淡い恋が飽和する。
それは、ただの偶然だった。
私はただそこに通りがかってしまっただけの一般人で。
あの人たちも、ただ通りがかっただけの筈だ。
ただ、ただそれでも。
それは、一瞬で私の全てを壊した。
ただの建前で作られた私も、本音が絡みついた私も。
「あれ、憐華じゃんww」
「おひさーwまだ死神やってるー?www」
失敗した。
失敗した!
ただマヨネーズ切らしたからって、
それだけの為にスーパーなんて行くんじゃなかった。
最悪だ、中学の同級生に会ってしまった。
「あっそうだーw高校でもまた誰か[打消し]殺[/打消し]したの?ww」
「うわ、だんまりじゃんww図星なんじゃね?w」
「…違う」
もっと大きな声出せよ、私。
そんな震えた声じゃ聞こえないし役に立たないってば。
揚げ足取られるぞ。
「あれぇ、泣いてたりする?wwははっよっわぁwww」
「あーあ、彩良もかわいそーに。
こんなのと関わるから病気になって死んじゃうんだよー。いや、[打消し]殺[/打消し]されたって方が正しい?ww」
「ねー、人[打消し]殺[/打消し]しときながらのうのうと生きててさ?w」
「…違う」
私は、彩良を、[打消し]殺[/打消し]してなんか、ない。
わたしは、わたしはぜったいに、ころして…
《ねえ、絶対って言える?》
もう一人の私が私に詰め寄ってきたような、
そんな感覚がした。
その声は、暗闇に響いて、私を後ろへと、追い詰めていく。
ぜったい…?ぜったいって言える、か?
《彩良は私と関わってから病気になったじゃない?》
確かに、そのとおりだ。
なら、
なら、
わたしは、彩良を、ころしたかもしれない?
違う、違う…そんなの違う!
自分のせいでとか悲劇のヒロインかよ、ヒロインぶるなよ。
彩良が否定してくれたじゃない、なんで忘れてるんだよ…。
あれ、でも、私は、
「てか親も殺してんでしょ?w本気で死神じゃんwww」
そうだ、私は、
私は、
親を、ころしているじゃないか。
お母さんだってころされたと思っているはずだ。
お父さんだって、わたしに、ころされた、と……
ねえ、彩良。
わたしって、やっぱり死神なんだよね。
周りの人を、ころしてしまう死神。
きっと迷惑きわまりなかったよね。
わたしのせいでしんだんだとしたら、迷惑どころじゃない。
あー、そっか。
あはは、そういうことかぁ。
「[漢字][打消し]そうだね、わたしがころした[/打消し][/漢字][ふりがな]わたしはころしてない[/ふりがな]」