カツカツと地面を歩く音が鳴り響く。
｢お前が女帝か?｣
　霊幻が女に問う。
　女は妖艶に笑うと、
｢えぇ、私が女帝よ。お会いできて嬉しいわ、霊幻様｣
　女は霊幻を様付けで呼ぶ。まるで、ずっと憧れていたかのように。
　が、霊幻は気にもとめずに冷静に荒々しくに言葉を放つ。
｢お前等の目的は何だ?｣
　霊幻の目は女を見据える。
｢嫌だわ、そんな怖い顔なさって。もっと笑顔でスマイル｣
　女はただ笑うだけ。
｢話す気がないなら無理やり聞くしかないな｣
｢嫌ですわねぇ、気の早い殿方は‹[漢字]風征[/漢字][ふりがな]ふうせい[/ふりがな]›｣
　女は風の魔法を放つ。
　が、霊幻はただその魔法を避けるだけ。
｢気が早いのはどっちだろうな?‹分霊›｣
　霊幻は何人にも分かれる。
　そして、一斉に女へと襲いかかる。
｢‹華羅螺魏流拳術・華風乱打›｣
｢‹飽和・[漢字]逆撫[/漢字][ふりがな]さかなで[/ふりがな]›｣
　霊幻の無数の拳を受け止め跳ね返す。
｢流石、元最強パーティなだけありますね｣
｢お前もウロボロス教団幹部ってのは嘘じゃねぇな｣
　二人は優雅にされど豪快に笑う。
　先に攻撃を再開したのは霊幻だった。
｢俺の世界‹霊映界›｣
　霊幻は世界の構築を始めた。
｢こんなにも早くにお使いになられるのですか。私の世界‹[漢字]満天界[/漢字][ふりがな]まんてんかい[/ふりがな]›｣
　ここからは世界の押し合い。
　勝つは霊幻の世界。
　女の世界は粉々に崩れ落ちる。
｢お前、ここで勝てると思うなよ｣
　無数の霊幻が女を襲う。
｢結果はさっきと同じですわよ｣
　だが、女は自分を守り切ることはできなかった。
　この世界で霊幻は全てが自分の掌の上に過ぎない。
｢ここに入ったのだ。お前に勝ち目はない‹霊なる響きをこだまさせ今ここに真なる刃を零点・霊永氷凍›｣
　無数の氷の霊が女を襲う。
｢‹飽和›｣
　女はまだ諦めていない。
　今も必死に悪あがきをしている。
｢ここでの行動はすべて筒抜けだ｣
　女は氷の霊に気を取られて背後にいる霊幻の分霊には気を回せていなかった。
　女は霊幻の分霊が放った魔法にて倒れ伏す。
　それと同時に世界は崩れ落ち元の世界へと戻る。
｢ぐっぅぅぅっ｣
　女は苦しんだ。
　それを霊幻は冷たい目で見る。
｢トドメだ。自分の悪事を反省し地獄での刑を軽くでもしてもらえ‹零ひょ｣
　霊幻の言葉は途中で止まる。
｢はぁ、はぁ。私の命をすべて使ってあなたを封印する｣
　その言葉道理、女は息絶えた。
　そして、霊幻はシャボン玉のような膜の中に閉じ込められた。
｢ふむ、彼奴等なら大丈夫か｣
　そういって霊幻は横になった。
　まるでこの先を見越しているかのように戦場を見ながら。