もう二度と見ることはないと思っていた児童養護施設の景色に僕はどこか安心を覚えた。


会える。彼女に。また会えるのだ。
今いるかはわからない。
でも、僕の勘はここにいると言ってくる。なぜかを問われたら何も言えない。が、ここにいると僕は言っているのだ。




[太字]「おにーちゃんっ？お兄ちゃん.ᐟ.ᐟ」[/太字]


ててて、と駆け寄る誰かの足音。そして可愛げな声色。僕は、はっと後ろを振り返る。

彼女だ。
いつもと同じ声色で、彼女は僕を出迎えた。



しかし、容姿は違った。

彼女の綺麗な長い黒髪はバッサリと切られていて肩までしかない。
彼女の綺麗な黒い瞳は片方が赤く滲んだ眼帯で隠されている。
彼女の綺麗な首は酷く痛々しい痣。

何もかもが変わってしまっていた。

痩せ細った彼女を見つめる。明らかに違う。

こんなに苦しそうでなかった。
こんなに辛そうではなかった。


「ぁ、、、ど、どうしたの、、その、傷、、」

僕が震えた声でそう尋ねると彼女は引き攣った笑顔を見せてこうつぶやく。

「ううん.ᐟけがしちゃっただけ.ᐟ.ᐟ大丈夫だよ」

何度聞いても。何度心配しても。

彼女は[太字]「大丈夫だよ」[/太字]と呪文のように唱える。

僕に心配させまいとしているような、僕にすべてを隠しているような。




僕は渋々それを認め、変わってしまった彼女と二人、ブランコベンチに座った。


「お兄ちゃんはどうしたの？その傷、」

座ってから少しして彼女は少し不安そうにそう尋ねてきた。

実際のところ、今の僕もだいぶ変わってしまった。
顔には至る所に絆創膏。
隠してはいるが、首元には絞められた縄の跡。
ボサボサになってしまった白い髪。
前よりも暗く、グロく染まった瞳。

尋ねざる終えないのもわかる。
僕はここで隠すなんて彼女に更に申し訳ないと思い、正直にこう伝えた。

「んー、。父らしい人が暴走しちゃってね。思いっきりやられたよ。」

要約はしたが、まあ間違ったことは言っていない。詳しいことを言ってしまうと過酷だ。
こんぐらいふんわり伝えるのがいいのだと僕は思った。

「ひどい.ᐟ.ᐟお兄ちゃんの綺麗なお顔が、、、」

被害者であるはずの僕以上に悲しみ、怒ってくれる彼女に僕は嬉しく感じた。



僕が伝えたからか、笑い隠していた彼女も正直に話してくれた。

「私ね、里親が決まった.ᐟって言われたのだけど、、外だけがいい人で、髪を切られて殴られて、、、切られたの、。」

今思い出しても怖い。痛い。
そんな彼女はポロポロと涙をこぼしていた。


こんな子に酷いことをする。

あぁ、他人なんて信じてはいけないのだ。

この子は僕が守りたい。
もう二度と悲しんでも、痛い思いもさせたくない。



僕は彼女を優しく抱きしめた。