推しの授業は4時間目♡
#1
私は[漢字]萩野風花[/漢字][ふりがな]はぎのふうか[/ふりがな]。1年4組25番、吹奏楽部!
制服は慣れないけど、これから青春が始まると思うと、すっごくわくわくする!!...あ、でも、勉強はちょっと...。勉強もできないけど運動はもっと無理!!勉強頑張んなきゃな...。
入学式の翌日である今日は、初めての授業。時間割は学活、学活、国語、数学。小学生まで45分授業だったのに、5分も増えるなんて!おまけに中休みも無くなって、朝から4時間目まで遊ぶ暇無し!しかも数学って最悪......。
学活は担任の先生の自己紹介や、委員会決め、係決めなど、新学期恒例行事だった。...担任の先生がすこーし独特の人で。
[太字]「ハーイ!エブリワン!!」[/太字]って叫んで教室に入ってきた。...英語の先生か、と思ってたら。[太字][大文字]「おまえら気分はクレッシェンドしてるかぁぁぁ!!」[/大文字][/太字]...音楽か。その声量フォルティッシモの先生は、佐藤先生といった。佐藤先生は合唱部の顧問で、この学校には3年ほどいるという。年齢は多分4、50代。細身で高身長。顔も良くも悪くもって感じで、最初のノリも含め、私の苦手なタイプだと確信した。
地獄のような1時間目をやっと終え、10分休みに入った。廊下は2、3人で固まってる女子が沢山いた。...ああいうのは苦手。群れが苦手って訳じゃなくて、ああいう人たちは、どあ塞いだり廊下塞いだりで結構邪魔。陰キャに近い私とは程遠い存在なのだ。
2時間目は学年集会で、食堂集合だった。食堂は2階。それは覚えてる。けど、私は完全に迷った。みんなについて行けばいっか、みたいな考えしてたら、みんなどっか行っちゃった。どうしよう...。とりあえず進んでみる。____あれ、ここさっきも通った...。...じゃあこっち......?...いや、こっちは行き止まり...。2時間目まであと2分。あぁ、どうしよう...。廊下に人はいない。先生も、生徒も。人に聞けるわけもなく、1人でさまよっていた。やばい、こうしているうちに1分経ったんじゃ...?頭の中は真っ白。どうしよう...!!
「あれ、」
後ろから、若い女の人の声がした。
「1年生だよね?...どうしたの?」
「えっと...。そ、その、迷っちゃって...。」
「そっか。...私1年生担当なの。一緒に行こう。」
...よかった...。この先生がいなければ、私はずっと廊下をうろうろしていた。
食堂は広く、当たり前だけどみんな椅子に座っていた。周りの目は怖かったけど、堂々と歩く先生を見て、あまり怖くはなかった。
「間に合ったね」
先生の笑顔は、眩しかった。
さっきは焦ってて気づかなかったけど、私は、
この先生が、好きだ。
学活も国語も気分が浮かなくて、楽しくもなかった。算数が嫌いな私は、数学も嫌いだろうと思っていた。
本鈴5分前、さっきの先生が教室に入ってきた。...やっぱり可愛い。可愛いと思う。
その先生に、みんな釘付けだった。みんな先生の方を見て、じっとしていた。
そして4時間目が始まった。
「皆さんこんにちは。1年1組副担任の[漢字]石田惟[/漢字][ふりがな]いしだゆい[/ふりがな]です。」
さらさらでつやつやの黒いロングヘア、ビー玉みたいに美しい瞳、透き通る声、丸い字。____先生にしては、可愛すぎる。
50分は、一瞬のように過ぎていった。
翌日も数学の授業があった。
分かりやすく、優しい先生は、とても人気があった。ナンパしてる男子もいた。理系だから厳しかったり、めっちゃしっかりしてるのかと勝手に思っていたら、おっちょこちょいだった。でも私は、「ちゃんとしてる先生」より「少し抜けてる先生」の方が好きだ。
それから数学が楽しくなった。
学校が楽しくなった。
初めて、先生を好きになった。
「今日は正負の数の____」
黒板にはすらすらと、丸い字が書かれていった。
「それじゃあ教科書6ページを開いてください」
まだ6ページ...。1番最後のページは259ページだ。ってことは、あと253ページもあるってこと?!そんなことを考えてると、授業はとっくに進んでた。急いでノートを書いたから、正直、自分で見ても汚いと思う。
「じゃあこの問題____萩野さん」
...っ。
「えっと...。......。」
私は話すのが苦手だ。話すことが怖かった。
吃音症っていうのもあったけど、視線が怖かった。
答えはわかる。けど、言葉に出ない。
「...」
ついに黙ってしまった私。周りがざわざわし始めた。
「はやく言えよ」
「わかんないんじゃない?」
「もーはやく...」
わかってる、わかってる...。ごめんなさいごめんなさい...。
私のせいで授業が止まってる。みんなの数分間、奪ってる。
「ねぇまだ?」
「はやく」
ごめんなさい...。
「こんなん簡単だろ」
「おっそいんだけど」
ごめん...なさい...。
いつの間にか泣いてた私。何も言わずに、泣いてた。
「...あっ...。えっと...。」
答えはマイナス5。でも「ま」の文字が出ない。喉の奥に詰まってる。
「あっ、...ぅあ、ぅぅぁあ...。」
秒針がカチカチ動いている。心臓の鼓動が聞こえる。
「まっ、ママママイナス5...っ。」
やっと言えた...。
「[大文字]普通に[/大文字]喋れねぇのかよ」
「[大文字]だっさ[/大文字]」
「[大文字]わかってんならさっさと言えよ[/大文字]」
...言えるなら...とっくに言ってるよ...____
「はい次」
先生は何事も無かったように続けてくれた。
それが1番嬉しかった。
制服は慣れないけど、これから青春が始まると思うと、すっごくわくわくする!!...あ、でも、勉強はちょっと...。勉強もできないけど運動はもっと無理!!勉強頑張んなきゃな...。
入学式の翌日である今日は、初めての授業。時間割は学活、学活、国語、数学。小学生まで45分授業だったのに、5分も増えるなんて!おまけに中休みも無くなって、朝から4時間目まで遊ぶ暇無し!しかも数学って最悪......。
学活は担任の先生の自己紹介や、委員会決め、係決めなど、新学期恒例行事だった。...担任の先生がすこーし独特の人で。
[太字]「ハーイ!エブリワン!!」[/太字]って叫んで教室に入ってきた。...英語の先生か、と思ってたら。[太字][大文字]「おまえら気分はクレッシェンドしてるかぁぁぁ!!」[/大文字][/太字]...音楽か。その声量フォルティッシモの先生は、佐藤先生といった。佐藤先生は合唱部の顧問で、この学校には3年ほどいるという。年齢は多分4、50代。細身で高身長。顔も良くも悪くもって感じで、最初のノリも含め、私の苦手なタイプだと確信した。
地獄のような1時間目をやっと終え、10分休みに入った。廊下は2、3人で固まってる女子が沢山いた。...ああいうのは苦手。群れが苦手って訳じゃなくて、ああいう人たちは、どあ塞いだり廊下塞いだりで結構邪魔。陰キャに近い私とは程遠い存在なのだ。
2時間目は学年集会で、食堂集合だった。食堂は2階。それは覚えてる。けど、私は完全に迷った。みんなについて行けばいっか、みたいな考えしてたら、みんなどっか行っちゃった。どうしよう...。とりあえず進んでみる。____あれ、ここさっきも通った...。...じゃあこっち......?...いや、こっちは行き止まり...。2時間目まであと2分。あぁ、どうしよう...。廊下に人はいない。先生も、生徒も。人に聞けるわけもなく、1人でさまよっていた。やばい、こうしているうちに1分経ったんじゃ...?頭の中は真っ白。どうしよう...!!
「あれ、」
後ろから、若い女の人の声がした。
「1年生だよね?...どうしたの?」
「えっと...。そ、その、迷っちゃって...。」
「そっか。...私1年生担当なの。一緒に行こう。」
...よかった...。この先生がいなければ、私はずっと廊下をうろうろしていた。
食堂は広く、当たり前だけどみんな椅子に座っていた。周りの目は怖かったけど、堂々と歩く先生を見て、あまり怖くはなかった。
「間に合ったね」
先生の笑顔は、眩しかった。
さっきは焦ってて気づかなかったけど、私は、
この先生が、好きだ。
学活も国語も気分が浮かなくて、楽しくもなかった。算数が嫌いな私は、数学も嫌いだろうと思っていた。
本鈴5分前、さっきの先生が教室に入ってきた。...やっぱり可愛い。可愛いと思う。
その先生に、みんな釘付けだった。みんな先生の方を見て、じっとしていた。
そして4時間目が始まった。
「皆さんこんにちは。1年1組副担任の[漢字]石田惟[/漢字][ふりがな]いしだゆい[/ふりがな]です。」
さらさらでつやつやの黒いロングヘア、ビー玉みたいに美しい瞳、透き通る声、丸い字。____先生にしては、可愛すぎる。
50分は、一瞬のように過ぎていった。
翌日も数学の授業があった。
分かりやすく、優しい先生は、とても人気があった。ナンパしてる男子もいた。理系だから厳しかったり、めっちゃしっかりしてるのかと勝手に思っていたら、おっちょこちょいだった。でも私は、「ちゃんとしてる先生」より「少し抜けてる先生」の方が好きだ。
それから数学が楽しくなった。
学校が楽しくなった。
初めて、先生を好きになった。
「今日は正負の数の____」
黒板にはすらすらと、丸い字が書かれていった。
「それじゃあ教科書6ページを開いてください」
まだ6ページ...。1番最後のページは259ページだ。ってことは、あと253ページもあるってこと?!そんなことを考えてると、授業はとっくに進んでた。急いでノートを書いたから、正直、自分で見ても汚いと思う。
「じゃあこの問題____萩野さん」
...っ。
「えっと...。......。」
私は話すのが苦手だ。話すことが怖かった。
吃音症っていうのもあったけど、視線が怖かった。
答えはわかる。けど、言葉に出ない。
「...」
ついに黙ってしまった私。周りがざわざわし始めた。
「はやく言えよ」
「わかんないんじゃない?」
「もーはやく...」
わかってる、わかってる...。ごめんなさいごめんなさい...。
私のせいで授業が止まってる。みんなの数分間、奪ってる。
「ねぇまだ?」
「はやく」
ごめんなさい...。
「こんなん簡単だろ」
「おっそいんだけど」
ごめん...なさい...。
いつの間にか泣いてた私。何も言わずに、泣いてた。
「...あっ...。えっと...。」
答えはマイナス5。でも「ま」の文字が出ない。喉の奥に詰まってる。
「あっ、...ぅあ、ぅぅぁあ...。」
秒針がカチカチ動いている。心臓の鼓動が聞こえる。
「まっ、ママママイナス5...っ。」
やっと言えた...。
「[大文字]普通に[/大文字]喋れねぇのかよ」
「[大文字]だっさ[/大文字]」
「[大文字]わかってんならさっさと言えよ[/大文字]」
...言えるなら...とっくに言ってるよ...____
「はい次」
先生は何事も無かったように続けてくれた。
それが1番嬉しかった。
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