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マルマルちゃんとバツバツ君

#13

頑固ちゃんと不真面目君

試合を終えた選手たちが観客席へと戻ってきた。
みんな悔しそうな顔。
それは矢巾君も例外ではなかった。

私はそんな矢巾君に声をかけた。


「矢巾君」

「○○さん、来てくれたんだ」

「うん。試合お疲れ様」

「結局俺は出れなかったけどね。あーあ、ワンチャン出れるのを期待してたのに。○○さんに格好良い所見せたかったー!」


先ほどとは違い、いつもの明るい調子で話し始めた矢巾君。
これは空元気だ。


「だけど俺らのエース、及川さんは格好良かっただろ?」


俺が出るよりも今回はそれがベストだ、と言わんばかりの嘘のない言葉。
及川先輩のことを尊敬しているのが伝わってくる。


「私は矢巾君も充分格好良かったと思うよ」

「え……?」

「あの京谷君に叱咤かましてたじゃん。あれがなければ京谷君はもっとぐだっていたんじゃない?」

「見られてたのか……参ったな」


矢巾君は照れくさそうに頭を掻いた。


「あの、さ……。3年生の先輩が引退したら、次は俺らの時代だから。良かったら、今度こそ俺が出る試合を見てくれ」

「うん!もちろん!」


次の試合が楽しみだなー。
……と、その前に矢巾君に伝えないといけないことがあった。


「ねえ、矢巾君。その……以前、矢巾君にもっと真面目になった方がいいって言ったけど、訂正させて」


だって、あんなに先輩のことを考えていたり、真剣に仲間の応援をしていた矢巾君を、ただの不真面目で済ませるのには申し訳なかった。


「矢巾君は仲間思いで、根は真面目なんだね」


自然と口角が緩んだ。


「それなら便乗して俺も訂正したいことがある」

「?」


訂正されるほど私は矢巾君に何かしただろうか。


「○○さんって頑固だと思っていたけど、ちゃんと柔軟な考えもできるんだね。それと、笑うと可愛いんだから、もっとそうすればいいのに」

「……」

「なんか言ってよ!」


動揺して言葉が出なかった。

矢巾君の呼び掛けに、私はハッとしたけれど、冷静な振りをして返事をした。


「やっぱり矢巾君はチャラいね」

「なっ!?」


本心は矢巾君に可愛いって言われて凄く嬉しかった。
だけど、それを言うと調子に乗ることが目に見えているから、今は絶対に言ってやらないんだ。




ーーFinーー

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作者メッセージ

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2024/11/08 07:28

edp ID:≫5tLKWzBMUDa82
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