そんな幸せな時間も過ぎて、学校の時間。

死神は流石に来れないのではないかと思ったので、私は一人で家を出ようとした。

しかし思っていたこととは違い、後ろからばたばたと急いでいるような音がしたと思えば死神がいた。

「ねぇーっ早いよーっ」

まさか、と思って死神をじっと見つめると、死神は笑って頷いた。

そんなこんなで学校へ歩いて向かっている。いつもは自転車なのだが今日は歩き。
なぜなら死神と行くから。自転車は一個しかない。

だから仕方がなく歩いているのだ。


そして隣には美少年がいる。人の目線が私に集まる。それはそうだろう。こんな美少年がいたら目を向けてしまうものだ。

しかもその隣にいるのが平凡で貧乏で地味な私。
私が隣にいるからか、彼の輝きは一層増しており、一軍の目も奪ってしまうほどの注目だった。


「ねぇあんた！！！」

教室に入って早々、私は一軍の女子から声をかけられた。
私が恐る恐る目を合わせ、「何かようです？」と、問うと、彼女はイラついている顔で私に死神との関係を聞いてきた。

本人は今職員室に行っているため、ここにはいない。彼は今日からの転入生としてこれから過ごすというらしい。

私は死神のことを他府県にいた双子の弟がこちらに帰ってきたという形で説明した。

すると一軍の安心したかのような顔へと表情を変えた。

私の心の奥がちく、と痛んだ。何か刺さったかと思うが当然何も刺さっていない。何だったのだろうか。


まあ一軍にまた怒られて蹴られなくてよかった。

そう思った時、ふと後ろの方で話していた会話を耳がすくった。誰かと誰かの話し声が。


「なぁ、みた？今回来た転入生の姿。」


「あぁ、みたみた。白すぎだろ、」


「どーせ化粧で“俺、弱々しいでしょ”って見せつけてるんだろ」



私の中で何かが切れる音がした。

それとともに、ある大きな音も。

しばらくして私は、はっと気がついた。

周りを見ると倒れた机。そして噂話をしていたクラスメイトは怯え、震えていた。

私の手は赤くなっており、話しかけてきた一軍も私に少し怯えていた。

おそらく理由は一つ。私が机を殴って倒したのだろう。

イラついていたからだろうか、そんなの私に聞いても私自身もわからない。
だって気づいた時には机が倒れ、手がじんじんしていただけなのだから。

そんな呑気なことを考えていたら一軍の女子から蹴られた。
なんで、？そう混乱している私を置いて、彼女らは私を蹴り続けていた。こう呟きながら。

「びびらせるんじゃねぇよっ！、、何よ！私達に喧嘩仕掛ける気？！」

私は噂をしていたクラスメイトに向けてやっていたのだが、一軍の女子は自分に向けてだと思い込んでいたようだ。

とんだ勘違いだ。私にはこんなことも許されないのだろうか、なんて絶望を抱きながら、私はやられるままに蹴りを受けていた。