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用済み英雄と便利屋さん

#7


「えっと、はい……?」

「あれ、お客さんかい?ほら、ヒロト君接客」

「えっ!?僕ですか?」

「初めてのお仕事なんだから、お客さんに失礼の無いようにね。」

[水平線]
「えっと、お茶です……。」

「どうも…。さっきは慌ててしもてごめんなせ」

僕の初めての依頼人、その人は小柄な女の人だった。着ている地味めなパーカーのような服とは逆に、赤色の派手な髪色をした女性。

ぱっちりと開いた二重の目はうろうろと彷徨わせており、態度もぎこちない。

「今日は……えっと、どうされました?」

緊張しすぎて病院の診断みたいになってしまった。

どうしようと困っていると、悠さんが助け船を出してくれた。

「随分急いでいたみたいですが、もしかしてお急ぎの依頼ですか?」

女性の肩が僅かにピクリと動き、目をキョロキョロと彷徨わせた後、こくりと小さく頷く。

その女性は酷く動揺していたため、必要事項などを紙に書いて貰った。

その後名前や住所、依頼内容などを書いて貰った紙を見て、悠さんと僕は顔を見合わせた。
彼女の名前はリリィ。18歳の女の子。そこまでは普通だった。その下の、依頼内容が

「「ストーカー被害を止めてほしい?」」

「……はい。」

小さく、蚊が鳴くような声で彼女は言った。その声は酷く震えている。

「えっと…失礼ですが、リリィさん。来る場所間違えていませんか?」

「間違うちょらん!お金ならあっと。助けたもんせ!」(間違ってないです!お金ならあります。助けてください!)

早口の方言でまくし立てた後、実は…とぽつりと言葉をこぼす。彼女から聞いた内容はこうだった。

以前付き合っていた彼の束縛が激しく、半ば強制的に、リリィの方から切り上げるようにして別れた。その後、最初は大人しかった元カレのつけ回しの行動がエスカレートし、ストーカーになったとか。

ここまで聞いて気になった疑問を彼女にぶつけた。

「防衛署には相談しなかったんですか?」

防衛署、と言うのは日本で言う警察の役割をしている機関のことだ。日々、事件やトラブル等を解決していると聞く。が、

「防衛署には何度も相談したばっ実際に被害がなかと対応できんって門前払いされたんじゃ!」

(何度も相談したけど、実際に被害が出てからじゃないと対応できないと門前払いされたんです)

「ほぉ……」

隣で静かに聞いていた悠さんがうーんとうなり声を上げる。実際に被害が出てからじゃないと対応できない。日本の警察とそこら辺は変わりが無いのかな。

「それで、リリィさんはどうされたいんです?家の周りの警備とか?」

身を乗り出して悠さんが聞く。
すると彼女はとんでもないことを言った。

「わ…私の彼氏になりたもんせ!」

(私の彼氏になって下さい!)

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2024/12/02 23:46

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