周りをゆっくり目で見渡す。

私はとある病室のベットに寝転んでいるようだった。
隣には安堵している一桜と黒羽の姿。

ああ、またこの二人に迷惑をかけてしまったのか。
私はぐっと胸が痛んだ。

「ごめんなさい」

いつのまにか口に出ていたこの言葉。

いつのまにか溢れていたこの涙。


そんな私に彼らはこう続けた。

「心配したんですけどっ、」

「何勝手に死のうとしてるのさ、、」

少し悲しみ、切ない表情をする一桜。

そしてどこか悲しく、どこかため息をつくような黒羽。


そんな彼らに私はこう述べる。

私はもう不必要であり、父にも見放された、行く当てもないし、この世界にいたくもない、と。


「不必要？？何言ってんの？僕言ったよね？美味しいのが食べたいって。こんなクソだらけの世界でも頑張って生き抜いた人が美味しいんだよ。」

黒羽がそう冷静に答える。そんな黒羽に私はどこか苛立ちを覚えた。

まるで君じゃなくてもいいんだけどさ、と言われているような感覚に陥ったのだ。

「黒羽は知らないじゃんっ！！
　私だって、、食べられたいわけでもないしっ！
　なんで食べられるために頑張らなきゃいけないのさっ！！！
　私じゃなくてもいいんでしょ？！他にもいるんでしょ？！
　なんで補欠の私がこんなに苦労しなきゃいけないのっ、」

黒羽に向かって私は叫ぶ。涙をぽろぽろとこぼして。


結局は黒羽自身のため。

黒羽自身が食べたいから私を助けたのだし、黒羽自身の欲望で私の味方を演じたのだろう。


叫び終わると、私は病室から抜け出した。

ここにもいたくない。

後ろから私を止める声が聞こえるが知らない。もう知らない。


黒羽に叫ぶなんて、初めて会った時以来初めてだった。








部屋に残された二人。一桜は黒羽にこう言う。

「不器用にも程がありますよ。本音言ったらいいのに。」

「言えないんだよ、、
　言い方がわかんない。どうしたらいいのかわかんない。
　人間のココロなんて、、知らないよ。
　どう言えばどう伝わるかなんて難しいことがココロ無し
　の死神にわかるわけないじゃん、、」

どこか泣きそうな声で、黒羽はそう呟き窓から病室を抜け出した。



そして最後まで残された一桜はこう思う。

黒羽の過去に何があり、何が彼を素直に物事が言えないように育ててしまったのか、あの額の深い傷と関係があるのか、を。