【参加型】巡る酒場にて、冒険者達はかく語りき
「まぁそんなことで、そいつから貰ったクッキーを食べながら階層内を巡ったのさ」
変わらないような、軽い調子で彼女———グレイシアは続ける。先程からいつもの喧騒の中、宴会のちょっとした小噺のように冒険譚を語る中心人物。それを中心とした「観客席」のようなものが酒場の中には自然と形成されていっていた。話の内容に対して、好奇心旺盛な冒険者たちの質問が定期的に飛んでくる。それに対して器用に答えながら、彼女の話は続いていた。
------------------------------------------
そうして私は、トナカイの土産を齧りながら外縁を歩いて行った。無駄に体力を消耗しないように、通った道を探索しながら。
途中で、信じられないような現象に見舞われた。しばらく歩いた時のことだ、地図に道を書き足そうとした時、ペン先に目を向けたらそこはすでに記入済みであった。どこで繋がったのかはわからない。地図上では何も無いはずなのに、確かに繋がっていた。まるで上空から眺めたドームのように。
ダンジョン内で空間以上が起こることは往々にしてある。それはお前らだって分かっているだろうし、何度も身を持って体験を…苦渋を舐めさせられて来ただろ?だから何度か起点を探した、そこさえ分かればなんとかなるはずだった。無かったんだ、その起点が。困ったことだろう?そんなことなけりゃよかったんだが。だからしょうがなく何日も…いや、時計はないから実際は短かったかもしれないが何日間にも感じられる日をそこで過ごすことになった。幸い、食料は栄養バランス的には微妙だが樹になるクッキーで賄えた。携帯食料はその分節約した。トナカイには悪いが、もう当分はいちごジャムのクッキーはごめんだな。
おかげで地図も完全に完成させるに至ったけどな、後々になってあの階層への通常の出入り口が見つかった時に役立ってよかったよ。地図師になるのはまっぴらだけどな。
そこまで書き込んでもまだ見つからねぇ。遂に話し相手がトナカイだけの状況で途方に暮れちまった。だからずっとそこで駄弁っておくことにしたのさ。幸い話にはことかかねぇ、チャンスがあれどあいつも襲ってこない。最高に暇な時間だったのさ。無論友人になったよ……あいつもあそこのクッキーには飽き飽きしてるみたいでな。他のフレーバーがあればいいと二人で何度も話題にしたものだ。ダージリンとか、レモンとか。おっと、背伸びしてるわけじゃないぞ?
ついついトナカイについて話しすぎてしまいそうだ。この話は一旦ここらで切ろう。そうしてある話していた日のことだ……あの日は空が珍しく晴れていたな。まぁ当たり前といえば当たり前だが。だって帰るための転移門が開くサインが「晴れ」になることだからな。ふふ、その日は最近多い地形の変動について話していたんだ。あいつも気がついたらそこに居たらしくてな。ほんと、デタラメに変わるのはやめてほしいって話してた。そんな時のことだった……クッキーのうろ。あぁ?分からないって?アレだよあ!れ!……木に空いてる穴だよ…リスとかがいるイメージの。……まぁあれが転移門の色に光ったのさ、突然な。エメラルドグリーンの渦巻く光が現れたのさ。そしてすぐに私はそこに投げ込まれた……あっけに取られている間に、トナカイによってな。あいつ曰く、「子供が危険なところに来てはいけない。もう来るんじゃないよ」だとさ!なんだよ…あいつまで子供扱いしやがって……一緒に来てくれればよかったのにな…?誘ったんだが、あいつには小さすぎるんだと……くそっ。
子供っぽいだって…!?そんなことない…そんなこと…うん、ないっ!
-----------------------------------
その時の彼女は、なぜだか顔を見せずに…わざわざそむけて締めの言葉を言った。
変わらないような、軽い調子で彼女———グレイシアは続ける。先程からいつもの喧騒の中、宴会のちょっとした小噺のように冒険譚を語る中心人物。それを中心とした「観客席」のようなものが酒場の中には自然と形成されていっていた。話の内容に対して、好奇心旺盛な冒険者たちの質問が定期的に飛んでくる。それに対して器用に答えながら、彼女の話は続いていた。
------------------------------------------
そうして私は、トナカイの土産を齧りながら外縁を歩いて行った。無駄に体力を消耗しないように、通った道を探索しながら。
途中で、信じられないような現象に見舞われた。しばらく歩いた時のことだ、地図に道を書き足そうとした時、ペン先に目を向けたらそこはすでに記入済みであった。どこで繋がったのかはわからない。地図上では何も無いはずなのに、確かに繋がっていた。まるで上空から眺めたドームのように。
ダンジョン内で空間以上が起こることは往々にしてある。それはお前らだって分かっているだろうし、何度も身を持って体験を…苦渋を舐めさせられて来ただろ?だから何度か起点を探した、そこさえ分かればなんとかなるはずだった。無かったんだ、その起点が。困ったことだろう?そんなことなけりゃよかったんだが。だからしょうがなく何日も…いや、時計はないから実際は短かったかもしれないが何日間にも感じられる日をそこで過ごすことになった。幸い、食料は栄養バランス的には微妙だが樹になるクッキーで賄えた。携帯食料はその分節約した。トナカイには悪いが、もう当分はいちごジャムのクッキーはごめんだな。
おかげで地図も完全に完成させるに至ったけどな、後々になってあの階層への通常の出入り口が見つかった時に役立ってよかったよ。地図師になるのはまっぴらだけどな。
そこまで書き込んでもまだ見つからねぇ。遂に話し相手がトナカイだけの状況で途方に暮れちまった。だからずっとそこで駄弁っておくことにしたのさ。幸い話にはことかかねぇ、チャンスがあれどあいつも襲ってこない。最高に暇な時間だったのさ。無論友人になったよ……あいつもあそこのクッキーには飽き飽きしてるみたいでな。他のフレーバーがあればいいと二人で何度も話題にしたものだ。ダージリンとか、レモンとか。おっと、背伸びしてるわけじゃないぞ?
ついついトナカイについて話しすぎてしまいそうだ。この話は一旦ここらで切ろう。そうしてある話していた日のことだ……あの日は空が珍しく晴れていたな。まぁ当たり前といえば当たり前だが。だって帰るための転移門が開くサインが「晴れ」になることだからな。ふふ、その日は最近多い地形の変動について話していたんだ。あいつも気がついたらそこに居たらしくてな。ほんと、デタラメに変わるのはやめてほしいって話してた。そんな時のことだった……クッキーのうろ。あぁ?分からないって?アレだよあ!れ!……木に空いてる穴だよ…リスとかがいるイメージの。……まぁあれが転移門の色に光ったのさ、突然な。エメラルドグリーンの渦巻く光が現れたのさ。そしてすぐに私はそこに投げ込まれた……あっけに取られている間に、トナカイによってな。あいつ曰く、「子供が危険なところに来てはいけない。もう来るんじゃないよ」だとさ!なんだよ…あいつまで子供扱いしやがって……一緒に来てくれればよかったのにな…?誘ったんだが、あいつには小さすぎるんだと……くそっ。
子供っぽいだって…!?そんなことない…そんなこと…うん、ないっ!
-----------------------------------
その時の彼女は、なぜだか顔を見せずに…わざわざそむけて締めの言葉を言った。