───宵闇の空。真っ暗な中で、少しでも見つけてもらおうと輝く星達。それは、まるで私の心みたいだった。
何も映さなくなった瞳。心はどんより。そんな中でも生きる希望を探して、必死こいているのが私だった。
侯爵令嬢、アリッサ。それだけ聴くと、響きはいいかもしれない。
ただ、する事一つ一つを決められて生きて来た日々。当たり前？そんなのあるのかな。
ある日、食卓に見た事のない物が出て来た。
アリー「お父様、これは何ですの？」
アリー父「これは[太字]寿司[/太字]と言うものらしい。異国の料理だとか」
アリー「寿司？」
お皿に盛り付けられた料理。それは見たこともないのに懐かしくて……？
アリー[小文字]「う、うっ……」[/小文字]
ふと、[漢字]眩暈[/漢字][ふりがな]めまい[/ふりがな]がする。唐突に記憶が流れ込む。
あぁ、これは───[水平線]私───[太字]『[漢字]有栖川 亜里沙[/漢字][ふりがな]ありすがわ ありさ[/ふりがな]』[/太字]、は引きこもりのゲームオタクだった。
ひたすらゲームをして、攻略して、ネットで感想を呟く日々。
将来の夢だったゲーム会社に入社する、と言う事も叶った。
寧ろ、自分で立ち上げた。あっという間に大企業の社長へ。
今度は作る側になれたことに、ひたすら喜んでいた。
精神は問題なかった。喜びに満ち溢れていた。だが、体がダメだった。ある夜、過労死で死んだ。
星下大橋って所、行きたかったな。確か、異世界に行けるとか。
せめて、異世界に行きたいな───
これが、最期に思った事だった。[水平線]私は無我夢中で外に飛び出した。
手にしているのは愛用の剣、ただ一つ。
ただただ、がむしゃらに走って行った。
でも、私の体は疲れた。道にペタリと座り込み、これからどうしよう、と宵闇を見上げる。
しばらくすると、光が見えた。王国騎士団の人達だった。幸い領地の外まで来ていたから、問題はなかった。
私は保護され、部屋に入った。
？？？「じゃ、ここがお前の部屋な。何かあったら呼べよ」
アリー「は、はい」
どうやら、マイロさんと言うらしい。この人が未来の戦友となる事を、私はまだ知らない。
その時、ふと言った。
アリー[小文字]「有栖川亜里沙って、知ってますか？」[/小文字]
マイロさんは、足を止めた。[水平線]マイロ「俺も、つい最近転生した事を知った。有一の心残りは●●かな。あいつ、元気してるかなぁ、天国で……」
マイロさんは転生者だった。亡くなった友人を思うあまりに、亡くなってしまったらしい。そんなんじゃ●●さん、泣いちゃうんじゃないかなぁ。
翌朝、私は騎士団の元から姿を消した。[水平線]自分の為、がむしゃらに生きた日々も悪くなかった。
今はこうして、●●ちゃんの娘であるエマちゃんの為に生きている様なもの。
でも悪くはないよ？●●ちゃんに似てない容姿だけど、性格は似てるから。エマちゃんを見てると、ふいに●●ちゃんの笑顔が蘇ってくる。
●●ちゃん、安心して。貴女の娘は、私達が守ってるから。