痛い痛いの飛んでけ
#1
光るオブシディアン_
「誰も俺の帰りは待ってない」
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今から20年前ほどのお話。
その子は可愛く、周りの友達の中でも笑顔はピカイチだった。
「ねえスフェちゃん!今日は何して遊ぶー?」
「そーだなぁ…みんなで公園に行こうよ!」
「いいね!!スフェちゃんって可愛いし頭もいいし足も速いよね!!」
「えへへ、褒めてもなんにも出ないよ!」
「あははっ!たしかに!じゃあみんな集めて行こー!」
「あっ、待って!」
「ほらスフェ、怪我はしないようにね!」
「うん!スフェそんなことしないもん!」
「そう!じゃあ、気を付けてね」
「いってきまーす!!」
「あはは、たのしー!!」
「もー!スフェちゃん速すぎ〜」
「ごめんごめん!じゃあ次__ちゃん鬼ね!」
「はーい!」
「にっげろー!!」
「わーい!!」
「あーっ、待てー!!」
それから1年の時が過ぎた。
「よいしょ…」
彼女は一人トイレで手を洗っていた。
彼女は背が高かったため、何も案ずることはない。
「早く行かないと、お母さん__」
彼女のお母さんは、行かなければいけない仕事を直前に彼女のトイレを待っていたのだ。
焦りながらもトイレを出ようとすると__
ガタンッ
「………ッ」
彼女は一人倒れ込む。
急な腹痛が襲ったのだ。
「[小文字]ァッ…ウア……ア…ッッ[/小文字]」
小さな声を上げるだけ。
彼女のその声は、何も役には立たないのであった。
少し経つと、腹痛は治まった。
そして荒い息をたてながら出る彼女。
「おかあ、さん…」
今にも泣きそうな顔で母にすがりつく。
「…………」
ベシッ
「え…ぃた…い……」
母は彼女の頬を叩く。
言葉も発さず、ずっと。
永遠と。
「いたい…ぃたい……ぃた…ぃよ…」
「ぅっ…ぅう………」
ついに彼女は泣き出してしまった。
「…………ふざけんじゃ、ないよ…」
力強く言う。
「折角の…大チャンスだったのに…」
「お前のせいで……ッ」
[大文字]「お前のせいで!!!!」[/大文字]
「……ぇ……?」
小さい彼女に分かるはずもないことを言う。
どうやら母は、大事なプレゼンだったそうだ。
さらに給料の良い仕事に移れるかも知れないと機嫌の良かった母。
だかそれを、[太字]スフェ自身が壊してしまったのだった。[/太字]
「なあ、しょうがないだろ…?スフェだって、何かしらの理由が…」
父が必死に抑える。
だが聞かなかった。
「お前のせいでお前のせいで!!!!!!!」
「”生まれてきただけの価値のないお前”と”必要な金”のどっちが大事だよ!!!!」
言葉を打ち付ける。
彼女には、返すこともできなかった。
3年後、この子は立派な小学生。
この子の転機は、もうすでに[漢字]其処[/漢字][ふりがな]そこ[/ふりがな]にある。
「スフェおはよー」
「…あ、おはよ〜……」
「……あれ、スフェその傷…」
「あ、あ、これ?…ちょ、ちょっと擦りむいて!」
苦笑いを浮かべる彼女。
無理があった。
母からの暴行は続いており、痣や傷は増えるばかりだった。
「お前のせいで」と。
後に分かることだが、これも全て[太字]毒[/太字]だった。
誰が仕掛けた?さあ、誰でしょうね。
「[小文字]………ただいま[/小文字]」
「あぁ、おかえり」
返すのは父だけ。
母に見つからないよう自分の部屋へ向かって行く。
「はぁ……」
そうため息が出る。
「…人生なんて、ただのくだらないジョークじゃないかな」
小学生が出すべき言葉だろうか?
_それだけ、思い詰めていた。
「こんなのただの…」
「[太字]お前の思い通りなだけだろ。[/太字]」
それからというもの、彼女は”女”というのを辞め始めた。
「おはよー」
「おはよ〜」
頭の良さを利用し、学校の性表示も男に変えた。
異次元なほど、暴れていたのだった。
「お前…今日も家に帰らなかったのか?」
「え、帰ろうと帰らないだろうと俺の勝手でしょ」
「なぁ…俺分かるぞ?」
「お前女子だろ」
「………さぁね」
そう何回もとぼけた。
「とぼけんなよ」
「……ッ」
「おい」
「馬鹿」
「…ッだって!!!俺は…ッ!!」
「あの時…ッ」
[大文字]「女子じゃなければ…!!!!」[/大文字]
[大文字]「女子じゃなければ俺はこんな事にならなかった」[/大文字]
「……」
彼女の唯一の友達は、ゆっくり優しく彼女の話を聞く。
まるで今のあの亡霊…なんてね。
「…辛かったんだろ?」
「………そうだよ。それ以外何があるの?」
「……ったくよ」
「[太字]それくらいで消えちまうもんか?[/太字]」
気持ちのドアを軽くノックする。
それだけで、どれだけ救われるでしょうか?
「…………」
「お前は女子は嫌いか?」
「その痣も嫌いか?」
髪で隠された痣。
昔付けられた一つの大きな痣。
「ッ………」
「なぁ、今からでも良い。」
「[太字]やり直そーぜ?[/太字]」
「…うん」
そう誓った1ヶ月後。
その母の死亡が確認された。
「お前何したんだよ…?」
「することしたまで…って感じ」
「………ははっ、お前らしい」
「でしょー?w」
明るい笑顔を見せた。
それはどこか、昔の君のようで。
君ではなかった。
「なあスフェ…大丈夫か?」
そう囁く父。
「え?俺は大丈夫だよ?」
ニヤッと、どこか虚しく笑う。
「……そう、だよな…。」
「ねえ」
「あぁ…何だ?」
「[太字]この人生に悔いない?[/太字]」
「え…?」
「足りないものってなんだと思う?」
「………え、…っと」
「正解とかどうとか」
「例外もない」
「劣化劣化劣化」
「人生クソゲー」
「もう限界だよ。」
そう呟いた彼女は____
ドサ
[太字]父親を突き落とした。[/太字]
「ッ、あははは」
「結局全員生きる意味ねーじゃん。」
「なんだよ」
「母も父も皆皆」
「良いこと言ってそれだけで満足してる」
「笑えよ」
「どっか行けよ」
「ねえ」
「皆愛をもらってるのに」
「俺にはくれないの?」
「愛」
「愛」
「…愛」
「俺には哀しかない」
「愛っていう哀が」
「[太字]俺を偽らせてる。[/太字]」
「叫んで終わり。」
「…………ッ」
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「…あーあ………」
そうため息をつく。
「めんどくさいなぁ…生きるの」
「っは、何いってんだよ」
「”昔と違って”お前はもう人がいるんだからよ?」
「………」
「亡霊に言われたくないねェ?」
「…はは、確かになw」
そう笑う青年。
「…でもまー…」
「[太字]今、めっちゃ楽しいよ[/太字]」
End __
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