【大型参加型】魔法世界のアウトサイダー達は今日も大暴れしているようです。
《side クロノス・ブラック》
「はぁ、はぁ……」
もうホント、ふざけんなよ。どうなってんだよあいつ。攻撃が一切届かねぇ。魔法を放とうが、銃を撃とうが、剣で斬りつけようが、何一つとして通じねぇ。
ああ、隣を走っていたヤツが転んだ。ちょうどいい、この馬鹿を始末するために、あいつはきっと少し立ち止まるだろう。少し、逃げられる希望が出たかもしれねぇ。
けどオレの右足はほぼぐちゃぐちゃだし、残ってるのはオレも含めて二人、もうこれは絶望的かもしれねぇな。
ただ、まだ死にたくない。まだ生きていたい。その一心で薄暮れの路地裏を駆ける。
ああ、確かにオレは、悪いコトなんてたくさん、そりゃあもう数えきれないほどにしてきたさ。
気に食わないヤツを踏み付けにして、マトモに生きてるヤツらを喰い物にして、生きてきたさ。
反省する気なんて、一片たりとも持っちゃいねぇさ。そんなヤツは死んで当然、地獄行き。当たり前だ。
でもオレはまだ死にたかねぇよ。自分の命が一番大事、そのためなら例え他のヤツがどうなろうと、オレの知ったこっちゃねぇ。
「あれ?なんで逃げるんすか?今更逃げても、もう無駄だと思うっすよ?あんた弱っちいんすから。どうせすぐ、死にますって。」
ああそうだ、確かにオレは弱ぇ。
それを知らないまま、目を瞑ったまま、今までマフィアの威を借りて、散々に盗んで奪って殺して陥れてきたよ。
今の今までクソみてぇな事して、野良犬かなんかみてぇに生きてきた。
神なんざ信じちゃいない、仲間なんて裏切るのが当然、大事なのは自分だけ、自分以外のヤツの命なんてどうでもいいって。
いやむしろ、オレに利用されるためにあるんだってぐらいに思ってたよ。
けど、オレは死にたくねぇんだよ。死ぬのは怖い、ただそれだけだ。
ああクズだ、我ながら、呆れるぐらいのクズだとも。
でもそれがどうしたよ。
クズはクズなりに、楽しく生きて来たんだよ。
小悪党は小悪党なりに、色々考えて生きて来たんだよ。
そう、だってのに…
「くっそ、どうなってやがんだよ!この…」
化け物が!
そう叫ぼうとした言葉が形になる前に、敵の持つ長い鎖と、それについた鉄球がが横を掠める。見ると、隣を走るラスト一人が殺されていた。
自慢の長い金髪も、サファイアのようだと褒められた目も、気に入っていた真っ白いスーツも、全部全部真っ赤なぐちゃぐちゃの、ただのゴミに変わっている。
「む、意外と手こずったっすね。力加減ミスって殺しちまった。」
そう言う黒髪の男の標的は、もうオレしか残っちゃいねぇ。
「う、うあ、うわぁ!!!!」
こんな状況でマトモな言葉が出るわけもなく、それでいてどこかに冷静さを残した頭で死を実感した。
目の前の化け物に、背を向けて走る。しかし、瞬きする暇すらもなく、そいつはオレの目の前に立っていた。
「あー、うん。よし、これなら捕まえられそうっすね。良かった良かった。ヴァイラに怒られずにすむっす。」
目の前の化け物はにかりと笑っている。そいつの黒い髪に青黒い目と、返り血との不気味なコントラストが、妙に似合って見えた。
けれど、オレは死にたくない。ただその一心で、相手に交渉を持ちかける。例え受け入れられずとも、数秒の延命になると期待して。
「やめろ、辞めてくれ!金なら出す、いくらでも出す、だから…」
「そっすか。でもあんたを生かすか決めるの、俺じゃねぇんすよね。俺は嬲ったりしませんし、大人しく捕まってもらえねぇっすか?」
重たい絶望は、足先から冷えていくような感覚、今まで殺してきたヤツらの怨嗟の声…そう言ったものとごた混ぜになってオレを襲う。
しかしその直後、頭上から背の高い人影が降ってきた。コレだからザコをヒノ様の部下にしたくなかったんだ…という、ぼやきの混じった声が響く。
「おいてめー、もう大丈夫だぜェ。ヒノ様に命令された以上、ボク様がてめーをたすけてやるからよォ。」
長い黒髪が揺れる。こんな薄暗い裏路地には到底場違いな、一般人めいた格好。目の前で翻る長いベージュのコートには、見覚えがあった。
彼の名前はクイ・オーダー。オレら、[漢字]宝石[/漢字][ふりがな]ジェンマ[/ふりがな]を率いる、ヒノ・マインド幹部の副官だ。
「おっとと。ボスのお出ましってヤツっすね?楽しそうな展開っす。そうだ、あんたの名前聞いても良いっすか?」
「はァ?名乗るならまずはてめーからだろうが。そもそも、ボク様がボスなワケがないだろォ?この世にはもっともっと、ボク様なんて足元にも及ばねェぐらいに尊いお方がいるんだぜェ?」
その反応にきょとんとした表情になったそいつは、からからと笑い出した。
「なるほどそっすか。確かにそっすね。俺の名前は[漢字]鰲海[/漢字][ふりがな]ごうかい[/ふりがな]っす。これでも警察の幹部っすよ。よろしくっす。」
ははは、なんだこいつ、警察の幹部かよ…そりゃ、化け物なのも納得だ。
あーあ、あいつらまだ幸せだぜ。幹部に追われてたなんて、知らずに死ねたんだから。
オレはもう、この人達の強さを知っている。いや、知ってしまった。
確実に巻き込まれて死ぬんだろうな、と、頭が、体が、問答無用で理解する。
「あーちなみに。ボスってのはそっちの偉い人じゃなくて、ゲームの話っすよ。やったコト、ないっすか?」
「そんな話、今はしてねェんだよなァ…さてはこいつ、バカじゃねェか?」
呆れたような溜息のあと、てめーはジャマだしさっさと帰っとけ、とだけ言い、クイさんはオレの首根っこを引っ掴んで上空に放り投げた。
助かった…のか?
「弱っちいやつ、巻き込まないようにはするんすか?あんた、意外と仲間思いなんすね。」
「いやソレも大分違ェんだよなァ…まァいい、てめーが戦うってなら、相手してやるぜェ。」
んじゃ、そーしましょうか。
鰲海とか言った化け物はそう言うが早いか、手に持った鎖を振り回す。対するクイさんは愛用のマチェーテを取り出して、思い切り相手に斬りかかる。
互いに一歩も引けを取らない戦いで、オレらを追っていた時のあいつは、本気など一割も出していなかったのだと実感させられた。
そしてオレは今、それを上空から強制的に見させられている。落ちる恐怖と、助かった安堵に同時に苛まれながら。
とは言え落ちる前にはちゃんと、オレと同じ[漢字]宝石[/漢字][ふりがな]ジェンマ[/ふりがな]の構成員が運転するヘリに回収された。
クイさんが飛び降りてきたらしいそのヘリに乗り込んだ時には、度重なるストレスによるものなのかオレは既に意識を失っていた。
[中央寄せ][大文字][大文字]× × ×[/大文字][/大文字][/中央寄せ]
目が覚めるとそこはベッドの上で、長い黒髪をポニーテールにまとめた美少女が目の前でにこにこと笑っていた。
「…起きた?起きたのね?」
「あ、あぁ…って、誰だよあんた。」
そう言いながらも、大きなエメラルドグリーンの瞳に映るオレを見て驚く。
傷が残ってない。よくよく考えてみると、肉すら見えていたハズの足の痛みももう感じない。
マジで完全に完治してるぜ。ホントにどうなってんだ?
「きらるは[漢字]剣持[/漢字][ふりがな]けんもち[/ふりがな]きらる、なのよ!治してあげたのもきらるなのね!とぉっても、いい子でしょう?」
ああそうかよ、こんなガキ…いや、ガキ!?なんでこんな所にガキがいやがるんだよおい。オレはガキなんて大っ嫌いなんだよ。
「なんでも何も、きらるがお医者さまだからよ?それから、きらるはこれでも15歳なのよ!ばかにしないでほしいのねっ!」
「ハン、やっぱガキじゃねぇか。帰れ帰れ、お呼びじゃねぇんだよ。」
あーあーまったく、今日マジで厄日じゃねぇか…化け物みてぇな幹部に追われるわ、妙なガキが医者やってるわ……
「むー!治してあげたんだから、お礼ぐらいは言うべきなのよ!あなたはとっても悪い子ねっ!!」
いや知らねぇよ。
つーか30近いマフィアの構成員捕まえて言う事がそれかよ、くっだらねぇ。
うっわ、しかもまとわりついて来やがるぜこいつ。
「はいはいそうかよありがとさん。じゃあな。」
「むふー!でも、もう来ないようにするのよ?死んだらそれでおしまいなのね!」
ったく、気晴らしにカジノでも行くか。
そういやあいつらの持ってた金とかブツ、まだあの路地裏に落ちてんのか?
だとすりゃ、勿体ねぇ事したな…
「はぁ、はぁ……」
もうホント、ふざけんなよ。どうなってんだよあいつ。攻撃が一切届かねぇ。魔法を放とうが、銃を撃とうが、剣で斬りつけようが、何一つとして通じねぇ。
ああ、隣を走っていたヤツが転んだ。ちょうどいい、この馬鹿を始末するために、あいつはきっと少し立ち止まるだろう。少し、逃げられる希望が出たかもしれねぇ。
けどオレの右足はほぼぐちゃぐちゃだし、残ってるのはオレも含めて二人、もうこれは絶望的かもしれねぇな。
ただ、まだ死にたくない。まだ生きていたい。その一心で薄暮れの路地裏を駆ける。
ああ、確かにオレは、悪いコトなんてたくさん、そりゃあもう数えきれないほどにしてきたさ。
気に食わないヤツを踏み付けにして、マトモに生きてるヤツらを喰い物にして、生きてきたさ。
反省する気なんて、一片たりとも持っちゃいねぇさ。そんなヤツは死んで当然、地獄行き。当たり前だ。
でもオレはまだ死にたかねぇよ。自分の命が一番大事、そのためなら例え他のヤツがどうなろうと、オレの知ったこっちゃねぇ。
「あれ?なんで逃げるんすか?今更逃げても、もう無駄だと思うっすよ?あんた弱っちいんすから。どうせすぐ、死にますって。」
ああそうだ、確かにオレは弱ぇ。
それを知らないまま、目を瞑ったまま、今までマフィアの威を借りて、散々に盗んで奪って殺して陥れてきたよ。
今の今までクソみてぇな事して、野良犬かなんかみてぇに生きてきた。
神なんざ信じちゃいない、仲間なんて裏切るのが当然、大事なのは自分だけ、自分以外のヤツの命なんてどうでもいいって。
いやむしろ、オレに利用されるためにあるんだってぐらいに思ってたよ。
けど、オレは死にたくねぇんだよ。死ぬのは怖い、ただそれだけだ。
ああクズだ、我ながら、呆れるぐらいのクズだとも。
でもそれがどうしたよ。
クズはクズなりに、楽しく生きて来たんだよ。
小悪党は小悪党なりに、色々考えて生きて来たんだよ。
そう、だってのに…
「くっそ、どうなってやがんだよ!この…」
化け物が!
そう叫ぼうとした言葉が形になる前に、敵の持つ長い鎖と、それについた鉄球がが横を掠める。見ると、隣を走るラスト一人が殺されていた。
自慢の長い金髪も、サファイアのようだと褒められた目も、気に入っていた真っ白いスーツも、全部全部真っ赤なぐちゃぐちゃの、ただのゴミに変わっている。
「む、意外と手こずったっすね。力加減ミスって殺しちまった。」
そう言う黒髪の男の標的は、もうオレしか残っちゃいねぇ。
「う、うあ、うわぁ!!!!」
こんな状況でマトモな言葉が出るわけもなく、それでいてどこかに冷静さを残した頭で死を実感した。
目の前の化け物に、背を向けて走る。しかし、瞬きする暇すらもなく、そいつはオレの目の前に立っていた。
「あー、うん。よし、これなら捕まえられそうっすね。良かった良かった。ヴァイラに怒られずにすむっす。」
目の前の化け物はにかりと笑っている。そいつの黒い髪に青黒い目と、返り血との不気味なコントラストが、妙に似合って見えた。
けれど、オレは死にたくない。ただその一心で、相手に交渉を持ちかける。例え受け入れられずとも、数秒の延命になると期待して。
「やめろ、辞めてくれ!金なら出す、いくらでも出す、だから…」
「そっすか。でもあんたを生かすか決めるの、俺じゃねぇんすよね。俺は嬲ったりしませんし、大人しく捕まってもらえねぇっすか?」
重たい絶望は、足先から冷えていくような感覚、今まで殺してきたヤツらの怨嗟の声…そう言ったものとごた混ぜになってオレを襲う。
しかしその直後、頭上から背の高い人影が降ってきた。コレだからザコをヒノ様の部下にしたくなかったんだ…という、ぼやきの混じった声が響く。
「おいてめー、もう大丈夫だぜェ。ヒノ様に命令された以上、ボク様がてめーをたすけてやるからよォ。」
長い黒髪が揺れる。こんな薄暗い裏路地には到底場違いな、一般人めいた格好。目の前で翻る長いベージュのコートには、見覚えがあった。
彼の名前はクイ・オーダー。オレら、[漢字]宝石[/漢字][ふりがな]ジェンマ[/ふりがな]を率いる、ヒノ・マインド幹部の副官だ。
「おっとと。ボスのお出ましってヤツっすね?楽しそうな展開っす。そうだ、あんたの名前聞いても良いっすか?」
「はァ?名乗るならまずはてめーからだろうが。そもそも、ボク様がボスなワケがないだろォ?この世にはもっともっと、ボク様なんて足元にも及ばねェぐらいに尊いお方がいるんだぜェ?」
その反応にきょとんとした表情になったそいつは、からからと笑い出した。
「なるほどそっすか。確かにそっすね。俺の名前は[漢字]鰲海[/漢字][ふりがな]ごうかい[/ふりがな]っす。これでも警察の幹部っすよ。よろしくっす。」
ははは、なんだこいつ、警察の幹部かよ…そりゃ、化け物なのも納得だ。
あーあ、あいつらまだ幸せだぜ。幹部に追われてたなんて、知らずに死ねたんだから。
オレはもう、この人達の強さを知っている。いや、知ってしまった。
確実に巻き込まれて死ぬんだろうな、と、頭が、体が、問答無用で理解する。
「あーちなみに。ボスってのはそっちの偉い人じゃなくて、ゲームの話っすよ。やったコト、ないっすか?」
「そんな話、今はしてねェんだよなァ…さてはこいつ、バカじゃねェか?」
呆れたような溜息のあと、てめーはジャマだしさっさと帰っとけ、とだけ言い、クイさんはオレの首根っこを引っ掴んで上空に放り投げた。
助かった…のか?
「弱っちいやつ、巻き込まないようにはするんすか?あんた、意外と仲間思いなんすね。」
「いやソレも大分違ェんだよなァ…まァいい、てめーが戦うってなら、相手してやるぜェ。」
んじゃ、そーしましょうか。
鰲海とか言った化け物はそう言うが早いか、手に持った鎖を振り回す。対するクイさんは愛用のマチェーテを取り出して、思い切り相手に斬りかかる。
互いに一歩も引けを取らない戦いで、オレらを追っていた時のあいつは、本気など一割も出していなかったのだと実感させられた。
そしてオレは今、それを上空から強制的に見させられている。落ちる恐怖と、助かった安堵に同時に苛まれながら。
とは言え落ちる前にはちゃんと、オレと同じ[漢字]宝石[/漢字][ふりがな]ジェンマ[/ふりがな]の構成員が運転するヘリに回収された。
クイさんが飛び降りてきたらしいそのヘリに乗り込んだ時には、度重なるストレスによるものなのかオレは既に意識を失っていた。
[中央寄せ][大文字][大文字]× × ×[/大文字][/大文字][/中央寄せ]
目が覚めるとそこはベッドの上で、長い黒髪をポニーテールにまとめた美少女が目の前でにこにこと笑っていた。
「…起きた?起きたのね?」
「あ、あぁ…って、誰だよあんた。」
そう言いながらも、大きなエメラルドグリーンの瞳に映るオレを見て驚く。
傷が残ってない。よくよく考えてみると、肉すら見えていたハズの足の痛みももう感じない。
マジで完全に完治してるぜ。ホントにどうなってんだ?
「きらるは[漢字]剣持[/漢字][ふりがな]けんもち[/ふりがな]きらる、なのよ!治してあげたのもきらるなのね!とぉっても、いい子でしょう?」
ああそうかよ、こんなガキ…いや、ガキ!?なんでこんな所にガキがいやがるんだよおい。オレはガキなんて大っ嫌いなんだよ。
「なんでも何も、きらるがお医者さまだからよ?それから、きらるはこれでも15歳なのよ!ばかにしないでほしいのねっ!」
「ハン、やっぱガキじゃねぇか。帰れ帰れ、お呼びじゃねぇんだよ。」
あーあーまったく、今日マジで厄日じゃねぇか…化け物みてぇな幹部に追われるわ、妙なガキが医者やってるわ……
「むー!治してあげたんだから、お礼ぐらいは言うべきなのよ!あなたはとっても悪い子ねっ!!」
いや知らねぇよ。
つーか30近いマフィアの構成員捕まえて言う事がそれかよ、くっだらねぇ。
うっわ、しかもまとわりついて来やがるぜこいつ。
「はいはいそうかよありがとさん。じゃあな。」
「むふー!でも、もう来ないようにするのよ?死んだらそれでおしまいなのね!」
ったく、気晴らしにカジノでも行くか。
そういやあいつらの持ってた金とかブツ、まだあの路地裏に落ちてんのか?
だとすりゃ、勿体ねぇ事したな…