二次創作
ブルーロックbl短編集
「昨日人を殺したんだ」
そう言って蜂楽は俯いた。
梅雨時の中、ずぶ濡れのまま泣いていた。
「え、、?」
「っ、、、、」
夏の始まりだというのに蜂楽はひどく震えていた。
これはそんな話で始まるあの夏の日の記憶だ。
とりあえず、俺は蜂楽を部屋に入れた。蜂楽の肩はまだ震えている。人を、殺したって、、。一体なんで、。
「、、、」
それから数十秒沈黙が続いて、蜂楽は口を開いた
「殺したのは、いつもいじめてくるアイツ」
「っ、」
「もう嫌になって、肩を付きどばしたんだ」
「、、」
「それで、打ち所が悪かったんだ」
蜂楽は一定のテンションで淡々と語った。明らかにいつもの蜂楽では無く、俺の初めて見る表情をしていた。
悲しい表情でも、怒りの表情でもない。
ただ、無表情だった。
いつもあんなに感情表現が豊かなやつなのに。事の重大さをより実感させられる。
そんなこともあってか、俺は声が出なかった。
「もうここにはいられないと思うし、俺どっか遠いとこで死んでくるね、」
蜂楽は少し口角を上げてそういった。
無理しているようには見えなかった。
ただーー、。
「それじゃ、俺も連れって」
「え、、?」
「俺も、蜂楽と一緒に行く。」
「なんで、潔には関係ないよ、」
「じゃあ、なんで俺にいいに来たんだよ」
「っ、、、」
「俺もお前と一緒に死んでやるから」
「、、、、。」
蜂楽はまた俯いてしまったが、しばらくしてコクリと首を縦に振った。
俺と蜂楽はここをでる準備をし始めた。
鞄に財布と携帯を入れた。
そして、ナイフも。
「あ、、」
俺の目に止まったのは、蜂楽とそして、ブルーロックの戦友たちとの写真。
「どうしたの?潔、、、あ、、」
蜂楽もそれに気づいて少し戸惑った。
「これは、置いていこう」
「うん、」
この写真は、今となってはもういらない。
これは俺と蜂楽ーー、
人殺しとダメ人間の逃避行の旅だ。
そして俺たちは逃げ出した。
家族も、チームメイトも全部置いて二人っきりで。
「遠いところで2人で死のう」
「、うん」
そうだ。人殺しなんて、そこらじゅうに沸いてるだろ。
“君はなにも悪くないよ”
「結構遠くまで来たな」
「そーだねぇ」
どれくらい、時間が経っただろうか。
蜂楽の手を握っても、もう震えは止まっていた。
俺たちは今、自由だ。
誰にも縛られず、2人で線路の上を歩いていた。
金を盗んで、2人で逃げて、どこまでも行ける気がした。
俺たちには今更怖いものなんてなかった。
「潔、本当についてきてよかったの?」
ふとそんなことを蜂楽が聞いてきた。
「よくなかったら、ついてきてねぇよ」
「そっかー、、ねえ、潔」
「?」
「漫画やアニメのやさしい主人公ならさー、俺たちのことも救ってくれるのかな」
「、、、そうかもな。漫画なら」
「、現実はうまくいかないね」
こうやって他愛もない会話をして、ときは過ぎていった。
水がなくなって、視界が揺れ始め、鬼の怒号が響いた。
そんな状況の中、馬鹿みたいにはしゃぎあった。
そしてふと、蜂楽はナイフ取った。
「、、!」
分かってはいたことだが、時が来ると、やっぱりちょっとビビる。
そっか、もう、、、。
「、、」
そして、俺も鞄からナイフを取り出した。
「、!、、潔」
「なんだ、?」
「、、潔、ありがとう。潔がいたからここまで来れたんだよ。」
「は、、」
「だから、もういいよ」
「蜂ーー、」
「もういいよ、、っ」
「死ぬのは俺一人でいいよ」
そして蜂楽は首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンだ。
白昼夢を見てい気がした。
気づけば俺は捕まっていて、
蜂楽がどこにも見つからなくて、
アイツだけがどこにもいなくて。
「蜂、楽、、、、?」
そしてときは過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎていった。
家族もチームメイトもいるのに、
なぜか蜂楽だけがいない。
あの夏の日を思い出す。
俺は今も今でも歌ってる。
君をずっと探しているんだ。
君に言いたいことがあるんだ。
9月がきて、また次の6月を迎える。
いまでも、アイツの笑顔が、無邪気な言葉が
頭の中を飽和している。
「誰も何も悪くないよ。」
「お前は何も悪くはないから」
「もういいよ。」
「投げ出してしまおう。」
そう言って、欲しかったんだよな。
あの夏が飽和する。
ー完ー