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カリモトリブレは理解する

#8

八件目「密猟草原」

ようこそ…探偵のカリモトだ。

今日はレストランで依頼を聞いている。

依頼人はシェフの『[漢字]出巻 通龍[/漢字][ふりがな]イデマキ トオル[/ふりがな]』

彼の料理はとても美味しい。

僕もステーキを頂いた。

赤身の肉は、噛むほどに旨みが広がり、ソースをかけたらもう最高だ。

おっと、料理を楽しみに来たんじゃない…

「…今日はどんなご依頼で?」

そういうとイデマキはシェフハットを外し、僕に語りかけた。

「そうですね…」

「カリモト探偵…あなたに手伝ってもらいたい事がありまして…」

手伝う…か。

「それは、滅多に見かけない…[下線]『[漢字]銀兎[/漢字][ふりがな]ぎんうさぎ[/ふりがな]』[/下線]を獲ることです」

「銀兎…聞いたこともないな…」

「なぜ獲りたいのか、早めに理由を言いましょう…」

そう言うと、イデマキは過去を語り始めた。

「私には、彼女が居ます…」

「ですが彼女は、ある重い病気にかかってしまいました…」

「その病気は『不治の病』と言われていて、治すのは不可能だと考えられていたのですが…」

「[下線]治せる料理[/下線]というのを見つけました。その料理を作るために、銀兎の肉が必要なんです」

不治の病を料理で治す…何か少し、ファンタジーと考えてしまうがまだ分からない。

「その銀兎ってのはどこに居るんだ?」

「カリモト探偵なら分かるでしょう。この街の南、[漢字]海八草原[/漢字][ふりがな]かいはちそうげん[/ふりがな]です」

僕も比較的最近に引っ越してきたのだが、そこは知っている。

「ああ、あの広いところか」

「知っていましたか。ならば誰にも見られない深夜12時、そこで会いましょう」

「おいおいチョット待て……僕はまだ引き受けてない。その銀兎を獲るって…………『密猟』に当てはまるんじゃないのか?」

密猟は立派な犯罪だ。

「密猟なんてしたらあんたは犯罪者になるぞ…それに手伝った僕もなってしまう…」

「あんたは歴史を知ってるのか? これまで何体もの動物が密猟でいなくなったんだぞ…」

彼の答えは…







「[大文字][太字]密猟をします……[/太字][/大文字]」


「[太字][大文字]ならば引き受けた![/大文字][/太字]」


このイデマキトオルの目には、覚悟が見えた…。[下線]例え自分が犯罪を犯したとしても彼女を救う[/下線]という覚悟が見えた!

僕は彼を気に入った。

「じゃあ午後12時、海八草原で会おう…」

銀兎…果たしてどんなヤツなんだろうか?

[水平線]
[中央寄せ]午後12時[/中央寄せ]

海八草原に着いた。

そこにはイデマキも居る。

「来ましたか…カリモト探偵」

もちろんだと、僕は頷いてやった。

「これを地面に立ててください…」

イデマキは僕に、パイプを渡してきた。

どうやら、おびき寄せて罠にかけるらしい。

「そういえば、[漢字]狩猟免許[/漢字][ふりがな]しゅりょうめんきょ[/ふりがな]とかは持ってるのか?」

「もちろん、このためだけに取ってきました。これ以上罪は重ねないつもりです」

かなり用意も良いな…このシェフは。

聞いてみたところ…どうやら囲い罠というのを使うらしい。

簡単に言うと、網で作られた柵の中に一箇所の入口があり、その中に動物が入ったら入口が閉まって捕らえられる、という仕組みだ。


パイプを6ヶ所立てる、そして網をパイプに沿って貼り付ける。

簡単そうに見えるがこれが結構疲れる…

そうは言ってるもののとにかく完成した。

あとは引っかかるのを待つだけ。

僕たちは近くの草むらに隠れた。

しばらくすると、罠の方向から音が聞こえたので、罠の方へと向かう。

罠のところへ向かう途中、イデマキは歴史について語り始めた。

「そういえば…ここは昔、どういう場所だったのか知っていますか?」

「いや…全然知らないな…」

「新しい住人ですもんね。そうでしょう」

「ここは江戸時代、町がありました。そこでは、ウサギが売買されていたんです」

「……そんなに価値があったのか?」

「そうです…最初は観賞用として楽しまれてきましたが、段々とそれを規制する動きが見え始め、ウサギの価値は下がってしまいました。大量のウサギを保有していた者は余ってしまったウサギを殺し、肉として食べる者も居ました…」

「……それは…中々にヤバい話だな」

サラっととんでもない事を言うな…このシェフは…

色々と話しているうちに罠のところへと着いた僕とイデマキ。

どうやら何かが引っかかっているみたい。

「もしかしてあれか…」

罠の中で飛び回ってる動物がいる。

銀色の毛皮に赤い瞳、あいつが銀兎…

僕とイデマキは捕らえられた銀兎に近づく。

だが、それは間違った判断だった…


[太字][大文字]「キャシャアァ!」[/大文字][/太字]


ウサギの鋭い鳴き声が耳に響く。

その鳴き声につられたのか、仲間と思われる銀兎が近づいてきた。

「カリモト探偵……言うのが遅れました…銀兎は凶暴です」

「チョットチョット…言うのが遅い…遅すぎるぞ…」

確実にマズい状況だということは言うまでもなく伝わってくる。

僕たちを囲む銀兎。

「…僕に任せろ」

僕にできることは一つだけ…

虫眼鏡であいつらを覗き、記憶を書き換えることだ…

早速、虫眼鏡で銀兎を覗く。

見え…………ない!?

おかしい……動物なら見えるはずだ……何故見えない…!?

こうして考えてる間にも、銀兎は近づいてくる。

「銀兎になにか弱点はあるか…?」

こう聞いてみるも…

「…すいません…私にも分かりません……」

ウソだろ……このままじゃ、銀兎共に食われてしまう…

何か…何か、思いつけ…





「……わかったぞ」

日差しだ…

わざわざ深夜に罠を仕掛けた理由は……[下線]日差しがないからだ[/下線]…

分かったぞ…銀兎の弱点は、[太字]日光[/太字]だ。

僕は虫眼鏡で空を覗く、そしてこう指で書き換えた。

[太字]『海八草原の上空だけ、太陽を位置しなくてはならない』[/太字]

こう書くことによって、上空から日光が差し込む。

銀兎は日光に当たると、なんと煙となって消えていった。

その様子に目を見開くことしか出来ない。

どういう原理かは分からないが、罠にかかったウサギは消えていなかった。

「…とりあえず、銀兎は捕らえたみたいだな」

「ありがとうございます。カリモト探偵…」

イデマキは深々とお辞儀すると、自分のレストランへ帰っていった。

[水平線]

後日、イデマキのレストランで銀兎の肉を分けてもらった。

味の方は……

油が少なくてヘルシーなんだが、弾力がある、そして美味しい…!

まるで鶏肉みたいだ。あとでソテーにして食べようかな…

そんなことは置いといて、イデマキの彼女さんもウサギを食べて、病気が治ったみたいだ。

色々あったけど、奇跡はあるもんだな…

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2024/02/12 17:25

ドレミファ・ソラティド ID:≫9pqMoIh9WcBx2
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