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カリモトリブレは理解する

#5

四・五件目「カタルシス・ザ・ギャンブリング」

わざわざどうも…カリモトリブレだ。

突然だけど、キミは自分で運はあると思うかい?

僕はある方だと思っている。

じゃなきゃもうとっくに死んでいるはずだろう…

だけど、これからの話は、その運がどうでも良くなるほどのお話。

[水平線]

「はあ……」

今、アメリカだ、そしてとても疲れている。

何故かは前の話を聞いた人なら分かるだろう…[小文字]別に聞いてなくても楽しめるから無理に見なくてもいい[/小文字]

疲れたから、コーヒーでも飲もうとカフェに向かっている途中。

「[太字]そこのあなた…賭け事をしませんか?[/太字]」

カフェのテラス席から帽子を被った老人が声をかけてきた。

「いや…しない」

こう言おうとしたのだが…体が勝手に動く……まるで吸い込まれるように…

いつの間にか老人の向かい席に座ってしまった。

「座った…ということは賭け事をするんですね?」

しない、と言いたかったのだが…

「……もちろんやらせてもらおう」

僕だってこんなこと言いたくなかった…でも口が勝手に動くんだ。

「分かりました…契約完了です」

老人がそういった時、周りの世界が変わった。

暗闇に包まれて2人きりの状態。

「では始めましょう…」

老人はストローを口に咥える。

息を吹くと、ストローの先からシャボン玉が飛び出した。

それは手のひらぐらいの大きさとなって、机の真ん中に据えられる。

老人は、シャボン玉が真ん中に据えたのを確認すると、机に大量のストローをばらまいた。

「ストローを、シャボン玉に刺してください……もし割れたらあなたは何かを失う…私が割ってしまったら、あなたは何かを得る…」

こいつ…ヤバい……明らかに雰囲気が変わった……

何かを失うだって…………?

「…では、[漢字][太字]Start with you[/太字][/漢字][ふりがな]あなたから始めてください[/ふりがな]」

緊張感が周りに立ち込める。

でも緊張しているのは僕だけみたいだ…

僕はストローを手に取る。

そしてシャボン玉へ、ゆっくり、ゆっくりと刺した。

…よし、割れなかった。

次は老人のターン。

なんと老人は、ストローを手に取るとなんの躊躇もなく、シャボン玉へ刺し込んだ。

割れるんじゃないか、と思ったが割れていない……こいつ技術を持っている…

一筋縄ではいかないか…

次は僕の番。

ストローを掴む、そしてゆっくりと先をシャボン玉に向ける。

僕が手を震わせているのを見て、老人は言った。

「迷っているのか…?」

確かに迷っているかもしれない…先のことを心配しているからか……?

だけど、なんとか刺すことに成功させた。

老人の番。

やはりストローを掴むと乱雑に刺し込んだ。

流石におかしい…僕はゆっくり刺すだけでも一苦労なのに…あんなに危機を感じずにできるのはおかしすぎる…

もしかして、イカサマ…か?

「おい、イカサマ……してるんじゃないか? いくらなんでも躊躇がなさすぎるぞ…」

怪しく思い、聞いてみるも…

「賭け事は心理戦……私のことはどう思ってもらっても構わないが、自分の心配をしたほうが身のためだよ…」

どっちつかずな回答で返ってくる。

僕の番が回ってきた。

ストローを手に取り、刺していく。

だが刺している途中…

「……あ…」

悲劇にも割れてしまった。

「割れてしまいましたね…」

老人が静かに言う。

「残念ながら…あなたは何かを失います」

こう言われたような気がした。

気がしたんだ、何を言ってんだと思ってる人もいるだろう…

聞こえなくなっていたんだ…声も音も。

聴覚を失ったんだよ…

ヤバい…マジにヤバくなってきた…

このままじゃ終わる…

老人はまた新たなシャボン玉を作った。

「さあ…第二ラウンドです」

勝負が始まる。

僕の番からだそうだが、緊張で動きが止まってしまった。

負けたら…次は…視覚? 嗅覚? 代償が重すぎるぞ…!

苦しんでいるそのとき、突然頭の中から声が聞こえ始めた。

《迷ったならやるな…》

どこから聞こえてるか分からない、耳からではないことは確かだ。

迷いは、この戦いに不必要。

勝つためなら……どんなことでもやってやる……!

もう僕に『迷い』はない…!

危機一髪の覚悟を決めた時、見える世界が変わった。

あの老人、なにか指についている…液体だ。

あれがイカサマに使った道具だろう。

「アンタ、イカサマをやっているな? その指にある!」

一切の迷いを見せず、老人に問う。

「よく気付いた……指についていたのは洗濯のりだ」

洗濯のり…シャボン玉を割れにくくするのに必要なもの。

負けを認めた老人は自分の指でシャボン玉を割る。

「また会おう…面白い少年」

シャボン玉が割れた時、僕の聴覚が戻り、周りの世界がもとに戻る。

テラス席に座っていた老人はすでに消えていた。

[水平線]

あの老人が何者かは分からない…

頭の中から聞こえた声の主も分からない…

アメリカも中々、怪異まみれだ。

だが、もう二度とアメリカに行くつもりはない…

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作者メッセージ

タイトルにある『カタルシス』とは、簡単に言うと、心の中の嫌な気持ちを解放することで、嫌な気持ちを綺麗にすることです。

2024/02/01 12:15

ドレミファ・ソラティド ID:≫ppYIdOHpJGcj.
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