地上の遺構へ。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
揺れる車内、しかし現在車内にいる人々にとってはこれが日常だ。
「ねぇコン!もう冬だよ、地上に出られるんだ!楽しみじゃないの?」
暖炉の湯気と数々の計器、そして一人の運転手だけの車掌室。話しかける相手はいない。
「だってアレだよ?一年でこの時期しか見られないんだ。慣れる慣れないの問題じゃなくない?」
コトコトと、暖炉の上に固定されたケトルが音を立てる。当然、そこに返事はない。
「ねぇコン?あれ、なんか嫌われることしちゃった?」
『ん…あぁ、すまん。ちょっと考え事しててな』
返事はあった。
「わ、わぁ!誰も居ないはずなのに返事!誰から来たんだろうねぇ…?」
『おい、ずっとお前から話しかけてただろうが』
「うんそうだね?」
『そんな猿芝居して何になる……』
「初見さん向けのデモスト。誰だって初めてこんな状況になったら驚くでしょ?」
『上手くないメタネタは冷めるぞ』
ガタンゴトン。他愛無い会話を綴りながら、電車の旅は続いていく。
「ねぇ、コン。今年こそ外には『雪』が降っているかな?」
『外気温は20℃だ。降っているわけがないだろ』
「そんな夢を壊すようなことを言わないでも……ちろりちろりと空から降り注ぐ白い粉、さぞ綺麗だろうね!」
『だろうなぁ…』
トンネルの先に見える、白い光を眺めながらふと、運転手がドアを開けて身を乗り出した。運転権がもう一つ、コンに移る。ドアの手すりにつかまって半身乗り出すその様子は、旧い時代の路線確認のように思える。
『おいっ、レイル!?いいから車内に戻ってこい……っ!落ちたらどうする!』
「ほら!もう外は近いよ!」
レイルの帽子を攫わんとする凶暴な風が吹き荒れる。びゅうびゅうと吹き荒れるそれに抗うべく帽子を押さえながら興奮気味に答える。
「やっぱ楽しみだよ!だって地下では地上みたいに高い高い摩天楼なんて建造できないもん!」
その言葉の最後は、ごうっという一際大きい風の音に掻き消された。辺りが一瞬白い光に包まれる。その後、その地上が姿を現した。
すっかり寂れて土と緑に塗れた地上文化の遺産が。地より出る生命が。煌々と輝く太陽が。それはもう、全てを照らしていた。
揺れる車内、しかし現在車内にいる人々にとってはこれが日常だ。
「ねぇコン!もう冬だよ、地上に出られるんだ!楽しみじゃないの?」
暖炉の湯気と数々の計器、そして一人の運転手だけの車掌室。話しかける相手はいない。
「だってアレだよ?一年でこの時期しか見られないんだ。慣れる慣れないの問題じゃなくない?」
コトコトと、暖炉の上に固定されたケトルが音を立てる。当然、そこに返事はない。
「ねぇコン?あれ、なんか嫌われることしちゃった?」
『ん…あぁ、すまん。ちょっと考え事しててな』
返事はあった。
「わ、わぁ!誰も居ないはずなのに返事!誰から来たんだろうねぇ…?」
『おい、ずっとお前から話しかけてただろうが』
「うんそうだね?」
『そんな猿芝居して何になる……』
「初見さん向けのデモスト。誰だって初めてこんな状況になったら驚くでしょ?」
『上手くないメタネタは冷めるぞ』
ガタンゴトン。他愛無い会話を綴りながら、電車の旅は続いていく。
「ねぇ、コン。今年こそ外には『雪』が降っているかな?」
『外気温は20℃だ。降っているわけがないだろ』
「そんな夢を壊すようなことを言わないでも……ちろりちろりと空から降り注ぐ白い粉、さぞ綺麗だろうね!」
『だろうなぁ…』
トンネルの先に見える、白い光を眺めながらふと、運転手がドアを開けて身を乗り出した。運転権がもう一つ、コンに移る。ドアの手すりにつかまって半身乗り出すその様子は、旧い時代の路線確認のように思える。
『おいっ、レイル!?いいから車内に戻ってこい……っ!落ちたらどうする!』
「ほら!もう外は近いよ!」
レイルの帽子を攫わんとする凶暴な風が吹き荒れる。びゅうびゅうと吹き荒れるそれに抗うべく帽子を押さえながら興奮気味に答える。
「やっぱ楽しみだよ!だって地下では地上みたいに高い高い摩天楼なんて建造できないもん!」
その言葉の最後は、ごうっという一際大きい風の音に掻き消された。辺りが一瞬白い光に包まれる。その後、その地上が姿を現した。
すっかり寂れて土と緑に塗れた地上文化の遺産が。地より出る生命が。煌々と輝く太陽が。それはもう、全てを照らしていた。