地上の遺構へ。
かちゃりかちゃり。部屋に備え付けられたモニタ上で外は宵闇に包まれている。謂わば草木も眠るような時間帯、そんな時間にも作業音は止まない。
(ほら、ここの機構とか緻密ですよ。立体空間を利用して横縦の歯車を噛み合わせて動くみたいで……)
消えない灯の[漢字]燈[/漢字][ふりがな]とも[/ふりがな]されたランタンが、卓上の情景を映し出す。
「中に入っていた機械仕掛けの鳥は自立運動するみたいです。信号を受取る機関が付いている、そちらから何か飛ばされるのでは?」
部屋の隅、ベッドの備え付けられた対角線上の卓上。灯の光を受けキラキラと輝く歯車達が、噛み合った状態で安置されている。
(あぁ!その機構ならこちらにありましたよ。これが何かしらの電波を飛ばして…)
その中で作業する二人は、まるで子供が組み立てのパズルを楽しむように意気揚々としていた。お互いに対応する機構を見つけては、「こちらにはこれがあったぞ」「それとこれはこう動くのではないか」と情報を交換し合う。工作が好きだった子供の描く夢のような橙色の憧憬が、そこまで広くない一間で膨らんでいた。
「一旦作動させてみませんか?そこを通電させれば信号が飛ぶはずです。」
実証実験はしなければ、仮説も証明されないとヘルが呟く。その根底にはそのような機械的理由以外にも、ただ実動の瞬間が見たいと言う好奇心も感じられる程そのコードは振られている。その言葉を聞いて、今まで絶え間のなかった物をいじる音が止まる。何かを考えるようにその時間は短くも長く続き、機械鳥の物とは違う一信号によって絹布の様に割かれた。
(いいですね!やりましょう!ちょっと待って下さいね、出した物戻すので…!)
「通電は私が電力を持っているので問題無いはず……そちらの電力口は?」
(あぁ!それならここですよ、ここから入れて……)
トントン拍子で進む実証実験の話。きっと誰もがその場を見た時思うだろう。何と楽しそうなのだと。ここには感情がある様に見える「生き物」はいないのに。その姿はそれらに負けず劣らず生き生きとしている。
「セット出来ましたよ!さぁ、動かしましょう」
その声を合図に、基となるカラクリに電気が通る。からりからりとトンカラリ。機織りでもするかの様な軽快な回転音が響く。その回転の円滑さから、その機構に対する整備がしっかりと行われていたことを感じされる。不思議な機械の表層にある金や赤銅の色の細工がその音共に巡り、蔦は育ち鳥は鳴く。それは見る人が見れば望郷の念を抱かせる程緻密に造られており、誰かが夢の地上をまた見るべく組み立てた箱庭の様にも見えた。葉が生い茂り作り物の季節が巡るにつれ、卓上に置かれた機械の鳥が飛び跳ね鳴く。
キュルリキュルリ。その声に混ざる金属同士が軋む音もその美しさを冗長するようだ。
(綺麗ですねぇ……)
思わずフィーから言葉が漏れる。その机の上には確かに生き物が、草木が、地上の風景があった。別段それ以上に何かが起こるわけでは無い。役に立つ機能があるわけでも、何かを出す訳でもない。ただただそこでは四季が巡る。歯車の息吹は生き物達に生命を吹き込む。
「誰かが道楽で作ったのでしょうか……?にしたって細かい動き……」
一つ一つに、その言葉の様にそれと同じく作り手の愛情が溢れる。卓上の[漢字]金雀[/漢字][ふりがな]からくり[/ふりがな]が愛らしく、カラカラとさえずった。
(ほら、ここの機構とか緻密ですよ。立体空間を利用して横縦の歯車を噛み合わせて動くみたいで……)
消えない灯の[漢字]燈[/漢字][ふりがな]とも[/ふりがな]されたランタンが、卓上の情景を映し出す。
「中に入っていた機械仕掛けの鳥は自立運動するみたいです。信号を受取る機関が付いている、そちらから何か飛ばされるのでは?」
部屋の隅、ベッドの備え付けられた対角線上の卓上。灯の光を受けキラキラと輝く歯車達が、噛み合った状態で安置されている。
(あぁ!その機構ならこちらにありましたよ。これが何かしらの電波を飛ばして…)
その中で作業する二人は、まるで子供が組み立てのパズルを楽しむように意気揚々としていた。お互いに対応する機構を見つけては、「こちらにはこれがあったぞ」「それとこれはこう動くのではないか」と情報を交換し合う。工作が好きだった子供の描く夢のような橙色の憧憬が、そこまで広くない一間で膨らんでいた。
「一旦作動させてみませんか?そこを通電させれば信号が飛ぶはずです。」
実証実験はしなければ、仮説も証明されないとヘルが呟く。その根底にはそのような機械的理由以外にも、ただ実動の瞬間が見たいと言う好奇心も感じられる程そのコードは振られている。その言葉を聞いて、今まで絶え間のなかった物をいじる音が止まる。何かを考えるようにその時間は短くも長く続き、機械鳥の物とは違う一信号によって絹布の様に割かれた。
(いいですね!やりましょう!ちょっと待って下さいね、出した物戻すので…!)
「通電は私が電力を持っているので問題無いはず……そちらの電力口は?」
(あぁ!それならここですよ、ここから入れて……)
トントン拍子で進む実証実験の話。きっと誰もがその場を見た時思うだろう。何と楽しそうなのだと。ここには感情がある様に見える「生き物」はいないのに。その姿はそれらに負けず劣らず生き生きとしている。
「セット出来ましたよ!さぁ、動かしましょう」
その声を合図に、基となるカラクリに電気が通る。からりからりとトンカラリ。機織りでもするかの様な軽快な回転音が響く。その回転の円滑さから、その機構に対する整備がしっかりと行われていたことを感じされる。不思議な機械の表層にある金や赤銅の色の細工がその音共に巡り、蔦は育ち鳥は鳴く。それは見る人が見れば望郷の念を抱かせる程緻密に造られており、誰かが夢の地上をまた見るべく組み立てた箱庭の様にも見えた。葉が生い茂り作り物の季節が巡るにつれ、卓上に置かれた機械の鳥が飛び跳ね鳴く。
キュルリキュルリ。その声に混ざる金属同士が軋む音もその美しさを冗長するようだ。
(綺麗ですねぇ……)
思わずフィーから言葉が漏れる。その机の上には確かに生き物が、草木が、地上の風景があった。別段それ以上に何かが起こるわけでは無い。役に立つ機能があるわけでも、何かを出す訳でもない。ただただそこでは四季が巡る。歯車の息吹は生き物達に生命を吹き込む。
「誰かが道楽で作ったのでしょうか……?にしたって細かい動き……」
一つ一つに、その言葉の様にそれと同じく作り手の愛情が溢れる。卓上の[漢字]金雀[/漢字][ふりがな]からくり[/ふりがな]が愛らしく、カラカラとさえずった。