それから私は父と同じ車に乗った。

空気が重い。痛い。辛い。



[太字]「はぁ、、、何してんだよバカが。」[/太字]


父は怒鳴らず殴らず、たったその一言だけを口にした。

冷たい言葉。今までのどの言葉よりも、どの力よりも辛いし重い。

失望だ。失望されたのだ。

「ごっ、ごめんなさい、、」

私の口からはそれしか出てこない。

それ以外伝えれない。何も言えない。




家に帰っても私は部屋から一歩も出れなかった。

なんか言われると思うだけで胸が痛い。苦しい。

ビクビクしながら過ごしていると私は自分の中の天使に話しかけられた。


[明朝体]「もう終わりにしよう？こんなの意味ないでしょ？」[/明朝体]


と。

確かに、そうだよな。私は天使に答える。

確かに意味がないのだ。こんな世界を生きようが。

誰のために生きていた？黒羽のため？

でももしそうだとしても本当に私は必要とされているのだろうか。でももし本当に必要としてくれていたら？

優柔不断な私に天使がトドメを刺す。


[明朝体]「今までを思い出してごらん？誰も味方じゃなかったでしょ。貴方は不必要なの。」[/明朝体]


不必要？不必要？不必要、不必要、、不必要。

そうか。ならいいだろう。もういい。


なんて考えている間にも体は限界が来たらしく、私は父が見ていない隙に家から飛び出し、走り出した。

とにかく走った。どこに行く？知らない。

行く当てなんてない。とにかく走る。

どこか飛び込めるところへ、どこか飛び降りれるところへ。




しばらく走って数十分。

私はとある展望台へ着いた。

ああ、風が涼しい。あの自殺未遂になった日を思い出す。

躊躇いはない。もういい。

父にも失望され、クラスからも必要とされていない。

もういいだろう。悔いなんかない。

まあ、強いて言えば二つかな。

一桜くん、ちゃんと自分を大切にしてくれるかな？

黒羽、ちゃんと私を食べてくれるかな？


ごめんね、一桜くん。助けてもらったのに。

ごめんね、黒羽。私を生きさせてくれたのに。



私は手すりに足をかけた。

ここから地上までの高さはかなりある。落ちるまで何を思おう。

気絶するだろうか。楽しいだろうか、清々しいだろうか。

ああ。もうさようならだ。

今度こそ誰もいない。今度こそ死ねる。



私は手すりを飛び越え、後ろから飛び降りた。



風の音が響く。圧迫される。
空気の圧というやつだろうか。

今ではそれでさえも気持ちがいい。



私には地面に落ちるまでのほんの数秒間がとても長く感じた。

いろいろな思い出を思い返して改めてこう思う。


[中央寄せ]「不幸だったな。何もいいことなかったな」[/中央寄せ]


私の体は地面と激しくぶつかった。







「死ねないよ。ごめんね。こうなると思って呪いをかけたんだ。」

私の頭の中で誰かがそう言う。
死ねない？何を言っているんだ。
こんな高所から飛び降りて死ねないわけがない。
ほら、体の感覚もない。何も動かせない。目も開けられない。

「気絶しているだけさ。君は起きるよ。もう少ししたらね」

そんなことはない。そんなことあってはならない。
私はもういいのだ。生きたくないのだ。こんな人生。
もう嫌だ。生きさせないで。殺させて。死なせて。

「嫌だ。貴方には二人も味方がいるでしょう？」

二人？何を言っているのだ。私に味方なんて一人もいない。誰のことを言っているのだ？

「僕に黒羽がいる。それだけじゃご不満かい？」

僕？貴方は誰？黒羽はわかる。貴方は誰？なんで貴方がそんなことを言うの？もしかして、、、

「目を開けて。そしたらわかるから。」



私の瞳はいつのまにか、開いていた。