カリモトリブレは理解する
ようこそ…探偵のカリモトだ。
今日はレストランで依頼を聞いている。
依頼人はシェフの『[漢字]出巻 通龍[/漢字][ふりがな]イデマキ トオル[/ふりがな]』
彼の料理はとても美味しい。
僕もステーキを頂いた。
赤身の肉は、噛むほどに旨みが広がり、ソースをかけたらもう最高だ。
おっと、料理を楽しみに来たんじゃない…
「…今日はどんなご依頼で?」
そういうとイデマキはシェフハットを外し、僕に語りかけた。
「そうですね…」
「カリモト探偵…あなたに手伝ってもらいたい事がありまして…」
手伝う…か。
「それは、滅多に見かけない…[下線]『[漢字]銀兎[/漢字][ふりがな]ぎんうさぎ[/ふりがな]』[/下線]を獲ることです」
「銀兎…聞いたこともないな…」
「なぜ獲りたいのか、早めに理由を言いましょう…」
そう言うと、イデマキは過去を語り始めた。
「私には、彼女が居ます…」
「ですが彼女は、ある重い病気にかかってしまいました…」
「その病気は『不治の病』と言われていて、治すのは不可能だと考えられていたのですが…」
「[下線]治せる料理[/下線]というのを見つけました。その料理を作るために、銀兎の肉が必要なんです」
不治の病を料理で治す…何か少し、ファンタジーと考えてしまうがまだ分からない。
「その銀兎ってのはどこに居るんだ?」
「カリモト探偵なら分かるでしょう。この街の南、[漢字]海八草原[/漢字][ふりがな]かいはちそうげん[/ふりがな]です」
僕も比較的最近に引っ越してきたのだが、そこは知っている。
「ああ、あの広いところか」
「知っていましたか。ならば誰にも見られない深夜12時、そこで会いましょう」
「おいおいチョット待て……僕はまだ引き受けてない。その銀兎を獲るって…………『密猟』に当てはまるんじゃないのか?」
密猟は立派な犯罪だ。
「密猟なんてしたらあんたは犯罪者になるぞ…それに手伝った僕もなってしまう…」
「あんたは歴史を知ってるのか? これまで何体もの動物が密猟でいなくなったんだぞ…」
彼の答えは…
「[大文字][太字]密猟をします……[/太字][/大文字]」
「[太字][大文字]ならば引き受けた![/大文字][/太字]」
このイデマキトオルの目には、覚悟が見えた…。[下線]例え自分が犯罪を犯したとしても彼女を救う[/下線]という覚悟が見えた!
僕は彼を気に入った。
「じゃあ午後12時、海八草原で会おう…」
銀兎…果たしてどんなヤツなんだろうか?
[水平線]
[中央寄せ]午後12時[/中央寄せ]
海八草原に着いた。
そこにはイデマキも居る。
「来ましたか…カリモト探偵」
もちろんだと、僕は頷いてやった。
「これを地面に立ててください…」
イデマキは僕に、パイプを渡してきた。
どうやら、おびき寄せて罠にかけるらしい。
「そういえば、[漢字]狩猟免許[/漢字][ふりがな]しゅりょうめんきょ[/ふりがな]とかは持ってるのか?」
「もちろん、このためだけに取ってきました。これ以上罪は重ねないつもりです」
かなり用意も良いな…このシェフは。
聞いてみたところ…どうやら囲い罠というのを使うらしい。
簡単に言うと、網で作られた柵の中に一箇所の入口があり、その中に動物が入ったら入口が閉まって捕らえられる、という仕組みだ。
パイプを6ヶ所立てる、そして網をパイプに沿って貼り付ける。
簡単そうに見えるがこれが結構疲れる…
そうは言ってるもののとにかく完成した。
あとは引っかかるのを待つだけ。
僕たちは近くの草むらに隠れた。
しばらくすると、罠の方向から音が聞こえたので、罠の方へと向かう。
罠のところへ向かう途中、イデマキは歴史について語り始めた。
「そういえば…ここは昔、どういう場所だったのか知っていますか?」
「いや…全然知らないな…」
「新しい住人ですもんね。そうでしょう」
「ここは江戸時代、町がありました。そこでは、ウサギが売買されていたんです」
「……そんなに価値があったのか?」
「そうです…最初は観賞用として楽しまれてきましたが、段々とそれを規制する動きが見え始め、ウサギの価値は下がってしまいました。大量のウサギを保有していた者は余ってしまったウサギを殺し、肉として食べる者も居ました…」
「……それは…中々にヤバい話だな」
サラっととんでもない事を言うな…このシェフは…
色々と話しているうちに罠のところへと着いた僕とイデマキ。
どうやら何かが引っかかっているみたい。
「もしかしてあれか…」
罠の中で飛び回ってる動物がいる。
銀色の毛皮に赤い瞳、あいつが銀兎…
僕とイデマキは捕らえられた銀兎に近づく。
だが、それは間違った判断だった…
[太字][大文字]「キャシャアァ!」[/大文字][/太字]
ウサギの鋭い鳴き声が耳に響く。
その鳴き声につられたのか、仲間と思われる銀兎が近づいてきた。
「カリモト探偵……言うのが遅れました…銀兎は凶暴です」
「チョットチョット…言うのが遅い…遅すぎるぞ…」
確実にマズい状況だということは言うまでもなく伝わってくる。
僕たちを囲む銀兎。
「…僕に任せろ」
僕にできることは一つだけ…
虫眼鏡であいつらを覗き、記憶を書き換えることだ…
早速、虫眼鏡で銀兎を覗く。
見え…………ない!?
おかしい……動物なら見えるはずだ……何故見えない…!?
こうして考えてる間にも、銀兎は近づいてくる。
「銀兎になにか弱点はあるか…?」
こう聞いてみるも…
「…すいません…私にも分かりません……」
ウソだろ……このままじゃ、銀兎共に食われてしまう…
何か…何か、思いつけ…
…
…
…
「……わかったぞ」
日差しだ…
わざわざ深夜に罠を仕掛けた理由は……[下線]日差しがないからだ[/下線]…
分かったぞ…銀兎の弱点は、[太字]日光[/太字]だ。
僕は虫眼鏡で空を覗く、そしてこう指で書き換えた。
[太字]『海八草原の上空だけ、太陽を位置しなくてはならない』[/太字]
こう書くことによって、上空から日光が差し込む。
銀兎は日光に当たると、なんと煙となって消えていった。
その様子に目を見開くことしか出来ない。
どういう原理かは分からないが、罠にかかったウサギは消えていなかった。
「…とりあえず、銀兎は捕らえたみたいだな」
「ありがとうございます。カリモト探偵…」
イデマキは深々とお辞儀すると、自分のレストランへ帰っていった。
[水平線]
後日、イデマキのレストランで銀兎の肉を分けてもらった。
味の方は……
油が少なくてヘルシーなんだが、弾力がある、そして美味しい…!
まるで鶏肉みたいだ。あとでソテーにして食べようかな…
そんなことは置いといて、イデマキの彼女さんもウサギを食べて、病気が治ったみたいだ。
色々あったけど、奇跡はあるもんだな…
今日はレストランで依頼を聞いている。
依頼人はシェフの『[漢字]出巻 通龍[/漢字][ふりがな]イデマキ トオル[/ふりがな]』
彼の料理はとても美味しい。
僕もステーキを頂いた。
赤身の肉は、噛むほどに旨みが広がり、ソースをかけたらもう最高だ。
おっと、料理を楽しみに来たんじゃない…
「…今日はどんなご依頼で?」
そういうとイデマキはシェフハットを外し、僕に語りかけた。
「そうですね…」
「カリモト探偵…あなたに手伝ってもらいたい事がありまして…」
手伝う…か。
「それは、滅多に見かけない…[下線]『[漢字]銀兎[/漢字][ふりがな]ぎんうさぎ[/ふりがな]』[/下線]を獲ることです」
「銀兎…聞いたこともないな…」
「なぜ獲りたいのか、早めに理由を言いましょう…」
そう言うと、イデマキは過去を語り始めた。
「私には、彼女が居ます…」
「ですが彼女は、ある重い病気にかかってしまいました…」
「その病気は『不治の病』と言われていて、治すのは不可能だと考えられていたのですが…」
「[下線]治せる料理[/下線]というのを見つけました。その料理を作るために、銀兎の肉が必要なんです」
不治の病を料理で治す…何か少し、ファンタジーと考えてしまうがまだ分からない。
「その銀兎ってのはどこに居るんだ?」
「カリモト探偵なら分かるでしょう。この街の南、[漢字]海八草原[/漢字][ふりがな]かいはちそうげん[/ふりがな]です」
僕も比較的最近に引っ越してきたのだが、そこは知っている。
「ああ、あの広いところか」
「知っていましたか。ならば誰にも見られない深夜12時、そこで会いましょう」
「おいおいチョット待て……僕はまだ引き受けてない。その銀兎を獲るって…………『密猟』に当てはまるんじゃないのか?」
密猟は立派な犯罪だ。
「密猟なんてしたらあんたは犯罪者になるぞ…それに手伝った僕もなってしまう…」
「あんたは歴史を知ってるのか? これまで何体もの動物が密猟でいなくなったんだぞ…」
彼の答えは…
「[大文字][太字]密猟をします……[/太字][/大文字]」
「[太字][大文字]ならば引き受けた![/大文字][/太字]」
このイデマキトオルの目には、覚悟が見えた…。[下線]例え自分が犯罪を犯したとしても彼女を救う[/下線]という覚悟が見えた!
僕は彼を気に入った。
「じゃあ午後12時、海八草原で会おう…」
銀兎…果たしてどんなヤツなんだろうか?
[水平線]
[中央寄せ]午後12時[/中央寄せ]
海八草原に着いた。
そこにはイデマキも居る。
「来ましたか…カリモト探偵」
もちろんだと、僕は頷いてやった。
「これを地面に立ててください…」
イデマキは僕に、パイプを渡してきた。
どうやら、おびき寄せて罠にかけるらしい。
「そういえば、[漢字]狩猟免許[/漢字][ふりがな]しゅりょうめんきょ[/ふりがな]とかは持ってるのか?」
「もちろん、このためだけに取ってきました。これ以上罪は重ねないつもりです」
かなり用意も良いな…このシェフは。
聞いてみたところ…どうやら囲い罠というのを使うらしい。
簡単に言うと、網で作られた柵の中に一箇所の入口があり、その中に動物が入ったら入口が閉まって捕らえられる、という仕組みだ。
パイプを6ヶ所立てる、そして網をパイプに沿って貼り付ける。
簡単そうに見えるがこれが結構疲れる…
そうは言ってるもののとにかく完成した。
あとは引っかかるのを待つだけ。
僕たちは近くの草むらに隠れた。
しばらくすると、罠の方向から音が聞こえたので、罠の方へと向かう。
罠のところへ向かう途中、イデマキは歴史について語り始めた。
「そういえば…ここは昔、どういう場所だったのか知っていますか?」
「いや…全然知らないな…」
「新しい住人ですもんね。そうでしょう」
「ここは江戸時代、町がありました。そこでは、ウサギが売買されていたんです」
「……そんなに価値があったのか?」
「そうです…最初は観賞用として楽しまれてきましたが、段々とそれを規制する動きが見え始め、ウサギの価値は下がってしまいました。大量のウサギを保有していた者は余ってしまったウサギを殺し、肉として食べる者も居ました…」
「……それは…中々にヤバい話だな」
サラっととんでもない事を言うな…このシェフは…
色々と話しているうちに罠のところへと着いた僕とイデマキ。
どうやら何かが引っかかっているみたい。
「もしかしてあれか…」
罠の中で飛び回ってる動物がいる。
銀色の毛皮に赤い瞳、あいつが銀兎…
僕とイデマキは捕らえられた銀兎に近づく。
だが、それは間違った判断だった…
[太字][大文字]「キャシャアァ!」[/大文字][/太字]
ウサギの鋭い鳴き声が耳に響く。
その鳴き声につられたのか、仲間と思われる銀兎が近づいてきた。
「カリモト探偵……言うのが遅れました…銀兎は凶暴です」
「チョットチョット…言うのが遅い…遅すぎるぞ…」
確実にマズい状況だということは言うまでもなく伝わってくる。
僕たちを囲む銀兎。
「…僕に任せろ」
僕にできることは一つだけ…
虫眼鏡であいつらを覗き、記憶を書き換えることだ…
早速、虫眼鏡で銀兎を覗く。
見え…………ない!?
おかしい……動物なら見えるはずだ……何故見えない…!?
こうして考えてる間にも、銀兎は近づいてくる。
「銀兎になにか弱点はあるか…?」
こう聞いてみるも…
「…すいません…私にも分かりません……」
ウソだろ……このままじゃ、銀兎共に食われてしまう…
何か…何か、思いつけ…
…
…
…
「……わかったぞ」
日差しだ…
わざわざ深夜に罠を仕掛けた理由は……[下線]日差しがないからだ[/下線]…
分かったぞ…銀兎の弱点は、[太字]日光[/太字]だ。
僕は虫眼鏡で空を覗く、そしてこう指で書き換えた。
[太字]『海八草原の上空だけ、太陽を位置しなくてはならない』[/太字]
こう書くことによって、上空から日光が差し込む。
銀兎は日光に当たると、なんと煙となって消えていった。
その様子に目を見開くことしか出来ない。
どういう原理かは分からないが、罠にかかったウサギは消えていなかった。
「…とりあえず、銀兎は捕らえたみたいだな」
「ありがとうございます。カリモト探偵…」
イデマキは深々とお辞儀すると、自分のレストランへ帰っていった。
[水平線]
後日、イデマキのレストランで銀兎の肉を分けてもらった。
味の方は……
油が少なくてヘルシーなんだが、弾力がある、そして美味しい…!
まるで鶏肉みたいだ。あとでソテーにして食べようかな…
そんなことは置いといて、イデマキの彼女さんもウサギを食べて、病気が治ったみたいだ。
色々あったけど、奇跡はあるもんだな…
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