも続くのだと
信じて疑わずに見送っていた。
_______ちゃんとその行く場所を
聞いておけば良かった。
それ以降会えなかったのだから、
[水平線]
[太字]十四side[/太字]
空却
「拙僧は一回東都に行って来る!
十四、お前は修行、
欠かすんじゃねぇぞ!」
お寺掃除中の唐突な言葉に
数秒硬直し、必死に言葉を絞り出す。
十四
「な、何で東都に…、?
まだラップバトルは
先じゃないっすかぁ、」
空却
「あー…拙僧の大事な事の話で
シブヤのに呼び出されちまってな、
それが終わったら直ぐ戻って来るわ、」
東都に興味なんかねぇしなー、
とでも言う様に言って
ひら、と手を振って答えて来る。
十四
「じゃあ待ってるっすね、!
後でラップの修行つけて
欲しいっす!」
空却
「おぅ!んじゃ明後日
明々後日ってとこだな、
また違う日にな、」
十四
「はいっす!
あ、ライブの準備あるんで
自分はここで帰るっすね、
また後日っす!」
空却
「おぅ!じゃーな!」
_______振り向かずに
走った事を後悔した。
あの後、空却さんは
戻って来なかったから。
[水平線]
[太字]帝統side[/太字]
帝統
「おっ、幻太郎〜いて良かったぜ〜、」
幻太郎
「また貴方ですか、
今度もまたご飯をせびりに?」
からん、とドアベルを鳴らし、
幻太郎の居る席に駆け込んでいく。
ちょっと変な目で見られたが
俺は今それどころじゃねぇんだ…!
帝統
「え、えーっと、そうだな、
ここ数日食ってなくて死にそうだから
飯恵んでくんねぇかなぁ…って…、」
幻太郎
「はいはい、良いでしょう。
後で借金をちゃんと
返してくれるならですけど、」
帝統
「うぐっ…、も、もうちょっと
待って下さぁい…、」
頼んで良し、と言う様に
メニューを渡してくる
幻太郎の慈悲と借金の催促の
忠告が同時に胸に突き刺さってくる。
乱数
「あ!幻太郎も帝統も居た〜っ!」
帝統
「お、乱数じゃねぇか〜!」
他愛も無い話の間にからん、と
ドアベルが鳴り、見知った顔、
乱数が入ってきた。
幻太郎
「はぁ、何故揃うんでしょうねぇ…、」
帝統
「お前の行きつけのカフェが
バレバレだからだろー?」
乱数
「だね〜♪ここ来れば
帝統も居るかな〜って!」
恨みがましい様な声で
幻太郎にチクチク言われるが
2人で笑って流しておく。
何時も通りのカフェでの日常を過ごし、
夕方に差し掛かってきたからか
西陽がカフェに入ってくる。
幻太郎
「では、時間も経ちましたし
解散にしましょうか、」
乱数
「は〜いっ♪あっ!
幻太郎は用事が有るから
一緒に来て欲しいなぁ〜、って、」
何かあるのか、幻太郎にだけ
用事があるみたいだった。
きゅるん、と効果音の付きそうな仕草で
乱数が話している。
幻太郎
「はいはい、では、帝統はまた何処か
店を探すんでしょう?
此処で別れましょうか、」
帝統
「おー、また明日な!」
手を振り、借金を返す為にも
どっかで働くか、と
解散後に店を探して歩き始めた。
______だが、着いて
行っておけばよかったのだ。
あの日、ボロボロの乱数が走って来て、[漢字] 彼奴[/漢字][ふりがな]幻太郎[/ふりがな]が襲われた。
なんて聞くぐらいだったなら。
[水平線]
[太字]乱数side[/太字]
乱数
「幻太郎には来て欲しいトコがあってね〜
まぁボクのオシゴト手伝って欲しい
だけなんだケド〜♪」
嘘は1つも言っていない。
…、ただ、‘デザイナー’ではなく、
‘中王区’の仕事なだけであって。
当たり障りのない事を
話す声が止まりそうだ。
笑っている事すら辛い。
仲間を騙すのは何時まで
経っても辛い様だ。
罪悪感に潰されてしまいそうになる。
幻太郎
「はぁ、着せ替え人形にされるなら
小生早めに帰りますからね、
…、と、それにしても
路地に入り込みますね、」
乱数
「他のモデルさんが
あっちで待ち合わせなんだ〜
ほらほら!居た居た〜♪」
幻太郎の違和感を払拭出来ずに逃げる様に
待ち合わせ場所に走ると、
空却は苛々したまま黙っていて
一郎と左馬刻が
何か喧嘩になっている様だ、
止めようかまず止められるのか、と
おろおろしながら独歩が居た、
流石に可哀想だな…、
乱数
「ちょっとちょっと〜!
ケンカはメッ!って言ったじゃんか!」
左馬刻
「やぁっと来やがったな、テメェ
何で此奴が居んだよ!」
一郎
「乱数の依頼で来たら何でコイツが
今此処に居んだよ?」
止めに入ると互いに指差し合いながら
同時に言われる。…、いや、仲良いな、
空却
「おいお前話は何処行きやがったんだよ!
んでこんなに人数がいやがんだ?」
近づいて来て掴み掛かって来ようとする
空却の手を避け、物陰に隠れる。
独歩
「俺はモデルで呼び出されましたけど…、
何でこんなに集まってるんだ…?」
幻太郎
「意外な方々を集めましたねぇ、
乱数、…、乱数?」
心細くなったのか独歩が
周りを見渡す幻太郎に近づき
一郎と左馬刻から離れる様な位置を取る。
幻太郎は隠れたボクを探している様だ。
まぁ、すぐ見つかるだろうけど、
乱数
「やぁやぁやぁ、」
乱数
「よく集まってくれたね〜♪」
一郎
「なっ…、」
左馬刻
「乱数が5人になってやがる…⁈」
乱数
「そんな顔しないでよ〜♪」
空却
「なっ…、何なんだ此奴等!」
乱数
「悲しくなっちゃうよ〜?えーん☆」
物陰から出る直前に他の“ボク”が前に出て
集まって行くのに紛れる様に入る。
独歩
「飴村さんが何人も…、幻覚か…、?」
幻太郎
「幻覚などではありません!
皆さんマイクを使って撃退を!」
乱数
「あっれ〜?戦うつもり?
良いけどネ〜、♪」
ボク以外の全員がマイクを出し始めて、
他のボクが少し下がる。
一郎
「んじゃあ無駄口を
叩かせる必要はねぇ!行くぞ!」
乱数
「あーあ、失敗作が傷つくだけなのに、
バッカだなぁ…、」
乱数
「まぁ良いでしょー、
じゃあ1番よろしく〜♪」
乱数
「…、あぁ、」
ラップが始まった後に他のボクが
『全て受け止めろ、』と言う
意味合いで軽口を叩く。
終わって来た攻撃を全て受け切って
吹き飛ばされかける。
乱数
「っ、ぐ、後はよろしく、『ボク達』、」
幻太郎
「乱数!何故こんな事を…、」
乱数
「ボクの事信じて来てくれて
皆ありがとー♪
『ボク達』の攻撃、頑張って耐えてね☆」
無理にでも笑って
飄々した様な態度を作る。
耐えるなんて無理だろうけど、
少しのお願いを込めて戯け、
ひらひらと手を振って
路地の奥に進もうとする。
左馬刻
「テメェ乱数!どういうつもりだ!」
乱数
「どーゆーつもりも何も、
ボクはポッセの所に行くだけだよ?
幻太郎もポッセだけど〜、
片方が何かに遭ってないか
すーっごく心配だしね☆」
幻太郎
「…、ならば行っても良いとしましょう、
結局この事態を
収束させる気は無い様ですし、」
一郎
「…、あぁ、そうだな、
俺等は撃退に集中するぞ、」
振り返って左馬刻の怒鳴りに答える。
その答えに幻太郎が諦めた様に
溜息を吐き全員の意識を他へ向かせる。
乱数
「「「「じゃあ君たちは〜、
おカクゴをっ♪」」」」
幻太郎
「来ます!耐えて下さいっ!」
他のボクが真性ヒプノシスマイクを
起動してラップを始めるのを横目で見て
路地の奥へ今度こそ進む。
乱数
「皆、ごめん…、」
何を言ってももう記憶には
残らぬだろうから、
小さな謝罪の言葉を残し、
唇を噛んで帝統を探しに、
計画を遂行する為に走り出した。
無花果
『____分かっているな?』
乱数
「あぁ、分かったから、切るぞ、」
突然の電話に驚きつつ話に応じてみれば、
飴を渡す代わりに決勝に出たチームの
数名をマインドハックする手筈を
整えておけ、との事だった。
何故か聞いても一切答えてもらえずに
念押しだけを何度も何度も繰り返された。
標的も選び計画を整え終えては有るが…、
何故俺の近しい人ばかりが
狙われるのだろう。
乱数
「っ…、クソっ!」
通話を切ったスマホをひゅ、
と音が鳴って飛んでいく。
床に当たって出た音に
苛々が霧散して行く。
この素性が周りのものに
バレてしまったら大変だ。
誰も居ない様で盗聴もあり得るか、
誰も居ないはずの部屋で
外行きの顔を繕う。
乱数
「ぁ、どうしよ〜!
スマホ壊しちゃったぁ、
すぐ直るかなぁ…、」
静かな部屋に明るくて冷たい声が
虚しく響いている。
それを感じたまま
俺は嘆息し、部屋の片付けを始める。
[水平線]
[太字]零side[/太字]
零
「んで、総理さんはどー考えて
有力チームのメンバーを
中王区に引き入れてんだかねぇ?」
乙統女
「…説明する必要が?
貴方は飴村乱数の新品を
輸送するだけで良いのです。」
黒に似た茶のサングラスの奥で
乙統女の目が細まるのが見える。
何か画策中な様だが…、
零
「はっ!計画を知るのも駄目ってか、
情報統制しすぎじゃぁねぇの、」
乙統女
「幹部のポストに居る者、
勘解由小路無花果には
言ってありますから」
茶化して言った言葉に反論された
その言葉に引っかかる。
もう1人の幹部である
標的の妹の名が無かったのだ。
零
「んっで碧棺の名前がねぇんだ?」
乙統女
「碧棺、合歓には
言った後の影響が気になるので。」
零
「そいつにも結果以外見せられないたぁ
皮肉なもんだなぁ?
言の葉党自体が薄氷の上を
歩いてるっつーとこか?」
乙統女
「貴方には関係ないでしょう、
次の議題です。」
零「へぇへぇわぁってるよ、」
弄って嗤ってやると
むきになった様な言い方で注意される。
さぁて、どうすれば面白くなるか、
大人の悪巧みの会談は
仮面の下に悪意を隠して更けて行く。
[水平線]
[太字]三郎side[/太字]
一郎
「じゃあ行って来るわ!」
二郎
「行ってらっしゃい兄貴!」
三郎
「行ってらっしゃいませ!一兄!」
ぱたん、と扉が閉まった瞬間
笑顔をやめて考え始める。
一兄からは飴村のご指名の依頼、と
聞いたけど…、絶対に厄介だろう。
夜までには帰るらしいけど…、
心配でしか無い。
流石に追いかけられるわけでも無いしな…
もし呼ばれた時に動ける様に
宿題を終わらせておこう、
とか思って部屋に戻っていた。
_______これが絶望的な再会までの
カウントダウンだったとは知らずに。
[水平線]
[太字]銃兎side[/太字]
左馬刻
「おーおー何サマだァ?
テメェゴラ、
組の御法度犯しといて
舐め腐ってんじゃァねェぞ、」
銃兎
「左馬刻、もう辞めなさい、
それは豚箱に入れる
エサみたいな者ですし、」
左馬刻
「…おー、」
スチール製であろう箱の詰まれた倉庫に
追い詰めた左馬刻が自分の“元舎弟”の
胸ぐらを掴んで殴っていた。
後でどうにかするには死んでいては
困る訳で、止めてやると、
箱の山にそのまま投げ捨てて睨んでいる。
投げ捨てた直後に左馬刻の携帯に
何か着信が来た様だ。
銃兎
「左馬刻、これの処理は
しておきますから
電話に出てきたらどうです?」
左馬刻
「おぅ、頼んだ、すぐ戻るわ、」
歩きながらひら、と手を振り
電話の内容からか表情が変わる
左馬刻を眺めながら拘束を終わらせる。
左馬刻
「すまねェがそのまま頼んで良いか?
乱数に呼び出されちまって…
合歓の関係する話らしい。」
銃兎
「えぇ、しかし大変ですねぇ
妹の話になったら
なりふり構えぬなんて、」
すまなそうな顔をして
話す左馬刻をくす、と笑いながら
揶揄い反応を見る。
左馬刻
「ハッ、言ってろ、」
キレるのを予想していたが、
珍しく上機嫌に手を振って歩いていく。
少し肩透かしを喰らい、
驚きながら左馬刻を見送った。
_________そして、[漢字]彼奴[/漢字][ふりがな]左馬刻[/ふりがな]は消えた。
[水平線]
[太字]一二三side[/太字]
一二三
「っはよー!独歩ちーん!」
起きていないであろう同居人を起こしに
ばんっ、と扉を開け入ってみると、
独歩
「あぁ、おはよう、」
一二三
「おー珍しいなー早く起きてんの、」
なぜか起きて全ての準備を終えていた。
…、何か降るんだろうか、
それとも何かあったのか、
独歩
「今日は早く仕事終わらせて
行かないといけない所が有ってな…
うぅ、分不相応さが怖い…、」
独歩は珍しいか、と苦笑してそれから
胃が痛い、とでも言う様に
お腹を抑えて不安そうな顔をする。
一二三
「誰か知んねーけど
独歩ちんなら大丈夫っしょ!
がんば!」
独歩
「能天気な…、
あっもう時間だから行くな!
いってきます!」
一二三
「おー!いってら〜!」
ばしばしと叩いて
元気出させようとすると、
独歩は呆れた声を出して
時計を見てから焦った様に
家から駆け出して行った。
これからも続くのだと
信じて疑わずに見送っていた。
_______ちゃんとその行く場所を
聞いておけば良かった。
それ以降会えなかったのだから、
[水平線]
[太字]十四side[/太字]
空却
「拙僧は一回東都に行って来る!
十四、お前は修行、
欠かすんじゃねぇぞ!」
お寺掃除中の唐突な言葉に
数秒硬直し、必死に言葉を絞り出す。
十四
「な、何で東都に…、?
まだラップバトルは
先じゃないっすかぁ、」
空却
「あー…拙僧の大事な事の話で
シブヤのに呼び出されちまってな、
それが終わったら直ぐ戻って来るわ、」
東都に興味なんかねぇしなー、
とでも言う様に言って
ひら、と手を振って答えて来る。
十四
「じゃあ待ってるっすね、!
後でラップの修行つけて
欲しいっす!」
空却
「おぅ!んじゃ明後日
明々後日ってとこだな、
また違う日にな、」
十四
「はいっす!
あ、ライブの準備あるんで
自分はここで帰るっすね、
また後日っす!」
空却
「おぅ!じゃーな!」
_______振り向かずに
走った事を後悔した。
あの後、空却さんは
戻って来なかったから。
[水平線]
[太字]帝統side[/太字]
帝統
「おっ、幻太郎〜いて良かったぜ〜、」
幻太郎
「また貴方ですか、
今度もまたご飯をせびりに?」
からん、とドアベルを鳴らし、
幻太郎の居る席に駆け込んでいく。
ちょっと変な目で見られたが
俺は今それどころじゃねぇんだ…!
帝統
「え、えーっと、そうだな、
ここ数日食ってなくて死にそうだから
飯恵んでくんねぇかなぁ…って…、」
幻太郎
「はいはい、良いでしょう。
後で借金をちゃんと
返してくれるならですけど、」
帝統
「うぐっ…、も、もうちょっと
待って下さぁい…、」
頼んで良し、と言う様に
メニューを渡してくる
幻太郎の慈悲と借金の催促の
忠告が同時に胸に突き刺さってくる。
乱数
「あ!幻太郎も帝統も居た〜っ!」
帝統
「お、乱数じゃねぇか〜!」
他愛も無い話の間にからん、と
ドアベルが鳴り、見知った顔、
乱数が入ってきた。
幻太郎
「はぁ、何故揃うんでしょうねぇ…、」
帝統
「お前の行きつけのカフェが
バレバレだからだろー?」
乱数
「だね〜♪ここ来れば
帝統も居るかな〜って!」
恨みがましい様な声で
幻太郎にチクチク言われるが
2人で笑って流しておく。
何時も通りのカフェでの日常を過ごし、
夕方に差し掛かってきたからか
西陽がカフェに入ってくる。
幻太郎
「では、時間も経ちましたし
解散にしましょうか、」
乱数
「は〜いっ♪あっ!
幻太郎は用事が有るから
一緒に来て欲しいなぁ〜、って、」
何かあるのか、幻太郎にだけ
用事があるみたいだった。
きゅるん、と効果音の付きそうな仕草で
乱数が話している。
幻太郎
「はいはい、では、帝統はまた何処か
店を探すんでしょう?
此処で別れましょうか、」
帝統
「おー、また明日な!」
手を振り、借金を返す為にも
どっかで働くか、と
解散後に店を探して歩き始めた。
______だが、着いて
行っておけばよかったのだ。
あの日、ボロボロの乱数が走って来て、[漢字] 彼奴[/漢字][ふりがな]幻太郎[/ふりがな]が襲われた。
なんて聞くぐらいだったなら。
[水平線]
[太字]乱数side[/太字]
乱数
「幻太郎には来て欲しいトコがあってね〜
まぁボクのオシゴト手伝って欲しい
だけなんだケド〜♪」
嘘は1つも言っていない。
…、ただ、‘デザイナー’ではなく、
‘中王区’の仕事なだけであって。
当たり障りのない事を
話す声が止まりそうだ。
笑っている事すら辛い。
仲間を騙すのは何時まで
経っても辛い様だ。
罪悪感に潰されてしまいそうになる。
幻太郎
「はぁ、着せ替え人形にされるなら
小生早めに帰りますからね、
…、と、それにしても
路地に入り込みますね、」
乱数
「他のモデルさんが
あっちで待ち合わせなんだ〜
ほらほら!居た居た〜♪」
幻太郎の違和感を払拭出来ずに逃げる様に
待ち合わせ場所に走ると、
空却は苛々したまま黙っていて
一郎と左馬刻が
何か喧嘩になっている様だ、
止めようかまず止められるのか、と
おろおろしながら独歩が居た、
流石に可哀想だな…、
乱数
「ちょっとちょっと〜!
ケンカはメッ!って言ったじゃんか!」
左馬刻
「やぁっと来やがったな、テメェ
何で此奴が居んだよ!」
一郎
「乱数の依頼で来たら何でコイツが
今此処に居んだよ?」
止めに入ると互いに指差し合いながら
同時に言われる。…、いや、仲良いな、
空却
「おいお前話は何処行きやがったんだよ!
んでこんなに人数がいやがんだ?」
近づいて来て掴み掛かって来ようとする
空却の手を避け、物陰に隠れる。
独歩
「俺はモデルで呼び出されましたけど…、
何でこんなに集まってるんだ…?」
幻太郎
「意外な方々を集めましたねぇ、
乱数、…、乱数?」
心細くなったのか独歩が
周りを見渡す幻太郎に近づき
一郎と左馬刻から離れる様な位置を取る。
幻太郎は隠れたボクを探している様だ。
まぁ、すぐ見つかるだろうけど、
乱数
「やぁやぁやぁ、」
乱数
「よく集まってくれたね〜♪」
一郎
「なっ…、」
左馬刻
「乱数が5人になってやがる…⁈」
乱数
「そんな顔しないでよ〜♪」
空却
「なっ…、何なんだ此奴等!」
乱数
「悲しくなっちゃうよ〜?えーん☆」
物陰から出る直前に他の“ボク”が前に出て
集まって行くのに紛れる様に入る。
独歩
「飴村さんが何人も…、幻覚か…、?」
幻太郎
「幻覚などではありません!
皆さんマイクを使って撃退を!」
乱数
「あっれ〜?戦うつもり?
良いけどネ〜、♪」
ボク以外の全員がマイクを出し始めて、
他のボクが少し下がる。
一郎
「んじゃあ無駄口を
叩かせる必要はねぇ!行くぞ!」
乱数
「あーあ、失敗作が傷つくだけなのに、
バッカだなぁ…、」
乱数
「まぁ良いでしょー、
じゃあ1番よろしく〜♪」
乱数
「…、あぁ、」
ラップが始まった後に他のボクが
『全て受け止めろ、』と言う
意味合いで軽口を叩く。
終わって来た攻撃を全て受け切って
吹き飛ばされかける。
乱数
「っ、ぐ、後はよろしく、『ボク達』、」
幻太郎
「乱数!何故こんな事を…、」
乱数
「ボクの事信じて来てくれて
皆ありがとー♪
『ボク達』の攻撃、頑張って耐えてね☆」
無理にでも笑って
飄々した様な態度を作る。
耐えるなんて無理だろうけど、
少しのお願いを込めて戯け、
ひらひらと手を振って
路地の奥に進もうとする。
左馬刻
「テメェ乱数!どういうつもりだ!」
乱数
「どーゆーつもりも何も、
ボクはポッセの所に行くだけだよ?
幻太郎もポッセだけど〜、
片方が何かに遭ってないか
すーっごく心配だしね☆」
幻太郎
「…、ならば行っても良いとしましょう、
結局この事態を
収束させる気は無い様ですし、」
一郎
「…、あぁ、そうだな、
俺等は撃退に集中するぞ、」
振り返って左馬刻の怒鳴りに答える。
その答えに幻太郎が諦めた様に
溜息を吐き全員の意識を他へ向かせる。
乱数
「「「「じゃあ君たちは〜、
おカクゴをっ♪」」」」
幻太郎
「来ます!耐えて下さいっ!」
他のボクが真性ヒプノシスマイクを
起動してラップを始めるのを横目で見て
路地の奥へ今度こそ進む。
乱数
「皆、ごめん…、」
何を言ってももう記憶には
残らぬだろうから、
小さな謝罪の言葉を残し、
唇を噛んで帝統を探しに、
計画を遂行する為に走り出した。
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