無表情の虐げられ少女は異能で無自覚チートをぶっ放す
ガッシャーン!
耳をつんざくような音が響く。
あぁ、まただ。食器を片付けていた少女、水月琉貴はそう思った。
また、お姉様の癇癪が起こった。そして、私にすべて擦りつけられるんだ。
「お母様ー、琉貴がまた癇癪を起こしたわ、怖いー」ちょっと棒読みすぎない?さすがに無理があるよ、お姉様。
「なにがあったのー?」叔母様が来た。
「るきがぁ、コップ、割ったのー!」少しぶりっ子属性混じってない?
「「琉貴!」」あ、叔父様が来てしまった。叔父様は絶対に逆らってはだめな人だ。すぐ暴力を振るう。…許しを請わなければ。
「誠に申し訳ございません。どうかお慈悲を、お願いいたします」
「…まぁいい。テスト次第で生かすか殺すか考えてやる」よ、よかった。
「優しいお姉様のおかげで生かしてもらっているのを実感なさい!ついでにお姉様が勉強を教えてるってことも言いなさいよ!」はーい。…ほんとは違うのになぁ。お姉様頭良くないし。
◇
学校の一時間目。テスト返しの日がやってきた。
「1位はー」ドキドキ。
「水月琉貴!百点満点だ」よかった。
その後も順調に百点を取ることができ、最後のテスト。
このテストも百点だったら、生き延びることができるはず。
「1位はー」大丈夫、大丈夫。
「水月琉貴!だが、惜しいな、九十八点だ」…え?う、うそ。サーッと、血の気が引いていく感じがした。叔父様は手加減をしない。暴力を振るうとなったら力の限り殴るし、蹴る。下手をしたら死ぬほどに。
だからこそ、私が一番恐れているのは叔父様だ。
「琉貴ちゃん、顔が青いよ、大丈夫?」あ、取りに、いかないと。
やっぱり夢ではなくて。事実は永遠に事実だった。
◆
どうしよう。このままだと、死んでしまうかもしれない。殴られたせいで死ぬとか、考えたくもない。
…いっそ、いま死んでしまおうか。そのほうが、楽だよね、きっと。
そうしよう。
その後はふらっと、誘われるようにして神社に踏み入れた。
ちょうど展望台のようになったところがあって、私が登るのにもちょうど良い高さだった。
近くにあったベンチを踏み台にして、手すりに足をかける。ちょうど季節が春に差し掛かっていたので、吹き抜ける風がほんのりと暖かかった。
「わふっ」犬のような声がして、ふと下を見る。
いつの間に来たのか、金色の毛並みの犬が座っていた。いかにも育ちがよさそうだ。私とは大違いで。
死ぬというのに、私には恐怖も悲しみもない。きっと、この世には死んでも悲しんでくれる人がいないからだろう。お父様も、お母様も、私がずっと小さな時にいなくなってしまったし、いま引き取ってくれている叔父様たちにも、私は使用人のように思われているから。
いいじゃない。別に。
お父様たちが死んでしまってから、そう思ってきた。
叔父様たちがお姉様だけに誕生日プレゼントをくれるのは、叔父様たちにとって愛する娘はお姉様だけだから。
お姉様が私にきつく当たったり、癇癪を起こしたりするのは、私がお姉様の家族という名のテリトリーに侵入しそうだから、侵入されたくないからだろう。
この中に、私は必要なかったんだ。
けれど、手向けがないのはさみしいので、お姉さまたちに余計にきつく当たられるようになったこの不思議な力で、薔薇でも創ろうか。
いや、スノードームがいいかな。
春には似つかわしくないけれど、正直、冬が一番好きだ。
枯れた木も、その中を吹き抜ける風も冷たいけれど、雪は綺麗だから。
手に力を込めて、いつかお姉様に捨てられてしまったスノードームを創る。
それを眺めながら、あの世への道を踏み出そうとした、その時。
「何をしている」
少し低くて、けれどもとても良く通りそうな声が、私の耳に入って来た。
耳をつんざくような音が響く。
あぁ、まただ。食器を片付けていた少女、水月琉貴はそう思った。
また、お姉様の癇癪が起こった。そして、私にすべて擦りつけられるんだ。
「お母様ー、琉貴がまた癇癪を起こしたわ、怖いー」ちょっと棒読みすぎない?さすがに無理があるよ、お姉様。
「なにがあったのー?」叔母様が来た。
「るきがぁ、コップ、割ったのー!」少しぶりっ子属性混じってない?
「「琉貴!」」あ、叔父様が来てしまった。叔父様は絶対に逆らってはだめな人だ。すぐ暴力を振るう。…許しを請わなければ。
「誠に申し訳ございません。どうかお慈悲を、お願いいたします」
「…まぁいい。テスト次第で生かすか殺すか考えてやる」よ、よかった。
「優しいお姉様のおかげで生かしてもらっているのを実感なさい!ついでにお姉様が勉強を教えてるってことも言いなさいよ!」はーい。…ほんとは違うのになぁ。お姉様頭良くないし。
◇
学校の一時間目。テスト返しの日がやってきた。
「1位はー」ドキドキ。
「水月琉貴!百点満点だ」よかった。
その後も順調に百点を取ることができ、最後のテスト。
このテストも百点だったら、生き延びることができるはず。
「1位はー」大丈夫、大丈夫。
「水月琉貴!だが、惜しいな、九十八点だ」…え?う、うそ。サーッと、血の気が引いていく感じがした。叔父様は手加減をしない。暴力を振るうとなったら力の限り殴るし、蹴る。下手をしたら死ぬほどに。
だからこそ、私が一番恐れているのは叔父様だ。
「琉貴ちゃん、顔が青いよ、大丈夫?」あ、取りに、いかないと。
やっぱり夢ではなくて。事実は永遠に事実だった。
◆
どうしよう。このままだと、死んでしまうかもしれない。殴られたせいで死ぬとか、考えたくもない。
…いっそ、いま死んでしまおうか。そのほうが、楽だよね、きっと。
そうしよう。
その後はふらっと、誘われるようにして神社に踏み入れた。
ちょうど展望台のようになったところがあって、私が登るのにもちょうど良い高さだった。
近くにあったベンチを踏み台にして、手すりに足をかける。ちょうど季節が春に差し掛かっていたので、吹き抜ける風がほんのりと暖かかった。
「わふっ」犬のような声がして、ふと下を見る。
いつの間に来たのか、金色の毛並みの犬が座っていた。いかにも育ちがよさそうだ。私とは大違いで。
死ぬというのに、私には恐怖も悲しみもない。きっと、この世には死んでも悲しんでくれる人がいないからだろう。お父様も、お母様も、私がずっと小さな時にいなくなってしまったし、いま引き取ってくれている叔父様たちにも、私は使用人のように思われているから。
いいじゃない。別に。
お父様たちが死んでしまってから、そう思ってきた。
叔父様たちがお姉様だけに誕生日プレゼントをくれるのは、叔父様たちにとって愛する娘はお姉様だけだから。
お姉様が私にきつく当たったり、癇癪を起こしたりするのは、私がお姉様の家族という名のテリトリーに侵入しそうだから、侵入されたくないからだろう。
この中に、私は必要なかったんだ。
けれど、手向けがないのはさみしいので、お姉さまたちに余計にきつく当たられるようになったこの不思議な力で、薔薇でも創ろうか。
いや、スノードームがいいかな。
春には似つかわしくないけれど、正直、冬が一番好きだ。
枯れた木も、その中を吹き抜ける風も冷たいけれど、雪は綺麗だから。
手に力を込めて、いつかお姉様に捨てられてしまったスノードームを創る。
それを眺めながら、あの世への道を踏み出そうとした、その時。
「何をしている」
少し低くて、けれどもとても良く通りそうな声が、私の耳に入って来た。
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