文字サイズ変更

『記憶』の先に未来があるのなら。

#6


「クソっ、時間がもう無い、全員防御用意!」
「「「了解」」」
ちょうど平樺が指示を出した瞬間に、事務所のドアが吹き飛ばされる。
「こーんにーちわー」
という気の抜けた声とともに。
(一人?)
ひよりの報告では二人いたはず…?
ただ当のひよりも目を白黒させているところ、予想外のことだったのだろう。
とりあえず敵を前にいつまでも黙っているのはよろしく無い。
「どういうつもりだ、『龍亭峰』第三幹部。それにうちの所員は2人いると言っていたが、あと一人はどこだ」
「ん?どういうつもりも何も」
ホッケーマスク、第三幹部が肩を竦める。
「首領の命令だけど」
受け答えをしている間に固有魔法で所員を逃がす。
「それにあと一人なんていないよ」
(あくまでもしらを切るか)
「まあいい。なぜ我々を狙う?【大都市フルトアル】の奪取が目的か?」
「さてね…首領のお考えは私達幹部にもわからない。それより…もらった情報と違くない?そっちこそ一人足りないじゃない」
(情報を渡されているのか…)
あまり、というかとてもまずい状況になっている。メンバーの情報の中に固有魔法まで入っていたら、恐らく何らかの形で対策を取っていることは決まっている。
(逃がしたこともバレていると考えたほうがいい)
「あと一人は別のところにいる。任務中だ」
「へえ…」
考え込むような行動を取る第三幹部…赤龍。
しばらく考えた後
「あ〜、まあいいや。あんま時間かけるとヤバめだし」
と思考を放棄したような発言をした。
(…ん?本当にこいつは幹部なのか?)
最初の「こーんにーちわー」や今までの言動を聞いていると、何故かどこかで会話したことがあるような気がしてくる。
(なぜ俺はこのふざけたような口調の女にあったことがあるような錯覚に襲われる?)
ぐるぐると回る平樺の思考を遮るように赤龍から言葉が発される。
「さてと」
一気に威圧感が変わる。
「ここからはおしゃべりの時間じゃない…条件を飲むか飲まないかでだいぶこの後が変わってくる」
「ほう、条件とは」
ピリつく空気をものとしない演技をしながら、言葉を返す。
「無駄な抵抗はせず、『八目探偵事務所』の所員を引き渡せ。何ならお前が来てくれてもいい」
「何だと」
どういう意味かを読み取るために赤龍を見るが、マスクのせいでその表情は読めない。
「ついて行ったら何が起きる?殺すとかは言わないだろうな」
「命の保証はできないね…でもここで大人しくついてきたら少なくとも3時間ぐらいは寿命が伸びるよ」
(チッ…)
一人足りない状態だと、どうあがいても『龍亭峰』の幹部には勝てない。でも
「悪いな」
「?」
「所員は一人たりとも渡さない。たとえ殺されようとも」
これは譲れない。これは俺なりの〈信念〉なのだ。
「俺の目の届く範囲の人間は危険な目にさらさない」
「はっ」
乾いた笑い声が響く。
「あははははッ、それ本気でいってんの?」

「馬鹿じゃん」

「っ」
息ができない…!?いつの間に首の周りに圧力がかけられていた。これは…水?まさか
「『クリエイトウィンデーネ/水霊作成』」
部屋の片隅からどこからともなく青髪の少女が現れる。
白い仮面の半分が水色の結晶に覆われている。
「黙って聞いていれば…なんと愚かな少年…」
「いいよ、青龍。個人的に気に入った」
(第四幹部!?いないことに疑問は持っていたが…。まさか、水の反射で身を隠していた?そんな並外れた…)
赤龍が攻撃を辞めるように指示をすると、青龍は仕方がないというようにため息を付いてから指をふる。
それと同時に水は消滅し、息ができるようになる。
「ガハッ、ゲホッ」
息ができるようになり咳き込んでいると、顎を細く、そしてひどく冷たい指で持ち上げられた。
「お初にお目にかかります、【八目探偵事務所】所長、平樺累さん。私は【龍亭峰】七幹部が一人第四幹部青龍」
透き通る水のような白い肌、優しいく聞こえるが、氷のような冷たさを持っている声。
「他の子達は逃がしてあげたけど…あなたは逃がしませんわ」
仮面越しからでもわかる…冷笑。
「赤龍様のお気に入りですもの。ですが、ゆめゆめ忘れませんことよ」
そして累にしか聞こえないような声で囁く。
「不要になったら廃棄処分行きですわよ」

ーーーーーーーーーーーーーーーー
「累さん、大丈夫でしょうか…」
[漢字]二三月羽凪[/漢字][ふりがな]ふみつきはな[/ふりがな]は呟く。彼女は所内で一番の心配性だ。[漢字]泡沫[/漢字][ふりがな]うたかた[/ふりがな] ひよりは基本的に人の心配はしないタチだが、今ばかりは自分たちを逃がした所長を心配する気持ちもわかる。だが全員で心配し、逃げることに支障が出たら本末転倒だ。
「羽凪、心配するぐらいなら今は逃げることだけを考えて」
嫌われてしまうのだろうか。それでも今は逃げることを優先にするべきだ。
「ひより、言い過ぎちゃうんか」
「正論よ」
咎めるように[漢字]毅琴[/漢字][ふりがな]みこと[/ふりがな]が言う。
知ってる。こんな冷たい言い方をするべきではないのは分かってる。でも、私は
「あの【龍亭峰】の幹部、私達が所長の固有魔法で逃げたこと、気づいてる。気づいているうえで逃がしてる…泳がせている」
「な、なんでバレたんや」
「第四幹部の水霊よ…こちらを見ているのが見えた」
言葉を失う二人。
「それって…私達は」
「だからすぐに遠くまで逃げるの。幸い、水霊は追ってきていないみたい」
羽凪が呟く。
「どうかご無事で…累さん」
ーーーーーーーーーーーーーーーー

2025/05/26 09:02

神無月タタラ ID:≫ .gSIYU.5vP2iw
続きを執筆
小説を編集

パスワードをおぼえている場合はご自分で小説を削除してください。(削除方法
自分で削除するのは面倒くさい、忍びない、自分の責任にしたくない、などの理由で削除を依頼するのは絶対におやめください。

→本当に小説のパスワードを忘れてしまった
▼小説の削除を依頼する

小説削除依頼フォーム

お名前 ※必須
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
削除の理由 ※必須

なぜこの小説の削除を依頼したいですか

ご自分で投稿した小説ですか? ※必須

この小説は、あなたが投稿した小説で間違いありませんか?

削除後に復旧はできません※必須

削除したあとに復旧はできません。クレームも受け付けません。

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL
/ 6

コメント
[0]

小説通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

※できるだけ具体的に記入してください。
特に盗作投稿については、どういった部分が元作品と類似しているかを具体的にお伝え下さい。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
小説のタイトル
小説のURL