二次創作
似ているようで、似ていない。
ぼくが寝たことを確認すると、少年……名探偵 [太字]江戸川乱歩[/太字]は運転している壮年の男……武装探偵社社長 [太字]福沢諭吉[/太字]に話しかけた。
「社長。僕、あの子をうちの社員にしたい」
「……まだ10歳程だが、良いのか?」
「……10歳ぐらい、だからだよ」
「あの子は年相応の感情を失ってしまった。先ずはその感情を回復していくこと、かな。それとあの子、見た感じだと相当劣悪な貧民街にいたっぽいし、家族もいるけど顔は見せたくないって云ってたからねー。」
「逆効果になっちゃうってことだから良い?✨️」
「善いぞ」
「よし!じゃあ帰ったら前に考えていた入社試験、試してみようよ!」
「それはしなくていい」
「何で!?」
「殺し、というのは決して赦されない行為ではあるが、家族に危険が及ばぬよう殺しを認めた上で刑務所に入ろうと、己の身を挺して誰かを守ろうとするのは魂の真贋を見極めるに相応しいからな」
「やった!」
「……隨分その少年に肩を貸しているな」
「え、可笑しい?」
「否………普段の乱歩の口から聞かぬ言葉だと思った」
「非道い!僕でも偶には云うもん!
……………………うちの社員にしようって思ったのは、[漢字]先刻[/漢字][ふりがな]さっき[/ふりがな]の理由ともう一つあるよ」
「……ほう」
「____この子さ、最初に僕たちに云った言葉もそうだけど、どんな目だったか覚えてる?」
「………何かに絶望………己に絶望しているような目だった気がするが」
「うーん、五十点の回答ってところだね。
……答えはそれを通り越して言葉が言葉だけど、この子があの時していた目は "[明朝体][太字][太字]死を望んでいる目[/太字][/太字][/明朝体]" だよ」
「…!」
福沢は急に考えが固まった感覚がした。
「(そういうことだったのか)」
「何で、たった四人殺しただけであの目をしたのか。僕が予想するに、兄のやり様を知っていて、更に弟には殺しをさせないことを、約束していたからなのだろうね。」
「兄は弟達の為に異能力でゴロツキ達と対峙していた。当然の如く、その異能で殺しもした。
———兄しか異能を持っていなかったから。
———弟達を[漢字]守護[/漢字][ふりがな]まも[/ふりがな]る必要があったから。」
「それだからが故に、双子の片割れでもあるこの子は兄と同じものを背負おうとしたが、兄はこの子に汚れ仕事をしてほしくなかったから、説得して一生の約束……みたいになった。」
「その約束を破ってしまったからああなってしまったんだ」
「……」
「ああいう死を望む目をする人には居場所を作らないと、その人が壊れてしまう。
______偶々、その目を向けてきた先が僕たちで、居場所を作る立場になった……ただそれだけだよ」
———以降、二人が話すことは社に着くまで一切無かったという。