ヴィ・ヴァンは違和感を感じる。
　なぜ、世界の主を殺したのに世界が崩れないのかと。
　そんな世界に小さな声が響く。
｢あぁ、再戦しよっかぁ。ココがテメェの地獄だ｣
　ヴィ・ヴァンは行き良いよく振り返る。
　そこには血だらけの蘭閣が立っていた。
　不思議なことに蘭閣の胸の穴は塞いでいた。
｢ヒヒッ、お前なぁんで生きてる?｣
｢この世界の権能だぁ｣
　そういってヴィ・ヴァンを如意棒で殴る。
　ヴィ・ヴァンは軽く吹き飛ぶ。
｢他の世界とは少し違うんじゃねぇか?｣
　ヴィ・ヴァンは少しだけ苦しそうにいう。
｢あぁ、そうかもな。でも、それが俺の世界の権能だ｣
　この世界では相手は弱体化され自分自身は強化される。そして、自分自身は不死である。
｢じゃあ世界が崩れるまで殺してやんよぉぉぉ｣
｢殺れるもんなら殺ってみやがれぇぇぇぇぇ｣
　二人は殴り合う。
　世界が崩れるその時間まで。

　そして、世界は崩れ落ちた。
　だが、二人共もう立つのがやっとだ。
　二人は同時に拳を振るう。
　蘭閣の拳はヴィ・ヴァンの頬を殴り、ヴィ・ヴァンの拳は蘭閣の頬をかすめただけだった。
　ヴィ・ヴァンは地に倒れ伏した。
｢この勝負、俺の勝ちだ｣
　蘭閣は言い放つも息が荒い。
｢確かに勝負に負けた。が、この戦で勝つのは俺だ‹力・破壊›｣
　ヴィ・ヴァンはもう振るえないであろう拳を力一杯振り絞り、地を殴る。
　ヴィ・ヴァンの最後の抵抗は二人がいた山を崩壊させた。
　蘭閣は筋斗雲に乗って危機を免れた。
　だが、これではヴィ・ヴァンが死んだかも分からない。
　してやられた。と蘭閣は思う。
　が、今の力ではこの崩れた山から人一人見つけ出すほどの力はなく、蘭閣は筋斗雲に吸い込まれるかのように倒れ伏した。

　ヴィ・ヴァンの最後の力は蘭閣を殺すためか、情報を聞き出されるのを防ぐためか、それとも、生き残るためなのか、それはわからない。