マルマルちゃんとバツバツ君
ある日の授業終わり。
「○○さーん!今日の水やり当番って私だっけ?」
同じ美化委員の長瀬さん。
人の当番の日まで把握していない私は予定表を取り出して確認した。
「えーっと、今日は……。そうだね、長瀬さんが当番になっているよ」
「あのね○○さん、お願いがあるんだけど……」
長瀬さんは申し訳無さそうに話を切り出してきた。
このパターンは大体予想がつく。
「飼っている猫ちゃんの調子が悪くて、すぐに帰りたいんだけど……。水やりお願いできないかな?」
ほら、やっぱり。
前回はインコちゃん、その前は亀ちゃんだって言っていたのに、長瀬さんのお家は色んなペットを飼っているんだね。
断ると嫌な顔をするから、私は決まってこう言う。
「いいよ」
「○○さん、ありがとう!今度お詫びするから!」
「気にしなくていいよ」
お詫びなんて口だけなの分かっているから。
長瀬さんは上機嫌で教室を出ていった。
ペットの調子悪いんじゃなかったの?
設定を忘れているよ。
「はぁ〜っ」
小さくため息を吐いてから花壇へと向かった。
用具室からホースを取り出して蛇口へと繋ぐ。
近いところから順々に花壇の水やりを始めた。
「ん〜ん〜」
吹奏楽部の演奏と運動部の掛け声を聞きながらしていると、あっという間に最後のエリア。
よし、最後はこの第2体育館のところ……。
水やりをしやすいようにホースをたぐり寄せる。
すると、体育館の扉がガラガラと開いた。
部活の休憩時間だろうか。
気にも止めずに水やりを続けていると、
「あ、○○じゃん!」
「え?」
この声は。
振り向くと体育館から顔を出した菅原君がいた。
「よっと」
菅原君は体育館を出て直ぐの2段しかないコンクリートの階段に腰掛けた。
「ついこの間も○○が水やりしているの見かけたけど、美化委員って忙しいんだな」
「ううん。今日の当番の子が都合悪いみたいだから代わったの」
正直長瀬さんにお願いされたときは嫌だと思ったけれど、菅原君と話せるなら代わって良かった。
「なんで断らないんだ?今日とかノートのときとか」
そんな私とは裏腹に、菅原君はちょっと不貞腐れたように尋ねてきた。
なんでって言われても……。
「引き受けて事が丸く収まるなら、その方が楽だから……かな?」
要は嫌われたくないのだ。
「ふーん」
納得していない様子の菅原君。
「あ、もちろん他の人が悲しんだり困ったりするお願いは断るけどね!」
苛めに加担するのも、屋上から飛び降りろ、なんておかしなことを言う人はいないけれど、それはさすがの私でも断る。
「俺は断らないことによって○○が悲しむ方が嫌だけどな」
「えっ……」
何て返せばいいのか分からず言葉に詰まらせていると、体育館の中から練習再開を知らせる声が聞こえてきた。
「そろそろ戻るわ」
「あ、うん」
「また明日学校でな」
菅原君はそれだけ言うと颯爽と体育館へ入っていった。
……さっきのってどういう意味だったんだろう。
「○○さーん!今日の水やり当番って私だっけ?」
同じ美化委員の長瀬さん。
人の当番の日まで把握していない私は予定表を取り出して確認した。
「えーっと、今日は……。そうだね、長瀬さんが当番になっているよ」
「あのね○○さん、お願いがあるんだけど……」
長瀬さんは申し訳無さそうに話を切り出してきた。
このパターンは大体予想がつく。
「飼っている猫ちゃんの調子が悪くて、すぐに帰りたいんだけど……。水やりお願いできないかな?」
ほら、やっぱり。
前回はインコちゃん、その前は亀ちゃんだって言っていたのに、長瀬さんのお家は色んなペットを飼っているんだね。
断ると嫌な顔をするから、私は決まってこう言う。
「いいよ」
「○○さん、ありがとう!今度お詫びするから!」
「気にしなくていいよ」
お詫びなんて口だけなの分かっているから。
長瀬さんは上機嫌で教室を出ていった。
ペットの調子悪いんじゃなかったの?
設定を忘れているよ。
「はぁ〜っ」
小さくため息を吐いてから花壇へと向かった。
用具室からホースを取り出して蛇口へと繋ぐ。
近いところから順々に花壇の水やりを始めた。
「ん〜ん〜」
吹奏楽部の演奏と運動部の掛け声を聞きながらしていると、あっという間に最後のエリア。
よし、最後はこの第2体育館のところ……。
水やりをしやすいようにホースをたぐり寄せる。
すると、体育館の扉がガラガラと開いた。
部活の休憩時間だろうか。
気にも止めずに水やりを続けていると、
「あ、○○じゃん!」
「え?」
この声は。
振り向くと体育館から顔を出した菅原君がいた。
「よっと」
菅原君は体育館を出て直ぐの2段しかないコンクリートの階段に腰掛けた。
「ついこの間も○○が水やりしているの見かけたけど、美化委員って忙しいんだな」
「ううん。今日の当番の子が都合悪いみたいだから代わったの」
正直長瀬さんにお願いされたときは嫌だと思ったけれど、菅原君と話せるなら代わって良かった。
「なんで断らないんだ?今日とかノートのときとか」
そんな私とは裏腹に、菅原君はちょっと不貞腐れたように尋ねてきた。
なんでって言われても……。
「引き受けて事が丸く収まるなら、その方が楽だから……かな?」
要は嫌われたくないのだ。
「ふーん」
納得していない様子の菅原君。
「あ、もちろん他の人が悲しんだり困ったりするお願いは断るけどね!」
苛めに加担するのも、屋上から飛び降りろ、なんておかしなことを言う人はいないけれど、それはさすがの私でも断る。
「俺は断らないことによって○○が悲しむ方が嫌だけどな」
「えっ……」
何て返せばいいのか分からず言葉に詰まらせていると、体育館の中から練習再開を知らせる声が聞こえてきた。
「そろそろ戻るわ」
「あ、うん」
「また明日学校でな」
菅原君はそれだけ言うと颯爽と体育館へ入っていった。
……さっきのってどういう意味だったんだろう。
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