電波と恋情、それは意気地無しの天敵
#1
[漢字]大宮 風夏[/漢字][ふりがな]おおみや ふうか[/ふりがな]。中学2年生。クラスでの立ち位置は三軍。恋人は今までできたことがない。
そこまで目立つ方ではないがそこまでの陰キャってほどでもない。
優等生ってほどでもないが不良ではない。
こう言っちゃ悪いけど、普通の女子中学生だ。
学校で友達と戯れあった後、家に帰ってスマホをいじる。
塾のある日は塾に行き、友達と遊ぶ約束のある日は駅前に出かける。
中間テストが近づいたら塾の頻度を増やし、大量の課題を片付けていく。
他の人と、何も変わらない。
風夏「あ、新作……!流れ龍さんの…!」
自然と上がる口角を抑えながら、スマホの画面をタップする。
そう、彼女はネットに浮かぶ小説家『夏宮ここね』だ。
夏宮は苗字と名前の最後から取り、ここねはなんか可愛いからというなんともいい加減な理由で名付けた名前だ。
ただ、最近この名前に愛着が湧いてきている。
それは、私とほぼ同時期に小説投稿を始めた『太陽SAN』という人のおかげである。
彼は私より一つ上の先輩で、得意ジャンルはミステリーとホラー。太陽なのに!?と最初は驚いた。
ラブコメや現代ファンタジーを得意とする私とは共通点があまりない。
だが、何故か惹かれて仲良くなり、太陽さんと呼ぶ仲だ。
私の小説にコメントが付き、見にいくと太陽さんがいる。
コメントが付かなくても、太陽さんが見てくれている。
そう考えているだけで、心臓の鼓動が早くなり、舞い上がってしまいそうだった。
この気持ちが恋心だと気がつくのに、時間はかからなかった。
好きで、好きでたまらなくて、彼の情報を収集するようになった。
こういうと人聞きが悪いが、リアルで好きな人の好きなものを探るのとなんら変わらない。
もし、会うことができたら…と何度も何度も妄想した。
どんな顔?どんな声?どんな、性格?
いい人なんだろうな。
妄想にしかすぎない。けれど、すごく好きだ。
コメント欄に、何度『好きです。』と打ち込みかけたことか。
送信せずに、何度消したことか。
全ての小説にコメントをつけたいのに、何もなくてもコメントをつけたいのに、重いと思われそうで何度諦めたことか。
太陽さんのリア友がコメントに顔を出して、軽口を叩いて帰って行く。
どんなに羨ましいことか。
近くにいたら、告白する勇気はもうできているのに。
振られたって構わない。近くにいてくれさえば、想いをそのままぶつけられるのに。
彼に見て欲しくて、コメントをつけて欲しくて、新作ばかり出す。
気持ち悪いってわかってる。
重たいってわかってる。
構って欲しいだけって、わかってる。
それでも、諦められない。
───ある日のことだった。
友達とカラオケに行く約束をしていたが、少し時間が空いたのでスマホを手に取った。
久しぶりの太陽さんの新作は、ノンフィクションのもので。
指が吸い寄せられるようにしてそれを開くと、そこにはクラスメイトへの恋愛感情が綴られていた。
風夏「…っ…!」
思ってた通りだ。
私なんて、眼中になかった。
文章を見る限り、その人は素敵な人だ。
心がすごく綺麗な人だということが、印象からひしひしと伝わってくる。
それに比べて、私は一つ下の意気地無し。優しさなんて、偽りのもの。
本当に優しくて、心の綺麗な人に、叶うはずもない。
風夏「…無理、か。現実的じゃないよな。」
そんなことを口からこぼしながらも、心の奥底ではまだ諦められないと感じていた。
諦めてはいけない。諦め切れるはずもない。
コメント欄を開く。
嫌がらせかもしれない。空気読めない変な奴かもしれない。
文字を打ち込もうと『す』と入れると、『好きです。』と一番最初に出てくる。
どんだけ想いを伝えたかったんだ。
自分が見ても呆れる。
夏宮ここね『好きです。好きになってごめんなさい。』
気持ち、悪がられるかな。
風夏「……だめだ…」
うわごとのように呟くと、私は送信ボタンではなく削除ボタンを押した。
言えるわけがない。
待ってるだけじゃこっちを向いてくれないのはわかってる。
自分から行かないといけないのはわかってる。
でも、やっぱり、私は最後まで意気地なしだ。
風夏「現実だったらよかったのに…もっと早く、自分の言葉で伝えられたのに…」
泣いちゃダメだ。私に泣く権利なんてない。
歯を食いしばってコメント欄を立ち上げると『応援しています。』と打ち込んだ。
これでいい。誰がなんと言おうと、もう、これでいい。私は、応援している。
あの気持ちを無理矢理振り切って、逃げるように鞄を取り一足早く待ち合わせ場所へ向かった。
幻だ、全部。全部。
そこまで目立つ方ではないがそこまでの陰キャってほどでもない。
優等生ってほどでもないが不良ではない。
こう言っちゃ悪いけど、普通の女子中学生だ。
学校で友達と戯れあった後、家に帰ってスマホをいじる。
塾のある日は塾に行き、友達と遊ぶ約束のある日は駅前に出かける。
中間テストが近づいたら塾の頻度を増やし、大量の課題を片付けていく。
他の人と、何も変わらない。
風夏「あ、新作……!流れ龍さんの…!」
自然と上がる口角を抑えながら、スマホの画面をタップする。
そう、彼女はネットに浮かぶ小説家『夏宮ここね』だ。
夏宮は苗字と名前の最後から取り、ここねはなんか可愛いからというなんともいい加減な理由で名付けた名前だ。
ただ、最近この名前に愛着が湧いてきている。
それは、私とほぼ同時期に小説投稿を始めた『太陽SAN』という人のおかげである。
彼は私より一つ上の先輩で、得意ジャンルはミステリーとホラー。太陽なのに!?と最初は驚いた。
ラブコメや現代ファンタジーを得意とする私とは共通点があまりない。
だが、何故か惹かれて仲良くなり、太陽さんと呼ぶ仲だ。
私の小説にコメントが付き、見にいくと太陽さんがいる。
コメントが付かなくても、太陽さんが見てくれている。
そう考えているだけで、心臓の鼓動が早くなり、舞い上がってしまいそうだった。
この気持ちが恋心だと気がつくのに、時間はかからなかった。
好きで、好きでたまらなくて、彼の情報を収集するようになった。
こういうと人聞きが悪いが、リアルで好きな人の好きなものを探るのとなんら変わらない。
もし、会うことができたら…と何度も何度も妄想した。
どんな顔?どんな声?どんな、性格?
いい人なんだろうな。
妄想にしかすぎない。けれど、すごく好きだ。
コメント欄に、何度『好きです。』と打ち込みかけたことか。
送信せずに、何度消したことか。
全ての小説にコメントをつけたいのに、何もなくてもコメントをつけたいのに、重いと思われそうで何度諦めたことか。
太陽さんのリア友がコメントに顔を出して、軽口を叩いて帰って行く。
どんなに羨ましいことか。
近くにいたら、告白する勇気はもうできているのに。
振られたって構わない。近くにいてくれさえば、想いをそのままぶつけられるのに。
彼に見て欲しくて、コメントをつけて欲しくて、新作ばかり出す。
気持ち悪いってわかってる。
重たいってわかってる。
構って欲しいだけって、わかってる。
それでも、諦められない。
───ある日のことだった。
友達とカラオケに行く約束をしていたが、少し時間が空いたのでスマホを手に取った。
久しぶりの太陽さんの新作は、ノンフィクションのもので。
指が吸い寄せられるようにしてそれを開くと、そこにはクラスメイトへの恋愛感情が綴られていた。
風夏「…っ…!」
思ってた通りだ。
私なんて、眼中になかった。
文章を見る限り、その人は素敵な人だ。
心がすごく綺麗な人だということが、印象からひしひしと伝わってくる。
それに比べて、私は一つ下の意気地無し。優しさなんて、偽りのもの。
本当に優しくて、心の綺麗な人に、叶うはずもない。
風夏「…無理、か。現実的じゃないよな。」
そんなことを口からこぼしながらも、心の奥底ではまだ諦められないと感じていた。
諦めてはいけない。諦め切れるはずもない。
コメント欄を開く。
嫌がらせかもしれない。空気読めない変な奴かもしれない。
文字を打ち込もうと『す』と入れると、『好きです。』と一番最初に出てくる。
どんだけ想いを伝えたかったんだ。
自分が見ても呆れる。
夏宮ここね『好きです。好きになってごめんなさい。』
気持ち、悪がられるかな。
風夏「……だめだ…」
うわごとのように呟くと、私は送信ボタンではなく削除ボタンを押した。
言えるわけがない。
待ってるだけじゃこっちを向いてくれないのはわかってる。
自分から行かないといけないのはわかってる。
でも、やっぱり、私は最後まで意気地なしだ。
風夏「現実だったらよかったのに…もっと早く、自分の言葉で伝えられたのに…」
泣いちゃダメだ。私に泣く権利なんてない。
歯を食いしばってコメント欄を立ち上げると『応援しています。』と打ち込んだ。
これでいい。誰がなんと言おうと、もう、これでいい。私は、応援している。
あの気持ちを無理矢理振り切って、逃げるように鞄を取り一足早く待ち合わせ場所へ向かった。
幻だ、全部。全部。
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