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マルマルちゃんとバツバツ君

#30

傍観者ちゃんとモテ男君

青葉城西高校に通う3年生ヒロインちゃんと[漢字]及川徹[/漢字][ふりがな]おいかわとおる[/ふりがな]君のお話


~傍観者ちゃんとモテ男君~




隣の席の及川君はいわゆるイケメンと呼ばれる部類だ。
クラスが同じになったのは3年生だけだけど、噂はかねがね。

そんな及川君が足のケガをしたらしく、患部をガチガチに固定して登校してきた。


「おはよう、及川君。足大丈夫?」


必要最小限の会話しかしたことなかったけれど、こんな姿の及川君を無視するほど非道ではない。

思わず声を掛けると、私が話しかけたのが珍しいのか、及川君は一瞬だけ驚いた表情を浮かべた。
そして直ぐにいつもの笑顔を貼り付けて答えた。


「おはよう。うん、安静にしていれば来週には固定器具取れるらしいよ」


本人曰く膝関節捻挫らしい。

受験生だから勉強に支障が出る利き手じゃなくて足でよかったね、と思ったけど、


「そっか」


と素っ気ない返事しか出来なかった。
だって私たちは気さくな話しをする仲ではないから。

それなのに及川君は聞いてもいないのに、


「しばらく部活ができないのが嫌になる」


と嘆いていた。
そうか、及川君はバレー部の主将なんだっけ?

会話に一区切りついたところで、先ほどの言葉か、あるいはケガした姿を見たせいか、ここぞとばかりに遊びに誘う女子生徒たちが及川君を囲った。


「ねぇねぇ、及川君!部活はしばらくお休み?よかったら遊びに行こうよ」

「え~!抜け駆けズルい!私とも遊んで!」


モテる男は大変だね。


「皆落ち着いて。順番、順番。及川さんは逃げも隠れもしないよ」


私なら煩わしく思うのに、及川君は嫌な顔ひとつせず、むしろ満更でもない様子だった。

さっきまで部活ができなくて嫌になるって言っていたのに。

もうしばらくその様子を見ていても良かったけれど、彼女たちの邪魔になりそうだから、授業が始まるまでどこかに避難しておこうかな。

私は及川君と特別な関係になりたいとかはなく、ただ面白いから見ているだけで十分だった。

このボタンは廃止予定です

2024/11/12 16:51

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