流れ星の夜
#1
病院の窓から冷たい風が入り込む。僕にとってはぬるい風だった。なぜなら、彼女が亡くなりそうになっているのだから。半分焦りながら、もう半分は諦めながら心電図モニターを見ると心拍数が10ぐらい。さっきまでは20だったのに。次に彼女を見て僕の手を掴んだ。……だんだん手が冷たくなっていく。彼女は僕を見て
「さよ……なら。ま……たね」
そう言って彼女は頬を少し濡らしながら去った。この時、心電図モニターの音が一定の音で高く鳴った。その途端、僕は彼女の体の上で泣いた。その時、戻ってきて欲しいと心から強く願った。でも、現実は願いを叶えてくれなかった。そもそも、この世界はファンタジーみたいに魔法もなく、ゾンビもいない。だから、魔法で治すこともできず、ゾンビになることもない。
しかし、どっちが正しいのだろう。もう会えなくなる、「さよなら」、もう一度会える、「またね」。どっちでも良いから、会いたい。何を失っても良いから会いたい。
[水平線]
数日後の夜、僕は彼女のお葬式に行くことになった。僕は今までお葬式とかに行ったことがなかったが、今回は特別らしい。そのことを施設は穏やかな川の近くにあり、スタッフの対応もとても良かった。今はお通夜に出席している。施設に入ると棺桶はガラスで作られていて遠くでもから彼女の顔を見ることが出来た。僕は棺桶へ真っ直ぐ雇っている執事と一緒に歩いていく。そして近くで顔を見た時、彼女が亡くなったことをやっと飲み込めた。もう彼女は戻ってこない。戻ってくることがない。たとえ、自分の命と引き換えてでも戻ってこない。そして会えない。
悲しみだけを背負ってもしょうがないと思い、外の空気を吸いに僕と執事は施設から外へ出た。空気はひんやり冷たく、上を見上げた。パッと見ると真っ暗な空。だけど、よく見るだけで夜空は溜息をつくほど輝いていた。今はちょうど、彼女の星座、おうし座が見える時期。僕はおうし座を必死に探し、見つけると急におうし座の周りの星が流れた。流れ星だ。
…………………………[下線][太字]こんな奇跡、起こるはずがない[/太字][/下線]。彼女のお通夜に彼女の星座の周りの星が流れ出すなんて。これは彼女がくれた奇跡……だと思う。僕は泣くよりも微笑み、
ありがとうと伝えて欲しい、それだけの願いを星に託した。願いを託した星が一瞬だけど夜空を渡る、白馬に見える。けれどもこの白馬は彼女のところへは連れて行ってくれない。…………だったら、僕が自力で彼女のところへ行くんだ。そしておうし座のすぐ隣、オリオン座になって一緒にいたい。だから、執事の目を盗んで冷たい川へ飛び込んだ。とても深い川だった。僕は死ぬのは怖かったが、ずっと彼女の傍にいたいからその気持ちは抑えられた。
そのとき彼女からくれた、紫色の首輪が外れた。そう、僕は犬。彼女は飼い主。それだけの関係だったのに。
「さよ……なら。ま……たね」
そう言って彼女は頬を少し濡らしながら去った。この時、心電図モニターの音が一定の音で高く鳴った。その途端、僕は彼女の体の上で泣いた。その時、戻ってきて欲しいと心から強く願った。でも、現実は願いを叶えてくれなかった。そもそも、この世界はファンタジーみたいに魔法もなく、ゾンビもいない。だから、魔法で治すこともできず、ゾンビになることもない。
しかし、どっちが正しいのだろう。もう会えなくなる、「さよなら」、もう一度会える、「またね」。どっちでも良いから、会いたい。何を失っても良いから会いたい。
[水平線]
数日後の夜、僕は彼女のお葬式に行くことになった。僕は今までお葬式とかに行ったことがなかったが、今回は特別らしい。そのことを施設は穏やかな川の近くにあり、スタッフの対応もとても良かった。今はお通夜に出席している。施設に入ると棺桶はガラスで作られていて遠くでもから彼女の顔を見ることが出来た。僕は棺桶へ真っ直ぐ雇っている執事と一緒に歩いていく。そして近くで顔を見た時、彼女が亡くなったことをやっと飲み込めた。もう彼女は戻ってこない。戻ってくることがない。たとえ、自分の命と引き換えてでも戻ってこない。そして会えない。
悲しみだけを背負ってもしょうがないと思い、外の空気を吸いに僕と執事は施設から外へ出た。空気はひんやり冷たく、上を見上げた。パッと見ると真っ暗な空。だけど、よく見るだけで夜空は溜息をつくほど輝いていた。今はちょうど、彼女の星座、おうし座が見える時期。僕はおうし座を必死に探し、見つけると急におうし座の周りの星が流れた。流れ星だ。
…………………………[下線][太字]こんな奇跡、起こるはずがない[/太字][/下線]。彼女のお通夜に彼女の星座の周りの星が流れ出すなんて。これは彼女がくれた奇跡……だと思う。僕は泣くよりも微笑み、
ありがとうと伝えて欲しい、それだけの願いを星に託した。願いを託した星が一瞬だけど夜空を渡る、白馬に見える。けれどもこの白馬は彼女のところへは連れて行ってくれない。…………だったら、僕が自力で彼女のところへ行くんだ。そしておうし座のすぐ隣、オリオン座になって一緒にいたい。だから、執事の目を盗んで冷たい川へ飛び込んだ。とても深い川だった。僕は死ぬのは怖かったが、ずっと彼女の傍にいたいからその気持ちは抑えられた。
そのとき彼女からくれた、紫色の首輪が外れた。そう、僕は犬。彼女は飼い主。それだけの関係だったのに。
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