今、二人がいる場所は蘭閣の世界である。
｢ふぅん、ここが君の世界かぁ。綺麗だ｣
　周りを見回している男の名はヴィ・ヴァン。
｢でも、すぐに壊れちゃいそう‹力・破滅›｣
　ヴィ・ヴァンは拳を下に振りかぶり、世界を殴る。
　魔法使いが構築する世界は小さな世界である。
　故に壊すことは可能である。
　が、壊そうとするものは多くない。
　何故なら壊しにくいという理由もあるが、元の世界は世界樹の枝、そして、魔法使いが創る世界はそれに生える葉だ。
　そのため壊したら普通なら元の世界に戻る。
　が、もしかするととんでもないことが起こる可能性があるからだ。
　だが、ヴィ・ヴァンはそれを気にもせず世界を破壊しようとする。
｢マジか!?｣
　蘭閣はヴィ・ヴァンの行動を見てあまりの驚きに声が漏れ出す。
　驚くのも束の間、蘭閣は世界の権能を使う。
｢‹[漢字]封魔光天[/漢字][ふりがな]ふうまこうてん[/ふりがな]›｣
　世界を殴ろうとしたヴィ・ヴァンの力が弱まる。
｢この世界では俺以外の生物は弱体化し、俺が強化される。それがこの世界の権能だ。だから、この世界に来たことを諦めるんだな｣
｢ヒヒッ、世界は破壊できないかもしんねぇがよぉ、お前一人殺すぐらい造作もねぇよ｣
　ヴィ・ヴァンは地を蹴り、空中に浮かぶ蘭閣へと行く。
　だが、蘭閣は棒を伸ばし自分のところに来る前にヴィ・ヴァンを叩き落とす。
｢ガハッ｣
　ヴィ・ヴァンは背中から地に勢いよく落ちた。
　ヴィ・ヴァンは立ち上がることはできたがふらふらだ。
｢いてて、ヒデェな。上から弱体化した人を叩き落とすだなんてよぉ｣
｢フンッ、国を襲った者の言い分には思えねぇなぁ｣
　蘭閣は鼻で笑い呆れたようにいう。
｢こっからは魔法も使って時間稼いでやらぁぁぁぁぁ｣
　ヴィ・ヴァンは風の拳を放つ。
｢‹力・[漢字]風破拳[/漢字][ふりがな]ふうはけん[/ふりがな]›｣
　その拳は筋斗雲を破壊し、如意棒を歪ませる。
｢クソが、‹[漢字]守天陣[/漢字][ふりがな]しゅてんじん[/ふりがな]›｣
　蘭閣は紋を描く。
　その紋は光を放ち攻撃を防ぐ。
｢チッ、めんどくせぇ。ドデカイの行くぜぇ‹[漢字]嵐破壊[/漢字][ふりがな]らんはけん[/ふりがな]›｣
　さっきのは風の拳であったが、今度のは嵐の拳である。大きさはさっきの数十倍はあった。
　蘭閣は筋斗雲に乗り逃げようとするも逃げた先で風破拳を打たれ地に落ちた。
｢よぉ、やっと地に落ちたか。やっぱぼくちん等のような輩はやっぱ地で喧嘩すんのがいい｣
　ヴィ・ヴァンは｢ヒヒッ｣と笑って拳を蘭閣に振るう。
　蘭閣の心臓はくり抜かれた。
｢ゴバァ｣
　蘭閣は盛大に血を吐く。
　胸からは大量の血が流れる。
　蘭閣はゆっくりと目を閉じた。
｢ヒヒッ、久しぶりにいい戦いをした。お前は先に地獄に行ってぼくちんとまた地獄でやり合おう｣
　ヴィ・ヴァンはもう返事をしないであろう相手に最後の言葉を掛けた。