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マルマルちゃんとバツバツ君

#9

頑固ちゃんと不真面目君

授業が終わり、なんとなく帰る気になれずに2階の渡り廊下の窓から外を眺めていた。

風が気持ち良い。

すると、


「ねえ、マコちゃん。今度のデートなんだけど……」


渡り廊下の下から男子生徒の声が聞こえてきた。
恋人同士のやり取りかな?
盗み聞きするつもりはなくても、勝手に聞こえて来る。
それにしてもこの声、聞いたことがあるような……。

女子生徒の返事を静かに待っていると、


「デート?」


しっくり来ていない様子の声。
この調子だと振られるな。


「だって約束したよね?」

「えー、してないよ。もしかしてあの言葉、本気にしちゃった?」


結果は予想通り。
これは恋人同士のやり取りではなかった。
少しだけ男子生徒が不憫に思えた。


「そ、そんな……」

「用ってそれだけ?私もう行くね」

「ま、待って!」


男子生徒の掛け声も虚しく、1人分の足音が遠ざかる。

では振られたばかりの男子生徒の顔を拝もうか。

私は少しだけ窓から身を乗り出すと、そこには矢巾君がいた。

チャラいって噂は本当だったんだ。
しかも、今日はサヤカちゃん?だっけ、教室で口説いていたのに、その子じゃない子とデートをしようとしていたのか。

どんまい、と心の中で呟いていると、不意に矢巾君が上を見上げた。


「あっ……」


バッチリと視線が合う。

気まずい……。
いやいや、こんな誰にでも聞かれる場所でやり取りをしていた矢巾君が悪い。
目を逸らした方が負け。

なんとなくそう思って逸らさずにいると、


「聞いてたー?」


矢巾君は声を張り上げて、意外なことを聞いてきた。
素直に答えても良いものか。
そう言えば、今朝は頑固って言われたんだっけ?
誤魔化せる気もしないし、ここは素直な一面でも見せてやろう。


「聞いたー!」


なぜか上から目線で私は答えた。
実際にこちらは2階にいるのだから、上からには変わりないけれど。


「それなら話が早いわ。○○さーん!俺とデートしない?」


……は?
今なんて言った?
デート?
私と矢巾君が?
本気なの?

矢巾君が声をかけていたサヤカちゃんと、顔は見ていないけどマコちゃんと言う子、絶対に私と系統が違う。

からかっているに決まっている。
気軽にそんな風に誘わないでよ。
だから、答えは決まっている。


「バッカじゃないの!」


そう言い捨てて私は矢巾君から逃げた。

あーあ、せっかく素直になれたと思ったのに。
本当は嬉しかったくせに。
自分が嫌になっちゃう。

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2024/11/05 12:32

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