柚夏の読切小説集
「三人以上、クラスメイトと話してください」
先生が言う。
「一緒にやろう!」と笑顔で私の席に駆け寄ってくる子なんていない──いや、前まではいなんだ。
また、「二人組になってください」と言われても私が余り、結局先生と組むことになる。
家族にも、私はずっと一人なこと、よく余ることを言っている。……が演技をしながら。「それでさぁ。一人になっずっとその場で立ってたんだー!」と笑いながら話す。
「一人の方が楽でいいんだよ」
そう私は毎回家族に言っているが、全くの嘘だ。
本当は友達が沢山いて、絶対に一人にならない人が良かった。
──だけど、しょうがないんだ。
中学二年生の終わり頃、クラス替えアンケートがあった。
クラス替えアンケートとは、「この人と同じクラスがいい」「この人とは離してほしい」というクラス替えの希望を出すのだ。
中学一年生の頃は「仲がいい人と同じがいい」と言ったが、今回は「あえて仲がいい人と離してほしい」と言った。
先生は「本当にそれでいいのか」と訊いてきたが、私は「それでいい」と言った。
理由は高校生になると知り合いは少なくなるからだ。友達作りは必須。だが、私は友達を作るのが大の苦手だ。
最初はどうやって声をかける? どうやったら友達になれる?
分からない事だらけだ。
私には片手で数えきれるくらい──五人以下の友達がいる。
友達になった経緯は他の人とは違い、特殊だ。
私が小学四年生の頃、ある二人にいじめられていた。誰にも迷惑をかけたくない──巻き込みたくないため、私は教室の端でうずくまっていた。今、思うとこの方が目立っている。
その時、女子グループが私に近寄り、「大丈夫?」と声をかけてくれたのがきっかけだ。だから、私は友達を作るのが苦手だ。
過去の経験を生かすことは出来ない。いじめなんか辛くてもう体験したくない。
──じゃあ、どうやって作ればいいの?
私は分からないまま、自分の机でひとり、“アイディアノート”を開き、小説を書いている。
(あはは……。ぼっちすぎて笑えるよ……)
「あーあ。怖いよ。年齢が近くなってきたよ」
今まで遠かった推しが、近づいてきたのだ。
ペタ前までは学年の差が四学年。だが、今は二学年。もう推してから二年が経ち、年齢も近づいてきた。今まで遠かった推しが近づいてきたような感覚で嬉しい気持ちもあるが、怖い気持ちもある。だけど一番強かったのは悲しい気持ちだった。
──やっぱり、違うんだ。
一年、二年、三年と年が経つにつれ、私は歳を取る。だけど、彼は一年、二年、三年過ぎたとしても歳は取らない。
──二年後は同級生、そして三年後は私が先輩に。
そうなってきてしまうのだ。
それは仕方がなかった。私は[漢字]三次元[/漢字][ふりがな]立体の世界[/ふりがな]に居て、彼は[漢字]二次元[/漢字][ふりがな]平面の世界[/ふりがな]に居るんだからだ。
──二次元と三次元は違う世界だ。
だから絶対に交わることはないし、会うこともできない。
はぁ、とため息を吐き、腕を伸ばす。
「次は道徳か」
道徳は係の人が教科書やノートを配るから準備しなくて大丈夫。
私は再び“アイディアノート”を開いた。お気に入りのシャープペンシルを筆箱から取り出し、ノブをカチカチと軽く押す。程良い長さだ。それから、いつも使っている消しゴムを取り出し、机の横に置いた。
騒がしい教室。廊下では一軍女子たちがキャーキャーと騒いでいる。しかもドアの前で。誰かが通る度にその人の方へ視線を向ける。その繰り返し。
教室では男子たちが机の上に置いてあるタブレットを囲んで話をしている。
そんな教室でひとり、小説を書く私。
あまり辛いとは思わない。私は小説を書くことが好きだからだ。場面問わずにできる趣味。他にも趣味はあるが、特定場所でしかできない。だが、小説執筆はいつでも、どこでもノートと筆記用具さえあればできる。満足しない場合はネットに投稿すればいい。そして、誰かが自分の小説を見てくれる。いいねされたりコメントが届いたりする。私にとってそれは、元気になれる魔法の薬だ。
そして、誰かが他の人に勧め、その人が読んで勧めるの繰り返し。それから有名になり、出版社からオファーが来たり……。
それは、夢のまた夢だ。
私がそうなることはほぼゼロと言えるだろう。私は現実でもネットの世界でも評価されない人間だ。
「上手い」と言われたのは……いつだっけ?
深く考えても悩み続ける。
──そうだ。私は一度も「上手い」と言われたことがない。
それは本当の事だった。友達に見せても「上手い」という言葉は口に出なかった。「おもしろい」ただ、それだけだった。
私は「おもしろい」という言葉よりも「上手い」という言葉の方が好きだ。
みんな、そう思うだろう。
例えば自分は絵を描くことが好きだとする。完成した絵を友達に見せる。友達は「かわいいね」と言ってきた。ただ、それだけ。ネットに投稿したが、反応は無し。どう思うだろう。本当は「上手い」と言われたかったのに「かわいいね」
私は悲しくなる。現にも私はそういう状態だ。
私はグループが出来ているこのクラス──三年〇組の教室の中でひとり、この文章を書いている。本当はグループに入りたい。一人が嫌い。だけどいつも一人ぼっち。もしかしたら未来の自分が読んでいるかもしれない。もし、そうだったらこの言葉を伝えたい。
[斜体][明朝体]『恐いものは同じ最初の一歩。痛みをともなう交流も、得がたい絆を結ぶもの』[/明朝体][/斜体]
私以外の人へ
ひとりぼっちの人があなたのクラスにいるかもしれません。ちょっとだけ話してみてください。きっと相手も喜ぶはずです。
先生が言う。
「一緒にやろう!」と笑顔で私の席に駆け寄ってくる子なんていない──いや、前まではいなんだ。
また、「二人組になってください」と言われても私が余り、結局先生と組むことになる。
家族にも、私はずっと一人なこと、よく余ることを言っている。……が演技をしながら。「それでさぁ。一人になっずっとその場で立ってたんだー!」と笑いながら話す。
「一人の方が楽でいいんだよ」
そう私は毎回家族に言っているが、全くの嘘だ。
本当は友達が沢山いて、絶対に一人にならない人が良かった。
──だけど、しょうがないんだ。
中学二年生の終わり頃、クラス替えアンケートがあった。
クラス替えアンケートとは、「この人と同じクラスがいい」「この人とは離してほしい」というクラス替えの希望を出すのだ。
中学一年生の頃は「仲がいい人と同じがいい」と言ったが、今回は「あえて仲がいい人と離してほしい」と言った。
先生は「本当にそれでいいのか」と訊いてきたが、私は「それでいい」と言った。
理由は高校生になると知り合いは少なくなるからだ。友達作りは必須。だが、私は友達を作るのが大の苦手だ。
最初はどうやって声をかける? どうやったら友達になれる?
分からない事だらけだ。
私には片手で数えきれるくらい──五人以下の友達がいる。
友達になった経緯は他の人とは違い、特殊だ。
私が小学四年生の頃、ある二人にいじめられていた。誰にも迷惑をかけたくない──巻き込みたくないため、私は教室の端でうずくまっていた。今、思うとこの方が目立っている。
その時、女子グループが私に近寄り、「大丈夫?」と声をかけてくれたのがきっかけだ。だから、私は友達を作るのが苦手だ。
過去の経験を生かすことは出来ない。いじめなんか辛くてもう体験したくない。
──じゃあ、どうやって作ればいいの?
私は分からないまま、自分の机でひとり、“アイディアノート”を開き、小説を書いている。
(あはは……。ぼっちすぎて笑えるよ……)
「あーあ。怖いよ。年齢が近くなってきたよ」
今まで遠かった推しが、近づいてきたのだ。
ペタ前までは学年の差が四学年。だが、今は二学年。もう推してから二年が経ち、年齢も近づいてきた。今まで遠かった推しが近づいてきたような感覚で嬉しい気持ちもあるが、怖い気持ちもある。だけど一番強かったのは悲しい気持ちだった。
──やっぱり、違うんだ。
一年、二年、三年と年が経つにつれ、私は歳を取る。だけど、彼は一年、二年、三年過ぎたとしても歳は取らない。
──二年後は同級生、そして三年後は私が先輩に。
そうなってきてしまうのだ。
それは仕方がなかった。私は[漢字]三次元[/漢字][ふりがな]立体の世界[/ふりがな]に居て、彼は[漢字]二次元[/漢字][ふりがな]平面の世界[/ふりがな]に居るんだからだ。
──二次元と三次元は違う世界だ。
だから絶対に交わることはないし、会うこともできない。
はぁ、とため息を吐き、腕を伸ばす。
「次は道徳か」
道徳は係の人が教科書やノートを配るから準備しなくて大丈夫。
私は再び“アイディアノート”を開いた。お気に入りのシャープペンシルを筆箱から取り出し、ノブをカチカチと軽く押す。程良い長さだ。それから、いつも使っている消しゴムを取り出し、机の横に置いた。
騒がしい教室。廊下では一軍女子たちがキャーキャーと騒いでいる。しかもドアの前で。誰かが通る度にその人の方へ視線を向ける。その繰り返し。
教室では男子たちが机の上に置いてあるタブレットを囲んで話をしている。
そんな教室でひとり、小説を書く私。
あまり辛いとは思わない。私は小説を書くことが好きだからだ。場面問わずにできる趣味。他にも趣味はあるが、特定場所でしかできない。だが、小説執筆はいつでも、どこでもノートと筆記用具さえあればできる。満足しない場合はネットに投稿すればいい。そして、誰かが自分の小説を見てくれる。いいねされたりコメントが届いたりする。私にとってそれは、元気になれる魔法の薬だ。
そして、誰かが他の人に勧め、その人が読んで勧めるの繰り返し。それから有名になり、出版社からオファーが来たり……。
それは、夢のまた夢だ。
私がそうなることはほぼゼロと言えるだろう。私は現実でもネットの世界でも評価されない人間だ。
「上手い」と言われたのは……いつだっけ?
深く考えても悩み続ける。
──そうだ。私は一度も「上手い」と言われたことがない。
それは本当の事だった。友達に見せても「上手い」という言葉は口に出なかった。「おもしろい」ただ、それだけだった。
私は「おもしろい」という言葉よりも「上手い」という言葉の方が好きだ。
みんな、そう思うだろう。
例えば自分は絵を描くことが好きだとする。完成した絵を友達に見せる。友達は「かわいいね」と言ってきた。ただ、それだけ。ネットに投稿したが、反応は無し。どう思うだろう。本当は「上手い」と言われたかったのに「かわいいね」
私は悲しくなる。現にも私はそういう状態だ。
私はグループが出来ているこのクラス──三年〇組の教室の中でひとり、この文章を書いている。本当はグループに入りたい。一人が嫌い。だけどいつも一人ぼっち。もしかしたら未来の自分が読んでいるかもしれない。もし、そうだったらこの言葉を伝えたい。
[斜体][明朝体]『恐いものは同じ最初の一歩。痛みをともなう交流も、得がたい絆を結ぶもの』[/明朝体][/斜体]
私以外の人へ
ひとりぼっちの人があなたのクラスにいるかもしれません。ちょっとだけ話してみてください。きっと相手も喜ぶはずです。