用済み英雄と便利屋さん
「退屈かい?少年。」
「っえ?」
あたりをきょろきょろ見回すが通りを行き交うのは成人した男女と老人ばかり。
「違う違う、君だよ。黒髪のそこのボク。」
黒髪、と言われやっと自分のことだと気づく。
慌てて上を向くと、そこには20代前半ぐらいか、端正な顔立ちをした男性が人好きのする笑顔を向けながら僕を見下ろしていた。
「えっ…誰です‥か?」
急に知らない人に話しかけられた驚きと恐怖でさっきまで頬を濡らしていた雫はピタリと止んでいた。気が動転して質問を質問で返してしまう。
「んー誰ですか、ね。うんうんいい質問だ。」
ぶつぶつと1人で何かを呟きながら顎に手を当て考える仕草をするその男性。
その仕草に同性でも思わず見とれてしまうほどその男性は格好良かった。
僕と同じ黒髪黒目‥いや、少し茶が入ってるかな?。それにくわえ二重まぶたに整った鼻すじ。服装は長袖シャツに長ズボン。ワンポイントに紺のネクタイとなかなかラフな格好だった。
身長高いしかっけぇなこの人。とまじまじ見ているとその男性が口を開いた。
「私は便利屋を営んでいる者でね。」
「えっ、べんりや…?」
聞き慣れない単語に思わずオウム返しをしてしまう。
「そうそう、簡単に言うと何でも屋みたいなやつだよ。見合った報酬があれば何でも行う仕事だ。」
「何でも行う?殺人とかも?」
「御名答っ!」
嬉しそうな声色で元気にゲッツポーズをとる男性。何なんだこの人。
「実は君を殺すように頼まれたスパイでね。悪いが君には死んでもらうよ。」
目の前にいた男性はいつの間にか後ろに立っていた。
振りかぶるような体制で僕を見据えている。
え…?
大翔は目の前の男が言った言葉をどう受け取れば良いのかわからず、頭の中が真っ白になる。
ただでさえ、魔王を倒した後のこの無力感に押し潰されそうになっているのに――今度は命を狙われるのか?と本気で恐怖を感じた。
頭に浮かんだ二文字。
[大文字]死ぬ[/大文字]
ぷにっ
僕の頬が受け止めた衝撃は痛い、ではなく柔らかいだった。
見ると男性がにまにましながら僕の頬をつっついていた。
「君、面白いねぷっくく…こ、こんな冗談っ本気にしちゃうなんて‥ふふっ、もしかして[漢字]純粋[/漢字][ふりがな]ピュア[/ふりがな]なのかい?」
笑いを必死に殺しながら面白おかしそうに見てくる男性。
マジで何なんだこの人。
大翔の中から途方もない怒りがふつふつと湧き上がってきた。
「そ‥そんなに怒らないでっふふっ‥くれ…っくく。」
ああ、ああ可笑しいとまだ笑っている男性。
「す、すまないね‥ふふ。殺人など法に触れるようなことはしないさ。」
野蛮なことはあまり好まなくてね、と後づけする男性を睨めつけるように見る。
「君、姿形は結構変わっているけど、勇者君だよね?」
ハッとした。
その反応を見逃さなかったのか、言葉を続ける男性。
「さしずめ魔王を倒してやることがなくなってしまって自暴自棄って所かな…?
丁度君のような人材を探してたところだったんだ。」
は、人材だって?
何を、と言いかける言葉に被せるように男は言った。
「3食寝床付き。残業手当は無…有りでどうだい?」
3食という言葉に揺らぐ。確かにお金もない今食べ物にも寝床にも困ってはいるが。
こんな怪しい男について行って良いのか?疑惑の目を向ける
すると
「早く決めないと消えちゃうよ?ほらいーち、にーい…」
「やっやりますやります!」
指を折って数を数える男性に慌てて大声で叫ぶように言う。
明らかにからかってるようにも見えるが。
「うん、交渉成立だね、じゃあ行こっか。」
どこに、と言う前に手を引っ張られた。
「っえ?」
あたりをきょろきょろ見回すが通りを行き交うのは成人した男女と老人ばかり。
「違う違う、君だよ。黒髪のそこのボク。」
黒髪、と言われやっと自分のことだと気づく。
慌てて上を向くと、そこには20代前半ぐらいか、端正な顔立ちをした男性が人好きのする笑顔を向けながら僕を見下ろしていた。
「えっ…誰です‥か?」
急に知らない人に話しかけられた驚きと恐怖でさっきまで頬を濡らしていた雫はピタリと止んでいた。気が動転して質問を質問で返してしまう。
「んー誰ですか、ね。うんうんいい質問だ。」
ぶつぶつと1人で何かを呟きながら顎に手を当て考える仕草をするその男性。
その仕草に同性でも思わず見とれてしまうほどその男性は格好良かった。
僕と同じ黒髪黒目‥いや、少し茶が入ってるかな?。それにくわえ二重まぶたに整った鼻すじ。服装は長袖シャツに長ズボン。ワンポイントに紺のネクタイとなかなかラフな格好だった。
身長高いしかっけぇなこの人。とまじまじ見ているとその男性が口を開いた。
「私は便利屋を営んでいる者でね。」
「えっ、べんりや…?」
聞き慣れない単語に思わずオウム返しをしてしまう。
「そうそう、簡単に言うと何でも屋みたいなやつだよ。見合った報酬があれば何でも行う仕事だ。」
「何でも行う?殺人とかも?」
「御名答っ!」
嬉しそうな声色で元気にゲッツポーズをとる男性。何なんだこの人。
「実は君を殺すように頼まれたスパイでね。悪いが君には死んでもらうよ。」
目の前にいた男性はいつの間にか後ろに立っていた。
振りかぶるような体制で僕を見据えている。
え…?
大翔は目の前の男が言った言葉をどう受け取れば良いのかわからず、頭の中が真っ白になる。
ただでさえ、魔王を倒した後のこの無力感に押し潰されそうになっているのに――今度は命を狙われるのか?と本気で恐怖を感じた。
頭に浮かんだ二文字。
[大文字]死ぬ[/大文字]
ぷにっ
僕の頬が受け止めた衝撃は痛い、ではなく柔らかいだった。
見ると男性がにまにましながら僕の頬をつっついていた。
「君、面白いねぷっくく…こ、こんな冗談っ本気にしちゃうなんて‥ふふっ、もしかして[漢字]純粋[/漢字][ふりがな]ピュア[/ふりがな]なのかい?」
笑いを必死に殺しながら面白おかしそうに見てくる男性。
マジで何なんだこの人。
大翔の中から途方もない怒りがふつふつと湧き上がってきた。
「そ‥そんなに怒らないでっふふっ‥くれ…っくく。」
ああ、ああ可笑しいとまだ笑っている男性。
「す、すまないね‥ふふ。殺人など法に触れるようなことはしないさ。」
野蛮なことはあまり好まなくてね、と後づけする男性を睨めつけるように見る。
「君、姿形は結構変わっているけど、勇者君だよね?」
ハッとした。
その反応を見逃さなかったのか、言葉を続ける男性。
「さしずめ魔王を倒してやることがなくなってしまって自暴自棄って所かな…?
丁度君のような人材を探してたところだったんだ。」
は、人材だって?
何を、と言いかける言葉に被せるように男は言った。
「3食寝床付き。残業手当は無…有りでどうだい?」
3食という言葉に揺らぐ。確かにお金もない今食べ物にも寝床にも困ってはいるが。
こんな怪しい男について行って良いのか?疑惑の目を向ける
すると
「早く決めないと消えちゃうよ?ほらいーち、にーい…」
「やっやりますやります!」
指を折って数を数える男性に慌てて大声で叫ぶように言う。
明らかにからかってるようにも見えるが。
「うん、交渉成立だね、じゃあ行こっか。」
どこに、と言う前に手を引っ張られた。
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