景♂晴 魔力過剰ネタ(夜這いネタ後日談)
「その、し……迷惑をかけた。すまん」
体調は問題ないと何度断っても何故か景虎にベッドに横になる様に勧められ、仕方なく折衷案としてベッドに腰かけた晴信はそう言って目を伏せた。
「まぁ……今はこの通り見た目が変わっちまっただけで何も問題ないが、医者に忠告されちまっては仕方ない。悪いが、暫くお前との決着はお預けだ」
「……」
いつもなら晴信のことをからかうような言葉を投げかけていてもおかしくないタイミングでもだんまりを決め込んでいる景虎の様子を不審に思い、晴信が顔を見上げると景虎は先程と同じように少し硬い表情をしていた。
「おい、どうし……」
「……もう半月も前の事ですよね?」
何で私の魔力があなたの中に残っていたんですか。言葉として続かなかったが、景虎の目がそう晴信に訴えていた。
「俺も舞い上がっていたんだろうな。なんというか、…………お前と体の深い所まで繋がってた痕跡を消したくなかった。本当にそれだけだ」
そう言いながら晴信は俯きながら男らしい大きく武骨な手で自身の顔を覆った。
もう、と頭上から景虎のため息が聞こえた。絶対に呆れられている、そう思っていたのだが次の瞬間に晴信は景虎の腕の中に抱きすくめられ、彼の鳩尾の辺りに顔を埋める形になった。
「なっ……!? てめ、何考えて……!!」
「……分からないです」
「はぁ!?」
「分からないですけど……なんか、今の貴方の姿に少し心が高鳴ってしまったり、反対にいつもの晴信が戻って来なかったらどうしようと不安になってしまったり……」
晴信は、ぽつりぽつりと話す景虎の言葉に静かに耳を傾けていた。
「……お願いですから、早くいつもの晴信に戻ってくださいね。それまでは私、サシ飲みも仕合もせずににちゃんと大人しく待ってますから」
「いや、別にそれくらい誰とでもすればい……」
「晴信とじゃないと嫌です。……だから、晴信も戦えなくて暇だからと言って、他の人のところに行ったりしないでくださいよ?」
「っ……!!」
晴信の目が驚きで見開かれる。それと同時に頬がカッと熱くなる感覚を覚えた。
「…………俺はお前と違って酒と闘いだけが楽しみって訳じゃねぇんだ。西洋の騎士たちにチェスを教わったばかりだし、他国の兵法や軍略の知識を出来るだけ多く得たい」
「……駄目です」
「はぁ!?」
照れ隠しで放った言葉に反論されて思わず大きな声を出した晴信だったが、すぐに景虎の腕の力が増したことで再び口を噤んだ。
「本当に理由は分からないですが…………今のあなたの姿を誰にも見せたくないのです」
嗚呼、こんなことが有り得たのか。………今この瞬間に、あの長尾景虎が、この武田晴信に対して……!!あくまで晴信の一方通行だったはずの想いの一部を景虎が受け取り、分からないながらも少しだけ返してくれた。その事実は容易く思考を溶かし、得も言われぬ幸福感に浸された晴信は情事とはまた違った蕩けた表情で景虎の背におずおずと両手を回してしがみついた。
**
(あ、あの信玄入道が、恋する乙女の顔をして謙信に縋り付いているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ)
二人はまだ気付いていない。面白半分で景虎の後ろにピッタリ引っ付いて部屋に入り、霊体化して二人のやり取りを覗き見ていた信長がひきつった笑みを浮かべながら絶句していることに。
体調は問題ないと何度断っても何故か景虎にベッドに横になる様に勧められ、仕方なく折衷案としてベッドに腰かけた晴信はそう言って目を伏せた。
「まぁ……今はこの通り見た目が変わっちまっただけで何も問題ないが、医者に忠告されちまっては仕方ない。悪いが、暫くお前との決着はお預けだ」
「……」
いつもなら晴信のことをからかうような言葉を投げかけていてもおかしくないタイミングでもだんまりを決め込んでいる景虎の様子を不審に思い、晴信が顔を見上げると景虎は先程と同じように少し硬い表情をしていた。
「おい、どうし……」
「……もう半月も前の事ですよね?」
何で私の魔力があなたの中に残っていたんですか。言葉として続かなかったが、景虎の目がそう晴信に訴えていた。
「俺も舞い上がっていたんだろうな。なんというか、…………お前と体の深い所まで繋がってた痕跡を消したくなかった。本当にそれだけだ」
そう言いながら晴信は俯きながら男らしい大きく武骨な手で自身の顔を覆った。
もう、と頭上から景虎のため息が聞こえた。絶対に呆れられている、そう思っていたのだが次の瞬間に晴信は景虎の腕の中に抱きすくめられ、彼の鳩尾の辺りに顔を埋める形になった。
「なっ……!? てめ、何考えて……!!」
「……分からないです」
「はぁ!?」
「分からないですけど……なんか、今の貴方の姿に少し心が高鳴ってしまったり、反対にいつもの晴信が戻って来なかったらどうしようと不安になってしまったり……」
晴信は、ぽつりぽつりと話す景虎の言葉に静かに耳を傾けていた。
「……お願いですから、早くいつもの晴信に戻ってくださいね。それまでは私、サシ飲みも仕合もせずににちゃんと大人しく待ってますから」
「いや、別にそれくらい誰とでもすればい……」
「晴信とじゃないと嫌です。……だから、晴信も戦えなくて暇だからと言って、他の人のところに行ったりしないでくださいよ?」
「っ……!!」
晴信の目が驚きで見開かれる。それと同時に頬がカッと熱くなる感覚を覚えた。
「…………俺はお前と違って酒と闘いだけが楽しみって訳じゃねぇんだ。西洋の騎士たちにチェスを教わったばかりだし、他国の兵法や軍略の知識を出来るだけ多く得たい」
「……駄目です」
「はぁ!?」
照れ隠しで放った言葉に反論されて思わず大きな声を出した晴信だったが、すぐに景虎の腕の力が増したことで再び口を噤んだ。
「本当に理由は分からないですが…………今のあなたの姿を誰にも見せたくないのです」
嗚呼、こんなことが有り得たのか。………今この瞬間に、あの長尾景虎が、この武田晴信に対して……!!あくまで晴信の一方通行だったはずの想いの一部を景虎が受け取り、分からないながらも少しだけ返してくれた。その事実は容易く思考を溶かし、得も言われぬ幸福感に浸された晴信は情事とはまた違った蕩けた表情で景虎の背におずおずと両手を回してしがみついた。
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(あ、あの信玄入道が、恋する乙女の顔をして謙信に縋り付いているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ)
二人はまだ気付いていない。面白半分で景虎の後ろにピッタリ引っ付いて部屋に入り、霊体化して二人のやり取りを覗き見ていた信長がひきつった笑みを浮かべながら絶句していることに。
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