夏空は悪戯に
#1
夏は、この地域は30℃を超えるのが常だ。
今日は特に外に出る授業はないが、それでも窓の近くの席だとクーラーの風も当たらないため、半袖でも暑い。
だが今は、そんなことはどうでも良い。
今日の3時間目、僕の机の中に入っていたのは、紛れもない手紙だった。
[東くんへ]
そして、これも紛れもなく、女子の字だった。普段女子のノートなんて見ないため、誰の字なのかもわからない。
今、この手紙を開くべきか。これがラブレターなのか、それともただの悪戯なのか。
今は4時間目。多分、開くなら今だろう。
意を決して、便箋を開いた
今日のお昼休み、プール横の百葉箱の近くにいます。もし時間があれば、来てくれると嬉しいです。
上井 舞香
最後の一文、上井舞香。
このクラスの高嶺の花といわれる人物だ。テストの点数はいつもクラスで上位におり、友達も多い。男子からの評判は、「美人でスタイルも良い」。僕としてはあまり女子とは関わるつもりは無いが、クラスの高嶺の花となると話は違う。
でも、なんで僕なのか。
万が一僕のことを好きな人が居たとしても、まさかそれがクラスの一番の美人な訳は無いだろう。
じゃあ、この手紙は?
僕の思い上がりだろうか。何か委員会や生徒会の連絡だろうか。でも、なら外で伝える意味はないだろう。
本当に行くべきか、本当に悩んでいる。一度教室の前の方を見ると、上井さんは熱心に数学教師の話を聞きながらノートを取っている。
この時僕は、決めた。
昼休み、給食と掃除の時間の間で、十五分ほどのみの短い休憩時間である。
この二年生の教室から昇降口までは、早歩きで2分ほど、そこからプールの近くの百葉箱までは、走って5分ほどだろう。同じペースで往復すれば、一分余りで帰ってこれる。逆に、誤差は片道で30秒しか出せない。久しぶりに、本気で走るしかないだろう。
指定された場所まで行くと、本当に手紙の差出人、上井舞香が居た。
「...東くん」
荒い息と少し早くなりつつある鼓動。蝉の騒がしい鳴き声が、それらをさらに感じさせていた。
「上井...さん...こ、これ...」
疲れながらも、手紙を持ちながら上井舞香に聞いた。
「来てくれてありがとうね」
彼女は、微笑みながら言った。
「すいません、ちょっと暑いのに待たせちゃって」
僕が謝る。いつの間にか、蝉の声はあまり聞こえなくなっていた。
「...ねぇ、東くん」
「?」
「走ってきたの?」
「ああ、いや、廊下は歩いてきましたけど...」
廊下も歩いていたかと聞かれれば、少し怪しい。
「いや、そうじゃなくてね。あんまり話さない私が呼んだだけで、走ってきてくれたの?」
あまり、気にしなかった事だった。
「東くん、そう言う所が良い所だよね」
今の言葉は、どう捉えるべきだろう。京都の人か?
「ねぇ、東くん」
また、蝉の鳴き声がうるさくなってきた。
「_____だよ」
蝉がうるさく、上手く聞き取れなかったが、次の言葉は聞き取れた。
「もしよければ、付き合ってください」
今日は特に外に出る授業はないが、それでも窓の近くの席だとクーラーの風も当たらないため、半袖でも暑い。
だが今は、そんなことはどうでも良い。
今日の3時間目、僕の机の中に入っていたのは、紛れもない手紙だった。
[東くんへ]
そして、これも紛れもなく、女子の字だった。普段女子のノートなんて見ないため、誰の字なのかもわからない。
今、この手紙を開くべきか。これがラブレターなのか、それともただの悪戯なのか。
今は4時間目。多分、開くなら今だろう。
意を決して、便箋を開いた
今日のお昼休み、プール横の百葉箱の近くにいます。もし時間があれば、来てくれると嬉しいです。
上井 舞香
最後の一文、上井舞香。
このクラスの高嶺の花といわれる人物だ。テストの点数はいつもクラスで上位におり、友達も多い。男子からの評判は、「美人でスタイルも良い」。僕としてはあまり女子とは関わるつもりは無いが、クラスの高嶺の花となると話は違う。
でも、なんで僕なのか。
万が一僕のことを好きな人が居たとしても、まさかそれがクラスの一番の美人な訳は無いだろう。
じゃあ、この手紙は?
僕の思い上がりだろうか。何か委員会や生徒会の連絡だろうか。でも、なら外で伝える意味はないだろう。
本当に行くべきか、本当に悩んでいる。一度教室の前の方を見ると、上井さんは熱心に数学教師の話を聞きながらノートを取っている。
この時僕は、決めた。
昼休み、給食と掃除の時間の間で、十五分ほどのみの短い休憩時間である。
この二年生の教室から昇降口までは、早歩きで2分ほど、そこからプールの近くの百葉箱までは、走って5分ほどだろう。同じペースで往復すれば、一分余りで帰ってこれる。逆に、誤差は片道で30秒しか出せない。久しぶりに、本気で走るしかないだろう。
指定された場所まで行くと、本当に手紙の差出人、上井舞香が居た。
「...東くん」
荒い息と少し早くなりつつある鼓動。蝉の騒がしい鳴き声が、それらをさらに感じさせていた。
「上井...さん...こ、これ...」
疲れながらも、手紙を持ちながら上井舞香に聞いた。
「来てくれてありがとうね」
彼女は、微笑みながら言った。
「すいません、ちょっと暑いのに待たせちゃって」
僕が謝る。いつの間にか、蝉の声はあまり聞こえなくなっていた。
「...ねぇ、東くん」
「?」
「走ってきたの?」
「ああ、いや、廊下は歩いてきましたけど...」
廊下も歩いていたかと聞かれれば、少し怪しい。
「いや、そうじゃなくてね。あんまり話さない私が呼んだだけで、走ってきてくれたの?」
あまり、気にしなかった事だった。
「東くん、そう言う所が良い所だよね」
今の言葉は、どう捉えるべきだろう。京都の人か?
「ねぇ、東くん」
また、蝉の鳴き声がうるさくなってきた。
「_____だよ」
蝉がうるさく、上手く聞き取れなかったが、次の言葉は聞き取れた。
「もしよければ、付き合ってください」
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