マルマルちゃんとバツバツ君
試合を終えた選手たちが観客席へと戻ってきた。
みんな悔しそうな顔。
それは矢巾君も例外ではなかった。
私はそんな矢巾君に声をかけた。
「矢巾君」
「○○さん、来てくれたんだ」
「うん。試合お疲れ様」
「結局俺は出れなかったけどね。あーあ、ワンチャン出れるのを期待してたのに。○○さんに格好良い所見せたかったー!」
先ほどとは違い、いつもの明るい調子で話し始めた矢巾君。
これは空元気だ。
「だけど俺らのエース、及川さんは格好良かっただろ?」
俺が出るよりも今回はそれがベストだ、と言わんばかりの嘘のない言葉。
及川先輩のことを尊敬しているのが伝わってくる。
「私は矢巾君も充分格好良かったと思うよ」
「え……?」
「あの京谷君に叱咤かましてたじゃん。あれがなければ京谷君はもっとぐだっていたんじゃない?」
「見られてたのか……参ったな」
矢巾君は照れくさそうに頭を掻いた。
「あの、さ……。3年生の先輩が引退したら、次は俺らの時代だから。良かったら、今度こそ俺が出る試合を見てくれ」
「うん!もちろん!」
次の試合が楽しみだなー。
……と、その前に矢巾君に伝えないといけないことがあった。
「ねえ、矢巾君。その……以前、矢巾君にもっと真面目になった方がいいって言ったけど、訂正させて」
だって、あんなに先輩のことを考えていたり、真剣に仲間の応援をしていた矢巾君を、ただの不真面目で済ませるのには申し訳なかった。
「矢巾君は仲間思いで、根は真面目なんだね」
自然と口角が緩んだ。
「それなら便乗して俺も訂正したいことがある」
「?」
訂正されるほど私は矢巾君に何かしただろうか。
「○○さんって頑固だと思っていたけど、ちゃんと柔軟な考えもできるんだね。それと、笑うと可愛いんだから、もっとそうすればいいのに」
「……」
「なんか言ってよ!」
動揺して言葉が出なかった。
矢巾君の呼び掛けに、私はハッとしたけれど、冷静な振りをして返事をした。
「やっぱり矢巾君はチャラいね」
「なっ!?」
本心は矢巾君に可愛いって言われて凄く嬉しかった。
だけど、それを言うと調子に乗ることが目に見えているから、今は絶対に言ってやらないんだ。
ーーFinーー
みんな悔しそうな顔。
それは矢巾君も例外ではなかった。
私はそんな矢巾君に声をかけた。
「矢巾君」
「○○さん、来てくれたんだ」
「うん。試合お疲れ様」
「結局俺は出れなかったけどね。あーあ、ワンチャン出れるのを期待してたのに。○○さんに格好良い所見せたかったー!」
先ほどとは違い、いつもの明るい調子で話し始めた矢巾君。
これは空元気だ。
「だけど俺らのエース、及川さんは格好良かっただろ?」
俺が出るよりも今回はそれがベストだ、と言わんばかりの嘘のない言葉。
及川先輩のことを尊敬しているのが伝わってくる。
「私は矢巾君も充分格好良かったと思うよ」
「え……?」
「あの京谷君に叱咤かましてたじゃん。あれがなければ京谷君はもっとぐだっていたんじゃない?」
「見られてたのか……参ったな」
矢巾君は照れくさそうに頭を掻いた。
「あの、さ……。3年生の先輩が引退したら、次は俺らの時代だから。良かったら、今度こそ俺が出る試合を見てくれ」
「うん!もちろん!」
次の試合が楽しみだなー。
……と、その前に矢巾君に伝えないといけないことがあった。
「ねえ、矢巾君。その……以前、矢巾君にもっと真面目になった方がいいって言ったけど、訂正させて」
だって、あんなに先輩のことを考えていたり、真剣に仲間の応援をしていた矢巾君を、ただの不真面目で済ませるのには申し訳なかった。
「矢巾君は仲間思いで、根は真面目なんだね」
自然と口角が緩んだ。
「それなら便乗して俺も訂正したいことがある」
「?」
訂正されるほど私は矢巾君に何かしただろうか。
「○○さんって頑固だと思っていたけど、ちゃんと柔軟な考えもできるんだね。それと、笑うと可愛いんだから、もっとそうすればいいのに」
「……」
「なんか言ってよ!」
動揺して言葉が出なかった。
矢巾君の呼び掛けに、私はハッとしたけれど、冷静な振りをして返事をした。
「やっぱり矢巾君はチャラいね」
「なっ!?」
本心は矢巾君に可愛いって言われて凄く嬉しかった。
だけど、それを言うと調子に乗ることが目に見えているから、今は絶対に言ってやらないんだ。
ーーFinーー
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