ーーこの世界には2種類の人類が存在する。
　
　１つは人間。誰もが想像するようなごく普通の一般的な人類だ。世界の殆どをこの「人間」が占めているだろう。
　
　そして、もう一つが「異変型人類」通称「異人」だ。異人は簡単に言えばエルフや吸血鬼、狼男などの魔族。魔族と言っても、数百年前、人間の勇者によって滅ぼされた魔族の末裔だ。
　
　魔族は元々人間に害を与える者としてこの世の「悪役」だった。
　そしてそれを滅ぼそうと奮闘する人間の勇者がこの世の「主役」。
　
　この伝説は後世にも語り継がれ、やがて魔族の末裔である「異人」は、「人間」にひどく差別され、居場所の無い状態となっていた。
　「異人」＝「悪役」
　「人間」の中には無意識にそんな常識のようなものができていた。

　だからと言って現在の「異人」は、そこまで「人間」に害があるわけではない。
　それなのに今でも差別されているのは、「主役」の活躍によって「人間」の存在が正当化されて、それに「異人」という存在が、反しているからだろう。
　
　今も陰で泣いている「異人」の彼らに悔しいという気持ちが無い訳ではない。
　常に人間に対する憎悪と怒りを押し殺して過ごしている。これ以上自分たちが「悪役」にされなうように。
　どれだけ悔しくても、これ以上理不尽な差別に苦しみたくはないのだ。

　しかし、ずっと感情殺している訳にもいかない。
　黙っていればさらに火は大きくなっていく。
　誰かが行動しなければ、何も変わらない。


　これは、そんな生まれながらの「悪役」の彼らが「主役」になる話―――。