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マルマルちゃんとバツバツ君

#50

嫉妬ちゃんと敬愛君

今日みたいに定期的に女子バレー部と男子バレー部が同じ体育館を半々に分けて部活をする日がある。

着替えを済ませ体育館の扉を開けると、誰もいなかった。
もちろんネットも張っていない。

3年生がいないならともかく、後輩がいないのは珍しい。
だけど、彼なら絶対にいる。
誰よりも早く体育館に来てボールを拭いたり、掃除を率先的にしている彼が。

体育倉庫を開けると、その彼がボールを拭いていた。
これから使われて汚れるのに、キュッキュッと丁寧に。


「やっぱりここにいた。北、いつも早いね」


この作業を北はいつも率先してやっている。
だから北は後輩から慕われているんだろうな。
他人にも厳しく、自分にはもっと厳しい。


「●●も十分早いやろ」

「そうかな」


私も北と同じ事をしたら後輩はどう思うかな?
慕ってくれるかな。
そもそも、そんなことを思う時点でダメなのかもしれない。

そう思いながらも北の隣に腰掛けた。


「私も久しぶりにボール拭こうかな」


もちろん、私も1年生のときは率先してやっていた。
だけど、それも学年が上がるにつれて後輩にやらせて、自分ではしなくなった。

でも、北と一緒なら悪くないのかもしれない。
なんて、私の場合は後輩に慕われたいと言う下心ありきだけれど。


「他の子たち、遅いね」

「授業が長引いてるんやろ」

「そっか」


それ以上の会話はなかったけれど、不思議と苦にならなかった。

しばらくすると、1・2年生が慌てて体育倉庫へと入ってきた。


「●●先輩、すみません。遅くなりました!」

「ボール拭き代わります!」

「もう終わるから大丈夫だよ」


おかげで初心にも帰れたし。


「ネット張りの方をお願い」

「はい!」


後輩たちはネットとポールを持ってパタパタと体育倉庫から出ていった。

私も行こうかな。

立ち上がると、北が話しかけてきた。


「慕われてるな」

「えっ……?」


今の私と後輩のやり取りを見てそう思ったの?
慕われているわけないじゃん。


「勘違いじゃない?」


それだけ言うと、今度こそ私は体育倉庫を出た。

このボタンは廃止予定です

2024/11/22 00:37

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