何にも興味がわかない日々。親の命令に従って、生きてきた俺。だが、彼との出会いがつまらなかった俺を変えた。
そして、これが妻との最初の出会いだ。
　　　　　　　　　　第1章：【初めましての求婚】
とあるパーティーで、ひとことの言の葉が、視線を集中させた。
魔法大国ウィルスバスターの、王宮で開かれた学院歓迎祭。そこで、とある人物が婚約破棄を宣言した。
「アルス・グレイ・イバルト辺境伯令息。あなたとの婚約破棄を宣言します。」
それは、この国の第1王位継承者：アリス・スカーレット・ウィルスバスター王女殿下による宣言だった。
その相手は、北の領主イバルト辺境伯家の【落ちこぼれ】と称される次男坊だった。
「あなたは、私の夫として相応しくない。おまけに魔法もろくに使えない。これでは、王室の威厳が保てません。」
王女の正論に周囲がうなずく。それに対しアルスは、なんの反応も示さなかった。すると、王女は腹が立ったのか、アルスを睨んだ。
「あなたみたいな、醜くてつまらない【落ちこぼれ】なんて私とつりあいませんわ。」
王宮が、静まり返る。すると、奥でグラスの割れる音がした。慌てるアルス。
「今。誰がなんだとおっしゃいました？」
血相を変えて王女に近づく女。怖気づきながら、繰り返す王女。
「醜くてつまらない【落ちこぼれ】なんか私と釣り合わないのよ！」
真っ青になりながらため息を吐くアルス。少し黙ってから、叫ぶ女。
「…誰が【落ちこぼれ】よ。」
止めに行くアルス。だが、女は止まらない。
「兄は、【落ちこぼれ】なんかじゃない！」
笑いながら妹を止めるアルス。
「リリア。もういいから。王女殿下、婚約破棄の件は了解しました。今まで婚約者でいてくれてありがとう。」
王宮内がざわめく。驚く王女殿下。すると、銀髪の青年がこちらに近づいてくる。
「なぜ、平然と笑っていられる。」
青年は問いかけてきた。すると、アルスは笑みを浮かべた。
「だってずっと嫌だったんでしょ。僕が婚約者であることが。それなら早く離れたほうが、相手のためだから。」
そうアルスは、答えると青年は、アルスに婚約の申し出を出してきた。
「アルス辺境伯令息。あなたに婚約を申し込みたい。」
驚きの言葉に、ポカーンとするアルス。睨みつけるリリア。王宮内全体が、絶叫する。